恐怖に囚われた少年は舞台を演じる   作:Narvi

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 シリカの胸は無いものとしてカウントしたら良いとおm(殴

 ……最後まで言わせて貰えないのがシリカクオリティー。

 何だかんだで更新遅くなりました! 最近は起きる→学校→真っ直ぐバイト→帰宅→就寝→最初に戻るみたいな生活を送っています。
 もうそろそろ過労で倒れそうな寝不足気味の主でした。


第十六話 崩壊した舞台

 僕は静かに息を吐いた。もう周りには誰もいない。犯罪者はほとんどが牢獄へと向かい、一人はこの手で殺した。後ろを向いても、そこにはもう誰もいなかった。

 聞き耳を立てると、草木の揺れる音の中に全速力で走っている時のような必死な足音が聞こえてくる。

 恐らくシリカのだろう。先程までこの場にいたはずのシリカは既に、僕の視野には入らないところまで行ってしまっていた。

 

「ははは……何やってるんだろ、僕は」

 

 自然と乾いた笑いが零れた。本当に、何をしているんだろう。本当なら僕はシリカを無事に圏内に送り届けて、ちゃんと事情を説明しなければならなかった。シリカと共に行動をしていた本当の理由や、囮として使ってしまったことへの謝罪。他にもたくさん話さなければならないことはある。

 

 結果的には囮のような形になってしまったが、ピナを助けたいというのは本心だった。年が近いシリカといるのはとても懐かしいように感じられたし、僕の間違った行動を止めてくれたことも、まだお礼を言えてない。

 

 でも、怖かった。シリカを追いかける勇気なんてものは、僕には存在しなかった。

 

 結局僕は懐かしの場所に来ていた。とある街から少し外れた場所。仲間たちとともに『秘密基地みたいで面白そうだから』という子供みたいなことを言って、みんなでお金を出し合って買ったギルドホームに。

 何で来てしまったかはわからない。あの事件以来、僕は一度もこの場所に戻ってきていなかった。

 僕は重く固いドアを開けて、中に入る。

 

 あの時、あの瞬間に見た光景。長い時間放置されていたこのギルドホームは、決してそうとは思えないほどにありのままの状態を保っていた。

 

「ただいま」

 

 空虚な部屋の中で、僕は呟く。

 

 ――おかえり、レイン!

 

 そう聞こえたような気がした。しかし、彼らはもうこの世界には存在しない。それはもう、既にホログラムとなってキラキラと消えていったのだから。

 そしてそれと同時に、現実世界からもいなくなる。その生命はナーヴギアに脳を焼かれることによって失ってしまう。

 

 ――おかえりなさい、レイン君。

 

 懐かしい声がギルドホーム内をこだまする。誰もいないはずなのに聞こえる声は、どれも聞き覚えのある優しい声だ。乾いた物を潤すように静かに、しかししっかりと僕の耳に入ってくる。

 

 ――おかえりっ! レインっ!

「もう、やめて……!」

 

 僕はその声が聞こえないように耳を塞いだ。自分でこの場所に足を運んだにも関わらず、僕は進むことも戻ることも出来ずにいた。口からこぼれだしたか細い声では、どこかから聞こえてくる声をかき消すことはかなわない。

 

 そして最後に、僕を始まりの街から連れだしてくれたあの人の声が聞こえた。

 

 ――おかえりなさい、レイン。

「やめてよっ!!」

 

 耳をいくら強く塞いでも聞こえてくる温かい声。懐かしいあの日の、あの人の優しい言葉。

 しかしその声の主は――もういない。自然と涙が零れた。自らの手を血で赤く染めてしまった僕には、もう立ち上がることは出来ない。二度と前を向いて歩くことは出来ない。

 僕は目の前の幻影をつかむように手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 そんな冷たい手を温めるように、繋がれるもう一つの手。その手は少し小さく頼りなさを感じさせるが、その手の温もりは僕の固まりきった氷を溶かすようで。

 

「ッ!!」

 

 僕は驚いて勢い良く顔をあげた。滲んだ世界を必死に手で拭うとそこには――

 

「……シリカ」

 

 ――一先程まで一緒だった少女が立っていた。

 

「ど、どうして……」

「ある情報屋から聞いたんです。シグレ君……いえ、レイン君の名前を出したらすぐに教えてくれました」

 

 心当たりはある。この場所を知っているのは今や僕とアルゴの二人しかいない。僕は心のなかで舌打ちをすると、隠すように残っている涙を拭いて笑った。

 

「さっきはごめんね! アルゴからも少し聞いてるんだろうけど、いろいろ嘘もついてきたし結果的に囮みたいに使っちゃったし」

 

 僕の表情筋はいとも簡単に笑顔を作りだした。作り出せたことに対する嬉しさの他に、もう僕の中には存在しないと思っていた罪悪感とが入り交じる。シリカは何も話さない。

 

「こっちの事情に勝手に巻き込んじゃってごめん。本当はああなってしまうこともわかってたのに、この方が早く終わるし、一石二鳥だと思ってさ! 悪気はなかったんだ、ごめん。」

 

 僕はただただ言葉を紡ぐ。笑顔で、明るい口調で、そういうように構成された機械のように言葉を並べ続けた。それでも、シリカは何も言わなかった。ただ僕の顔をじっと見ている。

 

「もしかして、怒ってる? そりゃそうだよね。あんなひどいことしてたんだもん。名前も隠してたし、怖い思いもさせちゃったし……ほんとごめ――」

「別に、私はレイン君に謝ってほしいわけじゃないです!」

 

 今まで何も言ってこなかったシリカは、大きな声で僕の謝罪を遮った。その剣幕に驚いて肩がビクッと動く。恐る恐るシリカの顔を見てみると、シリカは泣いていた。

 

「え、えぇ……。なんで泣いてるの?」

 

 その不思議な状況に僕は驚きの声がこぼれていた。

 怒っているのならわかる。それほどのことをしたと思っているし、シリカには僕を怒り、罰する権利が――いや、義務がある。シリカは僕を怒るべきだ。僕は罰するに値する人物で、罰せられるためにいるようなものだ。

 そんなシリカは、今僕の目の前で泣いている。訳がわからない。

 

「私って……そんなに信用無いですか……?」

「いや! そんなことないよ!?」

「じゃあ……何で私に相談してくれなかったんですか……? 何であの時名前を偽って、あの時私を囮のように使って、あの時嘘を吐いたんですか……? 確かに今はもうあの情報屋さんから訳は聞いてますけど……。私はレイン君の口から聞きたかった……!」

 

 シリカは話し続ける。その目からは涙を零しながら、それでも口は止まらない。

 そんなシリカに、僕はなんて言えばいいのだろうか。ごめん、と言って逃げるのか。それとも理由を自分の口から言って言い訳を並べるのか。

 

 僕は何も言えず、下を向いた。

 

「別に私は怒る気はないです……。レイン君の過去のこと、全部教えてもらいましたから……。悪いとは思ってます。でも、私はレイン君を助けたいんです! だって……私はレイン君に救われたんですから……!」

 

 

 ――何で……。

 

 罪悪感と共に、疑問が浮かぶ。目の前の少女はあまりにもまっすぐで、過去のことを勝手に聞いたことに対しての怒りや悲しみ、恐怖は何一つ感じなかった。

 親切心には必ず裏がある。ずっとそう思ってきたし、実際にそうだった。このデスゲームが始まってからも、助けたんだからと大小様々な要求をされてきた。

 

 なら、何故だろう。何故、シリカには全く警戒心を抱かないのだろうか。

 

「何でだよ……」

 

 絞り出した声は、何故か緊張が混じっていた。理由はわからない。ただ、これを言うのが恐ろしくて、聞くのが怖くて。

 それでも僕は口を開いた。

 

「何で僕に近づくの!? だって僕はシリカの目の前で人を……プレイヤーを殺したんだよ!? たくさん騙してきたし、危ない橋まで渡らせた! なのに何で……何でそんなに優しいの……」

 

 零れ落ちそうになる涙を必死に堪えて、僕は言った。

 

「僕はあなたが嫌いなんです……。早く行ってください……」

 

 もう失うのは嫌だから、とは言わず。シリカは僕のことをどう思っているのかは聞かず。僕は流れてくる涙を見せてしまわないように、シリカに背を向けた。

 嫌い。そう言わないともう二度と仮面を被れなくなりそうで、僕は無理やり声を絞り出した。




 ラスト一話でシリアス展開が終了します! 次を投稿して、その次でエピローグ。その後は仲良くやってる姿を映していくつもりですが、明かしていない設定とか伏線とか何気に多いのでそれの回収をしつつ、いい感じのムードを展開していきます。

 シノン好きなのに絶対にシノン出せない……悲しい……。

 でも僕はシリカも大好きです。
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