アカメが斬る!~狼少年と嘘つき少女~   作:クラッシックス

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第二話:実力を喰う ~前編~

「ん………」

 

 朝。部屋の窓ガラスから差し込む太陽の眩しい光が顔に当たり、意識がうっすらと覚醒する。

 出来ればもうちょっと寝ていたいので、寝る前に確認しておいた部屋の位置からして、窓ガラスの反対方向に目を背ける。暗くなった。

 と思いきや、また瞼を閉じていても感じる光がこちらへ移動。物理法則もへったくれもない移動。いやおかしいだろと段々覚醒してきた脳内で呟くも、やはり寝ていたいので今度は毛布の中に潜り込む。

 

「いや起きなさいよ」

 

 馴染みのある声のツッコミが毛布の外から聞こえ、俺が潜り込んだ毛布をガッと掴み、無理やり引き剥がす。しかし俺はそれでも諦めない。それどころか、コイツがここに来て起こしに来る時点で起きたくない。と言うか起きたら負けな気がする。

 と言う訳で、今度はうつ伏せの状態で目に光が入らないようにする。流石に相手も本人をどかして目に光を当てるわけにはいかないので、一時的にう~んと唸るも、暫く時間がたつとその声はもう聞こえなくなっていた。

 

 ガシッ

 

「うにゃぁ!?」

 

「あ……ゴメン。なんか可愛かったからつい……って言うかルートって尻尾あったんだ……」

 

 なんか変な感覚がして、とてつもなく変な声を上げる。それと同時に、触っちゃいけなかったんだと申し訳なさそうなクランの声が聞こえた。

 うつ伏せになっていたから、普段は出さない尻尾が露わになっていたのだ。…………え?何故出さないのかって?……ついさっきみたいな事になるからだよッ!!

 

「と、とりあえず尻尾は触らないで!!マジで!!」

 

 赤面した状態で慌てて付け加える。恥ずかしそうに目を瞑り、俺はなんて変な声を出してしまったんだと後悔してももう遅い。それは置いておいて、クランが納得してくれたかがどうかだ。そう思い、薄らと目を開けてみるも……

 

「へ~ルートの尻尾って触っちゃ駄目なんだ~」

 

 逆効果だった。クランは物凄いニヤニヤした顔で俺を見下ろしていた。ついでに片手には懐中電灯を持っている。あ、これは弱み握られたなと思い、自分の愚かな行為に唯でさえピンク色に染まっていた顔が真っ赤になってしまった。顔を触ってみると凄く熱い。多分39℃以上。もっと詳しく言うと、この歳になってもソプラノボイスなのをクランに暴露された時より、尻尾を掴まれるとこんな反応をすることを知られた方が恥ずかしいと言う訳だ。ソプラノボイス暴露<尻尾の反応。尻尾の反応をクランに知られた=死を意味する。もう訳分からん。

 つまりそれくらい恥ずかしいと言う訳だ。尻尾の存在を知られたのと、この反応。なんのためのボロキレだよマジで。

 

「……いつまでも恥ずかしがってないで、シャキッとしなさい。口調は男なのに、行動がコレだから女の子に見間違えられるのよ」

 

「うっ……」

 

 呆れたクランの声が嫌でも耳に入ってくる。

 大当たりです。はい。図星でした。動作が女っぽいのはもはや癖です。はい。無意識なんです。許して下さいお願いします。せめて女の子っぽくても良いから男として見て下さいお願いします。

 

「そういう所も」

 

「…………」

 

「そんなメソメソしてないで、顔でも洗ってきたらどう?」

 

 そう言われ、俺はクランに腕を引っ張られ無理やり立たされる。背中をドンと押されて、一瞬つまずきそうになったものの、何とかこらえて洗面所へ向かった。

 

 ジャー……

 

 とりあえず水を流して顔をバシャッと三回ほど洗う。昨日のタオルのあまり濡れていない奴を取り出し、顔を拭く。さっさと拭き終わった後、不意に鏡を見てみると、やはり相変わらず女顔の自分が居た。ただえさえボサボサな髪だが、それでもやはり寝癖は目立つため、異様に跳ねているところは丁寧に直す。意外とすぐに元に戻った。

 

「朝食ここに置いておくから食べておいてねー」

 

 洗面所の外からクランの陽気な声が聞こえた。適当に返事を返しておいて、残りの無駄な寝癖を全て直し洗面所へ出る。クランの姿はもう無かった。

 

 あれ……おかしいな?ドアが閉まる音はしなかったはずだけど……

 

 おかしいなと首を傾げるも、いくら見渡してもクランの姿は見当たらないので、取り合えず木製のテーブルに置かれていたパンを掴み、千切って口の中に放り込む。

 暫く黙って租借したところで飲む込む。これをただひたすら繰り返すだけの作業である。

 よくよく考えると、食事の最中って結構暇だと思う。こう言う一人の時こそ人が恋しい。クランは例外だが。どうせ振り回されるだけだし。

 そろそろお腹も膨らんできたところで、食事を辞めて血みどろリュックに袋でくるめたパンを放り込む。

 

 トントン

 

「ルート様宛に手紙が届いてます……」

 

 リュックにパンを放り込んだと同時に、ドアの方から音が響いてきた。何事かとドアへ近づいて、そっと開けてみたものの、周りを確認したところ人の気配は無かった。

 何かの聞き間違いかと思ってドアを閉めたが、聞き間違いではなかったらしい。閉めた後に床を見て気がついたが、そこには白い封筒が落ちてあった。きっとドアの隙間に滑り込ませていたのだろう。さっと屈んで手紙の封を開け、中身を呼んでみる。

 

『ルート様。貴方様を一時的に一等兵として承認いたします。出来るだけ私生活に必要な荷物を持って、以下の地図に記されている場所に10時までにご集合ください。もし遅れた場合、この承認は無効となりますのでご注意ください。』

 

「へ~ルートもその手紙届いたんだ」

 

「ウワッ!?いつからそこに!!」

 

 いつの間にかクランが俺の背後に立って、手紙を覗きながらニヤニヤしていた。気配すら感じなかったのでかなり驚いてしまった。俺はドアを開けて顔を少し出して周りを見渡しただけだし、ドアの隙間から入れるような事は……あっ

 

「おやおや?その顔はどうやら察したみたいだね」

 

「ぐぬぬ……」

 

 そう。あの時帰ったわけではないのだ。ただでさえ聴力の良い俺が、クランがドアを閉めて帰る音など聞き逃すはずが無い。だけど周りを見回しても居なかったと言う事は、どうせベッドの隙間に隠れていたりでもしたのだろう。

 クランが口角を上げながら、とても嬉しそうに言う。

 

「それにしてもルートがパンを美味しそうに食べながら足をブラブラしているものだから、もうホント私見入っちゃったわ~」

 

「マジで!?俺そんな風に足ブラブラさせながら美味しそうに食べてた!?」

 

「ウン。物凄く可愛かったよ~もうホント女の子みたい♪」

 

「ぐぬぬぬ……」

 

「嘘だけど」

 

「嘘なのかよ!!」

 

 朝っぱらからこの騒ぎ様。本当に疲れる。と言うか、クランのせいでいつもの数十倍のストレスは感じてると思う。神様、アンタどんだけ俺の事が嫌いなんだよ。一日だけでも良いから、コイツと一度離れさせてくれ。

 大分疲れた顔になりながらも、手紙を懐にしまいベッドを椅子の代わりに座り込む。それとは別に、クランはテーブルの上に座る。テーブルは座るもんじゃないだろと心の中で突っ込むも、口に出したら面倒なことになりかねないので口に出さないでおこう。

 

「………………」

 

「………………」

 

「……………………………………………………」

 

「……………………………………………………ん?」

 

「いや、ん?じゃないでしょ」

 

「え?」

 

「え?でも無い!!収集が掛かってるんでしょ!?荷造り済ませたならもう行くわよ!」

 

「え、でもクラン……」

 

「私も手紙は届いてるから大丈夫!心配無用!!さっさと行くわよ!!」

 

 そう言うとクランは、俺の大量の荷物を担いで俺を引っ張る。毎回思うが、その体でどこからこの怪力が生まれてくるんだと思いながら、ズリズリと引きずられていった。階段をズタズタと降り、ロビーへ直行。お金を払って扉を開く。するとクランは閃いたように俺をつかんでいる手を離してパンッと手を叩くと、俺に向かってニコニコしながらこう言った。

 

「ね、まだ時間があるから洋服でも買いに行かない?」

 

「………は?」

 

「問答無用!じゃ、行くわよ~♪」

 

「え、ちょ待ってエエエ……」

 

 流石に服を買うテンションにはなれないので抵抗してみるも、その抵抗も空しく、俺はただ女の子にズリズリを引きずられて行く状態となった。

 

 ※

 

「はい、手紙に書いてあった集合場所に到着!!」

 

「ソウダネ……」

 

「どうしたの?テンション上げていかないと」

 

「……お前なぁ……確かに服を買いに行ったけどさ、何で俺の分まで……しかもそ内半分が女物……」

 

 そう。あのあと俺たちは服を買いに行ったのだ。買いに行ったまでは良いんだが、そのあとが問題だ。俺がクランに要望したのは(と言うかクランが無理やり買って来るからとゴリ押しだった)、『出来るだけ尻尾が見えないようにする服装』と言ったのだが、やっぱり男物にそんな尻尾を隠せるような服装など無く、さらにサイズがデカイ奴しかなかったため、流石に使えるものではなかった。

 せめてクランに、『尻尾は見えてても良いから』と懇願するも、流石にブカブカなのを着せるわけにもいかないと言い、女物を購入させられた。無理やり。しかもゴシックである。ボロキレのほうがまだマシだったと思った。

 流石に女物を着るわけにもいかないので、今は購入する時に視界に入った、丁度いいサイズのあずき色のローブを来ている。これも一応女物だが、柄がツタをイメージしたような感じだったので、唯一着るのに抵抗が無かった。

 まあ一つ言える事がある。このゴシックロリータは俺が女とかにならない限り絶対に無いと思う。間違ってでもないだろう。これだけは言える自信があった。

 ついでに、だったら買わないでいいとも言ったのだが、クランは「お金は腐るほどあるから大丈夫」と言って聞かなかった。

 

「なーに一人で悩んでるの。ほら、さっさと入るわよ」

 

 クランが呆れたように言うと、ローブにあるフードの部分を引っ張って無理やり連れて行く。豪勢な建物の扉を開け、スタスタと入って行くと、そこにはもう先客が数名居た。

 

「あら?貴女達も新入りさん?私、レーズって言うの。よろしくね」

 

 ドアを開けたすぐ隣の長椅子に座っていた、茶髪サイドテールの女の子が俺たちに挨拶をする。俺らは軽く会釈し、受け付けを済ませに行った。

 

「クランと……ルートと……ン、これで全部の様だな」

 

 受付の人がそう言うと、そのまま何処かへ行ってしまった。どうやら俺たちが最後だったらしい。皆早いなと思いながらも、レーズの隣に腰を掛ける。なんかレーズからジロジロ見られているような気がするが、気にしない。心なしか、距離が段々近くなっている気がする。

 

「レーズだっけ?ソイツ男よ」

 

「え!?この娘男の子なの!?」

 

 クランが冷静に発言した言葉に驚くレーズ。いや、だから近いって。

 

「私初めて男の子に恋しちゃったかも……」

 

 スミマセン。本人は超ボソッて言ったつもりなんでしょうけど、バッチリ聞こえました。はい。ゴメンなさい。そしてコイツレズだった。発言的に大分レズだった。もうこれ、精神的に俺がヤバい。とりあえず離れて下さい。

 と、自分の貞操に危機感を感じていたところで―――

 

「おお、全員そろったようだな!それじゃ、今からテストするぞ~」

 

 ナイスタイミング!!誰だか知らないけど!

 誰だか知らないが、細身の体をしており、筋肉はしっかりついてある強そうな人が出てきたため、レーズは慌てて姿勢を直す。どうやら気付かれなかったようで、一時的にアタフタしていたが、気付いていないのを確認して、安堵の息を吐いていた。

 

「あの……質問良いでしょうか?」

 

 どこからか声が聞こえたので、声が聞こえた方向に振り替える。クランの隣に座っていた赤毛の少年が手を挙げていた。

 

「ああ、いいぞ」

 

「ありがとうございます。あの、非常に失礼極まりないのですが……お名前は………」

 

 赤毛の少年がそう言うと、何故か皆はシンと静まり返っていた。強そうな人も、それを今聞くかとでも言うように口を開いている。少しばかり時間がたつと、質問された本人は直ぐに我に返り、自分の名前を告げる。

 

「お、おう。俺の名前はアーツェだ!アーツェ将軍。そう呼んでくれ!!」

 

 静まり返った状況から一変、名前を聞いた途端にざわざわと騒ぎ始めた。ちなみに俺は、何故こんなに騒ぎ始めるのかが分からない。名前を聞いただけで騒ぎ始めるような要素なんてあっただろうか?

 何故騒ぎ始めるのかが理由が分からないため、クランの服の袖をチョイチョイと引っ張って質問する。

 

「アーツェ将軍って?」

 

「そっか、ルートは村とかそういう所に住んでいないから分からないかもね」

 

 そう言われたのでコクコクを頷く。クランは面倒とでも言いたげに頭を掻いたが、それでもどういう人物なのか説明し始めた。

 

「アーツェ将軍って言う人は―――」

 

 アーツェ将軍。帝国最強と言われるエスデス将軍には敵わないが、数々の将軍の中で帝都の五本指に入ると言われている将軍である。

 能天気で気分屋な性格をしているが、それなりに実力はあるらしく、これまで回収してきた帝具は三つ。しかもその本人は帝具持ちでは無いため、アーツェ将軍が帝具を持てば、エスデス将軍と実力は並ぶのではないかと言われている。彼に似合う帝具は幾らでもあるのだが、彼は帝都では珍しい、弓を主要武器としているため、その武器にこだわりがありすぎるせいか弓の威力を引き出せる。また、弓の帝具を求めている。これらの事からアーツェ将軍についた二つ名は、「彷徨いの追及者アーツェ」である。

 ちなみに細身で高身長であり、金髪でかなり整ったイケメンなため、女性のファンも多いとか。

 

「そんなに強いのかあの人……」

 

「本人の性格もあって、部下からは大分慕われているらしいわ」

 

「へ~教えてくれてありがとな」

 

「どういたしまして」

 

「……コホン、さて騒がしいのも程々にして、そろそろテストと行こうか。新兵達、ついてこい」

 

 そう言うと、アーツェ将軍はスタスタとこの場を離れていく。俺たちは慌てて荷物を担いで、将軍の後をついていった。豪勢な室内をゾロゾロと歩いて行くうちに、段々と普通の道へと変わっていき、アーツェ将軍が足をとめた時には豪勢な面影はすべて消え、暗い室内と木造の床に変化していた。

 それと同時に一人の少年の声が聞こえた。

 

「あ、あの、テストの内容とは……」

 

「見ればわかる」

 

 そう言うと、アーツェ将軍は壁のある所まで行き、スイッチがある所に手を掛けた。

 

 パチッ

 

 無機質な音とともに明かりが付く。暗い所に居たため、俺は急な光に馴れず手で目を覆う。

 

「これが今回の会場だ」

 

 とても楽しそうなアーツェ将軍の声。それと同時に、早めに光に馴れた者達が一斉に吃驚の声を上げる。俺も何事かと思い、まだ上手く光に馴れていない目で暗闇だった先を見る。

 

「おお……凄ェ広い……」

 

 広い空間。部屋なのに砂と砂利を含んだ地面。さまざまな大量の遮蔽物。その光景はまるで、戦場をそのまま表したような光景だった。皆が驚きの目をしている中、アーツェ将軍はそのまま淡々と告げる。

 

「ルールは簡単。今から俺と一人一人、五分間手合わせしてもらう。その間に俺の攻撃から最後まで耐えられれば、そいつは速攻で一等兵だ。もしその前に気絶してしまえば、そいつは二等兵スタート。だが五分間もたたず気絶しちまっても、実力のある者は一等兵スタートとする。ただそれだけだ。俺も弓は使わず素手で行く。お前らは銃でも武器でも何でも持て。実弾入りでな。流石に八人全てテストするのは無理だから、それでも根性がある奴は俺に申し出ろ。八人中四人は俺と戦わせてやる。自分の力に自信がある奴は遠慮せず名乗り出ろ!!」

 

 凄まじい迫力でルールの説明を終えた後、暫くシンと静まり返る。だが、皆が皆静かにしている中、一人だけ声を出した者が居た。

 

「私、やります」

 

 声がした先。七人の視線が一斉に寄せられる。……真っ先に名乗り出たのはクランだった。いつもの雰囲気とは違う、今までの雰囲気とは全く違うのは一目瞭然だった。

 

「良い気合いだ。こっちへ来い」

 

 そう言うと、アーツェ将軍はそのままスタスタと戦闘会場へ向かう。クランも自分の荷物から幾つかのナイフと短剣を取り出し、足についてあるホルダーにナイフ。短剣を腰にある鞘に差し込んだ。

 

 ※

 

「自分の好きな場所に隠れろ」

 

 私の目の前にいる男……アーツェ将軍が余裕な表情で私に言う。しかし私は、そんなハンデには乗らずに首を横に振った。

 

「ここでいいです」

 

「フッ……随分と舐められたものだな」

 

 そう言うと、アーツェ将軍は懐から一枚のコインを取り出し、それを思いっきり上空へ投げた。

 察するに、このコインが落ちた瞬間が戦闘の合図らしい。私は一瞬でも隙を作らないために、そのコインを凝視する。出来るならば………音がこっちの耳に響く前に動きたい。

 コインの落ちる速度がゆっくりになったような気がした。

 

 チャリィィン…………

 

 ズドッ

 

 凄まじい地面の蹴りと同時に、瞬時に短剣を引き抜き、アーツェ将軍の間合いを詰める。

 

「フッ」

 

 パシィ!!

 

「勢い、良し」

 

 全力で振りかざした短剣を、右手の人差し指と中指の隙間に挟んで止められる。短剣を握っている手を離し、足にあるナイフホルダーに手を掛けようとするが……

 

「させないよ」

 

 それを遮るように、アーツェ将軍の左拳が私の腹へ飛んでくる。ナイフホルダーに一時近づけた腕を、相手が狙っている箇所に構えガード。これなら防げる。

 

 しかしそれは大きな誤算だった。

 

 ズドォン!

 

「カハッ……」

 

 アーツェ将軍の左拳は抑えれたものの、勢いが強すぎてそのまま後方に吹き飛ばされた。そのまま一直線に吹き飛ばされたため、後ろにあった岩に叩きつけられ息が出来なくなる。

 強烈な一撃。しかし、骨折しないレベルの攻撃。それでいて力を拡散せず一点に集中攻撃。精密に計算された攻撃だった。この吹き飛びようも納得できる。

 

 カランカラン

 

「それ、お前の短剣だろ?返すぜ」

 

 私が地面を見ると、そこにはついさっきガードされた短剣が転がっていた。私はその短剣をつかみ、腰の鞘に入れる。残り時間は解からない。それを知るのはアーツェ将軍の腕に装着してある腕時計だけ。精々始まって一分程度だろう。合格のためにも時間を稼がないと。

 そう思い、足にあるナイフホルダーに手を掛け、八本のナイフを取り出す。

 

 シュバッ

 

 一本一本、移動しながらタイミングをずらし投射。

 

「へえ、そんな器用なこともできるのか!!」

 

 驚いたそぶりを見せながらも、器用にそれを避けていく将軍。流石、将軍の名はダテでは無いのが見て解かる。

 だが―――

 

「ナイフに気を取られ過ぎですよ」

 

 今度は後ろからの短剣に寄る突き。こんな攻撃が通じないのは解かっている。だが、裏は取れた。

 

「よっと」

 

 パシィ!

 

 アーツェ将軍は自分の背中を反り、ブリッジのような体制で両手を使い、私の攻撃を止める。

 私は直ぐに攻撃されないよう、短剣を離して相手との距離を空ける。

 

「スピード問題なし。気配は丸出しだな。だが裏を取ることはできる。反応も十分。基礎能力は問題なし」

 

 ピピピピピピピピピピピッ!!

 

「お、もう五分たったのか」

 

 そう言ってアーツェ将軍は自分についてある腕時計の音を止める。ピッと音が止んだ時、彼は私の顔を見て、距離の開いた状態の中、手を差し出して、こう言い放った。

 

「クランペット。一等兵昇格おめでとう!!」

 

 やはり冷静になっていても、嬉しい時はどんな状況でも顔が綻んでしまうらしい。私は将軍との距離を縮め、差し出された手を素直に掴み、

 

「ありがとうございます!!」

 

 しっかりと相手の手を握り締め、満面の笑みでそう答えた。




どーも。作者です。
原作者さんの名前付けが簡単なので、私もそれに合わせる事にしました。

クランペットは後々所持する帝具をもじった名前。(後々気付いたけど軽いネタバレ)
ルート君は方向音痴だからルート。
レーズは見ての通り、レズ。
アーツェ将軍は弓使いだから。
覚えやすいでしょう?

ついでに尻尾のあの反応は……saoパクりました。ま、良いんですよこう言う設定でも。これから楽しくやっていけるんですから。

これからは週に1~2回の投稿ペースになると思います。
これからも作者の娯楽で作り上げた作品をよろしくお願いします。
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