絶望《ファントム》が希望《μ's》を守っちゃ駄目ですか? 作:帆金 焔
この物語の予定としては、アニメ本編に入るのはまだ先。いくつか、主人公とゲートとの出会いやらを書いてからにしようと思ってます。
始まりは、所謂『神様転生』という奴だった。
「本当に申し訳なーい!!」
○○○
自分でも、『らしくない』行動を取ったなと思う。
転生前の『僕』は何処にでも居る、ルックス・成績・運動、全てにおいてごく一般的な17歳の高校二年男子だった。
それがまさか、自分の身を顧みず他人の命を助けるとは。
学校帰り、ふと前方を見る。
同じく学校帰りであろう小学生達。楽しげで、実に微笑ましい光景だ。
ちょっとふざけて肩を叩いたり──
それがいけなかった。
ふざけあう二人の小学生。
その片方の子がバランスを崩し、後ろを歩いていた女の子にぶつかってしまう。そこけら更に、ぶつかられた女の子はバランスを保てず道路へ出てしまう。
もしも歩道にガードレールがあったなら、きっと事件は起こらなかっただろう。
(なっ……!?)
トラックだ。最悪この上ないことに居眠り運転してやがる。
気づいたら僕は飛び出していた。
女の子を抱き抱え、その時点でもう結果が分かってしまった。
あっ。これ、死ぬ。
運転手に起きる気配はなく、トラックはスピードを落とす事なく突っ込んでくる。
二人一緒に助かることは望めない。なら、せめて女の子だけでも助けたい。
「…多少の傷は勘弁な」
僕は女の子を歩道へと放り投げた。
他の子達がクッションになるようにそっちへ投げたので、女の子の命は助かるだろう。
(……さて)
迫り来るトラックから助かる奇跡など見いだせず、自分の命もあと数秒後には消えてしまうというのに何故か僕は、不思議と冷静でいることができた。
人生17年、永いようで気づけばアッという間だった。
まさか、彼女以前に好きな人も現れないまま死ぬとは思わなかったな……。
お酒や車の免許、……それにエッチぃ事にも当然ながら興味はあった。やってみたい事や欲しい物だってまだあったのに…。
(17年、か……。父さん、母さん……先立つ不幸を……まぁ、許さなくても良いや。親より先に死ぬなんて馬鹿をしでかすんだからね…)
自分の死を受け入れた僕は最後にそんなことを思いながら目を閉じ、抗うことなく、激しい衝撃とともに意識は一瞬にして刈り取られた…。
〇〇〇
──で。話を冒頭に戻す。
気がついた時には真っ白な空間、一切の境目が無い本当にただ真っ白なだけの空間に居て、目の前には立派な顎髭を蓄えたお爺さんが立っていた。
「此度は本当に申し訳無い‼」
場所と状況から考えて、自分が体験しているのは二次創作小説でも有名なジャンルの一つ、『神様転生』であることはすぐに理解できた。
「え、えっと…。頭を上げてください」
起きている状況が『神様転生』であるなら、目の前に居るのは『神様』なわけで…。
まさか、神様に頭を下げられる日が来るとは思わなかった。
「…あ、あの。僕、そんなに怒ってないんで、それより僕の『本当の死因』を教えてくれませんか?」
神様転生の場合、大体は神様側が何かトラブルを起こしてしまい、それによっての死亡ってことなんだけど…。
「……じ、実はの」
「………」
結果から先に言うと、僕の死因は『シュレッダー』でした。
生き物には全て等しく、生まれた瞬間から死ぬ瞬間までの全てが記された『人生録』というものがあるらしい。
その『人生録』とやらを損傷・焼失などしようものならその時点で、人生録に記された生物は死んでしまうのだとか。
で、僕の場合。事務課に所属する天使が誤って僕の人生録をシュレッダーにかけてしまい、それで僕は死ぬことになってしまったらしい。
ま、まぁ…それほど悲惨な理由じゃなくて良かった。
転生者の中にはひょっとしたら、その人生録で鼻をかまれたなんて人が居るか「儂の知り合いの神がそんな死因の魂を担当したそうじゃが?」……冗談のつもりで言ったのが当たっちゃったよ。
「……さて、白羽 雅よ。此度は本当に申し訳ない。あの事故では本来、お主も助かっていたはずなんじゃ。それをこちらのミスのせいで死なせてしまった……故に、お主にはこれから別の世界へ転生してもらう。転生先は好きな所を選ぶが良い。転生特典も五つまでなら、欲しい物を言ってくれ」
「じゃあ──」
願いは迷わず言えた。
転生先はアニメ・『ラブライブ!』の世界を、転生特典は『仮面ライダーウィザード』だ。
この二つを選んだのは単純に、好きだからである。
ただ…。『ラブライブ!』を選んだことについては 他にも理由がある。
一つは、μ'sのファーストライブを成功させたい。
アニメのファーストライブ回、あれは衝撃だった……。
そりゃあ確かに、世の中、何でも最初から上手くいくわけない。あれはあれで、穂乃果ちゃん達が経験すべき『試練』としては有りなんだろう………でも!
穂乃果ちゃん達だって本気だった、努力した。報われて然るべきだろ!?
だから僕は、もっと観客を集めたい!後のμ'sメンバーだけじゃなく、ちゃんと穂乃果ちゃん達に興味を持って歌を聴きに来てくれる人達を!
二つ目は、穂乃果ちゃんが倒れた学園祭ライブを成功させることだ。
その為には雨の日にまで外に出た、穂乃果ちゃんの自主練を止める必要がある。
それに、ことりちゃんの悩みも何とかして……穂乃果ちゃん達をすれ違いなんかさせてたまるか!
僕の思いを話したところ、『そういうことなら是非ともラブライブ!の世界に行ってくれ』と、神様からも頼まれた。
何でも、僕より先に一人、『ラブライブ!』の世界へ転生者を送ったらしい。だけど、その人は人格に不安を感じてしまう部分があり、分かりやすく言うと『ヒロインは全員、俺の嫁!』と考えるような人らしい。
「お主にはストッパーの役目を担ってもらいたい。その者が何かしでかそうものなら止めて欲しいのだ」
そういうことなら、僕も神様の願いを承諾した。
それと。転生特典の『ウィザードの力』については、残念ながら断られてしまった。
僕より先に『ラブライブ!』の世界へ行った転生者が既に、『ウィザードの力』を持って転生したからとのこと。
一つの世界に全く同じ『力』が存在するのは大きな『矛盾』を生み、最悪、世界の崩壊へと繋がりかねないらしい。
「それなら、『白い魔法使いの力』をお願いします」
「ん~……うむ、それなら大丈夫じゃ。では、残り四つは何にするかの?」
「えっ?転生先を含めたら、残りは三つじゃ…?」
「安心しろ。転生先と転生特典は別々じゃよ」
「だったら……、あとは一つだけ使って残りは保留で」
「承知した。して、その一つとは?」
「……僕がトラックに轢かれた瞬間を、あの場に居た子供達は直に見ちゃったと思うんです。だから僕が助けた子を含めてあの子達の記憶から、事故の記憶だけを消してください」
「うむ……確かに、幼き子らにとっては忘れた方が良いじゃろうな…。そういうことなら、サービスで特典に関係無くやっておこう。残り四つ、決まったら指輪を介して教えてくれ」
「はい」
指揮棒を振るがごとく、神様が右手をゆっくりと動かすことで扉が現れる。
「さぁ、行け。新しい世界《人生》がお主を待っている」
扉が開き、眩い光が溢れ、僕はその中を歩く。
体が、感覚が、意識が、歩くにつれて徐々に薄れていく。
きっと次に目覚めた時、僕は転生を果たしているのだろう。
──そう、思っていたのに……。
〇〇〇
確かに転生は果たせた。
「そ……そん………な……」
願った世界は『ラブライブ!』──
「どう………して……」
望んだ力は『仮面ライダーウィザード』──
「………」
でも、転生したら僕は──
──絶望《ファントム》だった…。
神side
〇〇〇
「行ったか。………μ's《歌姫》達を頼んだぞ、白羽 雅…。…さて」
パチンッ。神が指を鳴らすと、真っ白だったはずの空間が、一瞬にして荘厳な部屋へと変わる。
左右には神秘的なステンドグラス。そして、神の目の前には随分とSFチックな機械がある。
「そうじゃな……、指輪については少しサービスをしておくかの。……うむ、これで良し」
機械は、転生者の転生特典を実行に移す物。機械を操作し、白羽 雅が希望した転生特典をセット。あと、スイッチを押すだけとなった。
ポチッ。スイッチを押す。次の瞬間──
ビーッビーッビーッ!
機械から鳴り響くのは警告音。
《エラー。転生者、白羽 雅ノ転生特典ハ受諾出来マセン》
機械から流れる音声に驚愕する神。
何度も操作を試みる。やはり、結果は同じ、『エラー』としか出なかった。
「な、何故じゃ…!?」
機械が壊れた?それはあり得ない。天界にある機械は短くても500年、永ければ1000年は持つ物ばかりだ。だったら何故?
神はその原因を知ることになる。
《転生者、薊野 源之助(あそう げんのすけ)改メ、操真 春火(そうま はるか)ノ転生特典ヲ受諾。次ナル転生者ノ転生特典無効化・及ビ転生者ノファントム化ヲ実行シマス》
「な、なんじゃと?!」
白羽 雅の前に担当した魂は、確かに転生特典を二つ保留にしたままで転生した。それをまさか、こんな使い方をしてくるとは。
神は早急に機械を停止させようとするが時既に遅し、機械から無慈悲な言葉が告げられる。
《実行ヲ完了シマシタ》