アカメが斬る!~狼少年と嘘つき少女~   作:クラッシックス

5 / 6
すみません。投稿がまたしてもかなり遅れました。
ですが、それなりの事情がありますので、どうか作者の言い訳を聞いてください。


第四話:実力を喰う ~後編~

 もう始まってから、この場所に停止しながらすでに約一時間程度の時間が過ぎていた。普段なら、下手をすれば0分。多くて20分の時間しか必要のないこの試験だ。この試験に、かなりの多くの時間を費やしている理由は、普通の試験とは違う、異常なまでのプレッシャーと恐怖に耐えきれない。または、勇気が足りず、大人しく一歩引いてる輩が多いからだろう。自分も決して例外ではない。一応ではあるものの、今は身を引いている。

 

「クラン。もしもの話なんだけどさぁ……」

 

未だ数分。……実際にはたった数秒だったのかもしれない。あまりにも進展が無さ過ぎるため、ルートは焦れて、クランに口を開いた。

 

「……何?くすぐりの刑三時間と黒板爪引っ掻きの刑の減軽願いは聞かないわよ」

 

「うんソウダネ。でさ……えっと」

 

クランの冗談?を軽く一蹴したのは良いものの、これは言って良いのか悪いのかの区別が付かず、喉からでたのは空気だけだった。

 

「何よ。さっさと言いなさいよ」

 

だが、クランもルートと同じ様に焦れた様子で、急かすように口を開く。

ルートは、急かすクランに、仕方なしと意を決し、口を開いた。

 

「……これ、俺合格しなかったらどうすればいいんだ?」

 

「……まぁ私達は離れ離れでしょうね。私はどうでも良いけど、アンタは別でしょ」

 

「……あぁ」

 

やっぱり、それは逃れきることのない事実なのだろう。確かに、クランの方は別に深い意味などでは無い。ルートが居なくなっただけ。それで終わりである。だが、クランの言う通り―――俺の事となれば話は別である。

考えればすぐに分かる話だ。負けたらクランとさよなら。ただそれだけ。

ただ俺には、クランに依存しなければならない理由が、既にあった。

まず一つ。俺は、帝都の情報などは、まず無に等しい。誰であろうと、知らない所に放り込まれれば、まずはここが何処かと場所を確認するものだ。そりゃあ俺だって、知らない森に入った時は、ここは何処だと色々と探索したものだ。どこに水飲み場があるのか、寝床はどこに作れそうか、みたいな事は最低限。調子が良ければ、効率良く狩りが行えるような場所を探したりもしてた。

だがしかし、今回は話しは別。郷に入っては郷に従え。人と人が交差する街並みで、ルールが存在しないはずがなかった。盗人になれば、間違いなく殺しにかかってくるだろう。ルートは、それを回避することはできない。

そして二つ。金がない。今は一時的にクランが太っ腹にまけてくれているため、なんとかはなっているものの、宿を取る金さえもなければ、食料を確保する術もない。自然に森の中へ帰る事しか無い。それ一択の選択肢だった。

 

もし負ければ、また最初からやり直し……

 

その恐怖が、ルートの足を竦ませていた、最大の原因だった。

 

しょんぼりとしているルートを見兼ねてか、クランは付き足すように言葉を流す。

 

「やるしかないんじゃないの?最も、やらなきゃ選択肢は一つしか無いわよ」

 

「…………はぁぁぁぁぁ……」

 

 これでもかと言うほど、大きなため息をついて、その後、自分の頬を両手でバシッと、二回叩いた。

痛いだけではあるものの、効果は絶大な自己暗示だ。

 

「痛い……」

 

本当に叩きすぎた。完全に力加減を間違えた。

 

「あはは。折角しめたのに、後味悪いわねぇ」

 

「う、うるせっ」

 

まぁ恰好がつかないのは事実であるため、否定はできない。

 

「俺、やりま……」

 

と、声を止める。目線の先には、既に将軍らしき姿はどこにも見当たらなかった。かわりに、視界に移ったのは床の木目のフローリングだけである。慌てて後ろを向いた。

どうやら、俺たちが様々な思考回路を巡らせている中、すでに先客が居たらしい。

……レーズだ。遠目から見ても分かる。茶色い髪の毛で、右に括った髪。両手には二丁の銃を携えていた。

 

ズガガガガッと、大きな音を立てながら地面を抉る弾丸。もう既に、開始してから数分が経っていたのか、地面には多量の穴によって敷き詰められていた。ハチの巣みたいで少々気持ち悪い。

対して、アーツェ将軍はと言うと……

 

「うわっと」

「あぶねぇ……」

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」

 

なんかもう、見るに堪えなかった。

誰がどう見ようと、ただひたすら逃げている。どうしようもないくらいに、ただひたすら逃げている。

時には、地面に空いた穴に躓いては、こけそうになるところを顔面狙って弾丸が通り過ぎ。

時には、隠れていた岩場が崩れ、残りの弾丸が襲いかかっているのを必死に避けたり。

今の彼の姿には、『将軍』なんて字は無いように思えた。

 

「なぁクラン」

 

「なにかしら」

 

「俺にはレーズの銃撃をアーツェ将軍が必死に避けているようにしか見えないんだが……どう思う?」

 

すると、クランは少しだけ考えるような素振りをし……

 

「まぁ、良いんじゃないかしら?」

 

まぁなんとも酷い答えである。何か裏があるのかとすらも思えない動き方である。銃撃こそ、それはそれで避けているものの、レーズが弾をリロードする時には、そそくさと岩の陰へと隠れる。

まるで、一切進展がないように見えた。

レーズは、それに気付く事無く。

 

「あ……」

 

喉から、自然と声が出ていた。

 

―――気がつけば、レーズは弾を当てるためにと少しずつ前に出ていた。

少しずつではあるが、確実に一歩一歩。小さく進んでいる。

彼女は全力で挑んでいた。アーツェ将軍に弾を当てるために。

だがしかし、その、前に出るという行動は、アーツェ将軍にとっては恐ろしいくらいの計画通りであった。

 

ダァン!

 

一発の銃撃の音。音も動きも、スローモーションのようにゆっくりと動いてるように見える。

アーツェ将軍は、ものの数歩でレーズの間を詰めた。

 

ダァン!

 

二発目の銃撃。急に前に出てきて驚いたのか、慌てて右手に構えていた銃を、アーツェ将軍の進む方向へと軌道修正。だがしかし、動揺が大きすぎたため、標準が大きくぶれていた。アーツェ将軍の右足の近くに弾が落ちる。

 

ダァン!

 

三発目の銃撃。銃口は上を向いていた。左手を掴まれて、銃口を上に向けさせられたのだ。もう既に、アーツェ将軍の左腕は、レーズの右手に向かっていた。

 

ダァン!

 

四発目の銃撃。次の弾も、天井に風穴を開けただけだった。そして―――

 

ズガガガガッ

 

スローモーションのように見えた光景が、急に元に戻った。あまりにも勢いよく片方が吹っ飛んで行ったため、辺りに砂埃が立ち込める。

見る事に意識を奪われていたルートは、砂埃に気が付かないまま息を吸ったため、咽てしまった。

 

ピピピピピピピピピピピッ!!

 

そこで、五分終了の合図。

 

「レーズ。合格。誰か医務室に連れて行け。無いなら後で金渡すから、医療道具買ってきて、そこらへんで治療してやってくれ」

 

「あ、私がやります」

 

クランが声の調子を上げて言うと、急いで彼女が飛ばされていった進行方向に駆け寄った。数秒経って、砂埃が消えゆく中、クランは、足元がおぼつかない彼女を肩で支えながら、もう片方の腕で扉を開け、離脱した。

 

「…………………」

 

俺らはそれを、無言で見ていた。

 

「……やるのか?」

 

「……え?」

 

アーツェ将軍の方を見る。一瞬、もうすでに別の誰かに、最後の権限を使われたと思った。

だが違う。

アーツェ将軍は、ただ真っ直ぐ俺を見据えていた。

否。俺ではない。

気がつけば、自然に上へと向かっていた、その右手を。

 

「……えっ?俺!?」

 

思わず慌てる。そりゃそうだ。無意識に手を上げていたのだ。心の準備と言うものが、まったくされていない。

 

「なんだ。違うのか。じゃあ別の奴」

 

「あァァああ!!やっぱりお願いします!いえやっぱりやめておきます!いえやります!ハイ!ハイ!!」

 

「なんとも落ちつかない奴だな……」

 

彼は苦笑した。まぁ確かに、こんなに慌てた様子であれば、誰であろうと反応に困るだろうが、今はそんな事など、意識の外に吹っ飛んでいた。

 

(ラストチャンス……!)

 

高なる心臓の鼓動を、手で押さえる。実際に抑えることはできないが、手のひらからでも伝わる心臓の鼓動が、激しく自分の手を揺らしていた。

深呼吸を数回する。大きく吸って、大きく吐く。これを数回繰り返して、目を見開いた。

 

「……ほう」

 

アーツェ将軍が興味深そうに俺を見つめてくる。そして、その疑問を俺に向かって飛ばしてきた。

 

「……緊張を抑えたな……よくここまで緊張を抑え切れたもんだ。何処で教わった?」

 

「……狩りをしていれば、当然の事。意識を出していては、相手に感づかれる」

 

「……はははッ、口調も変わるのか!口調が変わるとか、多重人格並の精神の入れ替え方だな!」

 

そう言うと、アーツェ将軍は、こっちに来いとでも言うように指を曲げてくる。俺は大人しく、セッティングされた領域に足を踏み込むと、アーツェ将軍と正面に向かい合うように、姿勢を構えた。

 

「武器は?」

 

必死にアーツェ将軍は目を動かしているが、武器らしいものは何も見当たらない。……それもそうだ。武器など持っていない。というか、必要ない。

 

「十分です。始めましょう」

 

性格すらも変わったような口調で急かされたため、アーツェ将軍は苦笑した。

 

「せっかちだねぇ。分かったよ」

 

そう口を開くと、彼はコインを指で弾くことなく、そのまま手を開いた。

 

チャリン

 

瞬間、二人の間に火花が散った。

 

ギギッギギギギギ……

 

二人の間に、物が軋むような音がする。ルートは、アーツェ将軍に向かって、瞬時にお得意技の、伸びる爪を使って超高速の斬撃をお見舞いしてやった。対してアーツェ将軍の手には……

 

―――コインが一枚、携えられていた。

 

地面に落ちたコインを拾っていては、流石に今の斬撃を直接喰らうところだろう。だが、彼は懐に忍ばせていたコインを使って、ルートの斬撃を防いだのだ。

 

ルートが文句でも言うように、アーツェ将軍の目の前で呟く。

 

「……素手で、挑むんじゃ、なかったんですか?」

 

荒い息遣いで。それに反抗するように、アーツェ将軍が口を開く。

 

「……君のドッキリマシンな体には、こういう措置を取らざるを得ないんだ。想定外って事さ」

 

彼はそう言うと、右手に持っているコインに力を込めて、大きく振りかぶった。

それに対抗するように、同じく大きく振りかぶる。

力の差は歴然であったが、スピードがルートは勝っていたため、アーツェ将軍の斬撃を弾く事が出来た。

 

(……行けるッ)

 

そう思ったルートは、離れた距離を一瞬で詰め直すために、足に大きく力を入れて、今まで離れていた距離を一瞬にして、アーツェ将軍の目と鼻の先までに詰め直した。

 

ガガガガガガガガガガガガガガッ!

 

弾丸の如く、とてつもなく異常な速さの斬撃。まるでマシンガンの射撃音のような音を立てて、アーツェ将軍に一切の隙も与えない斬撃を繰り出した。

アーツェ将軍は、それを冷静に、右手に持ったコインで防いでいく。しかし、あまりにもの速さで動くルートの斬撃に、少しずつ、気圧されるかのように、足が後ろに進んでいた。

 

「うおっ!?」

 

アーツェ将軍の体が後ろに逸れる。ルートはニイッと、口の口角を上にあげた。

……穴だ。レーズの銃撃によって抉られた穴に、アーツェ将軍は踵から躓くように後ろに倒れたのだ。

 

「フッ」

 

息を大きく吐いて、渾身の斬撃をくり出す。しかし、それは空中で、アーツェ将軍の顔に当たることなく止まった。

やはり、先ほどのコインで、見事に防がれていた。

 

アーツェ将軍は、嘲笑するかのように、俺と同じように口角を上げた。そして、自分の腕力だけでルートの爪を押し返してくる。力勝負じゃ負けると分かっているルートは、急いで足に力を入れ、後ろに引いた。

 

……と、今度はルートの視界が揺れる。

 

後方にも、レーズの戦闘の後は残っていた。

しまった。引きすぎたと思った時には、もう遅い。

こんな絶好のチャンスを、将軍が見逃すわけがなかった。

 

「スキありっ」

 

急いで体制を立て直し、アーツェ将軍の攻撃を両手の爪を使って受け止める。しかし、力勝負ではルートが明らかに負けているため、背中が地面を向いたまま、必死に体制を保っていた。

 

「ぐぬぬぬ……」

 

しかし、この状況となってしまえば、速さなど無いに等しい。力をもっている者の方が、圧倒的に有利だと言うのは、誰が見ても明白だった。

 

「クッソ……」

 

今ここで足を使ってしまえば、ルートは安定感を失い、尻を地面に着ける事になる。流石にここまで来てしまっては、取り返しがつかないのは分かっている。とは言えども、他に策が思い浮かばない時点で、『詰み』ではあった。

と、そこで、上を向いているときに、目にチクリと痛みがさした。大きく見開くと流石に痛いので、アーツェ将軍の斬撃にギリギリ耐えながら、目を細める。

 

風穴のあいた天井に、光が差し込んでいた。

 

「ッ!」

 

アーツェ将軍は、ルートの蹴りに反応して、すぐさま少しだけ後ろに引いた。確実に尻もちをついたであろう相手に、勝機は無いと睨んだのか、すぐさま追い打ちを仕掛ける。が―――

 

ガラガラガラガラッ

 

「おっと。危ない」

 

天井が急に崩れ落ちてきて、地面に砂埃を舞い上げた。まるで、アーツェ将軍の進行方向を邪魔するかのように。

アーツェ将軍は面白いものでも見るかのように、上を見ながら顎を撫でて呟いた。

 

「……これが君の奥の手ってわけかい」

 

天井には、五つの斬撃の跡が、少しだけ残っていた。そのうち半分は崩れ落ちたため、あまり原形をとどめていなかったのだが、それでも、届かないはずの天井に斬撃を飛ばしたのは、異常だった。

 

「『真空斬り』」

 

砂埃を一瞬にしてはらい、凄まじい速度の、鎌鼬のような見えない斬撃が襲いかかる。

アーツェ将軍は、砂埃の切れ方を頼りに、その斬撃を回避してみせた。

 

それと同時に、ルートがまたしても勢いよくアーツェ将軍の領域に飛び込んできた。

 

作戦の微塵も感じられない。考える事を捨てた速度の斬撃。流石に腕一本じゃ防ぎきれないと思い、懐からもう一枚、博打用のコインを取り出して、ただひたすら防ぐ。防ぐ防ぐ防ぐ。相手の体力が尽きるその時まで、ただひたすら斬撃を防ぐ。

 

 

 

 

 

ピピピピピピピピピピピッ!!

 

 

 

 

 

 

本日で三度目になるタイマーの音。それが鳴ったと同時に、ルートの斬撃は、今までの事がまるで嘘かのようにピタリと止まった。

 

両方とも、無傷ではあった。アーツェ将軍はまだピンピンとした様子で、ルートを見ている。対してルートは、ぜーぜーと息切れをしていた。

 

「………」

 

無言でルートは右手を差し出してきた。アーツェ将軍は、その手を力強く握ると、にこやかにこう言った。

 

 

 

 

「おめでとう。合格だ」

 

 

 

 




投稿が遅れました。
ですが、どうかこの跡が気を見ている方、作者の言い訳を聞いてください。

最近、文章が不安定で、どうしても上手く文章を書く事ができず、悪戦苦闘しておりました。
今回も、一度は8000字近くパソコンに打ち込んだというのに、文章の構成がまるで別人が書いたかのように不安定で、全部削除致しました。
不安定なのは承知の上ですので、この一ヶ月間。ただひたすら本を読んで、今回はそれを参考?にして書いたものです。

今まで不安定だった文章も内容も、これに合わせたいと思っております。

どうか作者を呆れること無く、この作品をご覧になっている皆様方に感謝の気持ちを込めて、今回は深く謝罪いたします。

是非、このバカバカしい駄文の作品をご覧に入れて下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。