城下町のAGITΩ   作:オエージ

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第44話 その友、本物?それとも・・・

ホラー映画の撮影に使えそうな気味の悪い雰囲気を醸しだす発電所の中を昴はゆっくり歩いていた。ポツリポツリと落ちる滴の音しか聞こえないこの空間で昴は気を引き締めていた。ここに奴がいるのだ、決して許してはいけないあの男が。

階段を見つけ地下へと下ると錆びついた機器の後ろから影が見えた。間違いない、樹次郎だ。

 

「見つけたぞ樹次郎」

 

「・・・ご無沙汰しております昴様。私が行方をくらましていた間を如何にお過ごしでしたでしょうか」

 

隠れる気が失せたのか樹は昴の声を聞くとすぐに彼の前にその姿を現した。薄暗い地下に引き篭もっていた為か髪や髭な無造作に伸び彼の体はより黒色に統一されている。

 

「まさかお前が生きていたとはな。あの場からどうやって逃げ出したか聞いておこうか」

 

「・・・簡単なことですよ」

 

そう言い樹はコートの中から例の爆弾を取り出し握り潰した。またもや自爆するつもりかと昴は身構えるが爆発は起こらず爆弾の残骸が地面に落ちただけだった。

 

「私の体に身に着けている物は全てレプリカです。あの時の爆発は隠れ家の周囲に予め仕掛けていた爆弾の一つです」

 

樹のトリックの真相はこの通りである。

体に巻きつけている爆弾のレプリカを見せつけることで自爆するつもりと錯覚させる。

その次に万が一の時に備え地面に埋めていた本物の爆弾の一つを起爆させる。

樹の僅か手前で大爆発が起こり周りがそれに気を取られている内にその場から逃走。

以上、これによって樹は今日まで逃げ延びていたのであった。

 

「もっとも、真近で爆風を浴び吹き飛ばされることになるので私としてもリスクを伴う策になるのですがね。しかしそのリスクを背負うからこそ遥様の確率予知による捜索からも抜け出せたというわけですが、それを聞いてどうするというのです?」

 

「そんな大したことじゃないさ、ただ同じ手を使われて逃がさないようにと思ってな」

 

敵意剥き出しで睨む昴を見て樹は困ったような溜め息を吐いた。

 

「昴様、あなたがここまでしつこい方だとは思いませんでしたよ。計画が失敗したこの国にもう用は無い。私を放置したままでいてくだされば準備が整い次第すぐにでもこの国を去り別の計画を練る予定でしたものを・・・」

 

「それはお前が今までやってきたことを自覚した上で言っているのか?」

 

「前の私の言葉をお忘れですか?私にも信念はある。自分の行いに恥じるところがあるとすれば、あの戦いの折心を乱したことでしょうね・・・」

 

「てめぇ・・・!」

 

「雑談はこれぐらいにしておきましょうか。あなたと私の場合論じ合うのであれば口よりも拳と脚の方が効率的ですからね・・・」

 

会話を打ち切るように樹は緩やかな動作で構え呟く。

 

「変身・・・」

 

樹の姿がアナザーアギトへと変わる。しかしその姿は以前シャイニングフォームのキックを受けた後と同じく体中におびただしい数の傷とヒビが残っていた。

 

「力の根幹をあなた様に叩きつけられた影響でまだ回復し切っていないのですよ。本来の力を発揮することはできませんが・・・それはあなたも同じですよね?」

 

アナザーアギトは上を見上げる。現在の時刻は夜なので当然太陽は昇っていないが仮に日が昇っていたとしてもこの場でアギトはシャイニングフォームになることは不可能であろう。何故ならここは発電所の地下、天井を破壊したとしても一階の天井が太陽を遮るだけだからである。

 

「ここを新たな隠れ家とした理由は単に一目のつかない場所だからではなく例え昴様に見つかってもシャイニングフォームを封じることが出来るからですよ」

 

「なるほどね。力は衰えても悪知恵は衰えずってわけか。確かに以前の俺ならシャイニングフォーム無しでは勝てなかった・・・だがな」

 

昴は最初に両腕を前へと突き出しその腕を広げる。左手を前へと右手を腰より少し上に構えるとドラゴンネイルを付けたオルタリングが発現した。右手をゆっくりと前に出し左手と交わった瞬間昴は叫んだ。

 

「変身!!」

 

オルタリングの両端を叩き眩い光の中からアギトは現れる。だがその姿は既にバーニングフォームへと変わっていた。

 

「他のフォームを介さず直接バーニングフォームに変身しただと!?」

 

「最近できるようになったことさっ!」

 

驚くべき速さで成長したことに驚愕するアナザーアギト目掛けてアギトは飛び掛かり正拳突きを繰り出した。それを受け止めようとするが抑えきれず後ろへと弾き飛ばされる。さら追い打ちを掛けるべくアギトは踏み込んだ。それを予期し横へと回避行動を取るが目の前に写ったアギトの足がアナザーアギトを切り飛ばす。パンチほどの威力は無いがそれでも目を見開きさせる力を持っていた。

 

(単にアギトの能力が上がったのではなく戦闘技術そのものが向上しているというのか!)

 

アナザーアギトもアギトの猛攻に応戦するがそのパワフルな攻撃によって次第に追い詰められていく。

 

「どうだ!俺はもう以前お前が会った俺とは違う!」

 

「確かにその通りですね。昴様、あなたは本当に強くなられた。ですが・・・」

 

アナザーアギトは立ち上がりアギトに向けて言葉を投げかける。

 

「あなたのご兄弟はあなたほど戦いにおける強さを持ち合わせてはいないのをお忘れなく・・・」

 

「っ!?何が言いたい?」

 

「それはご自分で考えられることです!」

 

叫ぶとすぐに手前の機器に手刀を放つ。機器から火花が飛び散りアギトは足止めされてしまい収まった頃には樹の姿は消え追いかけようと発電所から出るも樹がどこにいったか分かるような手掛かりは残されていなかった。

 

「くっ!逃げ足の速い奴め!」

 

昴は樹に逃げられたことに憤慨していたがすぐに樹が最後に残した言葉を思い出す。

 

『あなたのご兄弟はあなたほど戦いにおける強さを持ち合わせてはいないのをお忘れなく・・・』

 

その言葉の意味は樹の目的の為に手段を選ばない性格を鑑みれば自ずと理解出来た。

その為に自分がするべきことも。

 

 

 

 

 

翌日 

 

「皆お待たせー」

 

その日櫻田葵は静流、奈々緒、卯月の三人と一緒に一日遅れの初詣に来ていた。

その神社は比較的広い敷地を持ち、正月の間そこに屋台が置かれちょっとしたお祭り会場になっているのだ。

 

「ううん、こっちも今着いたとこだよ」

 

「それじゃ行こうか」

 

「あの・・・」

 

何かに気付いた卯月は葵の後ろの方角にある木を見て呆然としている。

 

「どうしたのよ、ってあれ・・・?」

 

何故卯月がこうなっているのか知るため卯月と同じ方角に目を向けるとその理由がすぐ分かった。

 

木の陰からじっと見続けている者がいる。その両手にはカムフラージュのつもりなのかその辺で拾ってきた木の枝が握られているが逆にそれが怪しさを増大させていた。

 

「葵、あれ昴君だよね」

 

「う、うん・・・」

 

葵も苦笑いで静流の問いに答える。

 

「おーいそこの君、そんな所で何してんの~?」

 

奈々緒に声を掛けられた昴はキョロキョロと周りを見渡している。あくまで気付かれていないと思っているのだろうか。

 

「いやあんたのことだよ葵の弟君」

 

「えっ!?俺!?」

 

自分の存在が気付かれたことに理解した昴は動揺した。

 

「な、何故俺の完璧な尾行がバレたんだ・・・何が悪かったんだ。枝か?もうちょっと葉が付いた枝なら姿を隠せたのか・・・?」

 

「いや、なんか悩んでるようだけど何が悪いっていうかあれに気付けないほうが難しいレベルの隠れ方だったからね」

 

奈々緒の言葉を聞いて大袈裟なリアクションを取っている昴を見て静流は思わず吹き出してしまう。

 

「前から思ってたけどあんたの弟君ってホント面白い子だよね」

 

「あはは、昴自身は真面目にやっている気なんだけどね・・・」

 

「でもどうして弟さんが葵さんを尾行していたのですか?」

 

「えっと、実はね・・・」

 

卯月に尋ねられ昴が何故ここに居るのかを説明した。

 

『『葵のボディガード?』』

 

「うん、私は別にいいって言ったんだけどどうしてもって昴が」

 

「もしかして例の葵さんが攫われた事件が関係していることなのですか?」

 

「う、うん。そんなとこかな」

 

友人達が言う例の事件とは無論樹の事である。だがしかし彼女達が想像しているのは実際に起こったこととは少しズレが生じている。

樹次郎という男が国家転覆を企て手始めに昴の暗殺計画を立てていた。

それをいち早く葵が察知したが樹の手によって誘拐されてしまう。

その後櫻田家の兄弟達が協力し合い葵を救出、樹には後一歩のところで逃げられた。

というのが表向きに報じられた樹事件の概要である。

 

「と、いうわけで今日から葵姉ちゃんのボディガードを務める櫻田昴です!姉ちゃんに近づく怪しい奴は俺が残らず取っちめるんでよろしくお願いします!」

 

「ああ、どうも・・・」

 

昴は開き直って声高に自己紹介するがこの場で一番怪しいのは彼本人ではないのかという疑問が三人の頭の中で過ぎる。そしてそれを影から見つめる者達が居た。

 

「全く、何やってんよあいつは・・・」

 

奏と茜である。

昨日の夜帰ってきた昴は樹が生きていた事とその樹が兄弟を狙っているという趣旨の発言をしたというのを話した。遥に樹が狙うであろう家族を計算させた結果。葵、光、岬の三人が他の兄弟の群を抜いて狙われる確率が高いというのが判明した。それを聞いた昴は一番確率の高い葵は自分が護衛すると言い出し、今に至るというわけだ。

 

奏と茜は昴が葵やその周りの人々に迷惑を掛けたりしないか監視するために尾行の尾行を行っていたのである(なお、二人は奏が生成した30年後に開発されるというステルス迷彩装置を使って完全に身を隠している)。

 

案の定面倒な事になりそうなのですぐにでも昴を引き戻そうと考える奏の耳に遠くの昴の言葉が聞こえてきた。

 

「まぁそんなこと言わないでくださいよ。あ、そうだ、俺が荷物持ちましょうか卯月さん」

 

「っ!?」

 

「どうしたのカナちゃん?」

 

信じられないといった顔をする奏に茜が尋ねると食い気味で奏が口を開く。

 

「あんたはなんとも思わないの!?あの昴が、あのアホの昴が人に対してさんづけで呼んだことに!」

 

「え?あっ、そういうことか。カナちゃんはあんまり昴が他人と接するとこ見たことないから分からないんだね」

 

「どういうこと?」

 

「昴って他人のことさんづけで呼ぶこと多いんだよ、例えば六野さんとか佐藤さんとか」

 

昴の意外な事実に口をポカンと開けていると向こうでも新展開が起こっていた。

どうやら友人達は昴を気に入ったようだ。

 

「まあまあ葵もそう言わないで、この際だし弟君に守ってあげられなよ」

 

「そうそう、こんなに素直な子今時レアだよ」

 

「弟さんも真剣ですし、それに大勢で周った方が楽しいと思いますよ」

 

「皆が良いのなら・・・昴、皆に迷惑かけちゃ駄目よ」

 

「本当!ありがとう姉ちゃん!それに奈々緒さんも静流さんも卯月さんもありがとうございます!」

 

「良いってことよ、それじゃ行こうか昴君」

 

「はい!」

 

遠くからでも見える昴のフレッシュなスマイルに猛烈な違和感を覚えた奏は思わず鉄柱を生成してそこに頭を打ちつける。痛みを感じ夢じゃないことを確信し再び昴に目を向ける。やっぱり爽やかな好青年の雰囲気を醸しだしている。

 

「仮面付けてる!あいつ変身してないのに仮面付けてる!!何あの爽やかフレッシュボーイ!?いつものあいつは言動の一つ一つが馬鹿丸出しで腹立つファッキン小僧なのに!」

 

「落ちついてよカナちゃん。昴は元々思ったことをはっきり言うタイプだから豹変してるように見えても仕方ないよ」

 

「だからってあんな変化する!?それに前から思ってたけどあいつ私と姉さんとで態度が全然違うじゃない!」

 

「そうかな?」

 

そうよ!と奏は茜に独自に調べていた扱いの差を力説し始める。

 

「まず第一に呼び方!私に対しては姉貴って素っ気ないのに葵姉さんのことは姉ちゃんって呼ぶのよ!これはあいつが私と姉さんとの順位を付けてる証拠よ!」

 

「あっ確かに、言われてみないと気付けないものだね呼び方って。でも私もカナちゃんとお姉ちゃんって感じで呼び方違うよ。だから順位付けている証拠にはならないんじゃないの?」

 

「うぐっ!?」

 

正論を突き立てられ出鼻を挫かれた奏だがめげずに次の証拠を述べた。

 

「確かに呼び方に関してはそうかもしれないけど。でもホラなんか違うじゃない私と姉さんとの接し方が!」

 

「うーん具体例が思いつかないよ。例えばどんなの?」

 

「そ、そうね。仮にあいつがハーゲンナッツのアイスを食べてたとするでしょ。そこに私が一口頂戴って言ってきたらあいつは全力でそれを拒否するだろうけど姉さんの場合なら無抵抗で差し出すわよあのバカは!」

 

「想像できるようなできないような・・・でもカナちゃんなら物質生成で作り出せばよくない?」

 

「あんたね、ハーゲンナッツがいくらかかるか知ってるの?わざわざ対価を払って生成するより一口だけでもあいつから貰った方が安上がりに決まってるでしょ」

 

「ほらそれ。カナちゃんのそういうケチな所を感じ取って昴は拒んだんだよ」

 

「ぬう・・・」

 

ところでカナちゃんさ、と茜は奏に問い掛ける。

 

「結局の所カナちゃんは昴にどうして欲しいの?奏姉ちゃんって呼んで欲しいの?ハーゲンナッツ分けて欲しいの?」

 

「そうじゃないわ。別にあいつがどうしようがあいつの勝手・・・でもムカつくの!あいつの頭の中で無意識の内に『私<姉さん』みたいな方式を立てられて敗北感がするのが腹立ってしょうがないのよ!同じ姉なのに何が違うっていうのよぉぉぉぉぉ!!」

 

再び鉄柱に頭を叩き付ける奏を見て茜は思ったことをぼそっと口にした。

 

「北風と太陽・・・」

 

「何か言った?」

 

「い、いえなんでも・・・」

 

しかし茜の独り言を聞き逃さなかった奏は不気味な笑みを浮かべた顔を茜の顔に近づけ尋問する。

 

「ねえ・・・どっちが北風なの?どっちが負けた方の北風なのかしら・・・?」

 

「いや、あの、その・・・あー!あんなところで修ちゃんが佐藤さんとちゅーしようとしてる!」

 

「なんですって!私の許可無くそんなことはさせないわ!・・・て何言わすのよ!こら茜待ちなさーい!!」

 

二人は当初の目的を忘れ追いかけっこに興じ合うのであった。

 

 

 

その頃、昴達は参拝を終えて敷地内に広げられた屋台を回っていた。

 

「あ、そうそう、これは私達が中学に居た頃の話しなんだけどね」

 

不意に静流が昔の出来事を語り始めた。

 

「奈々緒が友達んちで生まれた子犬が指を舐めてきて可愛かったって話をしてたから葵が悪ふざけでやってみてよって言ったら奈々緒の奴ホントに葵の指舐めちゃったのよ」

 

「え・・・!?」

 

原因は恐らく絶対遵守の誤発動だろうと昴はすぐに推測した。しかし友人達はそのことを知らないので『前に起きた不思議な経験』程度の認識のようである。現に当の奈々緒本人は顔を真っ赤にしていた。

 

「ちょっと静流!あれは見なかったことにしてって言ったじゃん!」

 

「いいじゃない大分前のことなんだからさ」

 

「それでも!」

 

「それにしてもどうして奈々緒さんは本当に葵さんの指を舐めようなんて思ったんですか?」

 

「それがどうもね、自分でもなんでああしたか分からないのよ。ただ何故かそうしなきゃって感じがしてね・・・」

 

「ふ、不思議な事もあるんですね・・・」

 

静流達に話を合わせ三人に聞こえないように葵と会話する。

 

『姉ちゃん、今の話って』

 

『うん、それが私が本当の能力に気付いたきっかけとなった出来事よ。でも良かった、今まで皆があの時の事をどう思ってるか聞けなかったから、そこまで気にしてたことじゃないのを知る事ができたし』

 

『確かにそれは聞きづらいよね・・・』

 

「ねえ、何二人で話してんの?」

 

「「!?い、いや別に何でもない、でありますよ?・・・」」

 

「・・・あんたら隠し事下手だね」

 

なんとか誤魔化そうとするがそれが返って疑いを増してしまう。

 

「怪しい、絶対何か話していたでしょ」

 

「私気になります」

 

「いや、その・・・」

 

ジリジリと詰め寄ってくる三人の追及をどう切り抜けようかと考えていたその時、幸か不幸かアンノウンの気配を感知する。

 

「あー!しまったー!買い食いし続けた結果財布の中が氷河期時代を迎えようとしてるー!あ、そうだ!さっき見かけたカタヌキの出店で賞金貰ってこよー!というわけでちょっと離れるんで気にせず祭りを楽しんでてくださいねー!」

 

有無を言わせないマシンガントークで強引に走り去っていった昴の後ろ姿を三人は呆然と眺めていた。

 

「カタヌキ屋ってここにあったっけ?」

 

「一応見かけましたけど、景品はお菓子でしたよ」

 

「やっぱりちょっと変わってるよね葵の兄弟って。それはいいとしてさっきは何を話してたの?」

 

「えっと、色々と、ね・・・」

(昴・・・なるべく早く戻ってきてね・・・)

 

 

 

 

「ここか・・・」

 

屋台のある場所とは反対方向にある池のほとりに到着したが肝心のアンノウンの姿は見つからない。しかし何処かに必ずいる筈だと辺りに気を巡らせる。

すると池から殺気を感じ飛び上がって敵の襲撃を回避した。

 

「イィィィィヂィ・・・」

「ニィィィィヂィ・・・」

「ダァァァァツゥ・・・」

 

姿を現したの殆ど差異が付かない姿をした三体のアンノウン。

シーホースロード ヒッポカムポス・ウーヌス

シーホースロード ヒッポカムポス・ドゥオ

シーホースロード ヒッポカムポス・トレース

三体ともタツノオトシゴに告知した姿である。

 

「変身!」

 

昴は三体の敵と対抗するためにアギトバーニングフォームに変身する。

変身している頃三体のアンノウンはそれぞれの得物をアギトに振り落とす。

アギトはシャイニングカリバーを横に構えることで得物を止める。

 

「ギギギ・・・」

 

三体のアンノウンは力を出してシャイニングカリバーを押し出そうとするが強靭なアギトの腕力がそれを良しとせず逆に相手を弾き飛ばす。

 

「どりゃぁっ!」

 

今度は時間差攻撃で攻めてくるシーホース達。しかしアギトは一つ一つを捌き全員に隙が出た瞬間を見計らい地面にシャイニングカリバーを突き立てる。

刀身に帯びてる熱気が地面を通して放出されウーヌスとドゥオの体を焼き焦がす。

 

のた打ち回る二体の後ろからトレースが飛び出し腕に握られたトライデントをアギトに突き刺そうとする。

 

「ふんっ!」

 

アギトは突き立てられたトライデントを掴み捻ることで捩じ切った。

仰天するトレースを尻目にアギトは拳に炎を灯し走り出す。

 

「でやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

三歩前で飛び上がり、落下の勢いを利用したバーニングライダーパンチがトレースを池の中へと吹き飛ばし水柱を起こして撃破した。周りを見回すと既に他の二体の気配は消え失せている。

 

「逃げられたか」

 

見つからないものは仕方ないので昴は変身を解除し四人の元へ戻る事に決めた。

 

 

 

「で、何処行ってたの?」

 

葵達の元へと戻ると三人の友人は猜疑の目線を昴に向ける。

 

「いや、そのこれには深ーいわけが・・・」

 

「それって葵から離れる必要があるほどのことなの?」

 

「へ?」

 

昴は思わず素っ頓狂な声を上げる。彼女達の猜疑の理由は自分が思っていたこととは違うようだ。

 

「だめじゃないですか葵さんから離れちゃ。だってあなたは葵さんのボディガードの為にここに来たのでしょう?」

 

どうやら勝手に抜け出したことよりも守るはずの葵を置いて去っていってしまったことに猜疑をかけていたようだ。

 

「は、はい。そうですけど・・・」

 

だったらさっ、と奈々緒が昴の背中を強く叩いた。その目にはもう猜疑心は消えていた。

 

「しっかり守ってあげなよ!葵はああ見えて結構抜けてることがあるからね。案外目を離した隙に知らない人にホイホイついて行っちゃうかもよ」

 

「ちょっとナナちゃん!そんな子供じゃないんだからさ」

 

「いや、案外奈々緒の言ってることは的を射てるかもしれないぞ、葵はほらなんというか天然だからな」

 

「もう、しーちゃんまで!」

 

「まあまあ、でも私は葵さんのそういうところが魅力的だと思いますよ」

 

「卯月ちゃん・・・」

 

家でのしっかり者の姉とはまた違った一面を昴は見た。

 

「まっ、そういうことだからさ、葵の事しっかり守ってあげな!」

 

「・・・はい!」

 

昴は力強く答えたのであった。

 

 

 

その後改めてボディガードを続行し日が沈みかけてきたので五人は帰路に着く事にした。

 

「それじゃ、私達帰り道あっちだから」

 

三人に別れの挨拶を交わし二人で家に帰る道筋で昴はあの三人のことを思い出し葵に話しかける。

 

「良い友達だね」

 

「うん、皆にはよく助けられることが多いからね・・・」

 

「どしたの?そんなに暗い顔して」

 

実はね、と葵は三人との出会いを昴に語った。

 

「始めて出会った時、私は三人にこう言ったの、『私とお友達になってください』って」

 

葵が何を言いたいかは彼女の秘密を知っている昴には理解できた。

 

「後で分かった事なんだけどね。小さい頃は絶対遵守を無意識下で発動していたということに、それを聞いた時からずっと疑問に残っていたことがある、ひょっとしたら皆は能力でできた『偽物の友達』じゃないのかを・・・」

 

「姉ちゃん・・・」

 

でもさ、と昴は自分の斗真をはじめとする友人達を思い浮かべながら葵に自分の友に対する思いを告げる。

 

「俺思うんだ。友達ってなろうと思ってなれるもんじゃないってことを。なんて言うのから一緒に遊んだりふざけ合ったり、時には喧嘩もしてさ、そんでまた仲直りして、そんな風に色々と繰り返している内に友達ってなるんじゃないのかな?姉ちゃんだってそうでしょ?」

 

「え、ええ。それは、そうだけど」

 

「だったらそれで良いんだよ。例えきっかけが能力だとしても、その力が切れた後のあの人達の行動は間違い無く姉ちゃんの『本物の友達』だよ」

 

「ふふ、そうよね。ごめんね昴、またあなたに心を救われたわ」

 

「良いよ気にしないで、家族なんだしさ。悩みは心に止めずちゃんと打ち明けた方が良いと思うよ」

 

ええそうね、と相づちを打ち葵は心の中である決心を固めた。

何時になるかわ分からないがそう遠くない内に自分の能力の事を隠さず公表しようということを・・・




シーホースロード ヒッポカムポス・ウーヌス
                 ドゥオ
                 トレース
殺害手段 右手に流れる高圧電流を対象に流し込み感電死を引き起こす。
タツノオトシゴの姿をしたアンノウン。三体で行動しその連携攻撃で襲い掛かるが一人一人の戦闘能力は低く、一体倒された今、闇の力による強化は必須であろう。

今回書いてて思ったこと
静留と奈々緒のセリフの書き分けがすっごく難しいということでした。
改めてアニメを再試聴しましたがやっぱり葵回は涙腺を壊す力がありますね・・・

それではまた次回お会いしましょう!
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