レンズ越しのセイレーン【完】   作:あんだるしあ(活動終了)

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 キラってくれてなきゃ困るのよ


Mission7 ディケ(4)

 ふとローエンが何かに気づいた顔をした。エルがローエンにどうしたのかと問いかける。

「いえね。ハ・ミルはエリーゼさんが前に住んでらっしゃった村でもあるんですよ。果実酒のことで芋づる式に色々と思い出しまして」

 そこに撮影中だったはずのユティがぬうっと現れた。いつのまに、とはすでに誰も言わないのがユティクオリティ。

「――ルドガー」

「帰りにな。どうせ一日仕事になるだろうし、お前が泊まりたいなら泊まっていいぞ」

 ユティは能面のまま、しかし期待に(おもて)を輝かせ、ハ・ミル村入口の坂をじっと見上げた。今回は何十枚撮ってくるやら。土産話が楽しいから、ルドガーとしては大歓迎だが。

「エリーゼさんをメンバーから外してしまったのは失敗だったかもしれませんねえ」

「今度はエリーゼも一緒にくればいいよっ」

「そうですねえ。親睦を深めるために皆さんで旅行というのも悪くありませんな。一つジジイが段取りを練ってみましょうか」

「やったぁ!」

 今度はエルが翠眼をキラキラ輝かせる。今日はやたらと若い女子が眩しい日だ。

 

 キラキラオーラを2回も浴びたところで――村の上方からしゃがれた悲鳴が轟いた。

 

 ルドガーはとっさにエルを下ろして身構えた。ローエンはルドガーの死角をカバーする位置に。

 ミラとユティはその場から動かず、しかし武器にいつでも手をやれるように構えた。

 そんな彼らとは裏腹に、ふわぁりふわぁりと漂ってきたのは、水色から浅黄へのグラデーション・ヘアと、髪以上に大きな翅を持った女だった。

 驚いたのは女の容貌や浮遊ではない。この女をルドガーは知っていた。

 

 初任務の分史で殺したはずの、ミラの姉、大精霊ミュゼ――!

(でもここで会ったということはこの精霊は正史世界の精霊なわけで。俺たちとも今日会うのが初めてのはず……てことは)

「姉さん……!?」

「ミラ!? ……じゃないわね」

 縋るようなバラ色の目が、一瞬にして曇った。ミラは俯き、両手を下で組み合わせた。顔を上げたミラは、いつもの皮肉屋な女の仮面をつけ直していた。

「初めまして。元マクスウェルよ」

 ミュゼはミラの自己紹介に首を傾げ、ルドガーを向いて改めて首を傾げた。

「どういうこと?」

 

 

 

 ルドガーとローエンがミュゼに事情を説明する間、ユティは柵に凭れて永遠のマジカルアワーを眺め――てはいなかった。ユリウスとメールのやりとりをしていた。

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   To:J

   Subject:現況報告。緊急

リドウにあなたを探すように命令されたから付いて来た。今、リーゼ・マクシアのハ・ミル。同行者に大精霊がひとり増えそう。正史のミラの姉さん。

                                      Eu

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   From:J

   Subject:Re:現況報告。緊急

奇遇だな。俺はキジル海瀑にいる。ハ・ミルからすぐだ。ここから分史に進入するつもりだった。

やはりルドガーにこのままエージェントを続けさせるわけにはいかない。一度会って話がしたい。

エージェントの目と鼻の先で骸殻を使えば、分史対策室もすぐ俺だと分かるだろう。ルドガーに骸殻を使わせるのは望まないところだが……

 

今から進入してそちらの到着を待つ。

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   To:J

   Subject:了解

じゃあ分史で会いましょう。ルドガーの写真持ってくね。その辺は変な魔物が多いから気をつけて。無理はしないで。ワタシたちが着くまでは、ちょっとでいいから体を休めててね。

                                      Eu

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   From:J

   Subject:Re:了解

気遣いありがとう。また後で。

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 用件だけのショートメールのやりとりを終え、GHSを荷物に突っ込む。直後、ルドガーのGHSにヴェルから連絡が入った。ユリウスらしきエージェントが分史に入った、と告げているのだろう。

「注意したほうがいいわ。何だかそのユリウスって人、誘ってるみたい」

「だからって、逃げるわけにはいかないでしょう」

「――、ねえルドガー。私も一緒に連れてってくれない?」

「構わないが、どうして?」

 ふわん。ミュゼはミラの後ろに浮かび、むき出しの両肩に手を置いた。

「この子が心配だから。危なっかしいところはミラそっくり」

「お、大きなお世話よっ!」

 ミラの怒鳴った声は裏返り、頬は緋色の光の中でも分かるほど赤く染まっていた。

 ――異世(ことよ)の姉妹。

 ユティは戯れる女たちを被写体に、彼女たちには気取られないようにシャッターを切った。

 

 そのままカメラの向きをルドガーに合わせる。

 ファインダーの中に映るルドガーは、ミラとミュゼのやりとりに釘付けになっている。しかもルドガー本人がそれに気づいていない。

(きょうだい、ってシチュエーションで思い出しちゃったかな。いい思い出の回想なんかしてたら、まずい。せっかくマイナスに傾ききったユリウスへの気持ちがまたぐらつきかねない)

 画策していると、ファインダーの中に人物が増えた。ローエンだ。

「ルドガーさん。今、ユリウスさんのことをお考えでしょう」

「え…? あ! や、別にそんなことっ」

「会いたくない、と顔に書いてありますよ」

「……マジで?」

「今日まで何度もルドガーさんとお仕事をご一緒させていただきましたからね。これでも少しは、ルドガーさんのお気持ちを察せるようになったと自負しておりますが、いかがですか?」

 目を逸らし。首を直角に宙を仰ぎ。俯いてうなじを押さえて。

「あ~~~~~~~~っ!」

 ルドガーはしゃがんで叫んだ。びっくり、した。

「すみませんが、分史世界に入るのは少し待っていただけませんか。ルドガーさんとお話ししたいことがありますので」

「い、いいケド…」

「ナァ~…」

「やった。もう一度パレンジの木に行きましょっと」

「ひょっとしてさっきの悲鳴って……あなたのしわざ?」

「だってお腹が空いちゃったんですもの。たくさんあるんだから一つや二ついいでしょ? さ、行きましょ行きましょ」

「ちょ…っ、それって泥棒…!」

 ミュゼが強引に自分たちを村へ入る坂へと押し出した。こうなっては振り解いて場に留まるとあまりに不自然だ。ユティは小さく呟いた。

 

「――状況、失敗」




あ「あんだあでーす(≧▽≦)」
る「るしあでーす(・д・。)」
あ・る「「二人合わせてあんだるでーす(≧▽≦)(・д・。)」」
る「して(なれ)よ。別に作者が複数でもないのに何故急に後書きを対話形式に変更した?」
あ「いやノリで」
る「……汝よ」スチャ…¬o( ̄- ̄メ)
あ「正直すまんかったと思ってるw( ̄_ ̄;w←ホールドアップ 実は作者が常に後書きで何を書けばいいか悩んでてね。いや正確にはどういうノリで後書きを書けばいいか常々分からないまま書いていたのさ。二次創作だしどこまで原作キャラを上げ下げすればいいかオリ主についてどこまで語ればいいか、毎回うんうん唸っていたんだ」
る「そしてついに人格が分裂したのか」
あ「イエスザッツライ! 対話形式にすればまだやりやすいかもしれんということで生まれたのがイッツミー!」
る「正確には我らだからusかourselvesだ。要するに汝とその回についての解説をすればいいのだな」
あ「そうそう。今回はお試しだから実際の解説は次回からだけど」
る「ぶっちゃけこれを書いた作者のSAN値が直葬寸前だから今回はお預けぞ。よければSAN値を回復させる方法などお寄せいただくと有難い」
あ「うわー初回から盛大に自爆しやがって……」

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