新Lunatic.ver2と言うことで。前回の新Lunatic(笑)より難しい…………はずです!はっきり言って、理不尽なレベル。しかも今回はいつもと形式が違います。問題が全く隠れていません。取り合えず読んでみれば分かります。さてこの話の真相を、解ける人がいるのか?(いるはずがない)。この話を解けた人は、ハバード大学に行けるくらい頭が良いはずです。なので、この問題を解いた人はハバード大学生ですね。
目に射す光で目が覚めた。小鳥の
「……………………朝か」
それが私の発した第一声だった。次第にクリアになる視界が捉えたのは、壁に掛けられた、大きいとも小さいともとれない丸い形をした時計。秒針が規則的に進んでいる中、時刻を表す二本の針は止まっていた。しかし、それが次の瞬間にはカチリと動く。それを見る私はこう思った。あぁ、何てことだ。
「……………………寝坊した」
魔法の森にある一軒家。そこで人形に囲まれながら、普段私は暮らしている。魔法使いである私は食事も睡眠も必要としないのだが、そこは人間だった時の習慣が抜けないで、特に矯正もしようと思わなかったので、今も変わらずこんな生活をしていた。それは私が今、食事を作っていることが、裏付けとなるだろう。寝坊をしたせいで、朝食と言うよりは昼食と呼べるそれを作るため、包丁で野菜を切り、調味料を準備している、そんな時……
「お邪魔するぜ、アリス」
威勢の良い声と共に入ってきたのは、大きな三角帽子の下に金色の髪を生やした可愛らしい少女だった。
「………………魔理沙、いつも言ってるでしょ。他人の家に入る時は、まず呼び鈴を鳴らして、家主の了承を得てから入る。常識よ」
「私に常識は通用しない」
「……そんなんだから泥棒呼ばわりされるのよ」
思わず頭を抱えてしまい、一つため息をついて魔理沙に向き直る。
「どうしたの?こんな時間に来るなんて珍しいじゃない」
「そうか?」
「ええ。私の家を訪ねる時は、いつも昼過ぎくらいじゃなかった?」
大体が、紅茶やお菓子をたかりに来るのが目的だったが、今日はどうやら違うらしい。
「まぁ、確かに。だって今日は昼を相伴しに来たんだからな」
「……………………あっそう」
そろそろ本気で頭痛がしてきた気がする。
「そこに座って待ってなさい。今、作ってる最中だから」
どうやらもう少し、野菜を切る量を増やさなければいけないようだ。
紅茶の入ったティーカップを魔理沙の前へと置く。それはいつも私が自分で飲んでいる種類とは違い、来客用の少し上等なものだ。魔理沙にはいつも私が飲んでいるのと同じものを渡すのだが、今日は何となく、そう言う気分だった。一言で言ってしまえば単なる気まぐれだ。
「それにしてもアリス。いつまでこうして食べたり寝たりを続けるんだ?魔法使いのお前にはもう必要ないだろうに」
それはアンティークのテーブルを挟んで、正面に座る魔理沙が私に向けた言葉だ。
「前から言ってるでしょ。人間だった時の習慣が抜けないって」
「でも勿体無いぜ。食事するのにはお金がいるし、睡眠だって時間の浪費だ。それなのにどうして続けてるんだ?」
「確かにそうね。でも無駄に過ごす時間と言うのは必要なのよ。こんな体になればこそ余計にね」
「そうなのか?」
「そうなのよ」
魔理沙は納得しない様子で紅茶をすする。そこで私はふと思う。
「魔理沙は『捨虫・捨食の魔法』を使おうとは思わないの?」
『捨虫・捨食の魔法』。それが種族としての魔法使いと自称魔法使いを別ける大きな壁だった。『捨虫・捨食の魔法』は文字通り、食事や睡眠、そして寿命と言う概念を捨てる事ができる魔法だ。これを成功させた者が、初めて魔法使いという種族として認められる。
「 ……『捨虫・捨食の魔法』か。今の私の技量じゃその魔法はまだ早い。あとそれに……」
魔理沙はまるで、呆けたように空を見る、そんな表情をしていた。
「……使えたとしても使うか分からないな」
「…………そう」
私はどちらを勧めようとは思わない。ただ魔理沙はこのままでいてほしいと、そう思う。根拠はないが、ただそう思った。それからも私たちはただ無言で紅茶を飲み続ける。痛くも、気持ち悪くもない。むしろ心地好いとさえ思えるこの沈黙。その中では私は一つあることを、思い出した。
「そう言えば魔理沙。パチュリーの本、返したの?」
「いや、まだ借りてるぜ」
「いつまで?」
「死ぬまで」
なるほど。パチュリーが頭を悩ます訳だ。
「それは盗むのと一緒よ。全く、私がパチュリーに会うたびに、魔理沙に本を返せと言っておいてってうるさいんだから」
「アリスはパチュリーとよく会うのか?」
魔理沙は意外そうに言った。
「たまに本を借りにいくのよ。貴方と違って、ちゃんと許可を得てからね」
紅魔館にある図書館は、それは膨大な数の魔道書が保管されている。その中には大変興味深い内容もあり、私はそれをたまに借りに行くことがある。しかしあの図書館。そもそもパチュリーが所有しているものではなく、スカーレット家の所有物らしく、彼女が一日中あそこで時間を過ごし、毎日のように読み進めていても、まだ全てを読みきったわけではないらしい。よく考えてみれば、一日一冊と言う驚異的なペースで魔道書を読み、解読したとしても、一年で三百六十五冊。ましてやあの図書館にある全てを解析するのはどれだけの時間がかかると言うのか。
「分かった。ちゃんと返すぜ」
「本当に?」
「本当に」
「いつ?」
「死んでから」
どうやら魔理沙の性格は一度死ぬくらいしないと直らないようだ。たとえ私がこれ以上言っても無駄に終わるだろう。私が呆れたそんな時、もう一つ思い出した事があった。
「あと魔理沙。貴方、昨日私を無視したでしょ」
「…………そうだったか?」
「ええ。私が家に帰ってる時に、貴方を見かけたわ。全身血だらけだったから、また変な実験して失敗したのかなって思って声をかけたら、急に走って行っちゃうんだもの」
「そうか。それは悪かったな。全く気づかなかった」
魔理沙は後ろ髪をかいてそう言った。そしてそのまま私を見てこう切り出した。
「…………そう言えばさ。昨日、人里で殺人事件があったの知ってるか?」
「殺人事件?」
昨日、人里に行ったが騒ぎは無かったはずだ。もしかして、私が帰った後に起こったのだろうか?しかしこれまた珍しい。幻想郷にある人里の中では、殺人事件なんて滅多に起こらない。それは人里から一歩出れば、妖怪に襲われることもあるだろうが、人里で人間が殺されるなんてのはよっぽどの事がない限り、起こらないのだ。それはもし誰かが殺しても、有象無象の能力者たちが存在する幻想郷で、ただの人間、もしくは普通の妖怪たちが殺人をしても、殆どの確率で犯人が割り出されると言うのもあるし、そうじゃなくても妖怪たちは知っているのだ。もし人里にいる人間を襲えば、幻想郷の秩序に穴を開けることになると。それは彼らにとっても害としか、なり得ない。
「犯人は妖怪?それとも人間?」
「いや、それが分からないらしいんだ。殺されたのは宿屋の娘らしいんだが、なんと首と胴体が離れた形で見つかったらしい」
「…………奇妙なことね」
本当に驚いた。となると犯人は高位の妖怪か、はたまた隠蔽に長けた能力を持つ者か。もし死体に食べられている形跡があれば、妖怪だと割り出せるのだろうが、それならばなぜ人殺しなどしたのだろう?ただの娯楽の一環なのか?私がそんなことを考えている時、ふと視線を感じた。誰でもない。目の前にいる魔理沙だ。
「………………何よ。そんなにじっと見て」
「………………何か思うことはないか?」
何が言いたいのだろうか?魔理沙が私に何を求めているのかが分からない。
「いえ、何にも」
「…………………………そうか」
魔理沙はふうっと溜め息を吐いて椅子にもたれる。相変わらずおかしな娘だ。
「……………………アリス。鍋、そろそろじゃないか?」
それから少しして、煙が立ち上っているのを見たのだろう。魔理沙が私の後ろにある火鍋を指差してそう言う。そうだった。今はクラムチャウダーを作っている最中だった。
「そうね。もうそろそろかしら?」
私は席を立って、魔理沙に背を向ける。そうして鍋に向かって足を進めたその時……
体が動かない。
なぜだ?まるで全身が粘土で固められたように動かない。私の脳が、体に命令を出しても、手足がピクピクと
「……ガッ…………ガガ……」
なんだこれは。声が出ない。私が発したのは声帯を震わす音ではなく、喉の隙間から息が漏れる音。それはまるで壊れた機械のような奇妙さがあった。
そして次の瞬間……
私は宙を舞っていた。ぐるぐると視界が回転する。何だ?何が起こっているか分からない。何があった?何をされた?何がどうなった?視界だけではなく、私の頭の中までもがかき回される。ただ一つ、そこで私が見たのは、首の無い自分の胴体と、銀色に光る斧を持った魔理沙。
そしてその横で腕を組みこちらを見るーーーー
ーーーーもう一人の私の姿だった。
さて、今までと違って普通に読んでもホラーですね。この話の全貌が解けた人がいらっしゃるのか?ちなみにヒントは無しです!と言うのも、私はこれから二次試験の勉強をしなくてはいけないので、私が合格するまでに正解者を出したくないと言うのが本音。執筆再開までをこの話で持たせようと言う魂胆です。なので返信が遅れたり、するかもしれませんが、どうかご了解下さい。もし私が執筆を再開して、まだ誰も答えを導けていなければ、ヒントを提示しようかなと思います。ちなみに『捨虫・捨食の魔法』は公式設定です。まぁ皆様なら知っていると思いますが……。
ではまた数ヵ月後に。