城下町のAGITΩ   作:オエージ

50 / 60
気付けばキャラ紹介等を含めて50話達成。
長かったようなそうでもないようなとしみじみと感慨にふける今日このごろです。

それではどうぞ!


第46話 岬と弥生 PART2

その日、岬は部活の助っ人で大忙しであった。

分身達が学校中でそれぞれの任された部活の助っ人に従事していた。

その一人、ユニコもまたテニスコートに立っている。

 

「よしこいっ!」

 

腰を屈めてボールがくるのを待つユニコ。

だがあるテニス部員はユニコの手に持っている物に目を向ける。

 

「あの、ユニコちゃん。それ、ラケットじゃなくてフライパンじゃない?」

 

そう、ユニコが手に持っている物はラケットではなく野菜を炒める時などに使う調理器具フライパンだった。

 

「あ、ホントだ。岬の奴間違って持ってきたんだな、まあ形は似てるから何とかなるだろ」

 

「えぇ・・・」

 

困惑しながらもとりあえずテニス部員はボールを打ち上げラケットでユニコのコートへと飛ばす。

素人では対応できないほど速度でネットを超えてユニコの近くまで飛んできたボールは・・・

 

「そりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

突然横から現れた謎の乱入者によって弾き返された。

 

『『誰!?』』

 

唐突な出来事にテニス部員達は目を丸くした。そんな一同に謎の乱入者 四葉弥生は口を開く。

 

「貴様ら何をしている・・・」

 

「何をしているって、その、テニス・・・ですが?」

 

その時、クワッと眼を開いて叫んだ。

 

「ユニコ様に当たったらどうするつもりだぁぁぁぁ!!」

 

(何この人すごく怖い・・・)

 

恐る恐るテニス部員の一人がユニコに近づき質問する。

 

「ねぇ、あの人ユニコちゃんの知り合い?」

 

「ま、まあそんなとこだが・・・悪いけどボール貸してくれないか」

 

部員からボールを受け取り、部員達を正座させ説教を始めようとする弥生の後頭部を狙ってボールを思い切り放つ。

 

「いいですか、この国が存在しあなた達がこうしてテニスできるのも一重に国王陛下のお力であって従ってその一族は神聖ふか・・・フギャッ!?」

 

ボールが弥生の後頭部に直撃し彼女は頭を抑えてその場でうずくまる。

 

「い、痛いじゃないですか、わざとやりましたね」

 

「そんなことはどうでもいいからこっち来い!」

 

涙目の弥生を引っ張ってコートから離れていくユニコの姿を部員達はただポカンと口を開けたまま見送っていた。

 

「で、あんたは何しに来たわけ?」

 

「決まっております!岬様の護衛任務であります!」

 

軍人のような敬礼をして答える弥生。そんな姿にユニコは頭を抱える。

 

「さっきあれどう見ても邪魔しにきたようにしか見えないんだけど?」

 

「し、しかし樹の手配した輩がどこに潜んでいるか分かりませんし、あのテニスボールだって爆弾にすり替えられていた可能性が・・・」

 

「あるわけねぇだろ!ってか百歩譲ってそうだとしてあんたあれを叩き落したからどの道アウトじゃねぇか!!」

 

「しまったー!私としたことがなんたる不覚!これでは岬様を護衛するどころかその逆ではないか・・・」

 

勝手に驚き勝手に落ち込む弥生を見てユニコはため息をついた。

 

「というかさ、あんた岬を守りにきたんだろ?だったら岬本人に付けばいい話じゃないか?」

 

「いえ!ユニコ様は岬様の能力で誕生された分身。つまりユニコ様の岬様の一部であり私の護衛対象のお一人であらせられます!」

 

「そ・・・そうかよ」

 

本当は面倒な事になりそうなので岬にお鉢を回すつもりで言ったのだが真面目な返答をされユニコはさらに頭を抱える。

 

「分かったよ、あたしは大丈夫だから他の奴らの所に行ってやったらどうだ?ブブとか」

 

「そういうことでしたら了解です!では私はブブ様の護衛に行ってまいりますので!」

 

土煙が舞うほどのスピードでブブの所へ向かう弥生を見てユニコはほっと一息をついた。

 

 

 

調理室

 

ここでのブブの役目は料理部が作った料理の試食である。食いしん坊な彼女にとってこれほど適した役割もそうそうないだろう。

 

「さ、できたよブブちゃん」

 

部員が差し出してきた出来立ての鍋焼きうどんを見てブブは思わずよだれを垂らす。

 

「いただきまー・・・」

 

す、と言い終われば一気にうどんをかきこもうとブブが考えていた矢先に彼女は現れた。

 

「ちょっと待ったー!」

 

勢いよく戸を開け現れた乱入者にその場にいた全員はビクッと体を震わせた。

 

「だ、誰ですかあなたは!?」

 

「岬様のボディガードを務めている者だ。ところでこのうどん、確かに安全なのだな?」

 

「え?いや、ただの鍋焼きうどんですけど?」

 

ギロリと弥生は近くに立っていた部員の目をにらみ部員は思わず目を逸らす。

 

「本当にか?本当にこれはブブ様が食しても何の害を被ることはないのだな?」

 

「いや、あの・・・(何この人すごく怖い・・・)」

 

曖昧な返答が気に入らなかったのか弥生の目つきは益々鋭いものへと変わっていく。

 

「そうか、それならまず私が試食しよう。それで何もなければ不問ということにしようか」

 

『『え!?』』

 

「何か問題でもあるのか?」

 

『『イエナニモ』』

 

びくついた手つきで部員は箸を弥生に渡した。

 

「ねぇ、うどんまだ食べちゃダメなの?」

 

「申し訳ありませんブブ様。まず私めが安全かどうか確認致しますので少々の辛抱をお願いします」

 

そのまま弥生は部員から箸を受け取り麺を掴む。口に入れようと掴み上げたその瞬間、麺は箸から離れ容器の方へと戻っていった。

 

「・・・」

 

気まずい空気が通った後気を取り直して再び箸で麺を掴もうとするがやはりずり落ちてしまい何度も挑戦しても結果は同じであった。

 

「あの・・・あなたもしかしてぶきよ・・・」

 

「違います不器用ではありません!第一なんですかうどんって!こんなのフォークで巻いて食えばいい話だ!」

 

「そんな理不尽な・・・」

 

とはいえこのままでは麺がのびてしまうので弥生にフォークを差し出して無事にうどんの試食を終わらせることにした。

 

「うむ、味の良いし薬物が入っている感じもしない。異常なしですブブさ・・・ブブ様!?」

 

「おなかすいた・・・」

 

振り向くとそこには床に弱々しく床に伏せているブブがいた。

 

(あーやっぱり、目の前の食べ物おあずけにされたのがきつかったんだろうな・・・)

 

ブブの性格をよく知る部員達は倒れている原因を知っていたが弥生はそうはいかなかった。

 

「私としたことがうどんに気を取られていたばっかり・・・ブブ様をこんな目に遭わせたの一体誰だ!」

 

『『あんただよ!』』

 

 

 

 

 

「追い出されてしまった・・・」

 

意気消沈状態で弥生は中等部の体育館近くをトボトボと歩いていた。

 

「だがいずれ樹の手の者が岬様方を狙いに来るはず、そのためにより警戒を強めれば」

 

ギュッと手を握り決意を新たにする弥生。その時体育館裏から甲高い悲鳴が聞こえた。

 

「今のは・・・レヴィ様の声・・・!?」

 

弥生は声が聞こえる方へと走っていきそこ目撃した。

 

恐怖に引き攣った表情のレヴィと彼女の前に立つ謎の覆面男に。

 

(くっ、不安が的中したか!)

 

弥生は覆面男に飛び掛かり逮捕術に似た動作でその男を地面に伏せさせる。

 

「イダダダダ!」

 

「レヴィ様!私が引き止めいる内に早く安全な所へ!!」

 

気迫のかかった声でレヴィに逃げるよう促すが当のレヴィ本人は逃げる様子がない。

むしろ何故が目をパチクリさせて唖然としていた。

 

「何やってんのあんた?」

 

「何をってレヴィ様を襲う輩を捕らえて・・・アレ?」

 

ここで漸く弥生は気づいた。

 

カメラを構えた者達が弥生を見て驚きのあまり口を大きく開けていることに。まさかと思い下にいる男の覆面を取ってみるとそれはこの中学の生徒であった。

 

「これ、映画部の撮影だけど?」

 

「そ、そうでしたか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「それで、映画部の部員に怪我を負わせたというかとですか?」

 

「申し訳ございませんでした!」

 

大きな声で謝罪の意思表示をする弥生に岬はため息をついていた。

彼女が岬の身の回りの警護を務めて以降、岬の回りでは謎の乱入者による珍事が後を絶たなかった。

これまでの間も彼女は、サッカー部の助っ人をしていたライオに張り付きで護衛し、(いら)ついた彼女に蹴り飛ばされ、シャウラが活動している茶道部でお茶を立てようとしたら抹茶を畳にばら撒いてしまう、チェス部にてイナリと一局打ったらうっかりチェスの駒を将棋倒しにしてしまったり、昼寝中のベルに催促された子守歌が酷く音痴で彼女をご機嫌斜めにしたりと行動が完全に裏目にでていた。

 

(でもこの人に悪意はないわけだし言いづらいなぁ・・・)

 

「本当に申し訳ございません岬様!あなたをお守りするはずがこんな不祥事を起こしてしまって!」

 

「頭を上げてください。誰にでも失敗はありますし、それにほら回りの目もあるし・・・」

 

「す、すいません私としたことが!今後はこのようなことがないよう細心の注意を払います!」

 

そう弥生は声高に叫ぶがそれ自体が細心の注意を払えていないような気がしないでもないというのが岬の心境である。

 

「勘ですけど何となく私は襲われない気がするんですよね、それなりに運動神経もあるし、いざとなれば分身達を呼べば何とかなりそうですし・・・だから弥生が守らなくても大丈夫だと思いますよ?」

 

はっきりとは言いづらいので岬は遠まわしに自分を護衛するのを止めるように声をかけるが弥生はその意図に気付けていないようで、

 

「いえ!そういうわけにはいきません!樹の狙いが定まらない以上岬様のことを守らせていただきます!それがこの四葉弥生に与えられた使命ですから!!」

 

「そ、そうですか・・・」

 

暑苦しく使命を語る弥生に岬は少しづつ弥生から下がっていく。

 

「ですが家の中や中学校の中では岬様をお守りすることが難しいですので、これをどうぞ」

 

そう言い差し出してきたのはGX-05だ。

 

「132の順で入力するとアタッシュモードからガトリングモードへと移行できます。非常時の際はこれでご自分をお守りください」

 

「これ絶対に護身用じゃないですよね!?ってかそんな物騒なもの家や学校で使う機会がある方がおかしいでしょ!?」

 

「それもそうですね。でしたら・・・」

 

そう言って弥生は方に背負っていたバッグからG3システムの武装一式を岬に見せた。

 

「お好みのをどうぞ」

 

「・・・・・」

 

こんなボディガードがいて、よくも今まで死人が出なかったものだと岬は奇跡というものを実感していた。

 

 

 

 

 

 

櫻田家

 

「はぁ・・・疲れた・・・」

 

浴室にて岬は今日の出来事を振り返っていた。

あの後弥生は武器を持ち出したことにより彼女の友人らしい背丈の低い人物にこっぴどく怒られそのまま引っ張られフェードアウトしていった。

 

「疲れの原因って九割方あの人のせいのような・・・まあでも流石に家には来ない、よね?」

 

もしやと思い風呂場の戸を開けて様子を伺うがそこには誰も居なかった。

 

「気にし過ぎか・・・そうだよね流石に家まできたらそれは・・・」

 

その時、風呂場の窓から叫び声が聞こえた。

 

「く、曲者~!!」

 

「っ!?」

 

何事だと思い窓を開けて外を見るとそこには、

 

「な、何者だお前は!?指名手配犯か!?テロリストか!?それともお化けか!?」

 

謎の侵入者に臨戦態勢を取る輝と、

 

「お、落ち着いてください輝様!私は怪しい者ではありませんし生きている人間です!」

 

ギリースーツに身を包んだ弥生が居た。

 

「・・・弥生さん?」

 

岬が声をかけると弥生は振り向き敬礼した。

 

「岬様!櫻田邸周辺は異常なしでありま・・・フギャ!?」

 

「おおありだよ!!」

 

岬は迷わず洗面器を弥生にクリーンヒットさせノックアウトさせる。

 

(いつまで続くのこれ・・・?)

 

岬の頭にはそんな懸念でいっぱいであった。




次回 PART3

何気に最終部に入ってから全然出番のなかった六野が久しぶりに活躍する予定です。
六野ファンの人はご期待ください!(いるかどうか知らないけど)
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