行ってきますと、そう少女は言う。それは相手に今から出かけると、そう伝えるための言葉。しかしそれに返す者は誰一人としていなかった。いや、言葉を返す者はいないが、視線を送る者はいた。その人物は唐突に現れ、ゆっくりと地面に足をつけた。
「あれが現人神になれる器を持った人間ねぇ……」
地面に降りてすぐ、その人物はそう呟く。女性特有の、高く透き通った綺麗な声。だがそれは何の感情も無いような、そんな真っ白な声色だった。
「あそこまで
眉間にシワを寄せて、そう呟く。
「でもこれ以上、あの娘を人目に晒し続けるのも良くはない。まだはっきりとは気が付いてないようだけれど、もう腕力ですら人間のそれとは比べ物にならないほど強くなっているはず」
彼女は少女が消えていった道を見る。その道に人影は無く、ただ真っ直ぐな通路が延々と続いているだけだ。
「まぁ取り合えず。二人共に会ってみないことには始まらないわね」
そう言って彼女は右手に持っていた布袋を持ち上げる。それからそっと、その布袋を開き、中身を取り出した。それは日数が経ち、赤黒く変色した血によって染められた女子制服。血の付いていない部分が無いと思えるほど、その制服は本来あった色合いを失っていた。
「これが落ちていたのは彼女が通っている学校の裏の林。そんな無造作に捨てられたのにも関わらず、よくもまぁ半年も見つからなかったものだわ」
自覚はあるのに無意識だと言うのが尚更たちの悪い。小さな事ではあるが、物事が彼女の都合の良いように動いている。
「奇跡と言うよりは、運が良いと言った方が適切かもしれないわね」
これは言わば、コイントスをして十回連続で裏が出たのと同じような現象だ。決して不可能ではない。十回のコイントスで、十一回も裏が出せるような。そんなかぐや姫が出した無理難題を
「他にも探したら、色々と出てきそうね」
まぁ探す気はないのだけれど。彼女はそう言うと最後。その姿はどこかへと消えてしまった。
緑の髪のかえるの少女は、三つの
四人が歌う、
淋しい淋しい、
皆様が苦戦しておられたので、あえて【解】も分かり難いように書きました(そっちの方が面白いと思って)。でもそれだとあまりにも不親切なので、この話はシリーズが終わった後にでも解説を載せようかなと思います(たぶん)。
あと『哀々傘』の【解】の投稿を早めます。週明けくらいに。しかしなにかと急なので、もう少し待ってと言う方が一人でもいらっしゃれば、延長します。