真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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弁慶編 第10話 「交差する拳」

1983年 3月1日

グダンスク

 

 

「巌谷中尉! 俺の半径500メートルに他の戦術機を入らせるな! 巻き込まねえ自信がねえ!」

 

弁慶は、レーザーヤークトを行う戦術機部隊に対してゲッター同士の争いに巻き込まないように呼びかけた。

 

進撃するジョリーロジャースや第666戦術機中隊がゲッター2のドリルストームやゲッター3の腕に巻き込まれる可能性があるからだ。

 

「わかった。司令部にはこちらから伝えておく!」

 

「待ってろ! 邪魔者を片付けて、光線級は俺が潰す!」

 

ゲッター2とゲッター3は依然交戦状態であった。だが、その位置は少しずつ内陸部へと近づいていた。

 

もしこれが逆であったなら、すなわち突破する方がゲッター2なら勝負は一瞬だったであろう。

 

ゲッター2のスピードにゲッター3は追いつくことはできない。突破したなら追いつく術がない。

 

だが実際は逆だ。突破しようとするゲッター3に対して、スピードが売りのゲッター2ではあまりにも力不足だった。

 

BETA梯団に向かって一直線に進むゲッター3に対して、ゲッター2が攻撃を掛けてなんとか止めようとするが、ゲッター3にいなされその進路を阻むことができない。

 

じわじわと内陸部へと進撃するゲッター3とそれを阻もうとするゲッター2とBETA梯団先鋒の突撃級集団が接触するまであと10分といったところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内陸部へ進まんとする10機の獣の数字を冠する戦術機部隊がその付近を通過した。

 

「なんだって、アレが日本の化け物戦術機と闘ってるんだよ! あいつは味方なんじゃないのかよ。」

 

アネットが2機の怪物の戦いを横目に見ながらそう呟いた。

 

「「白モグラ」と戦えるものがこの世界にあったのか?」

 

グレーテルだけでない、中隊員は今まで自分達を救ってくれたゲッター2が人類の新兵器と闘っている理由が謎だった。

 

テオドールとアイリスディーナを除いて中隊内に彼らの戦う理由を知っている者はいない。

 

テオドールは操縦桿を握る手に力を込める。

 

彼らの仲間がかつての仲間と闘う選択をしたことを無駄にしないために。

 

テオドールは、昨日の隼人のなにか覚悟を決めた顔を思い出した。

 

(アンタはこうなることがわかっていたのか? ハヤト?)

 

「集中しろアネット。俺たちはいつも通りレーザー級を殺す。それだけだ。」

 

テオドールの言葉にアイリスディーナは頷いた。

 

「総員。まもなくBETA群へと入る。各機我々の活躍に海王星作戦の成否がかかっている! 不埒な異星起源種にシュヴァルツェスマーケンを下してやれ!!」

 

アイリスディーナの声もどこか気迫を感じとれた。

 

「「「「「了解!!」」」」」」

 

中隊機に続いて、ついこの間まで最強だった戦術機部隊が通過する。

 

「ジーザス! ヨーロッパにはBETA以上の怪物がこんなにごろごろいるのか?」

 

「あれは日本の変態機だ! ヨーロッパは関係ないだろ!」

 

「機首を上げすぎるなよ! レーザーが飛んでくるぞ!」

 

「ジャガイモ野郎ども、マジかよ。この低さであの速度かよ」

 

トムキャットの編隊は、ゲッターの戦いと第666戦術機中隊の技術に驚きながらも、彼らについていく。彼らにも意地がある。

 

第666戦術機中隊、追随するジョリーロジャースを引き連れてBETA群のすぐ傍まで来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

弁慶は焦っていた。

 

もう時間がない。

 

東西の戦術機隊はすでに通り過ぎた。

 

「隼人! お前は過ちをまた繰り返すつもりか!」

 

「過ち!? なんのことだ!」

 

弁慶は隼人とぶつかりあいながらも、呼びかける。

 

「あの戦術機の衛士たちは、命を懸けているのかもしれない。だが、あいつらの家族はどうだ!?」

 

「家族?」

 

弁慶は、旧フィンランドで、家族にウソをつきながら戦う一人の衛士を思い出していた。

 

「お前はミチルさんを失った元気の姿をしっているか! 残された家族は一生苦しむんだぞ!」

 

「……家族」

 

隼人に早乙女博士、ミチル、元気の家族、ついで中隊にいる兄と妹を思い起こされた。

 

今、戦場に飛び込もうとする衛士の誰もが、誰かの子で、誰かの大切な人だった。

 

覚悟をしているのは本人だけで、家族はどうなのだ?

 

「…………」

 

弁慶の問いに、隼人は答えなかった。

 

答えられなかった。

 

……隼人の心に迷いが生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼人も焦っていた。

 

弁慶は、隼人と戦うよりも内陸部へと進行することを優先していた。

 

もはや時間がない。

 

中隊とゲッター3がBETA群を殲滅すれば、その手柄は間違いなくゲッター3にいくだろう。

 

それを止めるため、隼人は覚悟を決める他なかった。

 

ゲッター2は、ドリルストームを打ち出した。

 

急ぐゲッター3は、それを受け止めようとせずに避けた。

 

それが隼人の狙いだった。

 

隼人はその瞬間、避けたゲッター3に襲いかかった。

 

ゲッター3が避けるであろう位置を予め、ゲッター2の右腕で狙いつける。

 

隼人は必殺技でゲッター3を貫くつもりだった。

 

もしも直撃すれば弁慶の命の保証はない。

 

隼人の脳裏に弁慶の優し気な顔と早乙女ミチルの顔が浮かんだ。

 

隼人は忘れていた。いや、忘れるほどにそれだけ焦っていたのか、それとも心に生まれた迷いがそうさせたのかもしれない。

 

ゲッター2の隼人の動きはあまりにも正確だ。先ほどの戦闘でそれが弁慶で読まれつつあったことを。

 

隼人の必殺技など弁慶には百も承知だというのに。

 

 

 

 

 

 

弁慶はドリルストームを簡単に避けられたことに違和感をおぼえた。

 

(俺はこれを知っている!)

 

どこでこの技を見たのか。

 

弁慶は、この世界で見たミチルの幻を思い出した。

 

弁慶は眼を見開く。

 

「その技は知ってんだよ!」

 

弁慶は、ゲッターパンチを振りかぶって迎え撃つ。

 

タイミング、軌道、全てがミチルがシミュレーション室で見せてくれた映像と繋がった。

 

ゲッター2の右腕のドリルアームにゲッター3の左腕のゲッターパンチが合わさった。

 

その刹那。

 

ゲッター2が吹き飛んだ。

 

ゲッターパンチのクロスカウンターがゲッター2を捉えたのだった。

 

「隼人おおおおおおおおおおお!!」

 

ゲッター2は、数百メートル以上も吹き飛ばされ、地面に倒れた。

 

隼人は頭から血を流し、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

ゲッターパンチの直撃を受けたゲッター2は動かない。

 

(……隼人。死ぬなよ)

 

弁慶は、後ろ髪を引かれる思いで内陸部へと進むのだった。

 

 

弁慶編10話終

 

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