1983年 1月10日 アメリカ ワシントンD.C.
「おい! どういうことだ!」
「今、調査中です!」
「なんだって 月の監視ステーションと周回衛星群が落とされた!?」
「だから 調査中です!」
アメリカのワシントンD.Cの国連宇宙総軍本部は二度地球に落着を許したBETAの着陸ユニットの更なる飛来に備えてそれを未然に防ぐ対宇宙全周防衛拠点兵器軍(通称SHADOW)を設立しようとしていた。
監視ステーションL2と月周回衛星群により飛来する着陸ユニットを早期発見し、地球と月の間に配置した核投射プラットフォーム「スペースワン」L1による核攻撃によって地球着陸コースから逸らすシステムであり、それが失敗したときはできるだけ大気圏外で核攻撃をしかけ、着陸ユニットの破壊をねらう全地球防衛核投射群「アーテミシーズ」が設置される予定となっていた。
L1L2そして月周回衛星群は展開が終わり、あとは残りの地球重力下のアーテミシーズの展開を残すだけとなっていた。
この計画のうちの月に近いL2と周回衛星群が突如として落とされたのだった。
「映像は!? 映像は来ているのか?」
「今、写し出します!」
そのカメラは猛スピードで動く赤い線と衛星に向かって飛んでくるものを記録していた。
「なんだ!? よくわからんぞ!?」
「この飛んできた物にどうやら衛星はやられたようです。」
「無人衛星でよかったな。これより前は? なにか月に変わったことは発見できないか?」
せかされたオペレーターが慌てて月の表面を舐めるように凝視し変化を探す。
「見てください! これ! 月の表側と裏側の境目にある巨大クレーターの中に8日になかったものが9日に現れています!!」
「拡大しろ!」
写し出されたソレは明らかに人工の建造物だった。
「一体これは!?」
BETAは地表にある全ての資源を食い尽くす。
月面戦争時のものが今残っているはずなどなかった。
「ソビエトのモスクワ宇宙軍局から入電! つなぎますか?」
「今は少しでも情報が欲しい。つなげ!」
「了解!」
モニターにソビエトのモスクワ航空宇宙軍の高官が写し出される。
「単刀直入に聞こう。昨日、我々のルナ10号が撃墜された。我々の衛星を破壊した赤い機動兵器について「貴様ら」の仕業ではないのなら何か知っていることを教えてほしい。」
流ちょうな英語で語りかけてくるソビエトの高官の顔は強張っていた。
「冗談は止してくれ。こちらもL2ならびに衛星群を落とされたのだ。」
二人の間に短い沈黙が訪れる。
「待て。今、赤い機動兵器と言ったか? ではこの線は機動兵器が動いた後か?」
「ッッ!! 交信を終了する!」
慌てて、ソビエト側は交信を切った。
「どうやらソビエトの連中はこちらが当然この情報を手に入れているものだと思っていたのだろうな。どうだ…赤い機動兵器は確認できるか?」
「駄目です。ほぼ全ての衛星のカメラが月のハイブに向いています。」
「わかる範囲でいい。そいつが飛んでいるスピードはだいたいどのくらいだ。」
「ええと…ッッ!! マッハ1.5から2くらいです!!」
「おいおい 月重力下とはいえ異常だぞ!」
「衛星を破壊したと思われる飛来物の拡大映像出ます!!」
そこに現れたものに一同は目を疑っていた。
「お前。何に見える?」
「信じられませんが…トマホーク……手斧に見えます。」
そこには、巨大な手斧が衛星に接近する映像が映し出されていた。
しかし、分かったのはそれだけだ。
月軌道の衛星が落とされ、月の裏側のことは地球上から観測ができない。
だが、地球上ではなく宇宙にあがっている艦からなら調査をすることができる。
「今、現在宇宙に上がっている将官は誰がいる?」
「我が国連のですか?」
オペレーターが調べる。
「〈月の英雄〉が今、大気圏外の駆逐艦にいます。」
「よし! 中将閣下及びその配下の者に調べてもらう。中将につなげ!」
月の赤鬼の出現がやがて世界を変えていくことなどまだ誰も知らなかった。
序章1 終わり