ナザリック地下大墳墓にニンジャナンデ!?   作:酢酢酢豆腐

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ニンジャスレイヤーの布教とオーバーロードへの愛。両方を表現したい。これをコトワザでアブハチトラズという。備えよう


ナム帰りの男がナザリック入りしたようです

「ふざけるなッ!」

 

BOOM!モモンガの降り下ろした拳が円卓にクリティカルヒットし、大きな打撃音を発する。

 

ここはナザリック地下大墳墓、円卓の間。ギルド長たるモモンガはギルドメンバーのヘロヘロを見送ったところである。モモンガの胸に渦巻くのは怒り、激しい怒り、失望、そして寂寥感だ。41人と後から加わった1人の42人が皆で造り上げ、成長させ、維持してきたナザリックではなかったのか!あの絆は!楽しかった思い出は!無価値な、省みる価値も無いものだったと言うのか!?

 

「ザッケンナコラー!」

 

モモンガがヤクザスラングを発する!コワイ!普段は温厚な人ほど怒るとコワイ、というのは江戸時代のレベリオンハイクである。普段温厚なモモンガが怒声を発する場面は、かつての仲間が見れば目を白黒させるであろう迫力があった。

 

だがモモンガの怒りも長続きはしなかった。ユグドラシルのサービス終了まで残り時間は僅かに30分。その時だ!

 

「ジェロニモーッ!」

 

極めて米国空挺兵的なカラテシャウトと共に円卓の間の扉を蹴り開け、突入してきた者あり!

 

すわナザリックへの最後の挑戦者かと腰を浮かしたモモンガを襲ったのは、大きな喜びと懐かしさ、そして驚きであった!

 

「ドーモ、モモンガ=サン。フォレスト・サワタリです。御無沙汰しています」

 

神器級編み笠に神器級の迷彩柄ボディアーマーにガントレット。腰にマウントする二刀のマチェーテはその銘を〈サイゴン〉〈ホーチミン〉という。脇下の抜きやすい箇所にはナイフシースがあり、恐ろしい形状のククリナイフが納められている。そして背中には選び抜かれたバイオバンブーで作成されたタケヤリだ。余計な装飾を無くし、頑丈さ、貫通力、威力のパラメーターにデータクリスタルを突っ込んだ名品であるが、一見したところでは彼のベトコンぶりを強調する要素でしかなかった。

 

この珍妙なカラテシャウトと共に突入してきた男こそ、地獄のベトナム戦線妄想に囚われる恐るべきニンジャ...のロールプレイを行うプレイヤー。フォレスト・サワタリである!

 

現実世界では暗黒メガコーポの雄、ヨロシサン製薬の末端研究員でしかない沢渡 森(サワタリ・シン)だが、このユグドラシルではナム妄想に囚われる狂気の半神的ニンジャ存在、フォレスト・サワタリなのだ!

 

「アイ...アイエッ!?ニンジャ?フォレスト=サンナンデ!?」

 

あまりに唐突なベトコンニンジャの登場に、さしものモモンガもNRS(ニンジャ・リアリティ・ショック、一種の恐慌状態)に襲われる。なお、これはステータス上の恐慌ではなく、中の人の恐慌状態であることを明記しておく。アンデッドに精神的状態異常は存在しない!

 

「アイエェ...フォレスト=サン!来てくれたんですね!」

 

「この一年間、顔を出せずに申し訳ない。せっかくギルドに入れてもらったというのに...」

 

「いいんですよそんな!ユウジョウ!」

 

「ユウジョウ!」

 

お互いにサラリマンの身である。故に、ユウジョウと言われればほぼ反射的にユウジョウチャントを発してしまう。これが出来ないとムラハチと呼ばれる社会的リンチにあい、セプクは免れえない。だが、そこには確かなユウジョウがあった。

 

「サヴァイバー・ドージョーの方は大丈夫なんですか?」

 

〈生き残り達が道場〉の輝かしいオスモウフォントのショドーが脳裏をよぎる。異形種PK全盛期の頃から異形種・亜人種・人間種を問わずに受け入れてきた集団だ。なお、ギルドではないため、ゲリラコマンド的活動が持ち味の集団としてユグドラシルでは広く知られていた。

 

唯一の拠点は、始まりの街に居を置くサワタリが、課金で拡張したプレイヤーハウスを集会所兼ドージョーとしていたぐらいである。モモンガのもとを訪れるより前にドージョーの面々とは最後の別れを済ませていた。フロッグマン、ディスターブド、セントール、ディスカバリー、ハイドラ、ノトーリアスなどなど。皆、最初に会った時は学生ばかりだったが、今となっては最年少のノトーリアスですら社会人一年目だ。皆、リアルの都合もあるだろうに初心者だった頃にサワタリが面倒をみたプレイヤーが30人以上も挨拶に来てくれた。特にノトーリアスなどはすっかり大人びていて、サワタリにはそれが嬉しかった。

 

このモモンガと出会ったのも、思えばPKの被害にあったハイドラのため、報復的作戦行動の最中だった。ちょうどハイドラを襲ったパーティーが骸骨の異形種を追い立てているところを、純銀の騎士とともにアンブッシュしたのだ。サワタリがアイサツするまでもなく、アンブッシュをくらった異形種PK者は爆発四散した。

 

「困っている人がいたら、助けるのは当たり前」「ベトコンは貴様が十全の力を発揮する暇など与えない、そして今の俺の精神はベトコンですら失禁する残酷さだ」

 

情け容赦ない四肢への攻撃からの局部破壊攻撃に、たっち・みーもドン引きしていた。

 

「えぇ、ドージョーの方はアイサツも終えて畳んできました。それに今の俺はアインズ・ウール・ゴウンのフォレスト・サワタリですから」

 

「そうですか!それは良かった!」

 

モモンガはニコニコとした笑顔のアイコンを頭上に表示した。ナザリックを忘却の彼方に追いやっていない、自分と同じようにナザリックを思う仲間がいることを本気で喜んでいるのだ。

 

「他の方は?」

 

「さっきまでヘロヘロ=サンがいらっしゃってたんですけど、リアルがお忙しいようで...」

 

「あー」

 

リアルが忙しい。仕方のないことだ。サワタリとて明日もビジネス。サワタリの担当するバイオウェアは人工筋肉、このご時世、営業も出来る研究職でなければ生き残っていけないのだ。メガコーポにとって末端の研究員など羽虫も同然、容易にキリステの対象になりうる。一体何度ニンジャになりたいと思ったことか、自由・闘争・サヴァイヴを重点し超越者として竹林のタイガー(映像でしか見たことはないが)のように誇り高く生きていきたいと何度願ったことか。しかし、現実の沢渡はバイオウェアの人工筋肉を導入することで幾らか腕っぷしの強いだけの末端研究員だ。モルモットのように使い潰され、ストリートに惨めな骸を晒す可能性が重点だ。

 

ヨロシサンに入れば、メガコーポに就職出来れば! そんな望みは入社3ヶ月で擦りきれ消えた。理不尽に次ぐ理不尽。せめてゲームの世界では誇り高く自由でありたかった。だから異形種PKは気に入らなかった。仮に敵わないと思える相手にだって、チャドーとサイゴン・ロアで肉薄した。

 

「モモンガ=サンだって明日もビジネスでは?」

 

「あはは...実は明日も4時起きです。でも、最後ですから...」

 

「モッチャム!我が小隊も明日は0500より作戦行動に移る予定だ!」

 

ナムサン!このようなタイミングで〈狂気永続化〉発動の前兆だ!

 

サワタリは一連の特殊職業/種族ニンジャ取得イベントにおいて、リアルラックと課金の合わせ技をもって、強大なグエン・ニンジャのソウルを宿すことに成功している。

だが、大概の強大なソウルにはデメリットというか、バッドステータスが付属している上に解除は不可能だ。それがニンジャという特殊なビルドがピーキーな性能を持つ一因でもあるのだが。

 

サワタリに発現したバッドステータスは〈狂気永続化〉、一切のチャットやメッセージが突発的に使用不可になり、使用しようとするとそのソウルの背景設定に応じて改変された発言が飛び出す。そして、魔法使用不可、バーサーク状態、フレンドリーファイアの解禁、精神異常無効化などが起きる。フォレスト・サワタリがベトコン妄想に囚われた狂気のニンジャロールを行うのもこれがあるからだ。

 

突発的とはいえ、今回のように一応は前兆が用意されている。

「あーいつものやつですね。フォレスト=サンのそれを見るのも久しぶりだなぁ」

 

「ここも長くはもたん!撤退するぞ!俺に続け!GO!GO!GO!」

 

「あっ、もう後10分も無いんですね。やっぱりフォレスト=サンも最後は玉座の間が良いと思いますよね」

 

そう言いながら、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取り、眺めるモモンガ。

 

「急げ新兵!だが装備を置き忘れたりしようものなら懲罰房だぞ!」

 

「私が持っていってもいいんですか...?分かりました。」

 

スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取ると、えもいわれぬ邪悪なオーラが生じる。モモンガはこの強大なギルド武器を作った頃のことを思い出していた。あの、楽しかった頃の思い出を。

 

 

 

「お仕事ご苦労!」

 

返事が返ってくるわけでもないが、NPCにも声をかけながら進む。前方を小刻みにクリアリングしながら進んでいくフォレストを追って。そういえばフォレスト=サンはニンジャとかアンブッシュにこだわりがある人だったよな、とモモンガは現実で微笑みを浮かべた。

 

そして玉座の間の大扉がゆっくりと開いていく。流石のフォレストもこの扉を蹴り開けるのは気が引けたらしい。モモンガは再び微笑んだ。

 

クリアリングするフォレスト、それを追って進むモモンガ、さらにそれに付き従うセバスをはじめとするNPCという珍妙な光景が展開される。が、それを咎める者も気にする者もいなかった。

 

先行していたサワタリは既に玉座の真横に膝立姿勢で物言わず控えている。黙っていると気配もなく、本当にニンジャそっくりだとモモンガは感じた。こうして自分が玉座に座れば、魔王とその懐刀、アルベドは悪の女幹部か? などという考えも湧いてくる。

 

「タブラ=サンがデザインしたアルベド、ですよね?」

 

「あっはい。もう大丈夫なんですか?」

 

「えぇ。今回は短かったので。」

 

突発的狂気だが、最長で一時間だったこともある。その時はるし★ふぁーに散々からかわれるフォレスト・サワタリの姿が有った。

 

「しかし設定魔のタブラ=サンがデザインしたキャラなだけあって凄い設定ですね。」

 

「...ちなみにビッチである」

 

「え? ...あっ本当だ。ギャップ萌えとは聞いてましたけどこれは」

 

「ちなみに俺は金髪で巨乳のヨメが欲しいです」

 

「アッハイ」

 

 

ブルシット!なんという大雑把な好みか!これでは凝り性ばかりのこのギルドの男性陣に説教されるのもむべなるかな。

 

「ビッチである、って何か可哀想じゃないですか?このスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが在れば書き換えられますけど、どうでしょうか?」

 

「モモンガを愛している、で良いんじゃないですか」

 

「アイエッ!?」

 

「どうせ最後なんです。ヨメの一人や二人作ったっていいでしょう」

 

ナムサン!正気でも狂気でもこれでは大差ない。フォレスト・サワタリはそういう男だ!

 

「モモンガ=サンが出来ないなら俺がその指を動かしてあげましょう」

 

そう言うとおもむろにフォレストはモモンガに飛び掛かった!

 

「え?アイエッ!?アイエェェェ!?ヤメロー!ヤメロー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にモモンガを愛しているにしてしまった...」

 

「まぁまぁ。良いじゃないですか。タブラ=サンも娘にムコが出来て喜んでますよ。ダイジョブダッテ!」

 

「全くとんでもない人だ...」

 

「モッチャム!まぁ、狂気のニンジャ存在なんで。地獄の密林ではよくあることですよ」

 

「ははは...でもフォレスト=サン、今日は来てくれて本当にありがとうございました。俺、嬉しかったです」

 

「こちらこそ本当にありがとうございました。それに寂しい思いをさせてしまってスミマセン。」

 

「そんなことは...」

 

現実世界のモモンガは既に涙をこぼしている。ひとりじゃない。自分はひとりではなかった。思い出を共有してくれる仲間がいる。それが堪らなく嬉しかった。

 

「たっち=サンが引退するとき、入れ替わりに私がギルドに入ったとき、モモンガ=サンとナザリックをよろしくって、そう言われてたんです。あの時以来の付き合いだから...」

 

「そうだったんですか...」

 

サワタリもモモンガももう涙が止まらない!おぉ、ユウジョウに包まれてあれ!

 

しかし時刻は23:57:53

 

別れの時は間もなくだ。

 

「モモンガ=サン!本当にありがとう!楽しかった!いくら現実が辛くてもマッポーの世の中でも、ユグドラシルでは忘れられた!本当に...楽しかったんだ」

 

「俺も...俺もですよフォレスト=サン...また、また何処かで会いましょう!きっと!」

 

23:59:35

 

 

「じゃあ次会うときはユグドラシルⅡがリリースされたらですね。カラダニキヲツケテネ!」

 

 

23:59:58

 

 

23:59:59

 

 

00:00:01

 

 

 

 

「あれ?」

 

「モッチャム?」

 




ニンジャスレイヤーにおけるニンジャとは、平安時代にカラテで日本を支配した半神的存在と、現代に蘇ったかつてのニンジャのソウルが宿った存在を指します。

つまりニンジャ≠忍者です。主人公は特殊なキャラビルドとして、スカウトとレンジャー、忍者をLv.15まで修得し、残りは特殊な種族兼職業としてニンジャに全振りしています。
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