恐怖に囚われた少年は舞台を演じる   作:Narvi

10 / 18
 前半ほのぼので後半は……。まあ言わずと知れたものです。
 この作品はきっとそんな構成で作られていきます。出来れば番外編を投稿して、報われた世界も書きたいなあ、と終わる前に考えています。

 何だかんだ内容は頭の中で出来ていますので完結までこぎつけますよ。


第十話 傷んだ心を隠す身体

「どうして……」

 

 シリカはチーズケーキを完食したあと、余韻に浸った後に見られていることに気づいてか顔を赤く染めた。シリカの疑問は恐らく前に来たチーズケーキと全く味が違ったことだろう。

 自分の分のチーズケーキをのんきに口に運びながら、僕はシリカの目を見て言った。

 

「実はこういった宿にくっついているNPCレストランだと、料理器具を貸してくれる場所があるんだよ。だからここもそうかな、と思って行ってみたらそうだったんだよね」

「え? ということは……」

「うん。これは僕が作ったチーズケーキだよ」

「え? えぇぇぇ!?」

 

 シリカは僕の言葉を聞くと、宿内を揺らすほどの大声をあげた。その驚きはよくわかる。中層プレイヤーの中では料理スキルをコンプリートしているものは愚か、目前まで熟練度があるものはいないだろう。

 まあ実際のところ。僕は中層あたりで既に料理スキルをコンプリート寸前まではあげていたのだが、そんなことはシリカは知らない。恐らく上層の方で戦っているプレイヤーという認識にはなっただろう。

 珍しい物をみるようにシリカは僕を見ている。不快感は特にない。

 

「なんで……作ってくれたんですか?」

「単純に作りたくなったのと、少し元気が出るかな、と思って」

 

 そう言うとシリカはくすりと笑った。そして、思い出したかのようにぽつりと呟いた。

 

「なんであんな意地悪言うのかな……」

 

 それは宿の中へ入る前の話だろう。どうやらシリカは大規模なネットゲームはこれが初めてだそうだ。その疑問も無理は無い。

 しかし大規模なネットゲームではこういったことは日常茶飯事、ましてはこれほどまでにリアルを意識して作られているSAOではなおさらだ。

 人間のエゴや悪意がほとんどで、善意などこれっぽちもない。何かを得るには何かしらの対価が必要で、無償の善意など存在しない。それぞれの快楽で人が人を殺すのは、現実世界も仮想世界も何一つとして変わらない。

 

「……人間なんてみんなそんなものだよ」

 

 妬み。嫉み。憎しみ。そんな感情が人間にはたくさん詰まっているのだ。自己中心的思考を惜しげなく開放できるのがこういった架空の世界であり、そんな悪意がこの世界では無数に転がっている。

 

「いうなら、理由はないんだと思うよ」

「理由が……ないんですか?」

 

 そう。理由なんてない。僕は一息つくと言葉を続けた。

 

「ここはゲームの世界であって、現実世界とは違う。実感がないんだよ。自分が意地悪しても、例え殺したとしてもその結果はどこにも残らないから……」

 

 そんな僕の言葉を、シリカはじっと聞いていた。反論することなく。意見することなく。シリカは無言で僕の言葉を肯定してくれた。

 それがとても嬉しかった。

 

「でも……そんなの許せないですよ……」

「そうだね……殺しなんて……許せないよね……」

 

 しかし、その嬉しさとは裏腹にそんな悪意のこもった行為を正当化してしまっている僕がいる。殺すことを許せなくて。許せないから殺す。矛盾した僕の答え。だがそれを変えることは出来なかった。

 

「シグレさんは、とても良い人ですね」

「……え?」

「とても他人思いで……私を助けてくれました」

 

 そう言ってニコッと笑うシリカ。

 ああ、そんな顔を見せないで欲しい。

 

「……あ、ありがと」

 

 そう言うと、シリカはくすくすと笑っていた。僕の中に潜む罪悪感が、ズキズキと心を傷めつけた。

 

 

 

 

 

 二人で食事を楽しんだ後、僕は宿をとった。そこの部屋の隣は何とシリカであり、二人で笑い合うとお休みといってお互い部屋の中へと入っていった。

 

「はぁ……」

 

 僕は疲労したままベットに埋もれるように横になった。その反動でベットは沈んだ。

 シリカはいい人と言った。しかし僕はそんな存在ではない。僕は何人もの人を殺しており、今もなお人を殺すために生き続けている。その行為を正当化しながら。

 

「こんな僕を……みんなはどう思ってるのかな……」

 

 きっと良くは思っていないだろう。このまま寝ようと思っても今は亡き親友たちの最後の言葉がちらつくのだ。

 

『お願い……レイン……。復讐なんていらない……敵討ちなんて……望んでない……』

 

 強く握る短剣に彼女は震える手を添えた。それは僕が短剣を抜くことがわかっていたかのようで、僕は驚いて彼女の方を向いた。その時の彼女は今までで見たこともないほどの悲しそうな顔をしていた。

 

『お願いだから……最後まで生きて……レインだけは……死なないで』

 

 その言葉の後、彼女達はホログラムとなって消え去った。彼女がいなくなったその場には、僕とそれをあざ笑う数人が残った。

 

「そんな約束……守れるわけないじゃん……」

 

 そんな奴らを許せるはずがなかった。あれから半年が経ち、年が明けた今も忘れることは出来なかった。僕は死ぬことは出来ない。だからといって、本当の意味で生きるということは出来ない。

 外の空気を吸ってこよう。そう思い、扉を開けようとするとコンコンと扉から音がなった。

 

「誰?」

「私です……シリカです」

 

 ノックしたのはシリカだった。どうかしたのだろうか。

 

「どうかしたの?」

「いや……あのぅ……よ、四十七層のことを聞きたいなぁと思って!」

「ああ、そういうことね。いいよ」

 

 僕は扉を開けた。シリカは武装を解除しており、とても可愛らしいチェニックを身に纏っている。とてもシリカに似合っていた。

 シリカは部屋をキョロキョロと眺めていた。僕が手招きをして椅子に座らせて、その向かいに僕も座った。テーブルに一つのアイテムを置く。その箱を開いた瞬間、水晶球の綺麗な輝きが姿を見せた。

 

「きれい……」

「これは《ミラージュ・スフィア》というアイテムだよ。僕も初めて使うんだけど……」

 

 そう言いながらそのアイテムを操作した。メニューウィンドウを開き、OKボタンを素早く押すと球体は青く発行して円形のホログラムを生成した。

 このアイテムはアインクラッドの層をまるごと映し出す使い捨てアイテムだ。街で見かける地図とは打って違い、細かな木々や街並みなどを事細かに映しだされている。

 

「ここが主街区だよ。そこから南に進んでいってここが思い出の丘。この思い出の丘にたどり着くにはこの道を進むんだけど、ここらへんのモンスターが結構厄介なんだよね……」

「強いんですか?」

「うーん……別に強いというわけではないんだけど。めんどくさいというか……まあさっきあげた武具があれば多分大丈夫だよ」

 

 シリカにはレベルの差をなんとかするために装備をあげている。同じ短剣使いのため、武器は少し前まで使っていた短剣をあげ、装備は男女共通のものがあったためそれもお下がりのものをあげた。一部女性用防具が余っていたのでそれも全て無償で渡した。

 

「本当にありがとうございます……」

「いや、全然大丈夫だよ。一部はもう使わなくなった装備だし、女性用防具なんて持っていても意味ないしね」

 

 笑いながらそういうとシリカはバツの悪い顔をした。

 説明を終えた後も僕たちは楽しく会話を続けた。扉の向こうから聞き耳を立てる者の気配がして、僕はニヤリと笑みを浮かべた。




 言い方は悪いけどこれを僕のSAO二次創作の土台にして、王道のSAOを書きたいなと思ってます。その前にこれを完結させますが。

 今回は補足を下に書いていきます。

 シリカにチーズケーキを作ってあげていますが、少なくとも僕の原作知識では大きな宿に調理場所と器具の貸出はありません。
 設定を少しいじってみました。ストーリーには特に関係ないので問題はないと思いますが、もし何かあれば教えて下さい。

 レイン君の細かな設定はそろそろ活動報告かあとがきの方で書きたいと思っています。それまでもう少々お待ちを。

 それではここらへんで補足を終わります。実はどうでもいいけど衝撃な事実を一つ隠していますが、それをそろそろ作中に混ぜていきますね。
 何か足りない補足や内容的におかしな部分があれば感想のほうに書いてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。