真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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第一部 第3章 「ゲッター2VSゲッター3」
隼人編 第9話 「海王星作戦開始」


1983年 2月28日 午前7時

バルト海

 

 

 

戦術機揚陸艦ペーネミュンデ甲板上で隼人は煙草を吸っていた。

 

その艦だけでなく、バルト海上には多くの多国籍の軍艦が目の前にひろがっていた。

 

今回の作戦は、海王星作戦というらしい。

 

沈静化していたとみられていたミンスクハイヴから突如、BETAの大群がポーランド方面へ向けて侵攻を開始したことにより、国連軍と欧州連合の主導で立案された作戦である。

 

主目的はBETAの漸減だ。

 

この作戦は、本来BETAの攻勢に押されているはずだった対BETAの盾「東ドイツ」の戦力の持ち直しを期待して立案及び計画が練られていた作戦だ。

 

東ドイツの脅威の粘りで、現状戦力の立て直し及び各要塞陣地の復旧が思いのほか進んでいたため、作戦の発令は中止される可能性もあった。

 

しかし、バルト海を目指してBETAの侵攻が始まったことで、状況は一変した。

 

バルト海を越えてBETAが西側諸国に及びフィンランド以外の北欧諸国に侵攻する可能性が生じたのだった。

 

国連軍と欧州連合は作戦開始を前倒しにして、かき集められるだけの戦力を集めてBETAを迎え撃つこととした。

 

国連軍、米軍、欧州連合軍、中隊の所属するワルシャワ条約機構軍、そして飛び入り参加の日本帝国斯衛軍の5軍合同の一大反攻作戦である。

 

作戦は大きく三段階に分けられていた。

 

第一段階は、グダンスク沿岸を強襲上陸及び、旧軍施設の奪還確保。

 

第二段階は、内陸侵攻によるBETAの大規模な漸減。

 

第三段階は、主力の撤収。

 

作戦第一段階は、「北」「中央」「南」の三方向に分かれ海岸から目標40kmの範囲の確保にあたる。

 

「北」は日米連合軍。

 

「中央」は欧州連合軍。

 

「南」はワルシャワ条約機構軍。

 

どの軍も海岸から水上打撃部隊の支援を受ける予定である。

 

この作戦の隼人の役目は「何もしないこと」だ。

 

アイリスディーナは、隼人に対してゲッター2での戦闘及び出撃を禁じた。

 

隼人はつい先ほどの会話を思い出した。

 

「今回の作戦には一切出撃するな。」

 

「その命令の意図は何だ?」

 

ワルシャワ条約機構軍は盟主となるソ連軍を欠いていた。

 

三軍の中で戦力的に最も劣るのは間違いない。

 

「この作戦で、我々は東ドイツの実力を誇示する必要がある。我々が他の西の衛士よりも遥かにBETA戦の経験を持っていることを示して彼らに我々の有益性を証明する機会にしなければならない。」

 

東ドイツ崩壊後の難民問題や西側諸国との共闘作戦を展開するためにそれは必要不可欠なことだった。

 

その機会を突然現れた「謎の機動兵器」に奪われることは、何としても避けなければならない。

 

「つまりこの作戦には俺は邪魔だってことか。」

 

ゲッター2が出撃し、ほぼ1機で橋頭保を確保することになれば、その機会をふいにすることになる。

 

それどころか、世界にその機体が東側に在ることが明らかになり、西側諸国の強制介入を招くことになる可能性もある。シュタージが東ドイツを牛耳る状態であるにもかかわらずだ。

 

「了解だ。俺は整備にまわるとしよう。」

 

作戦が成功しても、この世界の未来の可能性が一つ閉ざされることとなる。

 

それでは、中隊員が命を懸ける意味がなくなる。

 

中隊が全滅する以上に、「世界」にとってよくない結果を招くことになる。

 

 

 

 

 

 

(俺が守りたいのは仲間の「命」なのか、それとも「信念」なのか。)

 

隼人の答えがおぼろげながら、明らかになっていった。

 

煙草はいつのまにか、燃え尽きかかっていた。

 

その時、隼人の上空を獣の数字を冠した10機が陸地へ向けて飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、「世界」はアイリスディーナや隼人の思惑とは異なり、「ゲッター」を知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、出撃したテオドールの目の前に、東ではおおよそ信じられないような戦場が広がっていた。

 

すなわち、物量対物量。

 

水上打撃部隊による艦砲射撃がレーザー級の迎撃できないほど撃ち込まれて、グダンスク沿岸のBETAを激減させる。

 

無線の交信と爆撃が繰り返されていた。

 

沿岸部のBETA群が爆散したことによる道が開けた。

 

戦術機部隊の役目は橋頭保の拡張だ。

 

先行するA6(イントルーダー)と共に海岸から40キロまでの距離を確保する。

 

「総員! 私についてこい!」

 

中隊機10機はBETAの群れへと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後、「南」を担当するワルシャワ条約機構軍司令部に信じられない情報が飛び込んだ。

 

「北」を担当する日米連合軍が揚陸開始を始めた30分後には40キロ地点までたどり着いていたということだ。

 

「信じられん! アメリカは核でも使ったのか?」

 

「中央」を担当する欧州連合軍は揚陸作戦の進捗具合は6割。ワルシャワ条約機構軍はわずか4割だ。

 

アメリカとの連携は政治的理由で不可能である。

 

ワルシャワ条約機構軍にとって40キロの縦深という条件を満たすことは厳しい状況だった。

 

さらに、「南」を担当するワルシャワ条約機構軍と「中央」を担当する欧州連合軍の担当戦区の境界線上にBETAが梯団を形成し、グダンスク沿岸に向けて進行していた。

 

データーリンクを共有していない2軍が入り乱れて交戦すれば、同士討ちを招く恐れがある。

 

第666戦術機中隊長アイリスディーナはその梯団の前面部に展開する突撃級の漸減を提案し、

中隊機全10機は「南」と「中央」の境界に向けて進行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第666戦術機中隊のメンバーにも、アメリカが目標を達成したことは情報として届いていた。

 

「一体? アメリカはどんな魔法を使った!?」

 

グレーテルが口惜しそうに喚いた。

 

(ここに来る間に、見かけたF14(トムキャット)で構成される世界最強の戦術機部隊「ジョリーロジャース」がそれほどまでに強力ということなのか)

 

テオドールは髑髏のマークを付けた戦術機を思い浮かべた。

 

中隊は、BETA梯団の突撃級と接近した。

 

「総員! 奴らの足に鉛玉をぶち込めえええええええ!」

 

10機のバラライカの突撃砲が突撃級へと襲い掛かった。

 

 

中隊機に狙撃されたBETA以外は何か目標でもあるように、バラライカを無視し、橋頭保に向けて進軍した。

 

突撃級が無視したために、後続の戦車級と要撃級が中隊機を取り囲むが、やはりほとんどのBETAは中隊を無視した。

 

「これはいったい?」

 

中隊メンバーは状況を理解できないでいた。

 

しかし、この状況はあの時に似ていた。

 

そう、初めてテオドールたちが隼人と………「ゲッター2」と接触してきた時だった。

 

その時、カティアが叫んだ。

 

「全機戦況ウインドを見てください!」

 

欧州連合軍の戦術機がこちらに向けて進軍していた。

 

(増援が来るのか)

 

中隊に応援が来ることに安堵していたが、カティアの次の言葉に驚いた。

 

「西ではBETAとの近接戦は戦術機単独では行いません、支援砲撃をした後に戦うことになっています。」

 

「な!」

 

BETA群に砲撃をした後に、戦術機を突入させるのが西側の戦術のセオリーだ。

 

それが適用されるのとなると、BETAの群れにいる中隊までも砲撃に巻き込まれることになるのは必至だった。

 

「全機後退するぞ」

 

アイリスディーナが指示をしたが、中隊機に緊張が走る。

 

ここはBETAの群れのど真ん中、当然レーザー級の集団もいるだろう。

 

その上空を飛んで撤退するわけにはいかない。

 

「私が残ってレーザー級をやります。低高度飛行で後退してください。」

 

リィズがそう進言した。

 

「リィズ!? お前何バカなこと言って」

 

「こういうことは一番新米がやることでしょ? お兄ちゃん?」

 

たった1機でレーザー級をやるだと!? そんなことできるわけがない。

 

「中隊長! 俺も残ります。」

 

テオドールがアイリスディーナに向けて提言する。

 

「私も…」

 

「お前はだめだ」

 

カティアがそう言おうとしたところを、秘匿回線でテオドールが遮った。

 

2機では厳しいが、カティアをこんな博打に付き合わせるわけにはいかない。

 

「私も行くわ。」

 

「私も行きます。」

 

アネットとイングヒルトがアイリスディーナに申し立てた。

 

「承知した。08お前が小隊長だ、必ず生きて帰れ。」

 

「「「「了解」」」」

 

4機と6機に分かれて、前進と後退を始めた。

 

 

 

 

それから5分後、後退を決めた6機は不思議な光景を見た。

 

「何か」を、BETAの群れが取り囲んでいた。

 

6機はその状況を好機と捉えて、その戦域を脱出した。

 

一方、4機のバラライカは、レーザー級の集団と接触し、突撃砲をその群れに叩き込んでいた。

 

「よし、全機! 後退するぞ!」

 

テオドールの指示に応えて、4機が戦域を離れようとする。

 

しばらく進んだ後に、4機のバラライカを爆発の連鎖が包み込んだ。

 

「ぐ…………全機無事か?」

 

「私は大丈夫よ。」

 

長刀を杖替わりにして、アネット機が立ち上がった。

 

「私も無事です。」

 

イングヒルトも機体の損傷はなかった。

 

「リィズ!? リィズはどこにいった!?」

 

「お……お兄ちゃん」

 

リィズ機はテオドール達から少し離れた位置で倒れていた。

 

リィズ機はエンジン部が酷く損傷していた。

 

航空が不可能なのは簡単に見て取れた。

 

「………リィズ?」

 

「お兄ちゃん……私をおいて逃げて。きっとまた爆撃が飛んでくる」

 

「でも、お前をおいていくなんて」

 

やっと出会えた妹とこんなに早く別れるなんて……

 

「テオドール! 逃げないとマズイよ!」

 

アネットが急かした。

 

「はやく行って!」

 

「くそおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

テオドール達3機はリィズを置いて、宙域を去った。

 

何がシュタージのスパイだ。

 

あんな提案をして、俺たちが逃げ出せるように尽くしてくれた。

 

アイツがスパイであるはずがなかったんだ。

 

俺はどこか疑っていた。そんな気持ちでこの戦場に臨んだことがこの結果を招いた。

 

その時、「何か」とテオドールはすれ違った。

 

それに気を取られた瞬間。

 

リィズがいた位置に火の手が上がった。

 

その位置はデータ上でも記憶している。

 

間違いなかった。リィズは死んだ。

 

リィズは、欧州連合軍の砲撃によって死んだ。いや、リィズを殺したのは俺だった。

 

その時、爆炎から「何か」が飛び出してきた。

 

「な!?」

 

「それ」は、黄色の腕でリィズの機体を抱えていた。

 

「てめえら味方の上に爆弾落とすとはどういう了見だあああ!?」

 

オープンチャンネルで呼びかける「それ」は、奇妙な風体をした機動兵器だった。

 

その場に居たテオドールだけがその正体に気付いた。

 

それは、彼らの整備兵が隠し持っていた「機体」と同類にちがいない。

 

「まさか……もう一機!?」

 

リィズ機を救出したのは「ゲッター3」だった。

 

 

 

 

隼人編 9話

 

 

 

 

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