真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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隼人編 第4話 「後門の人狼」

 

1983年 1月14日 東ドイツ

 

隼人はハンガーの戦術機―バラライカの中にいた。

 

アイリスディーナの1番機 そしてテオドールの8番機にとある細工をしていた。

 

バラライカ2機がゲッター2からの通信を受けられるようにしているのだった。

 

(なぜ? 俺はここにいる? )

 

隼人は作業をしつつ、自身に問いかけていた。

 

(間違いない。世界を飛び越えるなど「ゲッター線」の力以外にはありえない。)

 

隼人は自身が平行世界に来た理由が未知のエネルギー「ゲッター線」にあると感づいていた。

 

(だが、「ゲッター線」が世界を飛び超え、時をさかのぼる力を有しているのならなぜ『あの時』ではないのか)

 

隼人は早乙女ミチルが死んだ時のことを思い返していた。

 

(『あの時』に戻ることができたなら、竜馬もミチルさんも………)

 

録音機能があるので、ゲッター2からの通信があった場合はノイズが生じるように設定しておいた。

 

(異世界で異形の怪物の相手をすることになるとはな……)

 

(ミチルさんを殺し、竜馬を裏切った俺にはふさわしい罰だ。)

 

隼人は自身にそう言い聞かせる他なかった。

 

突然、カティアが管制ユニットに顔を入れ込んできた。

 

「ハヤトさん?」

 

西ドイツからやってきた少女は隼人に用があるようだった。

 

「……ジンだ。」

 

隼人が顔をそむけたまま仏頂面で睨む。

 

「何をしているんですか?」

 

「……仕事だ」

 

そういって隼人はカティアを放っておいて管制ユニットから出る。

 

「ま、待ってください!」

 

「なんだ?」

 

隼人がはじめてカティアの方へと顔を向ける。

 

「あ…あの私同じ日に亡命したハヤトさんと仲良くしたいです!」

 

「俺に不必要に仲良くしようとするな」

 

隼人がさらに睨みを利かす。

 

「………………」

 

カティアは怯えた表情をするが視線は隼人と目を合わせたままだった。

 

(この少女…肝は据わっているらしいな。)

 

隼人は溜息をつくとカティアから離れて行った。

 

「あ! 待ってください!」

 

「おい…」

 

隼人を追いかけようとしたカティアをどこからか現れたテオドールが止める。

 

「ちょっとこい。」

 

「テ…エーベルバッハさん!」

 

少し離れた場所までテオドールがカティアを連れて行く。

 

「お前は馬鹿か!」

 

カティアがテオドールに言われた意味がわからないという表情をした。

 

「いけませんか? 私はもっとハヤトさんたち整備の人たちと仲良くしたいだけです!」

 

「アイツはダメだ。」

 

「なぜですか?」

 

テオドールの返答の意味がわからずカティアは問いただす。

 

「アイツはお前と同じ亡命者で西から来たお前と同じくらいスパイと疑われている。そんな二人がいきなり仲良くしたらシュタージに疑われるだろうが!」

 

カティアがハッとなる。

 

「アイツだって気づいているんだ。わかれ!」

 

「………わかりました。」

 

カティアが納得したように頷いた。

 

「わかったら行くぞ。中隊長が呼んでいる。」

 

テオドールがついてこいと言わんばかりに背を向ける。

 

カティアはなぜ自分がハヤトと仲良くしようと思ったのか少しわかったような気がした。

 

少し似ている気がしたのだ。

 

テオドールとハヤト。どちらも冷たい印象だが根というか心の奥に熱い何かを隠しているようなそんな気がしたのだった。

 

そしてどちらもあまり周りに溶け込もうとしない。

 

中隊メンバーが格納庫に集まってきた。

 

「? 今からそっちに……」

 

カティアを連れて行こうと…と言おうとしたがそれよりもはやくグレーテルが口を開く。

 

「奴らが来る!」

 

その瞬間格納庫に2機の見慣れない機体が入りこんでくる。

 

「いいか! 何があっても手は出すな!」

 

アイリスディーナが叫ぶ。

 

2機の鋭角的なシルエットの戦術機がハンガーに降り立つ。

 

「久しぶりね。アイリスディーナ。」

 

女性の声がその機体―チェボラシカから発せられる。

 

隼人はその様子を眺めていた。

 

8番機の少年 テオドールの顔がみるみると青ざめる。

 

中隊のこの慌てようそして8番機の少年の動揺から相手を想像する。

 

少年が最も恐れていたのはシュタージという東側特有の秘密警察組織だった。

 

ならこいつ等はそのお抱え戦力。

 

「……秘密警察のお抱え武装警察軍か」

 

 

管制ユニットが出てそこから強化装備を纏った女性が出てくる。

 

「一体なんのようだ? 戦術機大隊『ヴェアヴォルフ』の指揮官ベアトリクス・ブレーメ少佐。」

 

「今、私たちは例の「白い奴」を追っていて丁度この近くまで来た。ついでに同期の顔を見に来ただけよ。」

 

黒い長髪、妖艶なたたずまいをしているその女が見下ろす。

 

中隊メンバーの顔に緊張が走った。

 

「武装警察軍の指揮官の貴官が用もなしに来るとは考えにくいのだが…」

 

「そうね。私たちも決して暇ではないわ。「白い奴」のせいで武装警察軍は総員本来の仕事を棄てて出ずっぱりよ。」

 

「妙だな。その「白い奴」の存在が貴官らの職務に影響をあたえているのか?」

 

アイリスディーナがベアトリクスに問う。

 

「ええ。喜ばしいことに同盟国や国連の兵が予想よりも多く生存していて、我が国の保護下に入った者の調査で私たちは寝る暇もないわ。」

 

喜ばしいという単語を強調して、その女が発言をした。明らかにその口調には余計な雑務を増やした「白い奴」に腹を立てていた。

 

シュタージは予想よりも多かった東ドイツ内で生き残った他国の軍人たちを送還するためにスパイでないかという調査に追われているようだった。

 

「それにアレが我が国の領内で無断で活動していることも問題ね。」

 

「そうか。それでははやく職務に戻った方がよいのではないか?」

 

「ええただ気になることが……」

 

ベアトリクスが一際微笑む。

 

「その『白い奴』と初接触したのが第666戦術機中隊でその日のうちに中隊が保護した『二人』が同時に突発的に亡命をしたこと。これは偶然かしら。この中隊には昔世話になった衛士もいるし気になって仕方がないわ。」

 

隼人の背筋に緊張が走り、カティアとテオドールの顔が急速に青ざめる。

 

ベアトリクスは中隊に編入した隼人とカティアに疑いの目を向けているのだった。

 

「まったくの偶然だ。二人と未確認機動物体との関係などない。」

 

8番機の少年はよほど混乱しているのか、二人を交互に見続けている。

 

黒髪の美女はカティアとその側にいるテオドールそしてアイリスディーナを見て

 

「それでは第一遭遇者として貴方たちは「白い奴」についてどう感じた?」

 

と問いかけた。

 

「それに答えたら本来の軍務にもどってくれるのか?」

 

アイリスディーナがうんざりしたように声を出す。

 

「ええ。とりあえず今はね………」

 

ベアトリクスの曖昧な言葉を無視して、アイリスディーナ答えた。

 

「アレはとんでもない戦闘力を持った兵器だ。党の作り出した新兵器でないのならBETA以上の脅威となる可能性がある。即刻破壊すべきだ」

 

「模範解答のような答えでつまらないわね」

 

「……ただ」

 

アイリスディーナが言葉を続ける。

 

「ただ?」

 

「可能ならば捕獲するべきだ。アレはBETAに対して非常に有効な駒になるというのは疑いようがない。」

 

「……そう。」

 

ベアトリクスは興味をなくしたように頷くと、

 

「明日の作戦では私の隊も作戦に加わる予定だわ。戦場で会いましょう」

 

そういって戦術機へと戻った。

 

チェボラシカがハンガーを飛び去る。

 

 

 

脅威が去った後もハンガー内を沈黙が支配していた。

 

「総員。通常軍務に戻ってくれ。明日の作戦に余念を残すな!!」

 

アイリスディーナが号令をし、整備兵と衛士たちは動きを取り戻した。

 

隼人は東ドイツの現状。

 

人民と国家保安省の関係の縮図をこのハンガー内で見た心地だった。

 

 

 

 

 

 

 

チェボラシカ2機がシュタージの基地へと向けて進行していた。

 

「同志少佐。この非常事態にあのような一介の大尉に時間をかけてよろしかったのでしょうか?」

 

副官がベアトリクスへと尋ねる。

 

「そうね。時間的には間違いなくロスだわ。」

 

だがどこか怪しい。

 

二人も他国の人間を中隊に取り入れて、まるで疑っておくれと言っているようではないか。

 

一人は西側の衛士。

 

明らかにスパイとして怪しい。

 

そしてもう一人。

 

たった一人部隊で生き残った整備兵。身元の保証もない。

 

「中隊長。整備兵の中に気になる人物はいたかしら?」

 

「……日本人と聞いていましたので、おそらくこいつだと思われます。」

 

モニターで録画されていた映像にはアジア人にしては体格のよい男が映っていた。

 

「………妙ね。」

 

東ドイツ軍人は基本的に武装警察軍を怖がる。

 

だが、モニターに映った男は全く動じていなかった。

 

まるでどこか俯瞰から見ているかのように思えるそんな印象だった。

 

「その映像を元にどこから来た男か調査しましょう。」

 

そして件の「白い奴」である。

 

ベアトリクスも最初は報告書を見たときにそれが事実だとは思えなかった。

 

党内でもその「幻覚」を見た人間を危険な存在として前線から外し精神病院へ移送しようという案もでた。

 

しかし、目撃者が多すぎた。

 

目撃者全てを移送などしては前線が持たない。

 

そしてシュタージ内にもソレを目撃した者もいることからそれが疑いようのない事実と分かり、他の何よりも優先して調べなくてはいけない案件となった。

 

ベアトリクスにはその「白い奴」と報告上最初に接触した第666戦術機中隊が一介の西の衛士やジャップの整備兵などが扱える代物ではないにもかかわらず何か関係があるような気がしていた。

 

任務は普段でも多大にもかかわらず、雪だるま式に増えていった。

 

そして、ベアトリクスは「白い奴」が今から自分たちが為そうとしていることに対する脅威とならないかが気がかりだった。

 

 

 

 

 

 

明日の出撃に備えての整備が予定よりも早く終了したため、隼人は調査を開始することにした。

 

無論BETAのことである。

 

資料室に向かう途中で例の8番機の少年と西ドイツの少女がコートも着ずに外へと出かけていったのを見かけたが、子供の秘密話に付き合っているほど暇ではない。

 

コットブス基地の資料室にはいくつかの蔵書とPCが配置されていた。

 

隼人はそこにあった簡単な歴史書をひとつ手に取り開いた。

 

―BETA 現在そう呼称されている宇宙生物と人類の初の邂逅は1958年にさかのぼる。

 

―火星探査機 ヴァイキング1号が火星にてその姿を捉える。

 

―1967年 第一次月面戦争 勃発

 

―1970年 現在の戦術機の開発の礎となる「機械化歩兵装甲」導入

 

―1973年 月面戦争で人類は敗北。BETAの地球侵攻が始まる。

 

隼人は要点を見て本を閉じ、思案する。

 

この世界と自分たちの世界は似通っていると隼人は感じていた。

 

地球外へと進出した人類。

 

それを待っていたかのように突如発見された「BETA」

 

そして元の世界の「インベーダー」。

 

こちらの世界では6年。

 

元の世界ではおよそ10年もの月面戦争を繰り広げた。

 

状況が似ているのは間違いない。

 

(これは全くの偶然か?)

 

隼人には偶然という言葉では説明できない何かがあるような気がしてならなかった。

 

隼人編 4話 終

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