稚拙な文章ですが少しでも楽しんでいただけるように努力します。
「京ちゃん!早く帰ろう?」
「そう焦るなって、危ないぞ?」
「京ちゃんが守ってくれるから平気だもーん!」
「いやだからって……あっ、そこ雪固まってて滑るぞ」
「えっ?あっ!わあぁ!」
どうも皆さん須賀京太郎です。あのインターハイから2年経ち、高校3年生になりました。
ちょうど俺の視界の先で転んでいるのは宮永咲。中学の時からの付き合いであり、なんと今現在の俺の彼女です。もう一度言います。俺の彼女です。今現在って言っても過去に彼女がいたわけでも無いんだが……
「言わんこっちゃ無い……ほら、立てるか?」
「うん、大丈夫」
「昔はもう少しおしとやかじゃ無かったか?」
「今もおしとやかですよーだ!」
そう言いながら咲はべーっと舌を出す。よく見ると少し頬を赤らめている。些か自分が咲を冷静に観察し過ぎている感が否めないが、それは性格の問題なのだ。
咲のひとつひとつの行動全てに何か意味があるように感じ、何か意思を感じ取らないといけないような気がするのである。
恋愛というものは何かと自分に恐怖と不安を与えようとしてくる。それは自らの行動から起こるものではなく、相手の表情、挙動、声音など様々な要因をこちらが過剰に受け取ってしまい、それによって暗い暗い思考に落とされていく。
それを避けるには相手の挙動から正しい意味を読み取り、それに応える事が必要なんだ。
「……京ちゃん?」
「あ……悪い、考え事してた」
「京ちゃんが考え事なんて珍しいね」
「無思考で生きてる人間の方がよっぽど珍しいだろ」
俺の言葉に咲はふるふると首を振った。
「いや、そういう事じゃなくってね」
「ん?」
聞き返すと咲は言葉に詰まる。そしてもじもじしながら少し視線を泳がせた後、ようやく言葉を発した。
「いつもだったら……その……もう少し構ってくれるでしょ?」
「あー……そういう事か」
「京ちゃん、何でにやけてるの」
「いやいや、やっぱり咲はかわいいなーと思ってな!」
「えっ⁉︎」
先ほどよりも増して頬を赤く染める咲。初々しいこの反応がとても良い。本当に照れてくれているのが俺に伝わってくる。そんな時、俺は大抵笑顔で応える。すると咲も上目遣いで微笑んでくれるんだ。
「そういえば、京ちゃんは逆にちょっと大人しくなった?」
「ああ、そうかもな」
「本当に静かになったよね、何かあったの?」
「……彼女ができたからじゃないか?」
「愛は人を変えちゃうんだね」
「まるで今の俺に不満があるみたいだな……」
咲の言葉が少し気になったので、軽く棘のある言葉を返してみる。咲なりの冗談だとは思うが、俺の性格的に真意を聞かずにはいられない。何かあればそこを直す、何も無ければ笑って流す。そんな恋愛しか俺はできないのだ。
「不満なんて無いよ! ……でも」
「でも?」
「京ちゃん、落ち着いたっていうより、元気が無くなったように見えるから……」
やっぱり咲は優しい子だった。俺の事をしっかりと見てくれて、心配してくれるような子。
「咲と一緒に居られるからいつでも俺は元気だぞ?」
「じゃあ私がいなくなったら大変だね」
「そりゃ大変だ、捜さなきゃならないから疲れて元気無くなっちまう」
この返しで咲は楽しんでくれているのだろうか。笑いのセンスにはそれなりに自信はあるが、そのセンスは男子にしか受けない所謂男子ノリであって、女子の中でも落ち着いている方の咲の笑いのツボにフィットする可能性は非常に低い気がする。まさかガン無視はして来ないと思うが。
「捜してくれるんだね」
「俺が元気になるには咲が必要だからな」
「それ私じゃなくて京ちゃん自身の元気の為じゃないの?」
「咲の為に元気が必要で、元気の為に咲が必要なんだ」
「複雑だけどとりあえず私は必要なんだね」
嬉しい、と言いながら咲はまた俯いた。今の咲は俺の言葉ひとつひとつを好意的に受け取ってくれる。普段ならば薄っぺらく感じる言葉も、恋仲の男女間では自分の心の穴を埋めてくれる言葉な気がしてくるのだ。
「そういえばそろそろクリスマスだな」
「京ちゃん、予定あったりする?」
「あったりしないぞ」
「京ちゃんって友達多いイメージなのに意外」
「誰かさんの為に空けてるんだよ」
「え?」
咲は素で驚いている。去年は忙しくてクリスマスに一緒に居られなかったから今年も無理だと思ったのだろう。咲は驚いた顔で数秒固まった後、またしても顔を赤らめて俯いた。とてもピュアな心の持ち主だ。
「だからさ、咲」
「な、なに?」
「クリスマスの日、俺の家に来ないか?」
「きょ……京ちゃんの家に?」
「ああ」
「京ちゃんが良いなら……行かせていただきます!」
咲はにこっ、と微笑んだ。少し興奮しているのか両手をぱたぱたと上下させている。
これで俺もめでたく非リア充からの爆破対象になった。まあクリスマスって言ってもいつも通りにいちゃいちゃするだけなんだけどな。
その後もしばらく他愛の無い話を続けて、俺たちはそれぞれの家への帰路に別れた。クリスマスの日は学校も午前中のみなのでゆっくりできるはず。
「二人での初めてのクリスマスだし……プレゼントとか買った方が良いよな」
運良く明後日は祝日だ。ここはひとつ、彼氏らしい事をやってあげられるチャンスかもしれない。
ちなみにセリフや地の文の中にはぽつぽつと今後のネタバレに成り得る要素が有ります。