真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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隼人編 第3話 「同志ジン軍曹」

 

1983年 1月13日 東ドイツ

 

 

隼人は、東ドイツ軍の基地の一室にいた。

 

客人とは名ばかりで一種の軟禁状態であった。

 

(何の情報も入らない。ここに居るメリットは皆無だな)

 

隼人はあと3日何も動きがなければこの基地からゲッター2を使って脱出しようと考えていた。

 

「入るぞ」

 

そう不躾に告げて、部屋に男が入ってくる。

 

「シュバルツ03 ヴァルター・クリューガー中尉だ。」

 

そう言って体つきのよいいかにも軍人といった男が挨拶をする。

 

隼人は黙って敬礼をした。

 

(中隊の3番機か……)

 

「例の少女が東ドイツへと亡命希望をした。よって貴官と彼女の亡命を東ドイツは正式に受諾する。」

 

「それで中尉はなぜここに?」

 

「我が隊にはタダ飯食らいを置いておく余裕はないのだ。さっそく軍務についてもらう。ついてこい!」

 

隼人はヴァルターに連れられて基地内を歩く。

 

そこで例の赤髪の若い男と見慣れぬ少女―おそらく亡命した西ドイツの衛士と出くわした。

「坊主。」

 

ヴァルターが若い男に呼びかける。

 

そういえばコイツの名前は聞いてなかったな。

 

「同志軍曹。」

 

同志軍曹。

 

隼人は自分のことを言われていることに最初気づかなかった。

 

「こっちの坊主がシュバルツ08の……」

 

「テオドール・エーベルバッハ少尉だ。」

 

若い男―テオドールが不機嫌そうに自己紹介をする。

 

「わ…私が! カティア・ヴェルトハイム少尉です! この度東ドイツに亡命しました!」

 

聞いていないのに隣の少女も自己紹介をする。

 

「ハヤト・ジン軍曹だ。よろしく」

 

隼人はそう返した。

 

「私は西ドイツから来ましたが、BETAに対して東と西のドイツが協力でき……」

 

カティアが東側ではありえない発言をしようとした。

 

ヴァルターやテオドールがそれを止める前に隼人がカティアの顔の前に手を出してその次の言葉を遮った。

 

「少尉。思っていても口に出してはいけないことがありますよ」

 

隼人が睨みつけるとカティアは黙った。それだけの迫力があった。

 

そしてヴァルターが少年と少女に少し注意をし、再び別れる。

 

あの西の少女は何かしらの幻想を東側に抱いているようだった。

 

東ドイツは西側をBETAと同じ位敵視していることを理解していないようだ。

 

もっとも敵視するように仕向けている奴らのせいだ。

 

「ジン軍曹」

 

「…なんだ? 中尉。」

 

ヴァルターが歩きながら隼人に声をかける。

 

「目立つなよ。シュタージに目をつけられると厄介だ」

 

「フ…身を隠すのには慣れている。せいぜいあの少女に目立ってもらうさ」

 

隼人はそうヴァルターに応える。

 

ヴァルターが静かにうなずく。

 

「ここが格納庫だ。」

 

そこは例のロボット―戦術機のハンガーだった。

 

「班長!」

 

ヴァルターがそう叫ぶと男が奥から出てきた。

 

「お! ヴァルター。こいつが例の新入りか?」

 

「そうだ。後は班長に任せる」

 

そう言うとヴァルターは基地内へと帰って行った。

 

「相変わらず可愛げのないやつ。ったく中隊の男共は坊主もアイツも……」

 

ブツブツとオットー班長は言葉を漏らす。

 

「ハヤト・ジンだ。」

 

隼人はその班長にそう自己紹介をする。

 

「俺はオットー・シュトラウス技術中尉だ。お前本当に整備兵か?」

 

「……どうしてそう思う?」

 

隼人はその質問に質問で返す。

 

「整備兵の割には修羅場くぐってきた顔してやがるからさ。まあいいお前も俺たち200人の整備班の仲間入りだ。よろしくな!」

 

隼人の肩をバンと叩く。

 

「アジア人の割にしっかりとした体格だな。オイ。」

 

「……班長。」

 

「ああ……聞いているよ。中隊長が戦闘時にはお前に特別な任務を与えるから手をあけさせといてくれってな。」

 

そして、オットーが隼人の耳に顔を近づける。

 

「それに……その事を他の整備兵に気取られるなという話だ。俺がお前になにか別に仕事させているように見えるようにしろとの事だ。」

 

班長が顔を離す。

 

「けど戦闘時以外はこき使ってやるから覚悟しろや! ハハハハ!!」

 

オットーに連れられて隼人は整備に加わる。

 

月でもこんな感じの人がいたなと隼人はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

中隊ブリーフィング室

 

 

「あの人誰ですか?」

 

中隊のアイリスとヴァルター以外のメンバーはグレーテルに呼び出されていた。

 

カティアとテオドールは待っている間、会話をしていた。

 

「あいつはお前と一緒に亡命してきた奴だ。」

 

「怖そうな人でしたね。私、びっくりしました。殺されるかと思いました。」

 

カティアは怯えた様子で話している。

 

「なんだ? 漏らしたのか?」

 

「漏らしてなんかいません!!ギリギリでしたが、セーフです!!」

 

「ギリギリだったのかよ。」

 

カティアはさっきまでの怯えた様子は何だったのかというような笑顔でテオドールの方に向き直った。

 

「でもあの人きっといい人ですね!私に忠告してくれました!」

 

カティアの楽観的な考えをテオドールは羨んだが、頭の中が花畑になるので思い直した。

 

テオドールとカティアが室内で話していると、二人の少女がこちらに近づいてきた。

 

イングヒルトとアネットだった。

 

「この子が新しく中隊に編入された子?」

 

「私たちより年下みたいですね。」

 

「はい! カティア・ヴェルトハイム少尉です! よろしくお願いします。」

 

イングヒルトとアネットが自己紹介をする。

 

アネットの奴どうやら落ち着いているようだった。

 

シルヴィアとファム、少し遅れてグレーテルが入室してきた。

 

「まったくふざけているわ!」

 

グレーテルはたいそうご立腹のようだった。

 

「どうしたんです同志中尉?」

 

ファムが聞くが、グレーテルは聞いていないようである。

 

「………」

 

シルヴィアが無言で睨むとグレーテルは落ち着きを取り戻した。

 

「この子が正式に我が中隊に編入されたカティア・ヴェルトハイム少尉よ。」

 

正式? まだ中隊に編入することを決めて数時間しか経ってないはずだ。

 

「イエッケルン中尉。やけに早くないですか?」

 

テオドールが彼女に思わず、質問する。

 

「ええ、奴ら総出で例の「白モグラ」について調べているらしいわ。他のことに関しては全く興味がないようよ。……私がこの件を通すためにいくつ切り札を使ったと思っているのよ…ブツブツ」

 

グレーテルは隼人とカティアの亡命にいくつか使ったモノが無意味だったことに腹を立てているようだ。

 

「白モグラ?」

 

カティアが不思議そうにその単語を呟く。

 

「突然現れた白くて凄く速くて強いやつよ。そいつが戦場に現れてBETAと戦っていた私たちに味方したの。」

 

アネットがカティアにそう教える。

 

「馬鹿そうな説明だな……」

 

テオドールがそうつぶやくと

 

「なんですってえ!?」

 

アネットが吠える。

 

「まあまあアネット落ち着いて。戦闘能力がずば抜けて高い白い機動兵器のことです。地中を移動するから「白モグラ」って呼ばれています」

 

イングヒルトがフォローした。

 

「戦術機なんですか?」

 

「……それも不明だ。」

 

シルヴィアが珍しく口を出した。

 

中隊メンバーが驚く。それだけにあの存在は規格外だった。

 

中隊もあの「白モグラ」―「ゲッター2」に助けられた。

 

あの状況で地中から奴が現れなければおそらくイングヒルトかアネットのどちらか…または両方……下手したら中隊全員が全滅していたかもしれない。

 

「今、軍上層部はやっきになって奴の消息や行動を調べているわ。右腕の先端から衝撃波を出したとか。分身でレーザーを避けたとか。音速を超えるスピードで移動するとか信憑性の低い情報まで回っているわ」

 

「なんか凄いですね…」

 

「突撃級の群れに真正面から突っ込んで装甲殻を貫いていたのは確かね。」

 

ファムがいつも通りの口調で言う。

 

実際に見ていないカティアには想像するのが難しかった。

 

(あながち嘘とも言えない)

 

「テオドールさん顔色が悪いですよ?」

 

「別に……あとエーベルバッハだ」

 

テオドールがそっぽを向いた。

 

「中隊長が我々がアレに助けられた事は口外するなといっていたわ。」

 

「それはなぜでしょうか?」

 

ファムがグレーテルに尋ねる。

 

「東ドイツ最強の名に泥を塗ることになるからとかそんなところでしょう!」

 

ブツブツと文句を言いながら彼女はブリーフィング室を出て行った。

 

「テオ……エーベルバッハさん。」

 

カティアがテオドールを不安そうな顔で見る。

 

「事実だ。皆が幻覚を見たわけじゃない。お前みたいな西側からの亡命者が来たらもっと注目される。それがなかったのはもっと目立つことがあるからだ。」

 

基地内でも話題は例の「白モグラ」のことでいっぱいだった。

 

カティアのように西からの亡命者なんて本来もっと注意を集めることなのだ。

 

「順番が逆になったわね。ファム・ティ・ラン中尉よ。あっちの子がシルヴィア・クシャンスカ少尉よ」

 

シルヴィアが興味なさそうにカティアを見る。

 

邪魔だけはしないようにと目線が告げていた。

 

「同志中尉も行ったことだし、解散しましょうか?」

 

そこで中隊メンバーは解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって戦術機ハンガー

 

隼人は戦術機を見上げる。

 

戦術機―正式名称「戦術歩行戦闘機」

 

機動は主脚と跳躍ユニットに行われ、動力は本体と跳躍ユニットの二つのエンジンによって動く。

 

跳躍ユニットはジェットエンジンとロケットエンジンのハイブリット使用だ。

 

「……全ての動作が2段構えか」

 

機体が敵からの攻撃によって損傷受けることを最初から考えられている。

 

機動性は20世紀の後半の機動兵器としては優秀だが、あのBETAの物量そして何よりあの光線による攻撃を避けるには不十分だ。

 

いや避けることを考えていないのかもしれない。

 

重装甲で衛士の命を守ることを第一として考えているのだとしたら……。

 

BETAの要撃級の腕の衝角による攻撃や突撃級の装甲殻の突進に耐えられない装甲に何の意味があるのだろうか…。

 

(ゲッター3並の頑強さなら耐えられるだろうがな)

 

そんなことを考えていると視界の隅にアイリスディーナ中隊長が入った。

 

どうやら話があるらしい。

 

アイリスディーナが基地の外へと歩いていった。

 

隼人もそれに付いていった。

 

アイリスディーナが雪のちらついている外で佇んでいる。

 

その様子はまるで絵画のように美しかった。

 

「よく気づいたな、同志軍曹。」

 

「お前はハンガーの中では目立つ。」

 

「そうか今後気を付けよう。」

 

「それでなんだ?」

 

隼人がアイリスディーナに尋ねる。

 

「戦闘中は特別任務だとオットー技術中尉から聞いたか?」

 

「ああ……ゲッター2で戦場に介入しろと言うことだろう?」

 

「そうだ。だが一つ守ってもらいたいことがある」

 

「なんだ?」

 

アイリスディーナは少し溜めるとこう言い放った。

 

「貴様には我が中隊への支援は禁じる。」

 

隼人編 3話 終わり

 





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