恐怖に囚われた少年は舞台を演じる   作:Narvi

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 ようやく更新……。ギリギリ一ヶ月経ってないんでセーフ、ですよね?

 テスト終わった結果、全部は返ってきてないけど100点が二教科、最低点との差は約50点です。最低点のテストのほうが勉強したんだけどなぁ。


第十四話 犯罪者に償いの意識は

 ここまで来るのに本当に色んな苦労をしたものだと、僕はシリカに悪いと思いながらも笑ってしまっていた。まさかシリカも、自分がたった今笑われているなんて気づいていないだろう。

 一つ一つが些細なことではあるが、そんなどうでもいいようなことが面白くなったりする。まあ今回の場合、それは仕方のないことでもある。それほど、ここまで来るのに時間がかかってしまったのだ。

 内容の方は言わぬが仏である。思考を切り替えて、僕は目的の場所に指先を向けた。

 

「ほら、あれが《思い出の丘》だよ」

「あれが《思い出の丘》なんですね。見たところ分かれ道はないですけど……」

「迷う心配はないけど、ここからはモンスターの量も多くなってくる。油断はしちゃダメだからね」

 

 そう告げるにも関わらず、シリカの足は段々と早くなっているのがわかった。

 

「はぁ……まあ、今回ばかりは仕方ないか」

 

 自分の相棒――ピナが生き返るのだ。早く生き返らせたいという気持ちが、シリカの進行速度をあげているのだろう。

 僕はそう結論づけて、シリカに近づくモンスターを屠った。何かシリカが物言いたげにこちらを見ているが特に気にせず、シリカのためにも早歩きで思い出の丘までの上り道を進んでいった。

 

「うわぁ……」

 

 着いた瞬間、シリカは感嘆の声をあげた。この場所はこの層のどの場所よりも綺麗だった。周囲の風景によって花々がとても幻想的で美しく見えた。表現するのなら、空中の花畑だろうか。

 

「とうとう着いたね」

「ここに……その花が……」

「うん、そうだよ。真ん中あたりに岩があってそのてっぺんに……」

 

 最後まで聞く前にシリカは走りだした。一瞬見えたシリカの表情は満面の笑みで、僕自身もちょっとした満足感を感じた。

 シリカは丘のてっぺんにある岩まで息を切らしながら駆け寄り、覗きこむ。

 

「え……?」

 

 しかし、そこには何もなかった。僕も急いで駆け寄るが、花らしきものはどこにも見当たらない。

 これはどういうことだろうか。僕はビーストテイマーではないため、もちろんこのクエストは小耳に挟んだ程度でしかない。詳しいことは知らないが、これは情報屋アルゴから聞いた話のため、情報が間違っているとは到底思えない。

 

「ない……ないよ! シグレ君!」

 

 シリカは僕の方を振り向いて、青ざめた表情で叫んだ。その顔には若干の涙が浮かんでおり、僕はその顔をみて一歩、二歩と後退ってしまっていた。

 過去の記憶がよみがえる。そのシリカの顔が、僕をどん底から救い上げてくれた《あの人》の死ぬ瞬間と重なる。

 僕が油断した結果、僕のちょっとした善意に付き合った結果、僕のせいで命を散らしてしまった《あの人》のことを。

 僕をかばうようにしてレッドプレイヤーと僕の間に割り込んだ《あの人》のことを。

 

 たった今起きたことのように、幻を見ているかのように、僕の目の前ではその光景が映っていた。

 目を瞑っても瞼の裏に映像がこびりついて離れない。恐怖感と自分の無力を強く感じて、僕はどうすることも出来ず――

 

「あれ? おかしいな……あ、シリカ! 前を見て!」

 

――いつもの僕を演じた。

 シリカは言葉に反応して僕の指の方向――岩に視線を戻した。

 

「あ……」

 

 シリカの口から小さく声が漏れた。たった今、岩から一本の芽が伸びようとしているところだった。段々と大きく成長していく若芽を僕とシリカは緊張した面持ちで見つめる。

 その若芽はつぼみを作り、そしてそのつぼみはしゃらん、という鈴の心地良い音と共に花開いた。

 シリカはその花に、壊れやすいガラス細工でも持つかのように丁寧にそっと触れた。恐らくその瞬間シリカの目にはネームウィンドウが映っているだろう。視線を少し横にずらすと、一気に顔を綻ばせた。

 

「これで……ピナを生き返らせれるんですね……」

「うん、そうだよ。でもここは危険だから圏内に入ってからにしよう」

「はいっ!」

 

 シリカはすぐに生き返らせたいと思っているが、そうも言ってられない。だからといって貴重な転移結晶を使わせるわけにもいかず、結局僕たちは来た道を引き返していた。転移結晶は身の危険を感じだ時に使うべきだ。それは今ではない。

 シリカは明らかに上機嫌のまま、これといってモンスターに接触することもなく安全な帰路をたどっていた。

 

――だれかいる。

 

 僕の比較的高い索敵スキルが、誰かの存在をとらえた。前に進もうとするシリカの手を取り、静止する。

 人数はそれほど多くはないが、上手くバラけていて僕達を取り囲むような陣形になっている。

 僕は隠れている場所を睨みつけながら、感情のない声で言い放った。

 

「そこに隠れている奴……出てきなよ」

「あら、アタシのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね。少し侮っていたかしら?」

 

 僕の声に釣られて現れた人にシリカは驚いて目を見開いていた。真っ赤な髪を後ろで縛り、真っ黒いレザーアーマーを身に纏っている十字槍を装備した女性に、シリカは見覚えがあった。

 

「ろ……ロザリアさん……!? なんでこんなところに……!?」

「その様子だと、ちゃんと《プネウマの花》はゲット出来たようね。おめでと、シリカちゃん」

 

 どこか怪しいロザリアの言葉に、シリカは数歩下がった。その直感は正しい。その一秒後、ロザリアの口から衝撃の言葉が発せられた。

 

「じゃ、早速その花を渡してちょうだ――」

「そうはいかないなぁ、犯罪者ギルド《タイタンズハンド》のリーダー、ロザリアさん?」

 

 ロザリアの声を遮るように言うと、ロザリアは眉をぴくりと動かし、口からも完全に笑みは消え去った。

 

「犯罪者ギルドって……でもロザリアさんはグリーン……」

「別に全員がオレンジである必要はないし、むしろグリーンがいたほうがこうやって罠にかけやすくもなるんだ。もっとも、この場合はリーダーがただのヘタレってわけなんだけど」

 

 わかりやすく挑発してみると、ロザリアは目元をピクピクとさせており、見てわかるようにキレていた。もうそろそろあちらの沸点も限界だろう。そう思い、僕はシリカに駆け足で話し始める。

 

「ごめん、シリカ。こんなことになっちゃって、それに謝らないといけないこともあるし……戻ったらちゃんと説明するから」

「は、はい……わかりました」

「これを渡しておくから……もしも何かあったら、君だけでも絶対に逃げて。もう何も失いたくはないから……」

 

 押し付けるように転移結晶を渡して、シリカから少し離れる。シリカの表情は少し浮かないものではあったが、転移結晶を受け取るだけで、僕を責めることはなかった。

 きっと僕に聞きたいことがあるだろうが、僕は目の前のロザリアを倒さなければならない。

 黒鉄宮の牢獄へ送る。それが依頼内容だ。依頼人が今まで貯めてきたお金全てを叩いて手に入れただろう回廊結晶は既に牢獄へと繋がっている。

 こんな生きるに値しない者達に依頼主は散々な目にあったにも関わらず、依頼主はこういったのだ。

 

『殺されていった仲間の為にも……これを使って、奴らを黒鉄宮に送ってやってくれッ!!』

 

 依頼主は決して《奴らを殺してくれ》とは言わなかった。そう言った依頼主は、一体どんな気持ちで僕にこの回廊結晶を渡したのだろうか。

 きっと悔しかったに違いない。殺したいほど憎いに決まっている。それなのに、生きる価値もない者共に《生きて償わせようとしている》のだ。

 どうせ、こんな奴らに依頼主の気持ちなんかわからない。

 

「気持ち悪い」

 

 そんな冷めた言葉が口から零れた。その時には既に周りを汚い犯罪者共に囲まれていた。

 

「シグレ君……! 流石にこの人数は、逃げないと……!」

 

 後ろからシリカの心配する声が聞こえる。腐敗しきった空気の中、透き通った声は僕の耳にしっかり届いて、僕は何度目かわからない作り笑顔を浮かべた。

 

「大丈夫だよ、待ってて。すぐに終わるから」

 

 僕は黒く染まった世界を切り裂くように、鋭く短剣を抜いた。

 




 一応最後まで書ける目処が経ったので投稿しました。これからはペースを落とさずに最終話まで行けると思います。
 誤字報告は一切無いのは、僕がタイプミスしていないだけだと思いたい。断じて読者が少ないわけではない……と思いたいな。

 珍しく二重の意味を込めたタイトル。小説書くにあたって閃きは大事。

 ちなみに最終話と言っても、SAOのクリアまでではないです。一応そこまで書くつもりではありますが、第二章完結をこの作品の目標にしているので、プロットは後から書き足す形になってます。
 きっと一章の時のほのぼの展開を重点に置いて書いていく感じです。
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