恐怖に囚われた少年は舞台を演じる   作:Narvi

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 お気に入り十件ありがとうございます。本当に嬉しいです。ですがその分この調子で書いていって大丈夫なのかかなり心配になりますね……。ほのぼのは結構後にならないと復活しないです。それでも突っ走ります。何か間違いがあれば教えて下さい。
 あと、本当に感想ありがとうございます。

 今回は前回よりもシリアスです。ほのぼのなんて皆無です。


第六話 裏切りレイン

 今夜、運命の瞬間がやってくる。

 レベルよりも一番危惧していた出現場所だったが、大体の目処が立った。クリスマスイベントのボス《背教者ニコラウス》が現れるのは、どの情報屋もどこかの大木であると言っていた。なのでそれは間違いないだろう。

 しかし、大木と言っても色んな層にある。その中でも、僕が注目したのは三十五層の《迷いの森》だ。手当たり次第に大木のある層を駆けまわったのだが、迷いの森の大木だけは他のところとは違っていた。そこの大木だけはモミの木だったのだ。モミの木とは、クリスマスツリーとしてよく使われる木であり、そこ以外に考えられる場所はない。

 

 アルゴにはすでに情報を提供してある。キリトはアルゴからその情報を格安で買い、迷いの森に向かった。そんな情報をアルゴから買った僕は、キリトがいる迷いの森へと急いだ。

 

 追いかけること数分。そこにはゆっくりと歩き続けるキリトがいた。僕はそんな悲壮感あふれるキリトの背中を見ながらついていく。

 

「……誰だ」

 

 突然止まったかと思えば、普段のキリトとは思えないほど低い声が発せられた。作れるか心配だった笑顔は、案外あっさりと浮かんできた。僕はニコリと表情を作ってキリトに話しかけた。

 

「ごめん、尾行する気はなかったんだ」

「レインか……」

 

 キリトは僕の存在に気づくと、何事もなかったかのように歩みを進めた。あくまで一人で倒しに行くのだろう。協力を得る気はないようだ。

 僕はそっとキリトに近づいた。

 

「止めるなよ……」

「誰がそんなことするもんか」

「……お前ならわかるだろう? 俺の気持ちが、レインならわかるはずだ」

「わかるよ……よくわかる。救いたいんでしょ? 誰の力も借りず、自分一人の力で。痛いほど、よくわかる……」

 

 その間もキリトは決して歩みを止めなかった。ただひたすら前を向いて、目的地である大木へと歩き続けた。僕はそんな彼の後ろ姿をじっと見ていることしか出来ない。決して協力しようとしてはいけない。

 

 それで命を落としてしまっても。

 たとえそのアイテムが、蘇生アイテムではなかったとしても。

 

 それでも歩き続けるキリトを止めることは、僕には出来なかった。

 

「レイン……」

 

 キリトも気づいたようだ。邪魔をするものは斬り伏せるということだろうか。キリトの手は自然と背中の剣に伸びていた。

 

「……行ってきなよ、キリト」

「……任せた」

 

 小さくそう言うと、キリトは夜の闇に消えていった。僕は雪が引かれてある地面にドカっと座った。

 

「ごめん、アルゴ……」

 

 ――約束は、守れなかったよ……。

 

 ここにはいないアルゴに対して謝罪の言葉を浮かべていると、前のワープポイントから複数のプレイヤーが出現するような気配がした。僕は腰に付けてある正真正銘の短剣に右手を添え、いつでも斬りかかる準備をしてその姿が見えるのを待った。

 現れた集団は十人程度だった。先頭にいたのは侍のような鎧を身にまとい、赤色のバンダナをした男――クラインだった。

 

「クラインもキリトを付けてたの?」

「ってことはお前ェもか、レイン」

「うん。でも、無駄足だったね」

 

 僕はそう言って笑顔を見せた。それが癇に障ったのか、クラインは早口で話し始めた。

 

「レインよぉ、キリトはどこにいるんだ?」

「キリトならもう向かったよ。多分今頃ボスと対面してるんじゃない?」

 

 それを聞いたクラインは衝撃を受けたかのように固まった。そうしたのもつかの間、すぐに動き出したかと思えば、クラインは僕の首筋を掴んで大声でまくし立てた。

 

「はぁ!? てめぇ、キリトと会っておきながら、なんで止めなかった! キリトの野郎はフラグボス相手にソロ攻略決め込もうとしやがってんだぞ!」

 

 クラインは怒りながらも、悲しそうな顔をしながら首筋を握る手を震わせていた。止められなかった自分が許せないのだろうか。それとも、こんなところで悠々と座っていた僕に呆れているのだろうか。

 

「止めたら、なんなの?」

 

 しかし、僕はそれでも冷静だった。クラインは鳩が豆鉄砲を喰ったような顔をした。

 

「止めたところでキリトは救われやしないよ。たとえそれが自分の命と引き換えになるとわかっていたとしても、それでもキリトは止まらない」

「別にお前ェが一緒に戦ってやりゃあいいじゃねぇかよ! お前ェはキリトが死んでも、それでもいいのかよッ!」

「例えそうだとしても、僕には協力することがキリトのためになるとは思えないよ。これは……これだけはキリト独りでやらなきゃいけないんだ……」

 

 罪の意識に苛まれながらも、僕は悔いることなく言い切った。その信念を受けてか、クラインは少し考えた後に僕の首筋から手を避けた。

 

「……悪かった。俺らしくもねぇな」

「いや、僕こそごめん。キリトを止めなかったのは事実だし」

 

 場には静寂が立ち込めている。お互いに会話をする気はなく、クラインはやっぱり心配なのか時々不思議な動きを見せていた。

 それもクラインらしいな、と僕は思う。初めてクラインと会って話をした時から、クラインは優しかった。他人思いで、罪悪心を持ちながらも自分を置いて最初の街から飛び出したキリトのことを、クラインはずっと心配していた。

 そんな男だからこそ、この協力できない状況がとてももどかしいのだろう。そんな光景にくすりと笑って、僕はクラインに言った。

 

「いきなよ、キリトのところ。きっともう少しで終わるよ」

「お前ェは行かねぇのか?」

「うん。今は会いたくないんだ。それに――」

 

 そう言いかけて言葉を止めた。クラインは少し疑問を持っていたが、僕が急かすとクラインもまた夜の闇に紛れた。

 そろそろ頃合いだろう。クラインのギルド《風林火山》のメンバーも全員キリトの方に向かっているはずだ。

 

「……もういいよ。出てきなよ」

 

 僕のその言葉と共に、現れたのは先ほどと同じようにパーティーだった。しかし、違うのはその人数。ざっと三倍はいるだろうか。その大集団を警戒心を向き出しにして見続けた

 クラインも付けられていたんだな。そう考えるのが最適だろう。彼らはトップギルド《聖竜連合》のメンバーである。特別なアイテムやボスのためなら一時的にオレンジになることも厭わない、ようは力で押すタイプのギルドだった。

 その中の一人――リーダー格の人物が前へと出てきた。

 

「まさかこんなところで会えるとはなぁ。レインよぉ。いや、こう呼んだほうがいいか?」

 

 聖竜連合の一人がそう言って、ニタリと笑った。僕は右腰に装備している短剣を強く握リ締める。

 

「……黙れ」

「裏切りレイン君よぉ?」

「黙れぇぇぇ!!」

 

 僕は強く短剣を引き抜いた。それと同時に、約三十人の聖竜連合メンバーは笑いながら自らの武器を抜いた。




 ほのぼのタグとシリアスタグが共存する小説も滅多にないですよね。きっと共存させるための急展開タグだと思います。
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