真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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竜馬編 第11話「エヴァ・ノーリ」

 

 

 

1983年 2月25日

ソ連 ハバロフスク 御剣組 駆逐艦内

 

竜馬は、月詠大尉からあと数日でオルタネイティヴ研究所への視察が可能になるという報告を聞いた。

 

「ようやくか、これで何も得られる物が無かったらタダじゃおかねえ。」

 

すでにソ連に来て10日程にもなる、ゲッターを壊され、情報が何もないままでは竜馬の我慢は限界に近かったのだ。

 

「流、それよりゲッターの調子はどうだ!?」

 

「難しいな。戦闘どころか飛行だって無理だ。」

 

ゲッターの修理完成は、約3ヶ月予定だ。月までゲッターを運べばこれよりも早く直すことができるだろうが、そう簡単な話ではない。

 

「ゲッターとBETAを接触させれば、BETAは月のように撤退をはじめるはずだ。できるだけ早く頼む。」

 

「しかし、本当にそう簡単に行くかのう?」

 

国連本部から通信をしている御剣雷電が疑問を挟んだ。

 

「中将、月でハイブ攻略の前にBETAが撤退したのは事実です。地球でもそれと同様のことが起こること考えるのがふつうでしょう。」

 

「なにか重要なことを見落としているような気もするんじゃが……」

 

「それと竜馬、お前に聞かせたいことがある。貴様が儂に依然話した貴様の仲間「巴武蔵」のことだが」

 

「武蔵?」

 

竜馬は、元の世界の仲間の名前を雷電が話したことに驚いた。

 

「去年の11月、斯衛の紅蓮が同姓同名の人物を国連軍から日本帝国軍へと偽装転属してくれと頼まれていたのを思い出した。」

 

「おいジジイ? そいつはまさか!?」

 

「同姓同名の別人という可能性もあるが、貴様の仲間がこの世界に来ているのかもしれないということじゃ。」

 

「武蔵が先に来ている? 今どこにいるんだ?ジジイ!」

 

先に来ていた武蔵と接触すれば、元の世界に帰るヒントを得られるかもしれない。

 

「それは分からない。何かわかればまた教えよう。」

 

一筋の光明が差した気がした。そして、竜馬は思い立った。

 

俺と武蔵がこの世界に来ているのなら、きっと「アイツ」もこの世界に来ているのだろうと。

 

 

 

 

 

 

同日

ソ連 ハバロフスク オルタネイティヴ研究所内

 

 

 

エヴァは、「御剣組」の視察に備えて、公開不可能の機密を全て最高レベルの地下最深部のレベル4に隠そうと研究所員が忙しく回る研究所内で一人呆けたように立っていた。

 

エヴァはある報告書を盗み見ていたのだった。

 

そこに書いてあったのは、「第4世代」初期ロット同士の意識同一化、意識解離に反応が微弱ながら成功したということだ。

 

そこには「第5世代」もしくは「第6世代」に至れば安定して戦術機を運用できるようになるということ。

 

そして、不要になった「零号」。

 

つまり「私」を、この任務が終われば、他の任務に就かせるもしくは「破棄」も含めて検討することが、難解な暗号文書で記されていた。

 

彼女は、知るはずもない暗号を読むことができた。否、読んでないが、文書を持つだけで内容を理解してしまった。

 

ゲッターの意思に触れた彼女の能力はさらに強化されているのだ。

 

だが、高まる能力に高揚感など彼女にはない。

 

(私の居場所は……私の名前は……どこ?)

 

彼女にあるのは、喪失感だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二次世界大戦。

 

ポーランドは、ナチス第3帝国の侵攻により国土を荒らされたが、それは戦後も続けられた。

 

戦後冷戦下において、ソ連を盟主とするワルシャワ条約機構に組みされ、社会主義同盟の一翼を担わされた。

 

それによってポーランド内の貴族は、党内のポストを条件にその財をはく奪された。

 

そんな片田舎の丘の頂に建つ旧貴族の邸宅に、超能力を持った少女が生まれた。

 

少女は、すくすくと育ち、はじめて能力に気がついたのは、些細なことだった。

 

家族と遊んだカードゲームで、相手の持っているカードがわかったのだった。

 

思えば、少女は、相手の考えることがなぜか手に取るようにわかることが多かった。

 

そのことに気がついてからは、さらにはっきりとわかるようになった。

 

少女は、能力を隠そうとはしなかった。

 

小さな町で、それが噂になるのは早かった。

 

少女が10代後半に差し掛かろうとする1973年、BETAが地球へと侵略を開始した。

 

少女の力はますます増していた。例えば、牧場で彼女は何の動作をすることなく羊達を従わすことができた。

 

彼女に聞けば行方不明になった人や動物などはすぐに見つかった。

 

知り合いが忘れ物をしていると、それをテレパシーで暗に本人が気がつくように伝えていた。

 

ソ連が超能力者を探していると噂が広まり始めた時だった。

 

少女に対して、両親は力を使うのを止めるように訴えたが、彼女は聞こうとはしなかった。

 

兄が軍に入り、残った一人の子供を守るために両親は尽力した。

 

1978年のある日、少女が成年へと差し掛かり、大学への進学が間もなくとなった時だった。

 

いつもの日常は唐突に崩壊した。

 

ソ連の軍人と白衣の男達が片田舎へと訪れ、少女を連れ去ったのだった。

 

少女は、研究素体としてそれまでの生活、自由を奪われた。

 

平穏な田舎の陽だまりから無機質で暗い研究所の地下に押し込まれた彼女は、その周りの空気と同様に感情を押し殺すようになった。

 

調査によって彼女に衛士適性があるということが判明し、研究者は狂喜した。

 

「ついに探し当てた。」

 

彼女はこれまでの名を奪われ、「ESP能力衛士素体第零号」となった。

 

彼女は、ものの一年も経たぬうちに「自身の子」だと言われた少女と引き合わされた。

 

彼女の遺伝子を利用した第3世代。人工ESP能力衛士。

 

虚ろな目をした幼子。勝つために兵士として、人本来の成長を著しく促進させ、人を物として扱う狂気に触れ、彼女の精神は病んだ。

 

「家に帰ること」

 

「自由を取り戻すこと」

 

この二つだけを目的に彼女は生きていた。

 

「零号」となった彼女の仕事は、研究素体として、「体を弄られること」と「戦術機を操縦すること」そして「他人の思考を覗き見る」ことだった。

 

家から連れ去られ数年経ったある日、彼女はポーランドの高官の心意を確かめる目的で、再びポーランドへと戻っていた。

 

調査を終え、ポーランドの高官の邪な考えを覗いた後、彼女は脱走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は一目散に家を目指した。

 

片田舎にあった私の家は、既に無くなっていた。

 

丘にあったのは、廃墟だった。

 

近くに住む人に聞いたところ、愛娘を奪われた両親はあらゆる手を使って私を取り戻そうとし、失敗し家を追われたとのことだった。

 

家族の行方は結局誰もわからない。

 

その人が、嘘を言ってないのはすぐにわかった。

 

「嘘を言っていない」とはっきり理解ることが苦しかった。それこそ私を家族から引き離した原因であったからだ。

 

結局わかったのは、ソ連の衛士になった兄が家族の行方を聞きに来たということだけだった。

 

「私は生まれるべきではなかった。」

 

その後、すぐに私の体に埋め込まれた発信機によって居場所を突き止められ連れ戻された。

 

私は生きる希望を一つ失った。

 

廃墟と化した我が家を見た時、きっと私は、本当の私は一度死んだのだろう。

 

私の人生のなかで、もっとも幸福だった時は、もう戻らない。

 

家族は誰もいなくなった。

 

私の子供はたくさん在るが、家族などではない。

 

「零号」という名の方がしっくりした。

 

物のような名前、物のような扱い。

 

それでいいとさえ思えた。

 

そうでないと、私の名前を思い出してしまう。

 

思い出すと、きっともう生きてはいけなくなる。

 

私は「心」を殺すことにした。

 

「心」を殺し、国に尽くす機械と化した。

 

だが、この報告書によって私はまた一つ居場所を失った。

 

喪失感が殺したはずの「心」を再び絶望に落とした。

 

「零号」という呼称すら私を構成する要素だったのだ。

 

国が、組織が、能力が、「私」を奪っていく。

 

私の「心」はいつ生き返ったのか。

 

きっとあの日あの流星を見上げたとき、月から落ちる「ゲッターロボ」に私は「心」を震い立たされたのだ。

 

いっそ、ゲッターロボの意思にその身を投げ込んだ彼女達のようにあの膨大な意識の銀河に入った方がよかったのでないか。

 

あの中に入れば「私」のように小さなことなどどうでもよくなるのではないか。

 

彼女達は、あの意識の銀河の星のどれか一つになれたのだろうか?

 

崩壊するアイデンティティと、未だ私に残る「自我」との葛藤。楽になりたいという思い。

 

「自由」のための勝ち目のない闘いかそれとも目の前にある「救済」か。

 

彼女達の見た「深淵」は彼女達に何をもたらしたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は再び「心」を殺そうとする。だが、あの機械の意思の銀河と宇宙戦争の光景が忘れられない。

 

「強大な力」とそれを操る「男」、その男が辿り着く「未来」。

 

一つ分かったことがある。それは、あの男―流竜馬がゲッターロボに近づくとあの意識の銀河は輝きを増すことだ。

 

男に「何か」を訴えかけるように感じるのだ。

 

一度揺さぶられ、取り戻した心は、留まることを知らない。

 

私は誰だ?

 

ゲッターロボとそのパイロットを調査する人物「エヴァ・ノーリ」?

 

誰だ。それは?

 

私は! 私の名前は!!

 

 

 

 

竜馬編 第11話終

 

 

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