いないいないばぁ。   作:Gasshow

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前回の話がLunaticだと言ったな……あれは嘘だ!
だってあんなにすぐ一瞬で解かれるとは思わなかったので……。私が東方紅魔郷のLunaticをクリアするのにどんだけの時間がかかったと思っているのですか!?なのに……あんな……一瞬で…………だから今回は新Lunaticレベルにしました。今回は流石に正解者は出ない(今回は勝った)!これを解いた人は私のパソコンをハッキングして書かれた答えを盗み見ているとしか思えません!だからこれを正解した人はハッカー認定ですね。


盃に映る月夜

人間が存在する世界から線を引くように、まるで壁に仕切られたような場所。

幻想郷(げんそうきょう)』はその名の通り幻想であり、幻の世界そのものである。多くの妖怪や神、様々な人外が多く存在する世界。

 

その二つの世界の境界に建っていると言われている少し古ぼけた神社、博麗神社。この日、ここで新年を祝う大きな宴会があった。

いつの間にか大騒ぎして始まる不定期なものとは違い、事前に予告しておいたものである。違いはそれだけではなく、普段あまり見かけない妖怪や、決して多くはないが人里の人間も混じっている。

いつもは、大きな力を持つ妖怪や、それに対抗できる限られた人間しか参加しない小さなものだった。しかし、今年は初めて幻想郷の賢者が、どんな小さな妖怪や、何の力もない人間も参加できるように呼びかけた。安全を保証すると、賢者自身が公言したこともあり予想外の数が集まった。様々な者が集まっているだけあって、宴会はかつてない盛り上がりを見せていた。

 

そんな賑やかな風景を宴会とは少し離れた神社の縁側に座り、目を細め、愛しそうに見守る女の妖怪がいた。彼女こそ、幻想卿の賢者であり、この宴会の主催者でもある隙間の妖怪八雲紫(やくもゆかり)。幻想郷の創始者の一人だ。宴会が行われている中心から少し離れてはいるものの、照らされた明かりは大きく、しっかりとその姿を浮かび上がらせていた。そんな彼女はこの景色を肴に一杯呑もうと、持参した酒を紅色の盃に注いでいる時ふと思った。

 

ーーーー何時だったかしら、この風景を見たいと思ったのは。

 

紫がなぜこの宴会を開いたのか……。それは彼女の信頼する忠実な式、八雲藍にさえ教えていない。周りでは彼女が何かたくらんでいるのではないかと、警戒している者もいるようだか、紫はそんなつもりは微塵(みじん)もなかった。自身の式にさえ教えていないのは、その理由が小さな事で、そして、あまりにも彼女らしくなかったから、他人に話すことが恥ずかしく思えたのだ。

ただこの風景が見たいだけ。ただ妖怪や人間達が、種族関係なく賑やかに楽しみ盃を交わす。そんな風景が見たかっただけ。本当に自分らしくない。そう思いながらゆっくりと酒の入った盃を傾ける。季節相応の冷たい風を身に受けながら彼女は只々(ただだた)その風景を眺めていた。

 

「珍しいわね。こんな端の方で呑んでるなんて」

 

突然に後ろからかけられた声にもかかわらず、紫はさして驚いた様子も見せることなく振り向いた。

 

「霊夢こそ、私にかまってくるなんて珍しいじゃない」

 

紫の視界が捕らえた霊夢と呼ばれた少女は、紅白を基調とし、脇がスッキリと切り取られたようなデザインをした巫女服を着ていた。その手には、紫と同じような盃が握られている。

 

「あんたはこの宴会の主催者でしょ。そいつがこんな所で一人酒を決め込んでたら、気になるってものでしょ」

 

「あら、別にいいじゃない。私が一人酒を決め込んでても」

 

紫は微笑んで手招きをした。霊夢は(いぶか)しみながらも紫の方へと近づき、足を止めた。

 

「ほら、どうぞ」

 

紫は徳利(とっくり)を差し出す。釈然としないながらも、霊夢は盃を前へと出した。徳利(とっくり)が傾けられ、その口から、透明な液体が盃へと流れる。宴会の明かりでキラキラと輝きながら、流れ出るその様子は、まるで夜空に浮かぶ星空のようだった。

 

「…………ありがと」

 

霊夢は盃に入った酒を半分ほど飲み干す。

 

「……それで、何をしてたの?」

 

紫の横へと座り、霊夢は言った。

 

「……焦がれ、恋した幻想を見ていたの」

 

「うん。あんたの言うことは相変わらず理解できないわ」

 

霊夢は早々、理解することを諦めて、ただ口を閉じた。二人の持つ盃の中身はゆっくりと、そして()らすような早さで減っていった。

 

「…………この神社も古くなったものね」

 

紫が三杯目の酒を盃に注いでいる時だった。ふと彼女は唐突にそう呟いた。

 

「何回かは建て直したんだけど、それでも資材は再利用しているから、見た目は古く見えるのよ」

 

この博麗神社は昔、大きな地震が起こったときに、何度か倒壊し建て直されたのだが、霊夢の言ったような方法で建て直されたので、その仰々(ぎょうぎょう)しさはあまり薄らいではいなかった。紫は一人、なるほどと納得してふと視線をずらす。その時、近くにある神社の柱の一つに、真っ直ぐ大きな傷があることに気が付いた。何を見ているのかと霊夢は紫の視線を追い、彼女も全く同じ傷が目に入った。

 

「あぁ、それね」

 

そう一つ呟いて、霊夢は続ける。

 

「前にここで宴会をした時に、酔っ払った勢いで妖夢の剣で遊んでたら付いちゃったの」

 

「………………何をしてるのよ、貴方は」

 

「し、仕方がないでしょ!わ、私ってばあんまり酒癖よくないんだから!」

 

それでもこれは無いだろうと、呆れ果ててしまった紫は、それ以上何かを言う気力を失ってしまった。

 

「も、もういいでしょ!とにかく!私は向こうに戻ってるから、気が向いたら紫も来なさい」

 

「はいはい。今度は魔理沙のほうきとか振り回さないようにね」

 

「うっさい!」

 

少し不機嫌そうに去って行く霊夢を尻目に、紫はくつくつと笑う。そして霊夢が人混みの中へ戻って行ったのを確認すると、彼女はまた酒を呑み始めた。盃をくいっと口の節へと追いやる。そこで紫はゆっくりと目を閉じた。

 

 

「……はぁ」

 

目を開く。甘い、痺れるような感覚が紫を襲う。空になった朱色の盃へ向けて、徳利(とっくり)を傾ける。そこに視線を落とすと、盃の中は綺麗な三日月だけが映りこんでいた。そう、そんな美しい情景がそこにはあった。本当に小さな世界。それでもそれはそこにあった。思わず見とれる。今まで目も向けたことがなかったのにと、紫は苦笑した。そしてふと視線を上げた時、柱に付けられたあの傷が目に入った。

 

「……ふふっ、本当に馬鹿な子」

 

思わず紫は微笑んだ。そこでぽちゃりと、一粒の雫が盃の中へと落とされる。盃に注がれている中身が波紋を起こし、そこに映されている三日月がゆらゆらと揺られる。紫はそれをしばらく見つめていたが、その揺れが収まると、一気に盃の中身を飲み干した。もう見ることすらできない、焦がれ恋した幻想と共に。

 

 

 

 

 

 




今回の結末は案外あっさりしています。答えを聞いても、あまり驚かれることは無いかと。恐らく、ふ~ん。程度のリアクションになりますかね。前回みたいな真っ黒な話にはしていません。ではヒントです。


ヒント1 今回の話は、本当に必要最低限の表現しか晒していませんので、本当にしっかり読まないと解けないようになっております。(面倒ですよね)。
さらには比喩などで確信をぼかしたりしています。



ヒント2 今回も題名がヒントの一つとなっています。そこまで大きなヒントではありませんが……。



ヒント3 物語の最初と最後で、変わっているものはないか?



ヒント4 ある地の文で、矛盾が生じています。




ヒント5 場面転換に気をつけてください。




本当に最低限しか書いてないので、ヒントが出しにくいですね。だからもしこれ以上表現を減らしたら、それは推理や予想をすっ飛ばして、妄想レベルの答えしか答えられなくなってしまうんですよね。これを答えられてしまえば、もうどんな問題を出しても正解に導かれてしまう気がします。

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