「うおおおおお!!」
ルドガーが骸殻に変身し、黒い槍を紫電の球体に突き立てた。
抜いた槍の穂先に刺さった黒い歯車が、パリン、と砕け散る。
それを合図に世界がひび割れて崩壊した。
暴走した
幾度となく電気ショックを浴びせられ、球転がしによる体当たりも食らったたが、特にルドガーとアルヴィンの銃撃が利き、
全員が正史世界に生還した。
「ルル、しっかり!」
落雷のダメージから未だ起き上がれないルルの横で、エルが翡翠の瞳を潤ませる。
『大丈夫っ。任せてー』
エリーゼが反対側に膝を突き、治癒術を施し始める。
ユティはエルの横に立った。
「エル、ルルは死なない。エリーゼが治せる。泣かないで」
そう告げるや、エルはワンピースの裾をきつく握りしめて俯いた。
「……っき、…なかったの…」
「え」
「さっき! 何でルルも助けてくれなかったの!? エルは助けてくれたのに、何でルルは…!」
彼女は本気で怒っている。ユティの行動を、小さな体のありったけで責めている。
「よせ、エルっ。しょうがないだろう」
「あそこでルルまで助けに行ってたら、ユティだって危なかったんだよ」
ルドガーとジュードに制止されてなお、エルはユティを睨んでくる。
「ごめんなさい」
膝に手を置いて腰を直角に曲げて、頭を下げる。
「エルの友達守れなかった。ユティの力不足。だから謝る。ごめん、エル」
頭を上げる。しゃがみ込む。目線の高さはちょうどエルと同じくらい。
「でもエル。これは知っててほしい。ユティは命が惜しいと感じたことは、10歳から一度もない。他人でも、自分でも。そう在るように育てられた」
そして、ユティはそれを過酷とは感じない。そう在れと望まれ教育された思い出は、ユティにとってはむしろ誇りだった。父を初め何人分もの期待と希望をユティは背負って、今ここにいるのだ。
「ユティがルルのとこ行って、エルとルルを遠くに投げて、2度目の落雷をユティが代わりに受ければ、エルとルル両方が助かった。でもしなかった。確実とは言えないから。ユティの命を惜しんだんじゃない、エルの安全を惜しんだ」
「……ユティは、エルを守るためなら、ルルが死んでもいいって思ったの?」
「ワタシが身を案じるのはルドガーと、ルドガーの行動理念になるエル、アナタだけ。それ以外には気を回せない。今日みたいなこと、これからもある。だから、先に謝らせて。この先もエルを泣かせる選択をすることを」
エルは裏切られたといわんばかりにユティを睨みつけたが、やがてくしゃっと顔を歪めて、背中を向けた。真後ろにいたルドガーが、エルの背を労わるように叩いた。
ユティはそれを見届け、屋上の落下防止柵へと歩いて行った。
自分で書いていてオリ主がドライなのかウェットなのか分からなくなってきました。「皮肉屋なしゃべり方」が最初のコンセプトだったのですが、いつのまにか読経みたいな台詞回しに……何故?
分史破壊後の場所。本当ならスタート地点に戻るのですが、今回は雰囲気重視で屋上に戻しました。設定に矛盾ありと思われた方、正しいです。申し訳ありません。