Love Symmetry   作:なつめぐせぶん

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案外予想外


第弐話 「休息の戒能良子」12月23日

「藤田プロに勧められて長野に来てみましたが、絶妙なカントリーっぽさが落ち着きますね」

 

正午過ぎ、異郷の地の適当な喫茶店でティーブレイク。これぞ大人の嗜み。 ……なんてジョークはさておいて、本当は来たは良いけど特に何もやる事が無いんです。

 

ハードスケジュールの中での貴重な休日をどう過ごすか思案していたところ、藤田プロの強い勧めで長野に、と言った状況なんですが、日帰りという事もあって中々観光気分になれませんね。

 

「そういえば長野と言えば、宮永姉妹の妹さんの方がまだ高校生でしたね」

 

宮永咲、一昨年のインハイ団体戦で清澄の大将として突如現れた少女。あの時は一年生にしてポテンシャルでは姉の宮永照をも凌ぐほどで、事実その後の個人戦等でも優秀な成績を収めており、現高校三年生の代ではプロチームや実業団から最も注目されている選手の一人である。ただ今年のインハイでは前ほどのオーラが感じられませんでした。

 

「後輩達も中々に侮れないメンバーになってきましたね」

 

プロの世界は毎年現れる全国の魑魅魍魎の中でも頂点に成り得る本物の怪物達の集まり、その中でも特に怪物度合が顕著にわかるのは、小鍛冶健夜プロ。あの人の本気は怪物うんぬんの話じゃないですね。もう三十路ですが……

 

後輩の世代で勢いがある人といえば、まずは当然宮永照です。生半可なプロじゃ相手になりません。

次は清水谷竜華、まるで和了りの形が分かっているかのような打ち筋は非常にミステリアス。

他にも愛宕洋榎、天江衣、末原恭子、小走やえ等、実力派の打ち手が沢山いますね。

 

「後輩は良いとして、はやりさんも三十路ですし牌のお姉さんもそろそろ厳しいと思うんですが」

 

ミステイク、本音が口に出てしまいました。何処かから、言うようになったね、良子ちゃん☆、なんて聞こえてくるような気がしますがまあ無視しましょう。そういえば有珠山の一人が牌のお姉さんの後釜を狙っていると聞きましたが、何時の世も誰が何を考えているかはわかりませんね。

 

おっと、飲んでいたカフェラテが無くなってしまいました。ここは追加でオーダーするか迷う所ですが、何時までもぼんやりしていられませんし、ここらで店を出るとしましょうか。

 

「カフェラテ240円? ソーリー、生憎壱万円しか持ってないですね」

 

カフェラテひとつで数十分居座ったからか、お釣りが大きかったからか、店員の機嫌がやや斜めでしたね。全く最近の若者ときたら……。二十を超えたら途端に周りの態度は変わりますから精々覚悟する事です。

 

「さて、行く宛も無いですがこれから何処に……っ!?」

 

何やら不穏な気配がしますね……辺りを見回してもそれほど怪しい人間や妖の類はいないんですが。

 

「あの……もしかして戒能プロでは?」

「え、あ、イエス、私は戒能良子ですが」

 

突然に声をかけられて若干言葉に詰まってしまった。しかし気配に気が付かなかった……というよりはいきなり現れたような感じがしましたね。この金髪に近い髪色をした少年、一見変わった所は無いように見えますけど。

 

「やっぱり本物だ!初めまして、須賀京太郎と言います!」

「須賀京太郎……ですか」

「あ、こんないきなり話しかけちゃ迷惑ですよね……すみません」

「ノープロブレム、慣れてるから」

 

ただのミーハーな少年なんですかね、とりあえずここは大人の対応を見せましょう。大人ですから。21歳ですから

 

「戒能プロはなんで長野に?」

「休暇でリフレッシュしようと思ってね」

「休暇ですか、じゃあ邪魔しちゃ悪いですね」

 

そう言うと、須賀くんはありがとうございました、と私に向かって一礼をしてその場を去ろうとした。その時、私は何故か須賀くんの持っている綺麗にラッピングされた荷物が気になった。

 

「須賀くん、それは誰かへのプレゼント?」

 

呼び止められた事と名前を呼ばれた事に驚いたのか、須賀くんは何とも言えない顔で振り向いた。その後、驚きが喜びに変わったようで、満面の笑みを浮かべながら話しだす。

 

「これは彼女へのプレゼントです。中身は大したものじゃ無いんですけどね」

 

笑顔が若干照れ顏に変わっていった事から、多分須賀くんはその彼女の事をとても愛している事が伝わってくる。青春してますね。

 

「須賀くん、その彼女さんの事、好き?」

「大好きです、命を懸けてでも守りたいくらいには」

 

そう言う須賀くんの目には、確かな想いがこもっていた。

 

「須賀くんの彼女は幸せだね、こんなにも愛されているんだから」

「いえいえ、俺は彼氏らしい事全然出来てないですから」

「想われるだけで人は幸せなものだよ」

「不幸なく生きてくれれば良いんですけどね」

 

須賀くんは微笑むと、今度こそさよならです、と言ってその場から立ち去っていった。最後の二言にはやけに感情がこもっているように感じたのだが。

 

印象としては礼儀正しく、感情豊かな少年といったところだが、ひとつだけおかしな所があった。

 

そもそも私が店から出た時に感じた不穏な気配というのは、普通とは違うというだけであり、危険なものという感じはしなかった。そしてその原因は間違いなく須賀京太郎。彼の気配に気が付かなかったのは不意を突かれたからでは無いのだ。

 

結論から言うと須賀京太郎は常人に比べ、『魂』の総量が圧倒的に少ない。しかもそれは普通の生活を送っていれば死ぬまで減る事の無いもの。それが減るという理由は私の知る限りひとつしかない。

 

「彼、完全に憑いてますね……それもかなり長い間」

 




文の中身がすかすかな気がしてならない。
そして次話はまた京太郎と咲のいちゃいちゃ話
爆発しろ
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