真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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弁慶編 第8話 「立ちはだかる者」

 

1983年 2月28日 午後5時

旧ポーランド領 グダンスク

 

 

 

グダンスクに展開された日本帝国斯衛軍駐屯地にヴァンキッシュ試験小隊員が集合していた。

 

「巌谷中尉不味いこととは一体なんだ?」

 

「明日から俺たちはワルシャワ条約機構軍と行動することとなった。」

 

巌谷から伝えられたのはヴァンキッシュ試験小隊が日米連合軍を解消し、東側のワルシャワ条約機構軍と共に行動するということだった。

 

「なんだってそんな突然?」

 

西側にはある思惑があったのだ。

 

大規模両翼包囲網によるBETA殲滅作戦。通称アクティヴディフェンス。

 

面制圧による光線級制圧が西側の作戦であった。東側の主作戦であるレーザーヤークトではなく、西側のアクティヴディフェンスこそBETAに対して有効な方法であるということを証明しなければならなかった。

 

だが、西側の思惑は既になかば崩壊していた。

 

それは、日本の一機当千の新特型戦術機「ゲッター3」の存在だった。

 

日本帝国は、再三の他国の要求に対して、「ゲッター3」をワンオフで造られた特別機―仮称「G」とだけ世界に公表した。

 

「ゲッター3」が戦場を単機で駆け回れば、その分アクティヴディフェンスの有用性が薄まる。逆に、東側のレーザーヤークトの有用性が高まるのではないかと危惧した。

 

それは、西側としては避けたかったのだった。

 

そこで西側作戦首脳部は、最もワルシャワ条約機構軍が保有する戦術機が少ないことを建前に最も強力な戦術機「G」を保有する日本帝国斯衛軍と組むことを強要したのだった。

 

作戦では、「南」海岸に強襲するBETA梯団に対して、ワルシャワ条約機構軍と日本帝国斯衛軍が真正面に展開し、米軍と欧州連合軍が両翼ではさみ、包囲する。そこに艦砲射撃と戦車部隊による面制圧で殲滅する予定だ。

 

ワルシャワ条約機構軍でも、日本帝国斯衛軍と作戦を展開することに意見が交わされたようだが、地理的に「東」と「西」の境界にいる「日本帝国」を「東」に取り入れることに意味があるという理由、さらに東ドイツは、昨今国内を騒がせている白い機動兵器と「G」の関連性を疑い、「G」を間近で観察する必要性があると判断した。

 

西側作戦司令部は、「G」による戦局の乱れが生じる前に、逆にアクティヴディフェンスを用いるために「G」を使うことを選んだのだった。

 

「命令違反したらこの様だ。」

 

巌谷が肩を落とした。

 

「私たちに東と組んでBETAと足を地につけて殴り合えとはな」

 

篁も落胆した様子だった。BETAとの戦闘データを集めるのが目的なのに砲兵のように戦うことを強いられたのだった。

 

「また命令無視して、飛び込めばいいんじゃねえか?」

 

武蔵はいつものように能天気にそういったが、巌谷は首を横に振った。

 

「砲弾の雨の中を突っ切ることになる。ゲッターなら問題ないだろうが、瑞鶴ではハチの巣だ。それに紅蓮中将にも釘を刺された。目立ちすぎだとな。」

 

日本帝国斯衛軍紅蓮一派もゲッターの戦闘力がこれ程だと誰も予想していなかったのだ。

 

「命令に従うしかない」

 

巌谷は、小隊員にそう告げた。

 

「それと不必要に東側の人間と関わらないでくれ。お前達には関係ないかもしれんが、BETAがいなければ、あいつ等が俺たちの「敵」なんだからな。」

 

「BETAに圧されていながら、人類同士でいがみ合いか」

 

弁慶は、心底呆れたように声を漏らした。

 

「俺の本意じゃないが、少佐達が東側のドイツ兵と接触した時の西側ドイツ兵の反応が今の世界の常識だ。」

 

弁慶達は先ほど、弁慶達の態度に驚いていた両ドイツ兵との会話を思い出した。

 

「日本帝国の立場はわかったが、今日のようなことがあれば、俺は加勢にいくぞ。俺は国の立場を気にして、「味方」を見捨てるなんて真似は絶対にしない。」

 

これまで、難民基地で国際関係を気にせず、ただ人命を守るために戦ってきた弁慶にそういった世界の現状を理解して戦えなど弁慶には到底容認できるものでなかった。

 

政治面に考慮はしない。あくまでも、弁慶は余所者らしく、人命を守るために戦う姿勢を貫く気だった。

 

 

 

 

 

 

1983年 3月1日 午前8時

旧ポーランド グダンスク

 

 

 

グダンスク湾には、昨日よりはるかに艦船が集結していた。

 

そして、永続的に続くのではないかと疑ってしまうほどの水上打撃部隊による艦砲射撃が重金属雲の展開されたグダンスク内陸部に撃ち込まれていた。

 

米軍と欧州連合軍によるBETA梯団包囲作戦は、順調に展開されていた。

 

BETAの群れの進軍速度によって、前衛、中衛、後衛と分かれたその梯団に対して、海上部隊、地上部隊、戦術機部隊が連携して各個に攻撃し、BETAを漸減していった。

 

光線級も重金属雲の展開されている上での艦砲射撃で、その脅威が抑えられていた。

 

「ゲッター3」に乗り、ワルシャワ条約機構軍と共に「南」沿岸部に構える弁慶は正直なところ暇だった。

 

やることと言えば、偶に突破してくる突撃級の集団を単機で叩き潰すだけだった。

 

アクティヴディフェンスは、その有用性をこれでもかと東側諸国に示していた。

 

日本帝国軍の隣に展開する10機の東ドイツ軍の部隊も「西側」の戦いを驚嘆の目で眺めていた。

 

弁慶が助け出した東ドイツの少女兵の戦術機は破損していたはずだったが、10機いるということは、おそらく修繕が間に合ったのだろう。

 

弁慶は、彼女達に話かけたかったが、昨日の巌谷の話もあり話かけるのは、自重していた。

 

このまま作戦が順調に進めば、海王星作戦の第2部、内陸侵攻によるBETA漸減は成功するだろう。

 

「つまらんな、弁慶」

 

武蔵が欠伸をしながら、弁慶に話しかけた。

 

昨日のように武蔵は暴走することはなく、おとなしくしていた。

 

「作戦が上手いく行けばいいんじゃないですか?」

 

「米軍と西欧だけ暴れられてずるいぜ。にしても米軍と比べて、こっちの軍はなんともみずぼらしいな」

 

旧式のバラライカばかりの戦術機部隊に武蔵は目を留めた。

 

「あの小僧たちが、世界で最も技術を持った衛士ってのが信じられねえな。」

 

武蔵は、興奮した様子で話すが、弁慶は対照的だった。

 

「ああ、信じられねえですぜ。あんなガキが最前線で戦ってるなんて」

 

弁慶は心底辛そうに言葉を発した。

 

ゲッターロボに乗ることのできた彼らは若いころからインベーダーと戦うしかなかった。

 

そんな彼らの過去を嫌でも思い起こさせた。

 

「死なせたくねえな、弁慶」

 

「ああ、俺の目の前では絶対に死なせねえ。」

 

それだけの力が彼には、「ゲッターロボ」にはあった。

 

順調に行われていた作戦だったが、その余裕が突如打ち砕かれた。

 

光線級のレーザーが大陸の内陸部から発し、水上打撃部隊と砲兵部隊の砲弾を迎撃したのだった。

 

突然国連指令部からヴァンキッシュ小隊に通信がはいった。

 

「国連指令部より日本帝国ヴァンキッシュ小隊小隊長、応答願う。」

 

「こちらヴァンキッシュ1だ。どうしたのだ?」

 

巌谷が指令部からの応答に答える。指令部は慌てた様子で巌谷と通信した。

 

「単刀直入に言う。そちらの特型戦術機「G」に支援をしてもらいたい。現在、ポーランド内陸部から新たな光線級を含むBETA梯団が迫ってきている。そちらの「G」に突撃級の殲滅かレーザーヤークトそのどちらかもしくは両方を頼みたい。」

 

アクティヴディフェンスで囲んだBETA梯団とは、別に新たなBETA梯団がポーランド内陸部からグダンスク沿岸へ侵攻していたのだった。

 

新たに現れた光線級は、海上打撃部隊の射程外である、しかも重金属雲の展開もない。

 

よって光線級を排除するには、戦術機によるレーザーヤークトしかなかった。

 

だが、レーザーヤークトできる部隊は、限られていた。米軍の「ジョリーロジャース

」、東ドイツの「第666戦術機中隊」そして一機当千の「ゲッター3」を有する「ヴァンキッシュ試験小隊」だ。

 

すでにアクティヴディフェンスの絶対性は崩壊した。

 

だがそれでも、作戦全体を失敗させるわけにはいかなかったのだ。

 

そして国連指令部は、「ジョリーロジャース」の護衛として、「ゲッターロボ」に支援を要請したのだった。

 

「東」に頼るよりは、「西」に組みする新型機に頼る方が遥かにマシだったのだ。

 

「前線から下げといて、どの口が言ってやがる」

 

武蔵が国連指令部に噛みついた。作戦の政治的理由で作戦外へ追いやっておいて、ピンチになったら助けを求める。そんな都合のいい話を武蔵は認められなかった。

 

「だまれ巴!! 車少佐行けるか?」

 

「おう、あそこまで行って光線級潰せばいいだけだろ? 行くぜ!」

 

ゲッター3は単機でアクティヴディフェンスの外へ向けて進行しはじめた。

 

「気をつけろよ。弁慶何か嫌な予感がする」

 

「おうよ! 先輩! 後で会いましょう」

 

巌谷はそれを確認したのち、指令部へ向けて通信をした。

「こちらヴァンキッシュ1より国連指令部。こちらの「G」が単機で光線級へのレーザーヤークトを開始する。」

 

「貴隊の支援に感謝する。米軍の「ジョリーロジャース」にも支援要請している。連携して作戦に当たってほしい。」

 

国連指令部は「西側」の力のみで作戦を完遂するつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弁慶の乗るゲッター3が欧州連合軍の包囲網を抜けた瞬間だった。

 

弁慶は、レーダーにとんでもないモノが映り込んでいるのに気がついた。

 

「こいつは!?」

 

その瞬間。

 

弁慶の進む前方の地中からソレが飛び出てきた。

 

 

 

「まさか!!!!」

 

 

それは、この世界のモノではなかった。だが、弁慶はその物体を知っていた。

 

特徴的な細いシルエット、右腕には巨大なドリル。紛れもないそれは!

 

 

 

「馬鹿な! ゲッター2だとおおおおおおお!?」

 

ゲッター2が地中から姿を現したのだった。

 

ゲッター3は突然現れたゲッター2を前に足を止めた。

 

「誰だ? 誰が乗っている? 俺たち以外にもこの世界に来た奴がいたのか!?」

 

弁慶は、ゲッター2に通信を試みようとしたが、それよりも先にゲッター2のドリルが回転し、ドリルストームが勢いよく弁慶のゲッター3の頭上を掠めた。

 

弁慶にはゲッター2を操っている人物の素性は分からなかったが、このゲッター2を操っている人物が敵対意思を持っていることだけはわかった。

 

「てめえ! なんのつもりだ!」

 

ゲッター3の背面からゲッター2に向けてゲッターミサイルが放たれたが、ドリルストームによって叩き落とされた。

 

互いの威嚇攻撃に両者はひるまなかった。

 

弁慶の目的は光線級の排除だが、明らかにその進行をゲッター2が遮っていた。

 

(ここを突破するには、ここでこいつを倒すしかない。)

 

引く様子のないゲッター2を前に弁慶は覚悟を決めた

 

 

 

 

 

 

 

遠い世界、異形の群れの中、二機のゲッターが激突しようとしていた。

 

 

 

弁慶編8話終

 

 

 

 

 

 




真ゲッターロボ BETA最後の日 第一部 第3章

「ゲッター2 VS ゲッター3」

次話からサブタイトルを変えようと思います。

また隼人編に戻りますよ。






柴犬後編延期だそうで。

どこで買おうか悩みますね。

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