真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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弁慶編 第6話 「死者は蘇らない」

その日、月で最後のインベーダーが死んだ。

 

最後のインベーダーは追い詰められたインベーダーが集結、巨大化し、人類に立ちはだかった。

 

そのインベーダーは、インベーダーに対して最も有効なゲッター1のゲッタービームさえ吸収するほどの強化されたものだった。

 

しかし、ゲッターチームは、早乙女博士が予備機として残していたゲッターロボ2機に隼人、武蔵がそれぞれ乗り、3機のゲッター炉心を複合させ、ゲッタービームを放った。

 

その3機のゲッターロボの炉心からの照射を受けたインベーダーは爆散した。

 

10年にも及んだ、地球とインベーダーとの月面戦争が終結した瞬間だった。

 

弁慶はその吉報をミチルと共に月面基地で聞いた。

 

「これで俺たちもお役御免だな。」

 

ミチルは全ての人が喜び沸き立つ中、冷静だった。

 

「本当に……全滅したのかしら?」

 

「G」と書かれた設計書を抱えて、ミチルは勝利を疑った。

 

その可能性を誰も信じなかった。

 

誰もが、平和が未来永劫続くことを祈っていたからこそ、その可能性を考えることを拒んだ。

 

ミチルは父親と仲間とともに、新たなゲッターの研究に着手したのだった。

 

だが、それすらインベーダーの手の内だったとは誰も予見できなかった。

 

インベーダーの存在を最も危惧していたミチルは不幸な事故で亡くなった。

 

そしてその死は、ゲッターチームを崩壊させる原因となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1983年 2月19日 

バルト海

 

 

 

弁慶は昨晩、自身が見たものが信じられなかった。

 

彼女の霊がなぜ、弁慶の前に現れたのか皆目見当もつかなかった。

 

そのことについて、武蔵と話す必要がある、そう考えた弁慶はブリーフィングルームを訪ねた。

 

「おや、車少佐。どうしたんですか?」

 

ブリーフィングルームには、一枚の写真を手に取って見つめていた篁少尉が一人でいたのだった。

 

「ああ、先輩と話をしようと思ったんだが……。」

 

「巴ならさっき榮二に連れていかれましたよ。昨日サボった分を取り返すらしいです。」

 

武蔵は巌谷中尉とシミュレーターで訓練をしているようだった。

 

弁慶は少しその訓練が気になった。

 

「篁少尉。先輩は戦術機の操縦に向いてないのか?」

 

武蔵の猪突猛進なあの性格は、BETAの攻撃を主に避けることで防ぐ戦術機の特性には向いていないのかもしれないが、弁慶の知っている武蔵はそんな機体特性も把握できない男ではなかった。

 

「そんなことはないです。雑ですが、機体の限界値まで戦術機の能力を引き出すことのできるいい衛士。失礼、いいパイロットですよ。武蔵は」

 

篁少尉の武蔵の衛士としての評価は決して悪いものではなかった。

 

「ただ……」

 

「ただ?」

 

篁少尉はその後に含みを持たせた。

 

「戦場で少し暴走気味ですね。」

 

「先輩が暴走?」

 

「ええこれは、私に聞くより、僚機として戦った榮二に聞く方がいいでしょうね。」

 

「そうか、後で聞いてみるとしよう。」

 

そこで武蔵の戦術機の操縦の会話は終わった。

 

次に弁慶は篁の持っていた写真が気になった。

 

「その写真は?」

 

「見ますか?」

 

篁は弁慶にそれを手渡した。

 

手渡された写真には和服を着た女性が赤ん坊を抱えている姿が写っていた。

 

「こいつは?」

 

「私の家内と子供です。」

 

「な!?」

 

篁少尉は、国に結婚したばかりの妻と生まれたばかりの子供を残して、北欧に来ていたのだった。

 

「お前は、それでいいのか?」

 

弁慶の問いかけに篁少尉は笑って答えた。

 

「私には責任があります。私の瑞鶴では、BETAはもちろん、米国やソ連の最新鋭機に太刀打ちできない。そんな物しか、造ることしかできなかったんです。」

 

篁少尉が設計に携わったファントム改修機瑞鶴では日本帝国斯衛軍の要望に応えるものではなかった。

 

第2世代の米国のF14(トムキャット)にかなり劣っていたのだった。

 

自国での限界だったとはいえ、その結果は篁少尉の望むものではなかった。

 

瑞鶴の限界や性能を実戦で収集するこの機会は未来にとって大きな財産になると期待しての作戦参加だったのだ。

 

「しかし、少尉の家族は……」

 

「この子が大きくなるころには、戦争を終わらせたい。そのためならなんだってやる。そう誓ったんですよ。」

 

篁少尉の言葉には覚悟がこもっていた。

 

「車少佐にも家族がいるんですか?」

 

「……家族。」

 

(いない)と答えようとした弁慶の脳裏に、ゲッターチームの面々そして早乙女元気の顔が浮かんだ。

 

答えない弁慶を見かねて、篁少尉は笑って続けた。

 

「それに、士官学校からの腐れ縁と新顔の暴れ馬だけでは、私のもう一人の子が壊されかねませんからね。」

 

その言葉を言い終わらないうちに、ブリーフィングルームの扉が開いた。

 

巌谷中尉だった。

 

「誰が俺の機体を壊すって?」

 

開口一番に巌谷中尉は士官学校からの腐れ縁にそう応えた。

 

「やあ榮二。暴れ馬の調教は上手くいっているのかい?」

 

「どうこうも。あいつ、訓練じゃ大人しいんだ。」

 

「戦場では違うのか?」

 

弁慶の問いかけに、巌谷中尉は首を振る。

 

「戦場では全く違う衛士だ。車少佐。こちらこそ聞きたい。」

 

「なんだ?」

 

「あいつは本当にBETAを知らないのか?」

 

「そのはずだが……」

 

弁慶の答えに巌谷は顎に手を当て、思案する。

 

「それにしては、巴はBETAを憎んでいるようだ。」

 

「BETAを憎む?」

 

「いや、忘れてくれ。」

 

篁と巌谷は、ブリーフィングルームを離れ、弁慶は武蔵に会いにシミュレーション室に向かった。

 

弁慶は巌谷中尉の言った武蔵がBETAを憎んでいるという言葉を考えていた。

 

もしそれが本当なら、武蔵はインベーダーと似ているBETAに対して恨みをぶつけているのだろうか。

 

 

武蔵がちょうど、訓練を終えたところだった。

 

「先輩。はなしてえことがあるんだが」

 

「なんだ? 弁慶?」

 

「ここじゃなんだ俺の部屋で話をしよう」

 

そして、自室に戻った弁慶は、昨日見た「早乙女ミチル」の霊について話した。

 

「てめえはまだそんなこと言っているのか!!」

 

武蔵は弁慶にそう怒鳴りつけた。

 

「俺は言っただろ。「ミチルさんが死んだこと」は忘れろって」

 

「だが……現に俺の前に」

 

「そりゃてめえの見間違いだ。」

 

「いや、あれは間違いなくミチルさんだったんだ。」

 

「弁慶、お前は元の世界で一度でもミチルさんの幻を見たことがあるのか?」

 

「いや、ない。だが」

 

「だがじゃねえ! なんでこの世界に一度も来たことがねえミチルさんの幻をこっちで見て、元の世界では一度も見たことがねえんだ! おかしいだろ!」

 

「それは……」

 

「今までインベーダーとの戦いでインベーダーに寄生された奴や死んだ奴が甦ったことがあったのか?」

 

「……ねえよ」

 

「それなら、てめえの見た物はただの幻だ。大方この世界で元の世界の俺の姿見て夢でも見たんだろうさ。そうに違いねえ」

 

武蔵は弁慶の見た幻をただの見間違いだと決めつけた。

 

「今、俺たちには死んじまった奴のことをくよくよ考えている時間はないんだ。どうやって元の世界に帰るかを考えて、行動すべきなんだ。」

 

弁慶は武蔵に見間違いだといわれ、確かにそうなのかもしれないと感じていた。

 

たとえ、ミチルの霊だったとしても、今の弁慶や武蔵が考えることではないのだ。

 

「いいからもう休め、疲れているからそんな幻を見るんだ。この話はこれで終わりだ。」

 

「先輩、最後に一つ聞いていいですか?」

 

「なんだ?」

 

弁慶は巌谷の言っていたことが頭によぎったのだった。

 

「先輩はBETAをこの世界に来る前から知っていたんですか?」

 

「俺がBETAを知ったのはこの世界に来てからだが?」

 

武蔵の返した答えは当然のものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弁慶の部屋から出て行った武蔵は自室に戻った。

 

「死んだ奴は蘇らない」だって何言ってやがる?」

 

武蔵は独り言をつぶやいた。

 

「それなら俺は……」

 

自室の鏡に映った自身の姿を見て武蔵は独り言を続けた。

 

「それなら俺は……死んだ時の記憶がある俺は…一体誰なんだ?」

 

鏡に映った自分は記憶のままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「教えてくれミチルさん。俺は……誰なんだ?」

 

武蔵のその問いに答えは返ってこなかった。

 

 

 

 

弁慶編 6話 終

 

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