レンズ越しのセイレーン【完】   作:あんだるしあ(活動終了)

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 あれもこれもそれも、何もかも無意味な寄り道だった


Mission7 ディケ(8)

(『道標』集めの間にルドガーが瀕死になる事態があるなんて聞いてない)

 

 浅瀬を這いずり回る海瀑幻魔へとフリウリ・スピアを突き出す。幻魔の肉を抉るたびに、ぶじゅっ、どぱっ、と血が噴き出した。顔が、胸が、腹が、足が、返り血で粘ついた。

 

(リーチは相手が上。射程に入ると海中に引きずり込まれる)

 

 思う間にも幻魔の触手が足に絡まる。舌打ち一つ、フリウリ・スピアで斬って逃れ、海の中に着地する。

 

(砂が。足を取られてうっとうしい)

 

 幻魔の体当たり。スピンをかけた巨体の回転をモロに受け、ユティは断崖まで吹っ飛ばされた。

 

「ガ――ヴォェェッ!!」

 

 内臓を吐いたかと錯覚した。

 痛みが過ぎて正しい五感が戻った時には遅かった。ユティは四肢に力を戻し損ねて海面に真っ逆さま――のはずだった。だが、ユティが海瀑に没することはなかった。

 背中から両脇に手を入れたミュゼが落下を食い止めていたから。

 

「ミュ、ゼ」

「突っ込み過ぎ。死ぬわよ」

「それは、困る」

 

 ミュゼがユティを砂浜に下ろして、また上空に舞い上がった。重力系の精霊術を涼しい顔で連発するミュゼは、さすが大精霊。

 

 ユティはフリウリ・スピアを構え直し、再び海瀑幻魔に突撃した。

 幻魔がスピンをかけて来た。それは先ほど一撃食らってすでに見切っている。ユティは触手を飛び、屈み、躱して、じわじわと幻魔の懐に入っていく。

 

(ここ――だ!)

 

 甲殻の裏側、ぶよぶよした肉が剥き出しの部分に、ユティはフリウリ・スピアを全力全開で突き立てた。

 

 

 キュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!

 

 

 脆い部分を容赦なく抉られた海瀑幻魔が悲鳴を上げる。まだだ。まだ終わっていない。

 

(ルドガーが貝類を調理する時。殻から中の貝柱をナイフでくり抜く、イメージ!!)

 

 グゾリ、グゾリ、と高速でフリウリ・スピアを殻の内面に合わせて滑らせ、中身を殻からこそげ落としていく。ゴッ、ゴッ、ゴリリリリリリリッ。

 

 

 アンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 さすがの海瀑幻魔も体内を食い荒らされる痛みに耐えかねてか、触手を総動員して絡めとり、ユティを外へと弾き出した。

 まずい、と思うが早いか、巻きついた触手はユティを海面に容赦なく打ちつけた。

 

 

 派手に水飛沫が上がり、無音の海中に沈む。フリウリ・スピアを駆使して何とか触手の拘束はするが、体が沈んでいくのが止められない。

 

 

 ――“何故そこまでカナンの地に拘るんだ。願いはないんだろう”――

 

 

(ワタシがカナンの地を目指す、理由)

 

 

 空はいつだって毒色で、太陽など見たことがなかった。

 ユースティア・レイシィが愛する者たちが、誰も心から笑わなかったあの世界。

 

 ユティは彼らに心から喜んでほしかった。彼らが辛い声で「許してくれ」と、「すまない」と言ってユティを抱き締めることがないようにしたかった。

 

 心も体も造られたモノだと自覚している。

 それでも、ユティはそれを善しとした。

 ユティがそれを善しとした。

 

(ユースティアはとーさまたちをシアワセにするために正史(ココ)に来た)

 

 水底の砂を全力で蹴った。

 

 

 

 ざぱん。ユティは海面に浮上する。吸った酸素を自身の呼吸より先に、大音声に費やした。

 

「ミュゼ! でっかい火ちょうだい!」

 

 上からネガティブホルダー斉射で援護してくれていたミュゼがこちらを見下ろす。

 視線が絡んだのは一瞬。ミュゼは両腕を掲げて、頭上に炎のマナを集中し――

 

「レイジングサン!!」

 

 炎がドーム状に爆ぜ、海瀑幻魔を包み込んだ。

 

 

 キィィィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!

 

 

 火が弱点の幻魔は絶叫を上げて悶える。その隙にユティは岸壁にフリウリ・スピアを突き刺し、逆上がりの要領で体を浮かせた。

 そして、足裏を岸壁に付けて全身を撓ませると、ゴム弾のように自らを発射した。

 

 ドシュ!

 幻魔にフリウリ・スピアが深々と突き刺さる。

 ユティは燃え盛る幻魔に両足を突っ張った。足裏が焼けても、肌や髪を火に焙られても、脚力は緩めない。

 

「ぬ、く、ぅ、ぁ…あ、ぁ、あぁぁぁあああああああああああああっっっ!!!!」

 

 釘抜きの要領でフリウリ・スピアを力任せに引っこ抜いた。

 勢いのまま浮いた体が海に落ちる。気が抜けたせいか体はどんどん沈んだ。

 

 フリウリ・スピアの先には黒い歯車と、白金の歯車の集合体。黒い歯車が砕けると、白金の歯車球体がゆったりとユティの手に落ちてきた。

 

 また一つ、世界がひび割れて砕けて消失した。




あんだあ「あんだあでーす(≧▽≦)」
るしあ「るしあでーす(・д・。)」
あ・る「「二人合わせてあんだるしあでーす(≧▽≦)(・д・。)」」

るしあ「して(なれ)よ。先日スランプだからという理由で本編ではなく番外編を更新した作者が何故本編を上げる?」
あんだあ「スランプ脱した」

       パパパパパーン
       ☆))Д´)
    _, ,_ ∩☆))Д´)
 ( ‘д‘)彡☆))Д´)
   ⊂彡☆))Д´)
     ☆))Д´)

あんだあ「|д゚)待て落ち着け聞け!」
るしあ「ならぬ。1秒以内に投降せよ。さもなくば作者黒歴史SSの某主上の悪霊モノ二次(厨二病全盛期に書いた科学成分激減のファンタジー要素大かつ型月用語多数オリキャラだらけ)を此処に曝す」
あんだあ「やめろおおおおおおおお!!ズサ━━━━⊂(;Д;⊂⌒`つ≡≡≡━━━━!! 誰にとっても不幸な結果になるぞ! 作者アレ元にして卒論書いてドヤ顔したんだぞ!?」
るしあ「では作者の近況について述べよ」
あんだあ「スランプだ。今日も実際ネタは降りてきてない。更新は元からほぼ書けてた分の体裁を整えて上げただけ。プラス、毎日PC三昧のため体にも諸症状が出始めた。というかとっくに出てるのに書くのやめなかったから自業自得。それを親に咎められた。それでも区切りいいとこまで書けば何か変わるかも、有体に言うとユーザー様からメッセージ頂けちゃったり? と欲を掻いた。アーンド、家庭環境が最悪(※別にDVとかではないぞ)で逃避先が欲しかった。以上!!」
るしあ「語ったの……」
あんだあ「語ってやったぜ。文句あるまい」
るしあ「うむ、ここまで暴露されると我には何も言えぬ。作品解説に入ろうぞ」
あんだあ「いえっさー(。・x・)ゝ」

るしあ「今回はバトルバトルひたすらバトルであった。オリ主とミュゼのタッグで海瀑幻魔戦、さくっと終了」
あんだあ「元々コレ自体バトルに重きを置いたストーリーじゃないんで作者的にはOKとのこと。ただし手抜きはしてないぜ。特に『音』」
るしあ「音?」
あんだあ「ぶじゅりとかぐちゃりとか、あえて気持ち悪い擬音語・擬態語を使うように意識して生々しさを演出してみた。悲鳴も『きゃあ』とか可愛いものじゃないっしょ?」
るしあ「ほんに作者はグロが好きよの。それに対して平気の平左のオリ主もオリ主だが」
あんだあ「あー、それ。本当は平気じゃないのよ。次回で詳しく言及すっけど。前回の後書きでさ、感情を閉じてくように教育したって言ったじゃん」
るしあ「実は痛いが痛くないフリをしていると? ――ますます以て珍妙な娘よ」
あんだあ「作中で本人も言ってた(思ってた)けど、『自分でそれを善しとした』子だからね。俺らがどうこう言える筋合いないって」

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