(ようやく終わった)
解散するメンバーを見送って、部屋を片付けながら、ユティはため息をついた。
疲れたかと問われればノー。気疲れしたかと問われればイエス。
(写真に触れた。色んな感想を耳にした。またカメラやってね、とも言われた。それらに対してワタシの心は揺らいだ? イイエ、揺らがなかった。微細なノイズはあったけど異常を来すほどじゃな……)
考えていたところで、現実から本当にノイズが聴こえた。
ユティは音源のキッチンに踏み込んだ。
ルドガーがシンクの前で、スプーンを挿したマグカップを水場に置いたまま固まっている。
「大きい音、エルとミラが起きる」
ユティが注意すると、ルドガーは飛び上がった。ひどく不意を突かれた貌。
(とっさに出る表情はユリウスとそっくり。今さらだけど、兄弟なのよね。とーさまの、弟。とーさまがワタシに救わせようとした、とーさま自身と世界一つを引き換えにしなければ救えないほどの運命を負った、人)
「その、ごめん。ボーッとしてて……ユティ?」
「ねえルドガー。アナタの武器の中には銃があった、でしょ」
「え? ……あ、ああ。あるぞ。他の武器と一緒に会社に預けてるから、今は持ってないけど。てか任務以外じゃ大体預けっ放しだぜ? ほら、俺、元は剣使う人間だからさ。実戦で使ったらアルヴィンにモーレツな勢いで説教食らった。手入れ以外でぐるぐる動かすなとか、一回一回セーフティかけろとか」
「その注意はアルフレドが正しい。暴発したら目も当てられない。今後も銃をメイン武装にするの、推奨しない」
「ですヨネ~」
両手で顔を覆って泣き真似をするルドガー。ユティもノッてよしよし、と背伸びして銀髪を撫でてやった。エルのようにできたか自信はないが。
(この銀の髪が濁る日がもうすぐ来る)
ユティはルドガーの頭にやっていた手を下ろしてそのままルドガーの頬に触れた。
突然スキンシップの種類を変えられたルドガーが目を白黒させている。
「『カナンの道標』は着々と集まってる。『カナンの地』が開かれる日もそう遠くない。その時アナタは、今までとは異質な死の危険と直面する。『オリジンの審判』はクルスニク一族に犠牲を強いるように出来てるから」
「! お前、知ってるのか、『審判』のこと……あ、でも、そっか、ユティも骸殻能力者だっけ」
「ルドガー」
ルドガーの頬から手を外し、代わりに手を握る。節くれ立った指は戦士らしさを、手荒れはアットホームな人柄を滲ませている。
「
「え…」
「もし誰かがアナタに大事な人を殺すよう迫っても、それが世界のためだと言われても、選ばないで。ルドガーは自分を大事にして。心も、体も――命も」
「それって、どういう」
「……ごめんなさい。現状が曖昧だから、ワタシも曖昧なコトバしか言えない。ごめん、ルドガー」
俯いていると、頭に大きな掌が触れて、額を正面の胸板に押しつけられていた。
「無理すんなよ。言えないなら、いいから」
「……どうしたの? ユリウスの秘密にあんなに反発してたアナタらしくない」
「う、それは、まあ、兄さんは家族だし、男同士だし、色々複雑っていうか、腹立ったっていうか」
「女の子だったら許してしまうの? オンナの敵ね」
「アホか! 俺だって、隠す側にも事情とかプレッシャーとかあるって分かるぐらいには成長したんだっ」
ここで困らなければいけないのに。ルドガーのユリウスへのコンプレックスを利用してユリウスに対する反抗心を限界まで溜め込ませるのだから、ルドガーの成長はむしろ忌避すべきものなのに。
ユティが感じたのは、一つ男らしくなった年上の友人への微笑ましさだけだった。
「その、『審判』については言わなくていいから、1コだけ聞いていいか」
「どうぞ」
「今日、てか、昨日のアルバム作り。ユティはさ、楽しかったか?」
――この瞬間、ユースティア・レイシィの虚飾は剥がされた。
(ユースティアのウソツキ。全然できてなんかなかったじゃない。質問一つでこんな、あっさり、崩れて。でも、だって、だって写真は、カメラはアルおじさまがくれた宝物で、確かにそこに在ったことを証明してくれるモノで、だから、尊い、って)
やがて彼女はルドガーの背中に両手を回し、きつく締め返した。
「うん。すごく、楽しかった」
この朝、日が出ずるように彼女の中で新しく生まれたものがあった。
そのものの名は、覚悟。
あんだあ「あんだあでーす(≧▽≦)」
るしあ「るしあでーす(・д・。)」
あ・る「「二人合わせてあんだるしあでーす(≧▽≦)(・д・。)」」
あんだあ「××のために世界を壊す覚悟はあるか?」
るしあ「我から導入でない上に唐突なキャッチコピー伏字付だと!?」
あんだあ「ぶっちゃけこの『××』に何当てはめるよ?」
るしあ「無視か。『少女』であろ。TOX2最大のテーマではないか」
あんだあ「発売前はてっきり世界を滅ぼしてでもエルを選ぶネガハッピーEDが選択肢にあると信じていたのですが……なかったよorz」
るしあ「なかったのう。カッとなった作者がネガハピを捏造しようとした程度にはorzであったな。あまりの捏造設定の多さに覚まして見返した作者が悶絶するというありふれたオチがついた」
あんだあ「やっぱりエクシリア2はこのキャッチあってこそだと思うのよ。ほんじゃオリ主は「誰」のために世界を壊す覚悟を決めたと思う?」
るしあ「M8のラストを鑑みるにルドガーではないのかえ。ルドガーの『楽しかったか?』はオリ主を攻略するには十二分の威力であったと思うが」
あんだあ「さ~ね~?」
るしあ「むむむ(-"-;) 今日の
あんだあ「これでも結構ヤバイよ」
るしあ「すまん…………」
あんだあ「写真があるなら、やらなきゃダメでしょ、アルバム回。事件もなくサブイベは使ったけどオリジナル回。ただみんなでキャッキャウフフで写真をアルバムにしたある日」
るしあ「だが大事な一日ぞ。写真によってオリ主は原作組に認められ、ルドガーの最後の疎外感も消えた。さらには皆々の日々の成果や幸せの瞬間がきちんと形に残っていると読者諸賢に示すこともできた」
あんだあ「うん。すっげー意味の重い回。だってこれ、『ユースティア・レイシィがカメラマンでなくなる回』だぜ?」
るしあ「――なればつまり」
あんだあ「そ。モラトリアムももうオシマイです。次からKEEP OUTにしていたシリアスが帰ってきます」
るしあ「ついにここまで来たか。長かった。だがここからが勝負。読者諸賢、どうぞご覚悟あれ<(_ _)>」
【ヘベ】
「青春」が神格化された女神。元々は「青春」「若さ」の意。オリュンポス山上での神々の宴で、神酒ネクタルを注いで回る給仕係で、舞踊を披露する宴の花。子供を若者へと成長させた伝説がある。