夜に眠れなくなってからギリギリの無茶というレベリングを繰り返すようになった。
そうすることでこの世界で生きるということを本当の意味で理解する。
この世界の命を削るという物を理解する。
「クソッ!」
どうしても剣を振るごとに脳裏に人殺しという言葉が再生される。
誰に言われた訳でもない。
むしろ皆があの状況から仕方がなかったと、俺が悪くはないというだろう。
それでも俺が人を殺したことに、変わりはない。
「ゼアアアッッ!!!」
そんなことも関係なくモンスターは牙を剥いて迫ってくる。
だから剣を振って命を奪う。
ただ自分自身から出てくる言葉を否定するために剣を振り続ける。
逃避にすらならない。その言葉が今までどこかで大丈夫だと思っていた物を壊していく。
自分は転生したから大丈夫。――前世の記憶なんて本当にちっぽけな欠片しか残っていないのに?
「うるせぇ」
アスナなら問題ない。――そんなことを誰が決めた?
「だまれ」
妹も強くなっている。――強くてもあっさりと死ぬのがこの世界だろう?
「黙れって!!!」
この場にいるのはコウ一人。
周りにいたモンスターもいなくなって本当に一人だった。
「もうわかってるんだよ・・・・・・」
俺が間違えていたことくらい。
今でも間違えているかもしれないことくらい。
「・・・・・・こんなところに居たんだね、コウ君」
「・・・・・・アスナ?」
ここはモンスター同士がリンクするだけで効率がそこまで良い訳ではない。
だからアスナがここに来ることはないと思っていた。
剣を鞘のなかに戻し、切羽詰まっているものを圧し殺し、普段の余裕を持っている自分に意識的に戻る。
「珍しいな、忙しいアスナがこんなところに、こんな時間に来るなんて。レベリング効率だけで言うならここはそこまで良くないぞ?」
既に日付も変わるだろうという時間になっている。
効率は悪くはないが血盟騎士団の副団長がくるにはおかしい時間だろう。
「うん、やっぱりユウちゃんの言っていた通りね・・・・・・」
「?どうした?」
小さく呟いたその声はコウの耳に入ってこなかった。
そしてアスナは笑顔を浮かべる。
「ねえ、コウ君」
「ヒィッ!な、何事でしょうか、アスナさん」
見慣れたお怒り笑顔だった。
アインクラッドに来てからアスナの笑顔はお怒り笑顔しか見てない気がしてきた。
「そこで少し話そう?」
「あ、ああ。わかった」
全く逆らえる気がしない。
さて、というかあれ?俺はアスナを怒らせるような何かをしたのだろうか?
side アスナ
一人で叫び、群れるモンスターを倒していく。
その剣は鬼気迫る物で、少し離れた場所から見ている私も少し恐怖を感じるものだった。
私が知っているコウ君とは明らかに違う。
戦闘を遠くから見たのだが、本当に苦しそうに剣を振っていた。
なのに私と話すために剣を鞘に入れた瞬間に普段の私が知っているコウ君に戻った。
さっきのレベリングを見てなかったら私も騙されていたかもしれない。
心に改めて誓う。
「色々と教えてもらいたいことがあるの」
「俺に?アスナが?・・・・・・レベリング?」
笑顔で、ニッコリとコウ君の方を向く。
「コウ君じゃなくて晃太君に」
「えっ?」
わざとリアルネームで呼ぶ。
真剣な話をするのだから、私から踏み込むためにアスナではなくて結城明日奈として、トッププレイヤーの一人のコウ君ではなくて幼馴染みの晃太君の抱え込んでいる話を聞こう。