城下町のAGITΩ   作:オエージ

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第51話 ソウルメイト

「それから私は世界を渡り歩きアギトの力を持った者達が迫害される様は何度も見てきました・・・」

 

そう自身の過去を語る樹の目には強い憎悪に溢れていた。それでも栞は怯えずに彼の話に耳を傾けている。自身の為すべきことのために。

 

「そして確信しましたよ、人間はやがてアギトを排除しようと動き出すということを。そして私は決心しました、そうなる前に人間共をアギトの力で支配することを。それが彼のような悲劇を生まない為の唯一つの・・・」

 

「違う。あなたは大切な人の命を奪われた怒りを世界にぶつけたかっただけ。あなたの本当にやりたいことは単なる復讐」

 

上っ面の理想を並べる樹に栞は彼の本心を見抜く。樹は少し眉をひそめたがすぐに体裁を取り繕う。

 

「そうですね、それが本心なのでしょう・・・ですが復讐の何が悪いのでしょうか?私は親しき者を世界に惨たらしく殺された。ならば世界もまた償うために私によって壊されるべきです。違いますか」

 

「そんなこと、ラフィキさんは望んでいない。あの人が望んでいるのは・・・」

 

「黙れ!お前に何が分かる!!」

 

樹は感情が昂ぶった勢いでアナザーアギトとなった。そしてそのまま栞の目前まで顔を寄せ眼光を突き刺す。

 

「ラフィキはもう死んでいるんだ、お前が生まれる前にな!!意志も思考も何もかもが消え去ること・・・それが死だ!もうあいつが何を望んでるかなんて分からない、だったら私なりの方法でやっていくしかないだろ!何も知らないガキは口を出すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

矛盾を抱えた自身の思いを何一つ隠さずそのままの形でぶつける樹。その荒々しくも空しい眼を栞は一瞬も逸らさずに見据える。そして彼女は衝撃的な事実を明かす。

 

「知っているよ。だって・・・あなたの大切な人は生きているから」

 

「何だと・・・どういう意味だ。まさか心の中にとかふざけたことを抜かすじゃないだろうな・・・」

 

「そう、ラフィキさんはあなたのある部分の中で生きている・・・ここに」

 

栞が指を指したのはアナザーアギトのアンクポイントだ。それに対し樹は目を見開く。

アンクポイントは元々ラフィキのオルタリングが変化したものであった。樹にはラフィキの体の一部が移植されている。つまりそれは樹の体の中でラフィキが生きているということであるのだ。

気付かなかったわけではない。いや、気付きたくなかったのかもしれない。彼に復讐に走る今の自分を否定されるんじゃないかと恐れていた。だから死んだと決めつけ今まで目を背けてきたのだ。

 

「あの時微かにしか聞こえなかったけど今なら分かる。これで、あの人の思いを伝えることができる」

 

「何をする気だ・・・無駄だ、止めろ。ラフィキは死んだのだ。だからあいつの声など・・・」

 

攫われる少し前に聞こえてきたあの声、あれはラフィキの声でこう言っていたのだ『彼を助けて、彼を止めて』と。誰の耳にも届かなかった彼の呼びかけに栞は応じた。わざと樹に近づくことによりより近くでアンクポイントに宿るラフィキの意志と対話し、そして今彼の思いを理解するに至ったのだ。栞はその思いを伝えるべく狼狽する樹のアンクポイントの手を当てた。

 

『「聞こえますか?ジロウ」』

 

「っ!?そんなバカな・・・」

 

その時、樹の前にいるのは栞ただ一人である。だがその傍らに樹は彼の姿を見た。栞と重なる声が樹には聞こえた。樹はその存在を確かに感じていた。

疑り深い自分に親身に接したあの少年、最期まで他人の事に身を案じていたお節介者、

 

 

 

そしてなにより自分にとって唯一人の心の友(ソウルメイト)

ラフィキは確かにそこにいた。

 

「何故だ・・・お前は死んだはずだ。俺は確かに見たぞ」

 

『はい、確かに私の肉体はあの時滅びました。ですが魂はあなたの力という形で残っていたのです』

 

驚愕のあまり樹の体裁は崩れ昔と同じ口調となる。

 

『ジロウ、もうこれ以上罪を重ねるのは止めてください。復讐など私は望んでいません』

 

「・・・」

 

本人から復讐を否定され樹は思わず目を逸らす。

 

「なら俺はどうすればいい?復讐の為に生きてきた俺はそれを否定された今、何を糧にすればいいんだ?」

 

『あなたの犯した罪。その罪に向き合うことがいいでしょう』

 

当然ではあるのだがラフィキの姿は10年前と全く変わっていなかった。その目はただ数えきれない罪を背負う友を優しく見つめている。

 

「今更何だよ。魂が繋がっているお前なら分かるだろ?俺は既に何人もの人間を殺して来た。そんな俺に償いに何か・・・」

 

『確かに困難な事でしょう、ですがそれは何もしない理由にはなりません。私は償うことなく肉体の死を迎えました。あなたには私のように罪から逃げないで欲しい』

 

樹は自らの拳を見据える。今まで破壊することにしか使わなかった拳を。

 

「できるのだろうか・・・今更俺が罪を償うなど・・・」

 

『私は信じています。だからこそ力を託したのです。あなたにはこれから目覚めるであろうアギト達の道しるべになって欲しい。それが私の代わらぬ願いです』

 

そう言ってラフィキは少しづつ霞んでいきそして消えていった。その刹那、心なしかラフィキの顔が微笑んでいるようにも見えた。絶対にできると信じている笑みであった。

 

(そうだ・・・お前はそういう奴だったな。全く大馬鹿野郎だよ俺は。お前が信じてくれていたというのに願いのことを忘れ復讐に心を奪われていた・・・)

 

「だが今は違う。今度こそ、お前の願いに答えようと思う。まずは罪滅ぼしからだ」

 

そう言い樹は意識を集中させると小屋の前に乗り手のいない一台のバイクが現れた。

名は『ダークホッパー』。樹のバイクがアナザーアギトの力によって変化した物だ。

ダークホッパーに跨る前に樹は栞に目を向ける。

 

「あなたのおかげで私は彼の願いを思い出すことができた。あなたには返しても返しきれない借りができた。ひょっとしたら私は無意識の内にあなたのことを恐れて避けていたのかもじれない。私が彼の思いを知り、憎しみの輪廻から脱することに・・・」

 

独り言にも近いことを呟き樹はダークホッパーに跨りアクセルを回そうとする。しかし栞が彼に近づいていく。

 

「・・・危ないですよ。あなたにもう私へするべきことはないはずですが?」

 

「ある。あの人の思いがちゃんと伝わったか見届けないと」

 

「・・・手厳しいですね。いいでしょう、しっかりつかまっててください」

 

樹は栞を後ろに乗せ走り出した。

目的はただ一つ。

 

 

 

 

 

 

「ウォォォォォォッ!」

 

秋原斗真はエクシードギルスとなってアントロードの群れと対決していた。

全身が武器となる体を持ってタックルを放ち荒々しい戦法を駆使してアントロードを薙ぎ倒していく。

そんな彼の視線の片隅に群れを弾き飛ばして進む一つの風が見えた。

 

「あれは・・・」

 

疑問に感じたのも束の間すぐさま敵が増員が現れ再びエクシードギルスは咆哮しながら突撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃昴はフレイムセイバーを杖にして片息をついていた。

 

「ホントにしつこい奴らだな・・・」

 

戦闘が始まってから一体何体の敵を倒したのだろうか。斬れど斬れどまた次のアントロードが襲い掛かりアギトは次第に消耗していったのだ。

そんなアギトに追い打ちをかけようと大勢のアントロードが飛び掛からんとしている。

 

「くっ・・・倒しきれるか・・・」

 

フレイムセイバーを持ち直し迎撃の態勢を整えるアギト。だが流石にこの数は防ぎきれないかもしれないと危機感を尖らせたその時、突然遠くからバイクのエンジン音が鳴り響く。

何事だとその場にいる者達が振り向いた瞬間、ダークホッパーがアントロードの群れを飛び越えアギトの元へ着地する。

 

「お前は・・・!?」

 

「随分苦戦しているようですね、ご助力致しましょう」

 

予想外の救援に驚いているアギトを尻目にアナザーアギトは襲い掛かるアントロードをダークホッパーに乗ったまま殴り飛ばす。

 

「奴らは雑兵に過ぎません。一人一人倒していくよりも大元を叩いた方が効率的です。私が先導しますのであなたは後ろについてきてください」

 

「どういうつもりだ、今度は何が狙いだ?」

 

アクセルを握りだしたアナザーアギトにアギトはフレイムセイバーの切っ先を向けて問いただす。散々自分達を引っ掻き回してきた男が突然協力の申し出をしてきたのだ。昴の反応は当然のものであろう。

 

「お兄様」

 

「栞?って何でそいつのバイクに乗ってんの・・・」

 

フレイムセイバーを握る手を栞が掴み昴は状況が読めず困惑する。

 

「お願い、この人を信じてあげて」

 

栞は真摯な表情に昴は押し黙る。樹を許す気は毛頭ないが末妹がこんなにまで頼み込んでいるのだ、断るにも断れない。

アギトはガシガシと頭をかきながら樹の案に乗ることにした。

 

「あーもう分かったよ!栞に免じて今回は協力してやる!だが終わった後ぶっ飛ばすから覚悟しておけよ!」

 

「・・・承知しました」

 

すんなりと引き受ける樹にも物凄い違和感を覚えながらもアギトはマシントルネイダーに跨り樹と並び合う。そこで一つ問題が生じた。ここはアントロードから街を守護する防衛ラインである。自分がここから出ればアントロードは街を侵攻してしまうのだ。

 

「どうすりゃいいんだ」

 

このまま戦っても体力を消耗する一方、だが樹の言う大元を叩きに行けばアントロードを止める者がいなくなる。

ジレンマを抱え思わず呟くアギトだがそれに答えるかのようにGトレーラーが急行してきた。

 

「話はよく分からないが要はここを誰かが肩代わりすればいいのだろう、なら私に任せてくれ!」

 

Gトレーラーのコンテナから飛び出したのは弥生の装着するG3-X・・・ではなく旧型のG3だった。

後から聞いたことだが実はだいぶ前にG3は修復されていたそうだ。とはいえ後継機のG3-Xがいたので使う機会が無くこれまでの間白井の家の倉庫にしまわれていた。だがG3-X及びG3-MILDも使用できないの事態になった今G3がここに復活したのである。

 

「さあ、私に任せて早く行け!」

 

そう言いG3はGS-03を装着しアントロードらを切り倒していく。まるで今まで眠っていた鬱憤を晴らすかのようであった。

ここは弥生に任せて大丈夫だと判断した昴は栞をGトレーラーまで避難させ再度樹と並び立つ。

 

「準備は出来ましたか?」

 

「お前に言われるまでもない」

 

「そうですか、ならば行きましょう」

 

アナザーアギトが走り出したのと同タイミングでアギトもアクセルを回して走り出す。その前をアントロードが遮る。だがそれは彼らにとって壁にはならなかった。

 

((押し通る!))

 

フルスロットルで突っ込みアントロードを跳ね飛ばして二人のアギトはアントロードの女王の元へと向かった。

一人は終わらない戦いにピリオドを打つために、もう一人は己の罪を償うための第一歩のために・・・

 

 

 

 

 

 

 

「グシュウウウウ・・・」

 

山頂にてアントロードの女王クイーンアントロードは焦っていた。

大量の同胞を動員してアギト達を消耗させ切ったところを自分が出てとどめをさす作戦であったが思いの外アギト達は奮戦し同胞らは数を減らしていくばかりか二人ほどアントロードの包囲網を突破して自分の元へと向かっている。

ここで向かい打つ決断をとったクイーンは近くに潜ませた同胞達をこの場に結集するよう呼びかける。だが何故か反応がない。その謎はすぐに解かれた。

 

「「うおおおおおおお!」」

 

巨大な火柱を背にマシントルネイダーとダークホッパーはそれぞれの持ち主を乗せてクイーンの前へと到達した。その道中潜んでいたアントロードを薙ぎ倒して来たのだ。なのでこの場にいるアントロードはクイーンただ一体だけだ。

 

「はぁぁぁぁぁ・・・」

 

「こぉぉぉぉぉ・・・」

 

低く呼吸し二人はクイーンに向けて構えを取る。即席のタッグであってもここまで息を合わせられるのはお互い戦いなれた戦士故だろうか。逃げ場なしと悟ったクイーンは三つの刃が付けられた巨大な槍を手に駆け出していく。

クイーンの名は伊達ではなく俊敏且つ豪快な槍捌きで二人を圧倒していく。気を抜けばこちらの腕が軽く持っていかれてしまうと防戦一方になるアギトとアナザーアギト。

 

だがそれは戦いが始まって本の序盤の出来事に過ぎずすぐに敵の攻撃パターンを見抜いて攻勢にでる。

 

「「たぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

「ギギッ!?」

 

アナザーアギトが先に前へと出て重い拳をクイーンの腹へと叩きつける。その間にシャイニングフォームへと変身したアギトが跳躍してボレーキックを浴びせる。その連携攻撃に思わずクイーンは驚嘆の声を上げる。そこから形成が逆転されダメージを蓄積していくクイーンであるがそれで引き下がるほど軟なアンノウンではない。

 

「ギシャアアアッ!!」

 

アギトのシャイニングカリバーを躱し前へと躍り出たクイーンはその巨大な槍の刃をアナザーアギトの脇腹に突き刺した。

 

「ぐぅ・・・!」

 

効いていると確信したクイーンはニヤリと顔を歪ませ刺した先から抉っていく。アナザーアギトはうめき声を上げるが倒れることなく槍を掴んだ。

 

「今だ!私に構わずとどめを刺せ!」

 

「っ!?」

 

クイーンは慌てて槍を抜こうとするがアナザーアギトがそれを許さない。わざと腕を刃に食い込ませガッチリと固定する。アナザーアギトの体を張った時間稼ぎは功を成しアギトはシャイニングカリバーを構えてクイーンの前へと肉薄した。

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

シャイニングクラッシュにより無数の斬撃がクイーンアントロードの体を切り裂き頭部の輪を浮かばせる。

 

「グギャァァァァァァァァァッ!!」

 

激しい断末魔と共にクイーンアントロードの体はアギトの攻撃に耐えきれず爆発する。それによって近くにいたアナザーアギトは爆風に巻き込まれるかに思われたが。

 

「おりゃぁっ!」

 

アギトがドロップキックでアナザーアギトを蹴り飛ばす。背中に岩が直撃し痛みが走るが爆発に巻き込まれるよりは遥にましであろう。

 

「何故私を助けた?あなたには私を助ける理由がないはずだ」

 

「理由ならある。お前に助けられたままじゃ何か気分が悪いからだ、それに何でお前が急に心変わりしてんのかも気になるしな」

 

「そういうことですか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

その後指揮者を失ったアントロードは烏合の衆に成り果てギルスとG3の手によって全滅した。そして今一同は集合し樹の目の前にいる。

栞に明かした矢先もう隠す必要はないと思った樹は栞に話した通りいままでの経緯を彼らに語った。六野と弥生は世界でそんなことが起きていたのかと絶句している。白井と斗真は二人ほどではないが驚愕していることは誰の目にも明らかであった。

一方昴は、

 

「お前の過去は分かった。そんな経験すれば俺だっておかしくなっちまうだろうな」

 

一度同情の気持ちを見せた昴だがすぐに樹に敵意の表情を向ける。

 

「だとしても姉ちゃんを傷つけ、国民を欺き、その上栞にまで手を出そうとしたお前を俺は許さない。絶対にな」

 

「分かっています。私も今回の件で今までの事を帳消しなんて都合のいい事は考えていません。あなたが望むならどんな償いも致しましょう」

 

「ふざけんなよ。どんなことをしてもお前の罪は消えない。俺のお前に対する怒りはお前が死んだって消えるもんか・・・だから!」

 

昴は樹の胸倉を掴み罪人に判決を下した。

 

 

 

 

「死ぬまで償い続けろ・・・!」

 

それだけを言って昴は踵を返し栞の手を繋いで去って行った。それに遅れて周りの者達も去って行く。各々思うところもあるようだが一番被害を被った昴が言うのであればそれ以上口出しはできないだろうと感じていたからである。

 

「死ぬまで償い続けろ・・・か。かなりの難題だな・・・自業自得ではあるが」

 

樹はポツンと佇み空を見上げる。

 

「これでいいんだろう?ラフィキ・・・」

 

空は何も答えない。栞もいないので彼の魂が宿るアンクポイントからも声が聞こえることはない。だが樹は感じ取っていた。ラフィキの声を。

その答えを聞いた樹はフッと笑う。

 

「ならば私は戦おう、人間とではなく、己の罪に。そして俺はお前との約束を果たしてみせるよ。だから見守っててくれ、わが友よ」

 

その声はかつてのような棒読みの口調ではなくはきはきとした生気に溢れた声色をしていた。

男の闇は晴れ、男は贖罪のために歩き出していった。

 

 

 

 

 

家族の元へ戻る道中栞は昴の顔を見て礼を言った。

 

「ありがとうお兄様」

 

「な、何だよ急に?」

 

「私のわがままを聞いてくれたこと。本当はあの人を許さないつもりでいたんでしょう?」

 

樹を許すつもりが無かったことを読まれたことに昴は驚き栞に目を向ける。

一番幼い妹がいつの間にか誰よりも早く大人に近づいていた。そのことを昴は寂しくも嬉しくも感じる。

 

「まあな、でもそれをお前が変えてくれた。お前があいつの心を開かせなければ俺はあの蟻の奴らに負けていたかもしれない。要するにお前が俺を助けてくれたんだ、わがままだなんて思ってないぜ」

 

そう言い栞の頭を昴は撫でる。

 

「栞、お前は誰よりも優しい心を持っている。それによって苦労することもあるかもしれない、裏切られることもあるかもしれない。でもな、その優しさは間違いなくお前の強さだ」

 

「私の強さ?」

 

「そう、だからどんなことがあっても優しさを忘れないでくれ、例えそれが何百回裏切られてようとも何千回信じて信じ抜け。それによって変えられるものがあるかもしれない。今回の事で思ったことさ」

 

そう言い二人は家族が待機していた白井邸へとたどり着いた。

 

「まあ要するにお前の優しさは半端ないって話。さ、着いたぞ。皆心配しているから飛び出してそれを吹っ飛ばしてやりな」

 

「うん」

 

栞は頷き戸を開け中に入ると我先にと彼女に抱き着いてきたのは奏であった。

 

「栞!?無事で良かった~!あいつに攫われて怖かったでしょう?でももう大丈夫よ!私が居るわ、もう何があっても栞に怖い思いをさせないからね!!」

 

「奏お姉さま・・・ちょっと苦しい・・・」

 

「ごっごめんなさい!悪気はないのよ!」

 

「うん大丈夫。お姉さまが本当は一番家族思いなのは知ってるから」

 

「そうよ。私は誰よりもあなたのことが・・・はっ!」

 

思わず奏は顔を上げると他の兄弟達がポカンと口を開けていた。修に至ってはニヤニヤしている。

 

「な、何よ・・・私の顔に何かついているっていうの?」

 

「いや別に、今日は色々大変だったけど奏の面白いとこがいっぱい見れたからまあいいかな~って思ってただけさ」

 

それを聞いて奏は顔を真っ赤にして修の肩を掴んで思いっきり揺さぶりだす。

 

「忘れなさい!今日起きた私に関すること全部忘れて!」

 

「忘れてって言って忘れられる奴はいないだろ」

 

「OK,だったら力づくで忘れさせてやるわ!メカ修軍団突撃~!」

 

「それまだあったのかよ!?」

 

奏は取り出したホイッスルを吹くとどこからいつぞやのメカ修軍団は恥ずかしい記憶を忘れさせようと兄弟達に迫っていく。

 

「まあまあカナちゃん。そういうとこも魅力だと思うから。とりあえず料理人辰之助読んで落ち着こうよ」

 

「それを好んで読んでんのうちでは岬と昴だけよ・・・って茜!?あんたも読み始めたの!?」

 

「うん、最初はなにこれって思ってたけど今ではもう全巻読破してアニメ版を見ているところだよ」

 

「嘘でしょ、私なんて三巻目で死んだはずのキャラが説明なしにしれっと再登場したのに呆れて読むの止めたのに・・・話そらすなー!あんたの記憶もなくしてやるー!」

 

そうして羞恥心でいっぱいの奏を中心に賑やかに騒ぐ櫻田兄弟を、ここは私の家なのに・・・、と思いながらもこういうのも悪くないと遠くで傍観する白井がいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、謎の青年はというと・・・

 

「どうやら並の者達ではもう彼らに対抗できないようですね」

 

アンノウン有数の強者であるクイーンアントロードの敗北を目の当たりにした彼はこのまま昴らを放って置けば際限なく進化していくと予見した。

 

「それは止めなければなりません。人は人のままでいい・・・こうなった以上あなた方にも出向いてもらいましょうか。手始めに・・・」

 

青年は背後に控える三体の使途の一人、金色の使途に自らの手から放たれた光を浴びせる。

するとその使途は輝きだし実体を持ち始めた。

 

「アギトの力を持つ者をこの世から消すのです。我が使途エルロードよ」

 

「・・・」

 

青年の命に使途は己の得物を掲げて答えた。

それは真なる敵との戦いの始まりの合図であった・・・

その先で勝つのは昴達アギトか、闇の力に従うエルロードか、果たして・・・




とりあえずは樹が改心したわけですがこれ以降彼が何食わぬ顔で仲間入りっていうことにはしませんので。実を言うと彼の処遇に関して既に決定していることがあります。

それはともかく次回いよいよエルロードが本格登場します。
登場するエルロードは全てオリジナルにしますので結構厨二な感じになってるかもしれませんが最後まで城下町のAGITΩの応援を宜しくお願い致します。

それではまた次回お会いしましょう。
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