月面戦争時
武蔵の怪我が治り出撃し、弁慶は基地で待機していた。
弁慶が研究室に立ち寄ると,早乙女ミチルが熱心にパソコンを見ていた。
「ミチルさん何しているんですか?」
弁慶が尋ねると早乙女ミチルは作業を止めて,弁慶の方へ向きなおった。
「ああ、弁慶君。今、竜馬君達の動きを見ているのよ。」
そこには録画された、いくつものゲッターとインベーダーとの戦闘が流れていた。
「例えばね」
そういうと画面が九分割され、すべて竜馬が操るゲッター1の画像になった。
ゲッター1は、まずインベーダーに対してトマホークブーメランを投げ、それと同時にゲッタービームをマントで反射させてインベーダーの逃げ場を無くした。
ビームを反射させたと同時にゲッター1は突進し、ビームの雨と共に先に投げたトマホークを追う。
ゲッター1は新しいトマホークを肩口から取り出し、トマホークブーメランを受けたインベーダーに対して襲い掛かった。
ゲッター1はインベーダーをトマホークで切り刻む、さらに同時にゲッターの腹部が発光し、零距離でゲッタービームをインベーダーに照射した。
これが決め手となり、インベーダーは消滅した。
どの画面のゲッター1も同じようにインベーダーに止めを刺した。
「次は隼人君ね。」
今度は同じ様に、ゲッター2の画面に切り替わった。
高速で動き回るインベーダーをゲッター2が追いかける。
そのスピードはゲッター2とほぼ互角の速度。
そのインベーダーに対して、ゲッター2はドリルストームを繰り出した。
そんなものはそのインベーダーにとって避けることなどたやすい。
ドリルストームで生じた衝撃波から余裕で逃げ出したインベーダーをゲッター2の右腕のドリルが待っていた。
隼人はドリルストームで予めインベーダーが逃げる場所を誘導したのだ。
インベーダーはゲッター2に串刺しにされて、体を溶解させた。
先ほどと同様に、9分割された画面のどの画面もゲッター2は同じように仕留めていた。
「次は武蔵君。」
次はゲッター3の画像に切り替わった。
インベーダーと力比べをするように押し合いをするゲッター3の映像が映し出された。
ゲッター3の腕が伸び、インベーダーの体に巻き付き、空高くに投げ飛ばした。
投げ飛ばしたインベーダーをさらに追撃のゲッターミサイルがゲッター3の背部から発射され、空中に放り出され逃げ場のないインベーダーは直撃を受けて爆散した。
ゲッター1、ゲッター2と同様にどの画像もその技でインベーダーを倒していた。
「ミチルさんこいつは?」
「うん。竜馬君達の癖かな? 切り札みたいなもので手ごわいインベーダーに対してはこうやって倒しているみたいよ。」
成程と弁慶が頷く。
「武蔵先輩がこんな技を?」
弁慶には武蔵が大雪山おろしで空中という逃げ場のない場所にインベーダーを投げ飛ばし、ミサイルで撃ち落とす等いう戦術のような戦い方をするような人物とは思えなかった。
「それがね、武蔵君に必殺技が欲しいって言われて、私が考えたの。武蔵君「大雪山おろしで吹き飛ばした相手を殴るんだ!」なんて言うんだから」
「整備兵が泣いちゃうから止めてあげて」とミチルが代案を出したのだった。
「それでこれを調べてミチルさんはどうしようって言うんですか?」
「実はね! じゃーん!」
ミチルは「G」と書かれた分厚い書類を弁慶に見せた。
「新しいゲッターの設計図よ!」
ミチルは新型ゲッターの開発に取り掛かっていたのだった。
「ゲッターの新型!? それでそいつが先輩たちの癖と何の関係があるんですか?」
「竜馬君達の操作の特性に最高に合ったゲッターを造って見せるわ!」
新しいゲッターをゲッターチームに最も適した形で開発することそれがミチルの目的であった。
「もちろん、弁慶君のデータも考慮しておくわ」
「すげえじゃねえですか」
弁慶は新しい強いゲッターが生まれれば、きっとインベーダーに勝つことができると沸き立った。
そんな話をしているうちに竜馬達が戦闘を終え基地に帰還したとの報を受け、弁慶は帰還した竜馬達の元へと向かった。
一人残ったミチルの眼はどこか冷めていた。
「強くなって、インベーダーよりも強くなって、ゲッターは人間を……竜馬君たちをどうしたいの?」
ミチルはゲッターをインベーダーと同様に危険視していたのだった。
「たとえ人間でなくなったとしても私は……」
それでも私は……彼らの傍にいたい。
だがゲッターロボGが完成する前に月面戦争は人類の勝利で終結した。
1983年
2月18日 バルト海上
弁慶はベアー号の中で目を覚ました。
日本帝国軍が所持する駆逐艦の中にゲッター3が2機並んでいた。
現在、この艦は日本帝国斯衛軍のヴァンキッシュ分隊がその身を寄せているスウェーデン・ルーレオ基地に向けて海を進んでいた。
弁慶が、日本帝国に入る代わりに要求したのは難民都市イヴァロ市民を全員日本帝国が難民として受け入れることだった。
これを受けて日本帝国斯衛軍紅蓮中将は「ゲッター3」の戦闘能力を試して、その実力が見合えばこの条件を飲むために全力を尽くすと承諾した。
車弁慶とゲッター3はそのために、スウェーデンのルーレオ基地までヴァンキッシュ分隊と共に向かうことになったのだ。
その間、日本帝国軍1個連隊が「人道支援」を名目に、イヴァロに入り都市を防衛する。
たとえ、ゲッターの実力が認められなくても、ある程度の難民は衛士を中心に帝国に受け入れられることなっていた。
弁慶がベアー号の中で寝ていたのは、いまだ原因不明の炉心のエネルギー不足に陥っている武蔵の乗っていたゲッターを調べるためにベアー号に乗り込み徹夜で調べていたからだった。
「……また懐かしい夢を」
弁慶は先ほどみていた夢を思い返す。
「……ミチルさん」
優しい人だった。
誰よりも俺たち4人の事を考えてくれていた人だった。
「……なんでいなくなってしまったんだ」
武蔵の乗っていたゲッターからはどこか懐かしい匂いがした。
その匂いが弁慶にミチルのことを思い出させたのかもしれない。
「おい! 弁慶!」
外から武蔵の声が聞こえてきたので、弁慶はゲッターから降りた。
「どうだ? 弁慶! 動かない理由はわかったか?」
弁慶は首を振った。
「わからねえ、てんでさっぱりだ。なんで動かねえんだ。」
武蔵の乗っていたゲッターは弁慶が見てみても、その動かない理由がわからなかった。
「こいつは隼人か博士に見てもらわねえと無理だな」
弁慶はそう結論づけるしかなかった。
「二人がこの世界に来ていると思うか?」
武蔵が弁慶に尋ねるが、弁慶にもそれはわからなかった。
「それにたとえ来ていたもしくは来ているのしれないが、同じ時間に現れるとは限らんでしょう。」
武蔵と弁慶のようにこの世界に来た時間がずれている可能性もある。
「チ! ゲッターが動けばよかったんだが、瑞鶴で頑張るしかねえか」
武蔵は頭の後ろに手をやり、伸びをした。
弁慶が武蔵と話していると、篁裕唯が格納庫にやってきた。
「やれやれ、まいったな。車少佐、ここに来て行先変更だ。」
「篁少尉、スウェーデンって話だったんじゃないのか?」
「ああ、行先は旧ポーランドのグダンスクだ。そこで国連主導の中規模な作戦があるらしい。それに参加しつつ、ゲッターを試せって上からのお達しだ」
ルーレオ基地には向かわずに、国連主導の作戦に参加しろとの命令が下ったのだった。
「ポーランドか、エヴァンスクハイヴをまたぐ形になるな。なんだってそんな変更が?」
「紅蓮中将がゲッターを日本帝国の新兵器として他国に公表すれば、受け入れざるを得なくなるとのことだ。加えて、ゲッターの実力を証明する目は多い方が都合がよいと。」
(国益を考えれば、ゲッターの存在は秘密裡にしておいた方がよいのだが。)
と篁少尉はその言葉を飲み込んだ。
紅蓮中将にはその考えはなく、それよりも国内の反対の声を抑えることを選んだのだった。
「なるほどな。」
弁慶は納得した。それを伝え終わると篁少尉は武蔵の方へ向き直った。
「巴なぜここにいる? この時間はシュミレ―タ―のはず……」
それを言い終わらないうちにけたたましい声が格納庫に響いた。
「と~も~ええええええええええええ!!!!!!」
巌谷中尉が格納庫に走りこんできた。
「げ!」
武蔵がバツの悪そうな顔を浮かべて、逃げようとしたが巌谷中尉の方が速かった。
「てめえは朝から俺と戦術機の操縦の特訓だろうが!!」
「……飽きちまった。」
武蔵は朝の特訓をサボっていたのだった。
「飽きたじゃねえ。行くぞ!」
巌谷中尉が武蔵の首をつかんで引っ張った。
「それと裕唯」
「なんだい?」
やれやれと様子を窺っていた篁少尉は巌谷中尉に尋ねられて聞き返した。
「ゲッターを量産することは可能か?」
「それは私に君を殺せと言っているのかい?」
その質問に篁少尉は冷ややかに返した。
「戦術機にかかるGをものともしない巴がやっと動かせる程度のシロモノだ。我々が扱うのは難しいだろう。死ぬことになるぞ」
巌谷中尉は篁少尉の言葉を切り捨てた。
「死ぬことなんか、開発衛士になったときから恐ろしくない。とっくにその覚悟はできている」
巌谷中尉の言葉に篁少尉は声を荒げた。
「馬鹿か君は! 我々、技術者がテストパイロットが死ぬとわかっているものを造ると思うのか!」
二人の距離は次第に近づいていき、一触即発の状況だった。
「そんなことはわかっている。だが、それでは前に進めない。」
「犬死には前に進むとは言わないぞ」
二人の言い争いにたまらず、武蔵が声を出す。
「おいおい、喧嘩するなよ!」
「「うるさい!!」」
二人の間に入った武蔵に息の合った返しが入ったが、武蔵は続ける。
「それに、その時は俺が最初に乗ってやるよ。それから調整すればいいだろ。」
と武蔵は笑った。
武蔵の笑顔に二人は罰が悪くなったのか、落ち着き、矛を収めた。
「榮二。動力がよくわかっていないんだ。開発者に聞いてみなければ、量産なんて無理だ。」
篁少尉は冷静になって、巌谷中尉の質問に答えた。
「そうか、ならいい。いくぞ! 巴!」
巌谷中尉はそのまま武蔵を連れて、その場から去っていった。
その光景を弁慶は複雑な心地で見ていた。
まるで、かつての竜馬、隼人、武蔵のやり取りをみているようだった。
弁慶はそのことを懐かしいと思っていることに気が付いた。
そのことが、過ぎ去った日が、もう戻らないということを認識させた。
その夜、日付が変わり、2時間が既に経っていた。
弁慶は、小便を済まし、自室へ戻ろうと歩いていた。
「ん?」
ふと、前方に人影が見えた。
その人影は格納庫の方へと向かっていた。
こんな時間に何者なのか。
整備兵か見回りかもしれない。別に弁慶が追う必要もないが、なぜか気になった。
弁慶はその人影を追っていた。
その人影は線の細さから女性の様であった。
この世界に弁慶の見知った女性などはいない。
が、その女性のシルエットは見覚えがあった。
弁慶は頭を振った。
(そんなはずはない。彼女であるはずがない。)
その人影は武蔵のゲッター3の前に立ち止まった。
その時、月明かりが格納庫に差し込み、その人影の顔が明らかになった。
弁慶はそれを見て衝撃を受け、動きを完全に止めてしまった。
その人影はまた格納庫の奥へと歩き始めた。
「待て!!」
もう弁慶は相手に気取られることを気にせず駆けだした。
その人影は闇に溶け込んでいった。
弁慶は人影が消えた方へ追いかけたが、跡形もなく消え去っていた。
「い、今のは一体!?」
弁慶は冷や汗を信じられない程体から噴き出していた。
自分の見たものが信じられなかった。
その人影は間違いなく「早乙女ミチル」その人だった。
弁慶編 5話 終
1983年2月18日時点の登場人物紹介
主要登場人物紹介
ゲッターチーム
流竜馬
御剣雷電中将率いる国連宇宙軍「御剣組」に身を寄せる。
この世界から帰還するためにBETAが関係あると考えた竜馬はBETAを研究しているというソ連のオルタネィティヴ研究所に辿り着く。が、その道中にゲッターを核攻撃により大破され使用不可能になった。
雷電に復讐の意味を問われ、答えを出せずにいる。
神隼人
東ドイツ人民軍第666戦術機中隊に整備兵として身を寄せる。
東ドイツを守るというアイリス、テオドールに共感し協力するようになる。
自分のした行為で仲間を崩壊させた過去から「仲間を守る」ということに執着している。
車弁慶
フィンランドの難民都市イヴァロに身を寄せる。
難民を日本帝国に移動させるために自身とゲッターを売り込んだ。
その過程で巴武蔵と出会い、行動を共にしている。
巴武蔵
日本帝国斯衛軍「ヴァンキッシュ」試験分隊所属。自身の乗っていたゲッターがなぜか、外傷もないのに炉心が働かず、黒の82式戦術機「瑞鶴」に搭乗している。
なぜか、竜馬達とはこの世界に訪れた時間がずれている。
早乙女ミチル
ゲッターチームが崩壊した原因。
自身の設計したゲッターロボGの実験に失敗し死亡したはずだったが……。
竜馬編
御剣雷電
国連宇宙軍中将。別名「月の英雄」
1973年の月撤退戦を指揮した。その戦闘中、息子を失う。
ゲッターロボを使ったBETA反攻作戦を計画している。
月に現れた竜馬に息子の影を重ねている。
月詠少佐
国連宇宙軍少佐。雷電の副官。
妻子があり、娘は8歳くらいになる。
双子の兄が斯衛軍に所属し、煌武院家に仕えている。
竜馬に対して、少しずつ仲間意識を抱くようになる。
エヴァ・ノーリ
「ESP能力衛士素体第零号」人工ESP能力衛士のオリジナル。
ポーランドで暮らしていたが、能力者を探すオルタネィティヴ研究所に家族と引き離された。生き別れの兄がソ連の衛士となっている。
エヴァ・ノーリは本名ではなく人工ESP能力衛士の「イヴ」「零」であることから付けられた。竜馬とゲッターに興味を持つ。
隼人編
テオドール・エーベルバッハ
東ドイツ人民軍第666戦術機中隊の衛士。隼人の正体を知っている数少ない人物。
隼人の実力を信頼しており、自身のトラウマ等を相談したりしている。
東ドイツ、カティアという西側との懸け橋、そして義理の妹を守るために奔走している。
アイリスディーナ・ベルンハルト
東ドイツ人民軍第666戦術機中隊長。隼人の正体を知っている数少ない人物。
隼人のゲッターを東ドイツを守るための手駒の一つとして使う。
リィズ・ホーエンシュタイン
テオドールの義理の妹で東ドイツ人民軍第666戦術機中隊の衛士。
中隊員から武装警察のスパイでないかと疑われている。
弁慶編
巌谷榮二
日本帝国斯衛軍中尉。試験分隊「ヴァンキッシュ分隊長」
黒の瑞鶴を駆る衛士。
戦術機対戦術機を最も得意とする国内最強の衛士。
篁裕唯
日本帝国斯衛軍少尉。試験分隊「ヴァンキッシュ分隊技術少尉」
黄の瑞鶴を駆る衛士でもある。
妻と1歳に満たない娘がいる。口癖は「まいったな」
この話のミチル出現をもって、第1部の主要登場人物が全て登場しました。
そして約3年前(予定では1年位でここまでくる予定でした)の書き始める前の初期プロットを書き終えました。
この話以降各編が繋がっていきます。
そもそもこのSSはゲッターというスーパーロボットとマブラヴの何番煎じか分からない位のクロスなので、どうせやるなら今この時しか書けない物にしようというのが出発点でした。
ゲッターチームはせっかく3人いるのでそれぞれ「オルタ」「TE」「柴犬」とマッチさせるような話にしたいそしてそれが少しずつクロスする話にしようと思ったのです。
ところがご存じのとおり「柴犬」だけ18年前の1983年という設定のためどうしようか悩んでいたのですが、「オルタ」「TE」の18年前の設定を勝手に考えて18年前から開始することにしました。
竜馬編 オルタルート
隼人編 柴犬ルート
弁慶編 TEルート
というわけです。
この話の大きな謎として
①なぜゲッターチームがこの世界に来たのか
②なぜ月のBETAは消えたのか
③なぜ武蔵だけ時間がずれているのか
④ミチルの幻は何なのか
⑤ゲッターチームの記憶のずれは何なのか
⑥竜馬達は元の世界に戻れるのか
⑦ゲッターとBETAの関係性とは
があります、これらが全て明らかになるときこのSSは終わる予定です。
(一応、今までの話全て読み返しました。矛盾はないと思いますがこっそり直すかもしれません笑)
それではまだまだ完結まで長くなると思いますがよろしくお願いします。