If なんば~ず ~ Sweet Home ~   作:vangence

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平穏って素晴らしい ※死亡フラグ

 ―――――――― 夢をみたんだ

 

 普通の、寝ている間にみる夢だった

 その内容がいやに現実味を帯びていて、今でもその内容を明確に思い出せる

 

 

 

 

 そこは、魔法の世界だった

 

 魔法といっても、子供向けのアニメみたいになんでもできるわけじゃない

 

 魔法は化学で、機械的な世界

 

 その世界に知っている女の子達がいた

 

 女の子達は俗に言う悪者(ヒール)

 

 その子達は限りなく機械に近い人間で

 

 その子達の(作り手)はどうしようもなく、悪人だった

 

 

 

 

 でも、やっぱりそれは俺にとってはただの夢でしかなくて

 

 俺の知っている人達は全然そんなことなくて

 

 みんな穏やかな日常を生きている

 

 気楽にのんべんだらりと

 

 そんな毎日を日々享受されている

 

 それが俺たちにとっての現実

 

 

 

 

 

 

 この物語はそんな俺たちの物語 ――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――― また、見たな。

 時折見る夢。

 いやに現実感満載の気分が悪くなる夢だ。

 

 

 布団から這い出てカーテンを開ける。

 素晴らしいほどの快晴が広がっていた。

 

 

 出だしは最悪であったが、少し気分のいい朝だった 

 

 

 海鳴市は今日も平和です ―――――――――――――――

 

 

 

 

 まだ早い時間だったが朝食をとることにした。

 朝食作りを済ませ皿を並べる。

 今日は手早く作れる目玉焼きにトースト。

 俗に言う『ラ●ュタパン』をつくってみたかったんだよな。

 あれやけに美味そうに見えるんだよ。さすがジ●リ。

 でもそれだけじゃ昼までつらいので、ソーセージに簡単なサラダも作ってみる。

 料理を並べてテーブルに座ろうとするとあることに気づく。

 

 

「っと、飲み物飲み物」

 

 

 台所に行き、冷蔵庫から麦茶のペットボトルを取り出す。

 え? 料理に合わないって? ウチは麦茶主体なんだよ、悪いか?

 誰かに対してツッコミつつキャップを外しコップに麦茶を注ぐ。

 

 

 ここでちょっと自己紹介。

 俺の名前は五代(ゴダイ) (ユウ)

 私立ミッドチルダ学園高等部二年生、現役の高校生だ。

 歳は17 身長は平均 体重も平均。

 個人的に言わせれば特長がないのが特長ってタイプだ。

 個性があるとしたら、多趣味ってことかな、悪く言えば器用貧乏。

 そんなのが俺のステータスってところかな。

 

 

 親は両親共働きで、父親の方は仕事で海外へ、母親もたまにしか帰って来ない。

 そんな感じの親だけど、俺は二人が嫌いじゃない。

 ドラマとかアニメっぽく、「俺を放っておいたくせに!」みたいに思ったりはしたことがない。

 むしろ毎日感謝しとります。出稼ぎご苦労さま。

 

 

 とまぁ、なぜ唐突に自己紹介したくなったんだ俺?

 麦茶注ぎながらしたからコップから麦茶流れ出てしまっていた。

 雑巾でこぼれた麦茶をふき、コップぎりぎりに入れられた麦茶をこぼれないように少しだけ飲みながらテーブルに向かう。

 

 

 

 

 ……テーブルに三人の娘が座っていた。

 これがもし知らない奴らであったならば問題だっただろうが、彼女たちは知り合いだ。

 美しい容姿をしてはいるが、正直言ってかなり痛い娘たちである。

 何故朝っぱらから家に不法侵入を行っているのだろう。

 とりあえずまず最初に言わせてもらいたい。

 

 

「おい、お前等。何で人様の朝食を横取りしてるんだ」

 

 

 人の朝の神聖な食事の時間を奪い去ろうなどなんて奴らだ。

 この質問には三人の内の一人、赤い髪を後ろで束ねたヤツ―――― ウェンディが答えた。

 

 

「あ、悠。おはようッス、朝食いただいてるよ」

「いただいてるよ。じゃねぇよ!?」

 

 

 こいつ真顔で答えやがったぞ。一切の罪悪感を感じないとでも言うのだろうか?

 そんな彼女は悪びれた様子を微塵も見せずに言葉を発する。

 

 

「まぁまぁ、そんな堅いこと言わないで欲しいッス」

「……お前なぁ」

 

 

 一言答えて、再びパンに噛り付くウェンディ。

 いけしゃあしゃあと人の朝飯食いやがって。

 飯の恨みは恐ろしいと習わなかったのだろうか?

 すると同じく赤い髪をショートカットにしたヤツ―――― ノーヴェが文句を言ってくる。

 

 

「うっせーな、別にイイだろ減るもんじゃねぇんだし」

「……ノーヴェ。実際に俺の朝食は消えたぞ?」

「こまけぇこと言ってるからモテねぇんだよ」

 

 

 ……地味に傷つくよその言葉。

 俺だって望んでモテてないん訳じゃないんだ。ただ……そう、まだ時がきてないだけなんだ。

 きっとみんな俺の魅力に気づく日が来るはずなんだ、グスン。

 俺がハートブレイクしていると銀色の長髪をしたロr……二人の姉、チンクがフォローを入れてくる。

 こんな姿をしているが、れっきとした年上だ。

 しかもかなりまともな、お姉さんとも言うべき部類のひと。

 

 

「すまないな、来たらちょうどあったものだからつい、な。許せ」

「チンク姉……謝ってくれるのは嬉しいけど一番食べてるのはチンク姉だよ?」

「……ごめんなさい」

 

 

 チンク姉が相手では頭ごなしに説教をするわけにはいかない。

 口から盛大に大きなため息をついてから三人に尋ねる。

 

 

「どうやって入ってきた?」

 

 

 戸締まりは確かに確認したはずだ。一人暮らしだしな。

 ふと思い出したのだが、俺にはメガネを掛けた知り合いの女性がいるのだが、彼女だったらピッキングとか平気でやらかしそうだ。

 

 

「ユウの母ちゃんから鍵、貰った」

「……あの野郎」

 

 

 でもまあ、ピッキングされて鍵を壊されるよりかは幾分ましか……。

 とはいったものの、面倒な奴らに合い鍵渡すなよ……。

 遠い空の向こうにいる母をこれほど呪った日がかつてあっただろうか、いやない。

 なんとなく反語で回想した後、再び質問をする。

 

 

「で、何しに来たんだ? いつもだったもっと遅いだろ…まさか、ただ人の飯かっさらいに来たんじゃないだろうな?」

 

 

 だとしたら許さない。絶対にだ。

 さっきも言ったが、朝食は俺にとって神聖な時間だ。

 少し大袈裟かもしれないが、せっかく作った朝食を理由もなく奪われるのは気分が悪い。

 万が一にもそのような場合が起きたら、俺の私刑を下さねばなるまい。

 

 

「いふぁ、そふぇひふぁふぁふぇふぁふぁふんふぁ」

「ウェンディ、飲み込んでから話せ。何言ってるかわかんない」

 

 

 というか、人の朝飯食うのやめろ。

 ウェンディはラ●ュタパンを急いでパクつく。

 ……悔しい、少し可愛いと思ってしまった。

 

 

「ングング……ゴクン。いや、それにはわけがあるんだ」

「……へぇ。どんなわけが?」

「そうなんスよ……」

 

 

 そういうとウェンディはわけを話し出す。

 

 

「アタシ、今日は珍しく早く起きて、ノーヴェを起こしてラクロスの練習をしようとしたんだ。で、庭に出るところでいつも朝早いチンク姉にばったり会って、ついでに練習に付き合ってもらうことになった。そしたらユウの家が見えたんだ。で、寝ているだろうから起こしてやろうって思って家の中に入ったんだよ。そしたらテーブルの上に料理があるじゃないか。起きてからアタシら何も食べてなかったんからオナカがへっている。そしたら自然と手が伸びて ――――」

 

 

 

「…………」

「……ユウ、その……すまん」

「いいんだよ、チンク姉……いいんだ」

 

 

 謝らなくてもいいんだ。

 ここまで清々しいと一週まわって怒りすらも感じないな。

 知り合いながら、どうしてこんな娘に育ってしまったのか……。

 これは彼女たちの父に代わって、指導を加える必要があるかもしれない。

 

 

「……ウェンディ」

「だから別に故意にやったわけ「ウェンディ」……どうしたんスか顔がマジっすよ?」

「……ちょっと待ってろ」

 

 

 裏口からコソコソと逃げようとしていた二人を捕まえる。

 

 

「クソ! はーなーせー!」

「悠、少し落ち着くんだ。話せば分かる」

 

 

 ウェンディの所に引きずって座らせる。

 怯えた表情で俺のほうを見てくる三人。そんな顔をしないでくれよ。

 まるで俺が悪いみたいじゃないか。

 

 

「……」

「ゆ……悠さん?」

「おい……黙ってないでなんか言えよ……」

「すまない、私が悪かった。許してくれ……」

 

 

 ……。

 

 

「このことに関してはチンク姉は不問でいいや」

「……!? 本当か!」

「うん。一番食べてたのはチンク姉だけど、チンク姉はさっきから謝ってるからね。戻っていいよ」

「そうか……ユウ、この埋め合わせは必ずするからな」

「そう? ならよろしくね」

「チンク姉だけズルイっす!」

「そうだ! なんでチンク姉だけ」

 

 

 にっこり微笑んで視線を向けると二人とも固まったように押し黙る。

 チンク姉は二人の妹に「すまん」とだけ残して去っていった。

 さて……二人とは少しおはなし(・・・・)をしなければ。

 

 

「……人の物勝手に食べちゃマズイよな?」

「そ……そうッスね……」

「そう、悪いことだ。悪いことをしたらその分、罰を受けなくちゃならない」

「……うぅ」

「……少し待ってろ。逃げたら……な?」

「「は、はい」」

 

 

 部屋に戻って戸棚の奥の二重底から一つの箱を取り出す。

 その箱からは、禍々しいオーラが吹き出しているような錯覚を覚えた。

 再びこれを世に出してしまう日がこようとは……

 しかしこれもあの二人を思ってこそだ。人は痛みを知らなければ成長しないのだ。

 ……決して朝飯を食われた八つ当たりではない。

 箱を持って二人の所にもどる。

 

 

「悠……その頑丈そうな箱なんだよ」

「これか? これはな……」

 

 

 箱を開けるといくつかのガラス瓶が入っており、そのうちの二本を取り出す。

 

 

 

 

「――――――――― 前にクア姉が作った。彼女曰く『調味料』のひとつだ」

 

 

「「―――――――――――――――!?」」

 

 

 逃げだそうとする二人の首根っこを掴み逃がさないようにする。

 

 

「い、いやだ! アタシまだ死にたくないッス!」

「あ、謝るから! 謝るからオレだけでも許してくれ!」

「汚いッスよノーヴェ!」

「うるせぇ! オレもまだ死にたくない!」

 

 

 なんとか近づく死から逃れようと暴れる二人の耳元で、そっと囁く。

 せめてもの優しさとして、少しでも安心して、逝けるように。

 

 

「安心しろ……二人仲良く……な?」

 

 

 

 

「「い、いやあぁぁぁぁぁぁああああああングッ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           どうしようもなく、バカらしくて温かくて優しい日常

 

 

 

 

 

               If なんば~ず ~ Sweet Home ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                     ~ 完 ~

 

 

 

 

 

 

      みんな「「「「「「「「いや終わらせねぇよッッッッ!!?」」」」」」」」

 

 

 

 




2013/7/16  修正
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