いないいないばぁ。   作:Gasshow

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予約投稿なので正解者様がいらっしゃるか分かりませんが、多分いないと勝手に思い込んでます。その理由は本文を見ればお分かりになるかと。

…………流石に勝ったでしょ。








と思っていた時期が私にもありました。


ゆびきり【解】

森の中にある一軒の小さな小屋。木々の隙間から漏れる光が、その小屋を明るく照らす。辺りが静かなせいか、昼下りに鳴く小鳥の鳴き声が妙に響いて聞こえてくる。

 

「よいしょっと。……まぁこんなものよね」

 

そんな森の奥深く、鈴仙はそう独りでに呟いて手を払った。彼女の目の前には地面を掘ったような跡と、その上に置かれている漬け物石ほどの大きさの岩が置かれていた。

 

「…………ホント、最後まで私に迷惑かけたままなんだから。後始末、むちゃくちゃ大変だのよ」

 

 鈴仙はしゃがんでその岩の前へと手をかざす。そして目を閉じる。瞼の裏には、とある日のやり取りが鮮明に映っていた。

 

 

 

 

 

それは鈴仙が定期的にルーミアの様子を確認しに来た、そんな日だった。

 

「…………耐えて見せるって、そんなの不可能よ」

 

 先ほど発せられた根拠のないルーミアの言葉を鈴仙は真っ先に否定した。

 

「いいえ、大丈夫。もう少しだけだから」

 

しかしルーミアはそれに笑顔で返した。相変わらずの様子に、鈴仙は顔をしかめて口を開く。

 

「…………そんなにあの子と一緒にいたいなら、死肉くらい食べればいいじゃない。それに子供のふりなんかしちゃって、よく分からないわ」

 

「いいのよ。良くわからなくて」

 

ルーミアのその言葉を最後に、部屋には沈黙が訪れた。決して気まずい沈黙ではなかったが、それでも居心地の()い沈黙でもなかった。そんな静けさがしばらくのあいだ続いたが、しかしそれを唐突に破ったのはルーミアの一言だった。

 

「…………あのね鈴仙」

 

「…………何よ?」

 

少し不機嫌そうに鈴仙は答えるが、それを気にもせずにルーミアは話し始めた。

 

「私、人間に優しくされたのって初めてだったの」

 

間入れずルーミアは続ける。

 

「私ね、生まれた時からずっと人喰い妖怪だったから、人間の友達なんていなかったんだ。かと言って妖怪に親しい友人もいなくて、ずっと一人だったの。だから嬉しかった。あの男の子が震えながらも私を庇って、そして友達になろうって言ってくれたことが」

 

それは鈴仙が初めて聞いた、ルーミアの心の内だった。

 

「だからね鈴仙。そんな大切な友達と交わした約束だから、最後まで守りたいの」

 

馬鹿だ。その言葉がはじめに鈴仙の頭に浮かんだ。そんな約束一つの為に、自分の命を捨てると言うのか?それに、もしそれでその子を喰らってしまえば元も子もない。

 

「それでね、 鈴仙。一つ鈴仙にお願いがあるの?」

 

「…………何?」

 

 鈴仙は(いぶか)しげに答える。

 

「もし私の理性が限界に達したら、 鈴仙の能力であの子の両親の死体を映してほしいの。そしてそれをわたしが食べているふりをする。その姿をあの子に見せたいの」

 

今度ばかりは意味不明だと、 鈴仙は首を横に振る。

 

「…………それって何の事が意味があるのよ?それこそ意味分からないわ。と言うかそんなことしたら貴方、その子に殺されちゃうわよ」

 

それはただ、その光景を見せているだけで実際は死んでいない。(のち)に両親が生きていることを知ったあの少年は、一体心にどんな傷を残しながら日々を生きていけばいいと言うのだ。

 

「いいのよそれで。 私はもうすぐ死ぬ。本当は何もない場所で一人で消えるのが一番なんだけど、最後はどうしてもあの子の前で死にたいなって思ったの。あの子は心に深い傷を負うかもしれないけど、私は博麗の巫女でもなく、彼に退治して欲しい。妖怪は自分の欲望に忠実だから、これは私の最後のわがまま」

 

 鈴仙は溜め息を吐いて、頭に手を当てた。その様子を見たルーミアがくすりと笑う。

 

「それにあの子は好奇心が旺盛(おうせい)で、それでいて妖怪に対してあまりにも無防備だから、幻想郷でそんなんじゃすぐに殺されちゃう」

 

「…………だから身をもって教えようと?」

 

ルーミアは無言でこくりと頷く。

 

「そんな事の為に貴方は死ぬの?」

 

「いいの。あの子に拾われた命だから、あの子の為に使いたいのよ」

 

それを聞いた鈴仙はしばらくの間、考える素振りを見せて、諦めたように口を開いた。

 

「…………分かった、引き受けたわ。だからもう眠りなさい。寝た方が楽よ」

 

「……うん。ありがとう鈴仙」

 

ルーミアは嬉しそうに笑って、瞼を閉じた。その表情は穏やかで、とても餓死状態にある者の寝顔とは思えなかった。 鈴仙はその寝顔を一頻(ひとしき)り見た後、荷物を持って小屋から出ようと、扉のノブに手を掛ける。

 

「……次は、人間の女の子に……生まれたいなぁ」

 

家から出る直前に鈴仙が聞いたのは、そんな一人の少女が持つ、(はかな)(あわ)い一つの願いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方の死に顔は、何ともまぁ穏やかだったわね」

 

 追想を打ち切った鈴仙は立ち上がり、スカートに付いた塵を払った。

 

「じゃあね、ルーミア。また来るわ」

 

そう一言言い残し、鈴仙は墓石に背を向け歩きだした。

 

緩やかに吹く風が、木々の葉を撫で音を鳴らす。一陣の風が、落ち葉を運んで空へ舞う。そんな風が止んだ頃、彼女の姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

 




そんな感じの真相でした。解説はいらないですよね。因みに、今回の話は題名が少しだけですがヒントになっていましたね。『ゆびきり』ですから、約束が重要なテーマになっていました。予約投稿なので、分かりませんが、私の見立てでは、『 鈴仙がルーミアの狂気を操って、両親を殺させた』と言う答えにたどり着いた方が何人かいらっしゃるはず。その方は、まんまと私とikayaki様が作った罠に引っ掛かったと言うことですね。これだと鈴仙はただ理由も無く人を殺す鬼畜兎になってしまいます。私が唯一、理不尽なレベルと豪胆しているの話なのに、そんな簡単な訳ないじゃないのですか!それでも現時点で既に正解している方がいる。まさかです。

と言うことで今まで本当にありがとうございました。これでメインは終わりとさせていただきます。最後に『Who is the liar 』と言う読み物と、ラストの締めの話を書いてこのシリーズを完結と言う形で。取り合えず一段落ですね。本当にありがとうございました。

『Who is the liar 』についてですが、この話は今のところ四話構成の読み物になっておりまして、そうなると章のどこに入れればいいのか分からなくなると言う問題が発生しました。結果、この話は『いないいないばぁ。』とは分裂した形で投稿したいと思っております。タイトルの訳が『嘘つきはだれか』と言うことなので、せっかくエイプリルフールが近いので、四月一日に投稿したいと思います。

あっ、まだ次話にまとめの話がありますので。

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