しょうがない わたしたちはもうココに存在してしまってる
ルドガーたちが勢いよくふり返った。ミラも驚いた。ユティだった。神出鬼没はいつものことだが、今もいつからいたのか。
灰光の射す埠頭にて、ミラの金髪と同じ方向にカーディガンをはためかせながら、彼女は立っていた。
「ワタシも混ぜてよ。最後の『道標』のある分史世界にどう入るか、でしょ」
「知ってるの!? 最後の分史世界に入る方法」
ジュードが大きく一歩踏み出した。期待と不信が混ざった声。
「知ってる。そしてワタシのやり方は、別にミラにどうこうしろなんて言わない」
エルが明るくミラを呼んで手を繋いできた。ルドガーも、本人は気づいていないが、笑顔に戻っている。
ミラは大言壮語を吐いた少女を見返した。
(冷静でいなさい、ミラ。結局犠牲を払う方法だった時、みっともなく泣き喚いたりしないように。さっきまでの気持ちがウソにならないように)
「逆転の発想。行けないんなら、行かなきゃいい。行かないなら行き方でうだうだ悩む必要、ないでしょ」
「待てよ。『道標』はどうすんだよ。行かなきゃ『道標』だって揃わないんだぞ」
「揃う」
ユティは断言した。迷いなど欠片もない。
「最後の『カナンの道標』は」
ユティはネクタイを緩め、ワイシャツの中に手を突っ込んだ。
懐から取り出したのは、白金の歯車の集合体。
「ここにあるもの」
言葉にならなかった。いつのまに、なぜ、どうやって。彼らのそんな呟きが聴こえた。レプリカやイミテーションではない。ユティの手にあるのはまぎれもなく「カナンの道標」だ。
「だから最後の分史世界に行く必要はない。ミラは犠牲にならなくていい。ならないで。エルが悲しむ。ルドガーも。きっと誰よりも」
彼女はジュードを通り過ぎ、ルドガーを通り過ぎ、ミラの下へ歩いて来ながら話し続ける。
「ニセモノかホンモノかなんて、これっぽっちも重要じゃ、ない。アナタは『今』『ここ』で息をして、鼓動を刻んでる。その事実に文句をつけたい奴はつければいい。どんなに言われたって『アナタがいる』ことは、誰にも、冒せない」
誰に認められずとも、「そこに在る」事実は変わらないのだと――正面に立った彼女は真摯に語った。
「――――あなた――何者なの?」
少女は今まで見たこともない、凄烈な笑顔を浮かべた。
「ミラと同じ分史世界の人間。ただ、ワタシの分史はミラのとは異なる。ワタシは今から18年後の未来から来たから」
未来軸の分史世界の人間。クルスニクの鍵。骸殻能力者。――「鍵」の力を発現しうるクルスニクの血を引く人物。
では彼女は、「誰」と「誰」の血を引いているのか。
「ユースティア・レイシィは偽名。ワタシの本名は、ユースティア・ジュノー・クルスニク。この意味、分かる? ミラ、ルドガー」
クルスニク姓を持つ、未来分史の娘が、あえてルドガーとミラを指名した。
(この子、もしかしてルドガーと――私の!?)
ミラはルドガーと顔を見合す。ユースティアを介した彼との未来を想像して四肢が火照った。つい顔を逸らしながら、それでもこっそりルドガーを盗み見ると、ルドガーもミラと変わらない体たらくだった。
「話して。ミラと。伝えたいこと、あるでしょ。お互いに。それが終わったら、ワタシのことも教えてあげる」
ユティは反転し、ルドガーの横を通り過ぎる。彼女はエルとジュードを連れて埠頭を去っていった。
残されたミラは、ルドガーと揃って、途方に暮れるしかなかった。
あんだあ「あんだあでーす(≧▽≦)」
るしあ「るしあでーす(・д・。)」
あ・る「「二人合わせてあんだるしあでーす(≧▽≦)(・д・。)」」
あ「俺のターン! 分史ミラをフィールドに残留! ヴィクトル分史を完全にスルーしてターンエンド!」
(illi゜д゜)ハッ <|>===3333∑) ̄∩(・д・。) ̄)
る「
あ「。。。。プスプス。。_o(*|*)O***__どうしてもやりたかったんだ! 分史ミラ救済! てか、ディスプレイの前のみんなも他人事ちゃうで!?」
る「うわ此奴読者に責任を押しつけおった」
あ「……ぶっちゃけさ、分史ミラ救済SSに走った人たち、素直に挙手してみるべ?」
る「――――」
あ「――――。ほら見そー! 俺らの勝利!!」
る「
あ「一番ポピュラー? かは知らんが「精霊ミラと人間ミラは別の存在」理論はやり尽くされてる感があったし、作者のスタンスが「誰も書かないものを書く」なんで、その理論使わずにミラさん現世に留めるのはマジ頭使ったー(T_T)」
る「結局プロローグからすでに、ルドガーたちは未来ユリウスの密に練られたシナリオの上ということか」
あ「アルヴィンがいる以上、ユリウスも知ってることになるからね。C12のヴィクトル殺しがルドガーとエルの後戻りを潰す最後の分岐点だって。父親を殺した以上、ルドガー君はエルたんを救おうとするなら自死するしかない。ここまでの犠牲を出した彼にはもう戻れる日常がない。エルEDって消極的自殺だった気がしてならないから、せめてその選択肢に至らない、至っても生きる気力を失くしてないルドガー君にしたくて、ヴィクトル分史の存在をオリ主は完全に隠蔽した」
る「薄らぼんやりオリ主の「ルドガー>エル」の無意識が透けて見えて恐ろしいの……」
あ「今後の展開でミラ様のポジションはミラさんが担いまーす。前にも行ったけど、これ結構大事な伏線だったりするよ。前回「ハッピーエンドにしない」のは明言したけど、読者様の中で「納得いかねー!」と思う方も当然出てくるでしょう。その時のため、そういう方々が拙宅の設定上で妄想するための「糸口」がM9。ヒーローはヒロインの糸に招かれ迷宮を脱するのだ(ドヤァ」
る「正史ミラファンとヴィクトルファンは恐らく今、大激怒であろうな……」
あ「ぶっちゃけヴィクトルさんについては反省してる。全編終わったらフォロー後日談入れるからそれで勘弁してください<(_ _)><(_ _)>。ミラ様はさっきも申し上げた通り「あえて」の放置だから「あえて」の。……石を投げたい方はお一人様お一つまでで受け付けます」
る「急に平身低頭しおった!」