第1話 「真そして聖」
そもそも「真ドラゴン計画」とは一体何だったのか。
そして「世界最後の日」とは。
計画の実行者は、神隼人、敷島博士、コーウェン、スティンガーそして早乙女博士。
始まりは早乙女ミチルの死だった。
ミチルはインベーダーに寄生されて死んでいた。
それは地球圏でインベーダーが隠れて存続していたことを示していた。
有機、無機を問わず融合するインベーダーを殲滅することは不可能に近い。
インベーダーを一網打尽にするため考案された作戦。
それが「真ドラゴン計画」だった。
その目的は、「インベーターの殲滅」。
その手段は、「巨大なゲッターロボによる地表全てをゲッター線で焼き尽くす」ことだった。
その巨大なゲッターロボこそが「真ゲッタードラゴン」そう「真ドラゴン」である。
インベーダーごと地表を焼き尽くすこと。
当然、全人類が逃げおおせるはずもない。
限られた人類しか生き延びることができない。
それでもインベーダーに全人類が全滅させられるよりはマシだった。
一度世界が滅びること。
それこそが「世界最後の日」。
そしてゲッター線に焼き尽くされ汚染された世界は人をもう1段階進化させる。
すなわち機械と人の同化融合である。
それが計画の第2段階「聖ドラゴン計画」である。
必要なものは、主に4つ。
1つ目はインベーダーごと焼き尽くされる地表から人類を守るための地下施設。
2つ目は真ドラゴンのパイロットになる超越した新たな人を作り出すことだった。
計画の初期段階では、號と竜馬と隼人が乗る予定だったが、竜馬を説得することは不可能ということになり、人造人間が造られたのだった。
3つ目は真ドラゴンの材料の量産型ゲッターロボG軍団。
4つめは真ドラゴンが覚醒するまでの間、それを守ることのできるゲッターロボ。
そうそれが「真ゲッターロボ」であった。
1つ目については国際社会のすでに要人となっていたコーウェンとスティンガーが、2つ目のパイロットの新人類は隼人と敷島博士が、そして真ゲッターロボと真ドラゴンそのものは死んだことになっている早乙女博士が担当していた。
計画の最大の障害となる「流竜馬」の排除。
ここまでの計画はうまくいっていたが、それぞれの思惑は異なっていた。
すでにインベーダーに寄生されていたコーウェンとスティンガーは「真ドラゴン計画」を利用して地球を「ゲッター線の太陽」にすること。
早乙女博士は娘に寄生し、弄んだ「インベーダーの殲滅」。
敷島博士は「ゲッター線と人の進化の行く末」を見ること。
そして隼人の望みは・・・。
隼人が正気に返った時にはすでに手遅れだった。
計画はすでに動き出していた。
すでに核となる「號」以外のパイロット、竜馬と隼人のクローン「ゴール」と「ブライ」は完成していた。
隼人は実は一番まともだった敷島と共に計画を止めるため動いたのだった。
キーとなる「號」はミチルの細胞を使用していること、さらに真ドラゴンを止めるためにも必要なことから破棄することはできなかった。
隼人と敷島博士は、「號」を奪われないために日本軍に託そうとした。
国連軍はすでにコーウェンとスティンガーの支配下にあったからだ。
それに日本軍には弁慶、そして元気の面倒を見るために一線を退いてた武蔵もいた。
隼人と敷島博士が、「號」を弁慶や武蔵に引き渡そうとした時だった。
コーウェンとスティンガーの命を受けたインベーダーが「號」を奪いに襲撃に来たのだ。
隼人のゲッター2、武蔵のゲッター3がインベーダーを迎え撃ったが、計画を急ぐ早乙女博士が真ゲッターロボを使い漁夫の利を得て「號」を奪った。
すでに早乙女研究所には必要となる真ドラゴンの材料の「ゲッターロボG軍団」、パイロットとなる「號」「ゴール」「ブライ」があったことから早乙女博士は単独で「真ドラゴン計画」の実行に踏み切った。
日本軍は、真ドラゴン計画を阻止するためのジョーカー「流竜馬」を解き放った。
隼人も武蔵も早乙女博士を止めるために集結した。
だが計画は進み、「號」は覚醒し、ゲッターG軍団は、不完全ながらも「真ドラゴン」へと合体した。
ここまでは計画が順調だったが、コーウェンとスティンガーによりすでに制御不能にされていた「ゴール」「ブライ」の暴走、さらに「インベーダー」の襲来。
インベーダーは、真ドラゴンと真ゲッターから発する「ゲッター線」を吸収し、数を増やしインベーダーの森を作り出した。
それが恐竜時代に退化していたのは、インベーダーが「ゲッター線」に受け入れられずに進化できないことを示していた。
国連軍は「真ドラゴン」を破壊するために「重陽子爆弾」を投下することを決定したが、それは中途半端な状態での「真ドラゴン」のゲッター線解放であり、インベーダー側であるコーウェンとスティンガーにも不都合であり、真ドラゴン計画を実行する早乙女博士にも好ましいことではなく、当然計画を止めようとする竜馬達にも世界の崩壊を加速させることに他ならないものだった。
結果、重陽子爆弾は真ドラゴンに落ち、真ドラゴンの不十分なゲッター線が解放され、地球全体がゲッター線汚染されたのだった。
その過程で武蔵は死に、早乙女博士もインベーダーに寄生されたのだ。
そうあの戦いで「巴武蔵」は死んだのだ!
1983年
3月15日
ユーラシア大陸北 カラ海上
ソ連から西ヨーロッパへ向かうソ連軍籍の船に竜馬が乗っていた。
竜馬は、ゲッター2とゲッター3が戦闘した場所グダニスクを目指していた。
グダニスクに、対BETA前線基地ができつつあるという話は聞いていた。
実際ソ連はかなり協力的であった。
それがゲッターロボへの興味か、はたまた他のなにかなのかはわからなかったがしかし、御剣雷電が手を尽くしてくれていたのは明らかだった。
竜馬は感謝はしていたが、それ以上にオルタネィティブ計画研究所で見たカプセルの中にいた無数の武蔵の幻への怒りの方が勝っていた。
(最悪の場合、俺は隼人、武蔵2人を殺さなければならないのか。)
考えるだけで憂鬱だった。
何がゲッターチームリーダーだ。
だが、俺にしかできないことだった。
リーダーとしての責務を果たす。
「なんて顔してるんですか」
白衣を着た女性。エヴァが竜馬に声をかけた。
彼女は、このソ連船唯一のオルタネィテウィブ計画関係者だった。
竜馬を監視するために派遣されているのだろう。
「また覗き見でもしたのか?」
「今のは能力を使わなくてもわかりますよ。」
苦悩する竜馬をエヴァは本心で案じていた。
「話してくれませんか?」
「何を?」
「あなたのことですよ。今何に苦しんでいるのかを」
「そんなもん俺が言わなくてもわかるんだろうが」
エヴァは微笑みながら
「あなたの口から聞くことに意味があるんですよ。」
と答えた。
竜馬の目にエヴァの微笑みがミチルと重なった。
竜馬は事の始まりから話し始めた。
早乙女博士にある日拉致され、ゲッターロボのパイロットとして無理矢理乗らされたこと。
そこから隼人、武蔵、ミチル、元気、弁慶との出会い。
そして約10年に及ぶインベーダーとの月世界戦争。
エヴァには竜馬が楽しそうに話しているように感じられた。
インベーダーとの戦いは苛烈だったが、仲間がいた。
仲間は同じ道を歩んでいた。
道が分かれたのはやはり「ミチルの死」だった。
あれは事故だった。
だが、竜馬と隼人が殺したと言われればそれはそうだった。
あの事故から隼人と早乙女博士は研究所に籠るようになり、竜馬はゲッターロボGの開発に力を入れていた。
そして早乙女博士に突然呼び出された竜馬は隼人に殺人の罪を着させられて、A級刑務所へ閉じ込められることとなった。
「俺は隼人と早乙女のジジイを殺すつもりだったが、分からなくなってきた。」
御剣雷電に復讐を成した後の竜馬を。
本当に自身の手で仲間をバラバラにする意味を問いかけられ、今ここにいるエヴァに未だ隼人や早乙女博士、かつての仲間を信じている心の内を暴かれた。
エヴァは何も言わず竜馬をただ見つめていた。
本当にこの男が宇宙の侵略者になるのだろうか。
仲間を思う竜馬の心はあまりに普通の人間だった。
もしかしたら、私はちょうどターニングポイントに立っているのかもしれない。
ここで竜馬に人の心を失わせるような行為をさせれば、あの巨大戦艦に乗っていた男になるのかもしれない。
エヴァにはどうすればいいのかわからなかった。
どちらの竜馬が見たいのか決めかねていた。
だが竜馬の選択、そしてその行く末を見てみたいと思った。
彼女にまだ生きる理由がまた一つ増えた。
だが思わず言ってしまった。
「きっとそのミチルさんはあなた達が争うことは望んでいないでしょうね。」と。
竜馬は「そうだろうな。」と呟いた。
そしてそれすら気づけていなかった自分が怒りに目が眩んでいたことを自覚した。
竜馬は変わりつつあった。
隼人への殺意は依然あったがそれよりも殺したいのは「武蔵の偽物」だった。
あのデジャヴは一体何なのか。
武蔵が偽物なのだとしたら。
本物の武蔵は一体どこへ行ったのか。
竜馬を乗せた船はグダニスクへと向かう。
武蔵、弁慶そして2機のゲッターロボがいる地へと。
原作真ゲッターロボ 世界最後の日 1から3話の私の解釈ですね。
真ドラゴン計画については当時発売されたムック本に書いてあるので公式設定ですね。
まさか令和に動く巴武蔵司令官が見れるとは思ってなかったです。
ネタバレなしの各話解説を活動報告に上げようと思います。