真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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弁慶編 第1話 「蚊帳の外からの脱出」

車弁慶は、悔やんでいた。

 

自分もゲッターチームの一員なのに早乙女研究所にいないことに。

 

自分とミチルさんを除く竜馬、隼人、先輩の武蔵、博士。

 

かつての仲間が揃い、困難にそれぞれの立場から立ち向かおうとしていた。

 

だから弁慶はなおさらそこにいないことに憤りを感じていた。

 

自分にできることは目の前にいる小さな「早乙女元気」という少女を守ること。

 

それだけだった。

 

この小さな手を離さない。

 

あの日はそう誓い、彼女と共に核シェルターという蚊帳の外に逃げ込んだ屈辱の日だった。

 

 

「先輩……竜馬……隼人……博士……げ…ん……き…………い」

 

うめいた後、車弁慶は目を覚ました。

 

車弁慶は自分がベアー号の中にいることに気がついた。

 

弁慶にとって月面戦争以来のゲッターロボのコックピッドだったが、不思議と久しぶりな気はしなかった。

 

(俺は「元気」と一緒に核シェルターに逃げ込んだ。それがなぜゲッターの中に……しかもなんで水中にいる?)

 

そのゲッターは水中にいたのだった。

 

しかし、それよりもわからないのは先輩の武蔵がいつも被っていた軍帽をなぜか自分が被っていたことだ。

 

「なんで先輩の帽子が…?」

 

弁慶はわけもわからないままに水底を這うようにしてその水場から出た。

 

その水場の形状から水場が湖だったということが見て取れた。

 

(ここは一体?)

 

弁慶がそう思っていると、南の空が明るくなった。

 

北から南へと砲撃が飛んでいく。

 

(南で戦いがあるのか?)

 

弁慶は行くあてもなく南に進路をとった。

 

1983年 1月10日  旧フィンランド領

 

日付が変わったころに弁慶はとんでもないモノをみた。

 

異形の死体がそこかしこに散らばっていた。

 

弁慶は先程の攻撃がこの生物を殺すためだったことを悟った。

 

(インベーダーとは違う。一体こいつ等はなんだ?)

 

南を攻撃していたということは北に人がいるということだろう。

 

今度は北に進路をとろうとした瞬間ソレが現れた。

 

前面部が殻に覆われた奇妙な生物だった。

 

ソレが数体ゲッター3に向かって突進してくる。

 

「砲撃の生き残りか! どんなモノか試してやるぜ!」

 

弁慶はゲッター3をその生物に向かわせる。

 

「ゲッタァァー パァァンチ!!」

 

ゲッター3の右拳が生物の殻を打ち砕く!

 

硬い! だが割れないほどじゃない。

 

「面倒だ! 打ち上げてやる!」

 

ゲッター3の腕が伸びて、その生物次々と掴み、宙へとうち上げる。

 

それが約100メートルまで上がり、自由落下する。

 

落下の衝撃でその生物は潰れて動かなくなった。

 

(大して強くないな…この生物)

 

弁慶は軽く向かってきた数体を打ち倒すと今度はこの生物を攻撃した存在と接触するために

北へと進路をとった。

 

北へ向かう最中

 

例の前面部が装甲に覆われたやつと幾度となく遭遇し、出会うたびに殴り潰していた。

 

そうして屍を増やしながら掻き分けて進むうちに巨大なモノがみえた。

 

全高60メートルはくだらない大きさの巨体をもつ謎の生物だった。

 

それが見たことのないロボットを襲っているのがわかった。

 

巨大生物は3体それにロボットは次々と落とされていく。

 

(残り2機―ここがどこかようやくわかりそうな手がかりを失いたくはない。)

弁慶はその巨体へと機体の出せる最高速で突撃をした。

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

巨体の触手がゲッター3めがけて伸びる。

 

弁慶はその触手を掴んだ。

 

その触手をゲッターアームで絡ませ、ちょうどもう一体に放り投げた。

 

2体の巨体は互いの質量によって潰れて動かなくなった。

 

「よし!」

 

ロボットの数が次々と増えてくるが、そのロボットはゲッターを静観していた。

 

残り一匹がゲッター3へと向かってくる。

 

「直伝! 大雪山下ろおおおおおおし!」

 

ゲッタ-3の腕が急速に伸びて、巨体の体を覆う。

 

その巨体を掴み、思いっきり宙へとブン投げる。

 

巨体は自由落下で先に倒れた巨体と激突し潰れて動かなくなった。

 

どうやら腕は鈍ってはないようだ。

 

こちらに敵意がないのをわからせるために大きく機体の手を上げる。

 

そして弁慶はよくわからないロボットの一団へとゆっくり近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「サンディ1! 所属不明機が近づいてきます。どうしますか攻撃しますか?」

 

突如現れた謎の兵器にイヴァロ守備隊の面々は衝撃を隠せないでいた。

 

BETA最大種の要塞級を投げ飛ばすなんてどの国の兵器だ?

 

いや これはそもそも人類の兵器なのか?

 

俺たちを襲ったりしないだろうか?

 

そんな疑問が戦術機部隊を渦巻いて彼らの動きを止めていた。

 

「サンディ1! 指示を!」

 

部下の呼びかけでサンディ戦術機部隊長―クラウス・ユーソラ大尉は思考を取り戻した。

 

「いいか! 絶対に手を出すな!」

 

「しかし……」

 

「アレが俺たちを殺す気なら一瞬でできる。それをしないということは何かあるということだ。」

 

サンディ1は通信をオープンチャンネルにして所属不明機呼びかける。

 

「こちらイヴァロ守備隊サンディ大隊の隊長クラウス・ユーソラだ。貴官は何者だ?」

 

と所属不明機へと呼びかけた。

 

一方の弁慶は自身の敵意がないことが相手に伝わり,オープンチャンネルで呼びかけられたことに安堵した。

 

この機体に乗っているのは間違いなく人間だ。

 

「俺は車弁慶だ。所属は日本軍、階級は少佐だ。一体ここはどこであの生物はなんだ?それに日本はどうなった? 重陽子ミサイルは早乙女研究所に落ちたのか?」

 

「待ってくれ。ベンケイ少佐。貴官の言っていることがわからない。とりあえずここはフィンランドで日本帝国は今も健在だ。」

 

クラウスにはほとんど弁慶の言っていることなどわからなかったが、わかるところだけ返事を返した。

 

「日本……帝国?」

 

弁慶はその言葉に驚く。日本帝国なんて聞きなれない言葉が出たからだった。

 

日本が帝政だったのは大昔だ。

 

弁慶は一体全体何がどうなっているのかわからなかった。

 

ただ元気やゲッターチームの安否が気になった。

 

同様にクラウスの方も弁慶に対してどのように対応していいのかわからなかった。

 

こちらに敵意はなく、BETAを圧倒するだけの力を有している。わかるのはこの男と謎の機動兵器をみすみす逃してはならないということだ。

 

クラウスは弁慶を彼らの難民都市へと案内することにした。

 

1983年 1月10日 旧フィンランド領 イヴァロ

 

弁慶はその基地へと向かう間にいろいろと日本通であるというクラウスの部下ミカ・テスレフ少尉に質問を繰り返した。

 

わかったことは、ここが20世紀のフィンランド。

 

あの生物はBETAという生物で人類と敵対していること。

 

日本帝国は第二次世界大戦終結後にも存続しているということ。

 

(別世界の過去ってことか)

 

弁慶はそう結論付けるしかないという現実に打ちひしがれた。

 

(どうやって元の世界に戻ればいい?)

 

ハンガーにゲッター3を格納して、機体から降りると弁慶は銃に囲まれて軽く拘束された。

 

一人の男が弁慶の側にいた。

 

「私がテスレフだ。ベンケイ少佐すまない。」

 

ミカ・テスレフは中性的な顔をした20代後半の男性だった。

 

「おい少尉。これはどういうことだ。」

 

弁慶が思い切り睨みつける。

 

「少佐は身元不明者として拘束されているのです。しかし、命の恩人である少佐に悪いようにはしません。信用してください。」

 

「………頼むぞ。」

 

そしてある一室に連れられた。

 

「さて貴官は一体何者だ?」

 

屈強そうな男大隊指揮官クラウス・ユーソラ大尉が弁慶に向かって尋ねる。

 

「だから言っているだろうが日本軍少佐車弁慶だ。」

 

弁慶はこれまで通り自身が日本軍所属の少佐であるという主張を繰り返した。

 

「ふむ……ベンケイ少佐はBETAを知らない。日本帝国ではなく日本軍の所属ということで間違いないだろうか」

 

「その通りだ。俺はおそらく別世界の未来から来た。」

 

クラウスはそんなバカな話があるかと信じられなかった。

 

「少佐。少し待ってもらってもいいだろうか?」

 

クラウスはミカを連れて部屋から出た。

 

「おそらく…何かの例えだろう」

 

クラウスはそう結論を出した。

 

「たとえですか?」

 

ミカがクラウスに対して問うた。

 

「ああ……素性は言えないということに違いない。おそらく帝国の脱走兵だろう」

 

クラウスはそう判断を下した。

 

「……脱走兵」

 

ミカが格納庫のゲッターロボを見た。

 

「あの男は脱走する折に帝国の最新特別戦術機を盗んだのだ。それがあれだ。」

 

ミカは少々疑問を持ちながらも納得していた。

 

はたして別世界からの未来から来たという話と最新の兵器を盗み出した脱走兵どちらに信憑性があるだろうか。

 

「ではなぜこのイヴァロに?」

 

ミカの質問にクラウスは落ち着いて答える。

 

「ここは今や独立都市だ。他の国ならコイツのことを報告する義務があるだろうが、

ここイヴァロにはない。」

 

果たして遠い日本からBETAのハイブを越えてここまで単機で辿り着くことが可能なのだろうかと疑問を感じながらもミカはうなずいた。

 

「ではベンケイ少佐はイヴァロに逃げ込んだ脱走兵で間違いないのでしょうか?」

 

「ああそうだ。……そしてこれは我等にとって幸いだ。あの力を我等は防衛力として提供してもらう代わりにこの男をかくまえばいい。」

 

クラウスとミカは弁慶の話を脱走兵がそれを隠すために嘘をついているのだと推測し、その嘘を真実として扱い、弁慶を保護しようと決めた。

 

「ベンケイ少佐。貴官が未来に戻れるアテができる間はここにいてよい。その代わりに有事となれば我等に協力してほしい。」

 

部屋に戻ったクラウスが弁慶にそう提案をした。

 

「面倒はこのテスレフ少尉が見てくれる。」

 

この申し出は弁慶にはありがたかった。

 

見知らぬ別世界で孤独なのは不安だったのだ。

 

弁慶は客将として難民基地イヴァロに駐留することになった。

 

 

弁慶編 1話終わり

 

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