凡才錬金術師と天才錬金術師   作:はごろもんフース

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六話:ウロボロス食事の時間だよ☆

 『アルヴィーズの食堂』

トリステイン魔法学院に通う生徒及び先生方が朝食、昼食、夕食を取る食堂だ。

1階の上にロフトがあり、広く全てのテーブルは豪華に彩られていた。

トリステイン魔法学院では、魔法以外にも様々な事を教えている。

貴族社会に出ても恥ずかしくないように一人前にさせる為であった。

 

普段なら生徒や先生が歓談して、和やかな雰囲気の食堂であったが、今日ばかりは違った。

喧騒と言ってもいいほどの賑わいで品位も何もあったものではない。

使い魔を召喚し終えた翌日な為に、上級生も先生もしょうがないと黙認しているようだ。

しかし、どうも違うと言うことに、数人の生徒が気付きその喧騒の先へと目を向けた。

そこには1組の男女がおり、どうやらその二人がこの喧騒の理由らしい。

 

「なぁ、あれって……」

「昨日……」

 

「なんでここに?」

「異国のメイジ……とか聞いたぜ」

 

 二人を遠巻きに見て生徒達が会話に興じる。

男性は顔を赤くし、女性はほぅとため息を付いた。

それほどまでに注目を浴びているカリオストロが綺麗であったのだ。

 

人形のような綺麗さと可愛らしさを兼ね備えた容姿を持つ少女に、見惚れ誰も近寄ることができない。

そのせいもあり、両脇の席には誰も座らず、ポッカリと穴が空いてしまっていた。

 

「あっ……ギーシュが行ったぜ」

「流石、ギーシュ……」

 

周りが様子を伺っている中痺れを切らしたのか、何も考えてないのか、1人の生徒が近寄って行った。

 

「おはよう!ウイル、今日もボク達を祝福するような気持ちのいい朝だね!」

 

ギーシュと呼ばれた少年は、二人の目の前に行くと自慢の金髪をふわりと手でかきあげ優雅にお辞儀をしている。行動とセリフがキザったらしくはあったが、少年の容姿と相まって自然に見えた。

 

「おはよう、ギーシュ」

「知り合いか?」

 

それに対して、ウイルは手を軽く挙げ答え、カリオストロはウイルの()()()から見上げ、小さな声で聞いた。ウイルはそれに対して無言で軽く頷いた。

カリオストロはそれで納得したのか、頷き膝から降りるとスカートの裾を掴み少し持ち上げ優雅にお辞儀をした。その際に幾人かの男性生徒は少しばかり背を低くして屈み込む。

 

「はじめまして~……ご主人様(ウイル)の使い魔になりましたぁ。カリオストロって言います☆」

「………あぁ、昨日……の、」

 

しっかりとした挨拶を受け言葉を返そうとすると、ギーシュは次第に口数を減らし、目を見開かせ動きを止めた。そんなギーシュにカリオストロはきょとんとし、ウイルは深い深いため息を付いた。暫く待っているとギーシュが機敏に動き、地面に膝を着きカリオストロに視線を合わせ手を取った。

 

「お嬢さん、ボクと一緒に遠乗りでも……」

「ギーシュ……()()()()()()()

「う゛」

 

カリオストロを口説き始めたギーシュにウイルは何やら人の名前の様な言葉を口にした。

その声は低く、近くに居た二人にしか聴こえないような音量であった。

その言葉にどの様な意味が込められていたかは分からないが、ギーシュには効果覿面であったようで、ギーシュが呻いた。体をわなわなと震わせ、唇を噛み、ウイルとカリオストロへと視線を彷徨わせる。

暫くすると、何か覚悟を決めたかのような目に変わり手を離し、立ち上がり

 

「残念ながら僕には、君と言う花を楽しませられないようだ」

「え?」

「それじゃ……僕は行くよ。また教室で会おう!ウイル!カリオストロ!」

「おぅ」

 

先ほどの口説きが嘘であったかのようにギーシュは颯爽と去っていった。

それを見てウイルは軽く笑みを浮かべる。

逆にカリオストロは何処か不満そうにしウイルをギロっと睨むとそのまま膝上へと戻った。

 

「おい、さっきのはなんだ。なんで引き下がった。オレ様みたいな美少女を口説くチャンスだぞ」

 

先ほど同様に膝の上に乗りながら、低めの声で話す。

但し、今度は体をウイルと正面で向き合うようにし、ウイルの首へと両手を回して座っている為に抱きついてるようにしか見えない。

ただ、そのお蔭もあり、カリオストロのかなり不機嫌そうな怖い顔が他の人からは見えなくなった。

 

「………そうだな。愛かな?」

「あ゛ぁん?」

 

ウイルの言葉を聞き、カリオストロから聴こえてはいけない声が響く。

表情と相まって恐ろしい事になっているが、ウイルは苦笑するだけで終わらせる。

 

「なんだ、つまりはオレ様よりそっちを優先した……と?」

「そうだね」

「世界一の美少女だぜ?」

「どれだけ容姿が綺麗で可愛くても……譲れない物がある人も居るんだよ」

 

ウイルは臆する事無く、そんな事を正面からカリオストロに告げた。

それに対して、カリオストロは口を閉ざし、表情も困惑へと変える。

 

「わかんねー……わかんないな」

「分かんないか……カリオストロは恋愛とかしたことないの?」

「ない……いや、ありえねーな」

 

首を振り、カリオストロは否定する。

 

「ないのか」

「だから、今のこの感情(ルーン)を利用させてもらって調べるんだけどな」

「……気付いてたんだ」

「オレ様を誰だと思ってやがる」

 

困惑から一変、胸を張ってカリオストロは答えた。

そんなカリオストロに周りは悩ましいため息を付くが、ウイルは苦笑するばかりである。

 

「怒らないの?」

「怒ると思うか?」

「ないな」

「だろ?……まぁ解けた時は、覚えてろ」

「……覚悟しておくよ」

 

カリオストロの地底から響くような声にウイルは冷や汗をかきつつも頷いた。

 

「ななななな、なにしてるのよっ!!」

「……先ほどぶり、ルイズ」

「おはよう☆」

 

声を掛けられそちらを向けば、顔を赤くしたルイズが立っている。

口をぱくぱくと金魚のように開き、動揺しっぱなしだ。

 

「どうかしたの~?ルイズ☆」

「そそそ、それ!それ!なんでウイルと抱き合ってるのよ!」

「「あっ」」

 

ルイズの言葉に二人は、今知ったとばかりに声を揃えた。

二人はお互いにもう一度視線を合わせ頷くと、カリオストロが体を元の位置に戻し

 

「先ほどぶり、ルイズ」

「おはよう☆」

「普通になかった事にしないでもらえるかしら?……会ってからたった1日なのにずいぶんと仲良いのね」

 

先ほどの件をなかった事にしようと試みた。

そんな二人に呆れながらもルイズは頬を膨らませる。

 

「気が合うんだよ。研究者同士」

「そそ、それにカ・リ・オ・ス・ト・ロのぉ~ご主人様だもん☆」

「ごご、ご主人、主人様」

 

 媚びるように甘い甘い声をだし、カリオストロが体をウイルへと摺り寄せる。

その際に周りから怨念の篭った様な声があちらこちらからウイルへと飛んできた。

ウイルは知らぬ顔でお茶を飲み続けるもその手は震え、ガチャガチャと音を鳴らしていた。

 

「カリオストロ、降りなさい!……ほらこっち!ここに座ればいいわ!」

「ル、ルイズ!そこ俺の席なんだけど!」

「あ゛ぁあん?」

「なんでもないです!お使い下さい!」

 

 ルイズは慌てながら隣の席を指差し移るように進言する。

それに対して丸っこい体をした少年が声を挙げ抗議するもルイズに睨まれた。

その際、何故か少年は体を震わせ歓喜の表情をし引き下がった。

はぁはぁと荒い息を付き、震える少年に若干ルイズは体を引いた。

そんな二人を気にせず眺めていたウイルは眉を少し顰め声をかける。

 

「いや、ルイズそれは無理だ」

「どうしてよ!なら椅子を持ってくれば……」

「もう朝食の時間だ」

「あ……」

 

ウイルの視線の先を見て気付く、他の生徒も席に座り始め前を向けば先生方も揃っている。

そのことにルイズはむっとし、怒りの表情を浮かべるも黙って席に着くと朝食が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー……やっぱり、カリオストロはこっちに居たのか」

「才人に伝えておかなかったのか?」

 

 朝食を終え、教室へと向かう途中にサイトと合流する。

その時になって伝えてなかったなと思うも、何故、オレ様が動くのに何か言わなければならないんだと思い直す。

 

「忘れてた、ごめんね~☆」

「っ……だ、大丈夫!大丈夫!うん!」

 

片目を瞑りウィンクし軽く頭を叩きながら謝るとサイトが顔を赤くし喜ぶ。

何と言うか、本当に単純な奴、コイツの事だからオレ様を探すか待っていたはずだ。

 

(それなのにこんな事で許すとは……オレ様だったら絶対に許さないけどな)

「それじゃ行くか」

「あぁ、それはいいんだけど……。なんでルイズは膨れてるんだ?」

 

 そんな事を思っていると、一言も喋らないルイズが気になったのだろう。

サイトが疑問の声を挙げる。

ルイズは先ほどの件もあり、不機嫌になり頬を膨らませていた。

使い魔も使い魔なら主人も主人かと分かりやす過ぎて呆れた。

膝の上が気にいらなかったかと思うも渡す気はない。

ルーンから与えられる感情のせいだったとしても居心地が良かった。

 

(今度から、ああやって食べるか)

「!?」

「どうかしたのか、ウイル?」

「いや……なんか悪寒が」

 

居心地悪そうだったウイルには悪いが、これも実験だ。

暫くの間、飽きるまでの間はああやって食事を取らせてもらおう。

 

「それにしても…随分授業するの遅いな?」

「食事のマナーを学ぶのも授業だからな。午前中はよっぽどのことがなければ1つだけだ」

「うわ~……羨ましい」

「本当にここの連中は、学ぶ気ないんだな」

 

なんとも呆れる。

やっぱり、ウイルとルイズは特別らしい。

 

「最初の授業は……たぶん、復習かな」

「復習?」

「あぁ、使い魔の顔見せの意味も込めてるし、新しい事はしないだろう」

 

 その話を聞き、納得し安堵する。

確かに授業やこっちの魔法に興味はある。

だが、毎回のように授業に参加しなければいけないのは勘弁してもらいたい。

自分が強制するのは好きだが、強制されるのは嫌いだ。

 

「着いたな」

「何処に座る……か」

 

 教室へと入れば生徒の視線が一斉に此方を向いた。好奇心の満ちた目で見られる。

ウイルとルイズは気にせず、サイトは若干戸惑いながらも付いていく。

少しばかり歩けば丁度良く空いてる席があったので4人して席に滑り込んだ。

 

「おお~……すげーなやっぱり、あれなんだろう……」

 

 席に座るとウイルはルイズの機嫌を直す為か、声を掛ける。

ルイズの隣に座ったサイトは物珍しそうに辺りを見渡す。

辺りを見渡せば、様々な使い魔と思われる生物を横目に生徒達が話をしている。

 

(オレ様が可愛いのはしょうがねーけど。あまり見られすぎるのも面倒だな)

 

幾度となく浴びせられる視線に鬱陶しくなってくる。

別に見られるのが好きな訳ではなく、可愛くなるのが好きなのだ。

そんな事を思っているとドアが開き、中年の女性が入ってくる。

ふくよかな体型で優しい笑みを浮かべた雰囲気の良い人であった。

生徒の視線がカリオストロ達から先生へと移る。先生は一番前の卓の前に立ってにっこりと笑った。

 

「皆さん。おはようございます。春の使い魔の儀式は大成功みたいですね!」

(おいおい)

「こうやって春の新学期に、様々な使い魔を見るのがこのシュヴルーズとても楽しみなのですよ」

 

辺りを見渡しながらそのような事を言った。

 

「おやおや。変わった使い魔を召喚した人もいますね」

(ありえねー。なんだこの先生)

 

黒板の前に立つシュヴルーズにカリオストロは呆れた。

こんな大勢の前で言う事では無いだろうと。

 

(それにサイトは勿論、オレ様の事も珍獣扱いしやがったな)

 

すっと先ほどまで作っていた表情を崩し、目を細める。

この時点でシュヴルーズへの好感度はマイナスとなった。

 

(人間が変わってるだと?馬鹿かむしろ当たりだろうが)

 

 心の中で舌打ちし罵倒を吐く、和ます冗談だとしても笑えない。

何をどう思うも生徒をだしに使ったのだ、この時点で先生として駄目過ぎた。(失格だ)

次に起こるであろう出来事に予測がつきカリオストロは、ちっ、とイラつきを隠さず舌打をした。

 

「ゼロのルイズ!召喚できないからって、その辺の平民連れてくるなよ!」

 

1人の生徒が笑いながらルイズへと罵倒した。

その生徒を咎める者は居らず皆がくすくすと笑った。

ルイズは立ち上がり、桃色の髪を揺らしながら可愛らしい声で怒鳴り声を挙げた。

 

「違うわ!……きちんと――「しかも錬金のウイルも巻き込むな。失敗を移すなよ」――っ!!!」

 

 言葉を続けようとした瞬間に、横から口をだされ言葉が詰まった。

先ほどまで赤かった顔は、カリオストロから見ても真っ青となり、がたがたと震えている。

それをウイルが無言でルイズの手を取ると優しく席に座らせる。

そしてルイズが俯く中、手を離さず無言で前を向いていた。

ウイルの横顔を見れば、無言、無表情で前を向いていたが目だけが感情を表していた。

熱い熱い火を灯し、原因を作ったシュヴルーズを見ている。

 

(利口だな。ここでルイズが何を言おうが言い返せない……事実だから)

 

 それを見てカリオストロは静かにウイルを評価をした。

ここで何を言おうが、ウイルがルイズと同じく人間を呼び出した事実がある。

ルイズがどれだけ訴えても、何を必死になっているのかと馬鹿にされるだけだ。

言い合えば余計にルイズの傷口を広げるだけ、ここはただただ耐えるしかない。

ウイルも同様だ。公爵家の娘であるルイズが馬鹿にされているのだ。

ここで男爵家であるウイルが援護しても鼻で笑われるだけだろう。

 

「このっ……」

「座れ、才人」

 

笑い続ける生徒に怒りが湧いたのか、サイトが飛び出そうと立ち上がるもストンと強制的に座らせられた。見れば、ウイルが手を繋いでない方の手で杖を振っている。

 

「ここでお前が飛び出したとしてどうなる?ここで本当に行動を起さないといけないのは先生だ」

「っ!!!」

 

 ウイルの言葉に才人は唇を噛みしめ拳を震わす。

サイトが飛び出したところで何も変わらない。

平民がと笑われ、下手したら魔法で痛めつけられる。

平民を助ける貴族なんてまず居ない。

周りは、何も言わない事にいい気になったのか、笑い続ける。

シュヴルーズを見れば、こうなると思っていなかったのだろう。ただただ慌てている。

 

(……………)

 

 カリオストロは黙り、声を聞き続けた。

普段ならカリオストロは行動を起そうとは思わない。

自分以外を平等に見下し、自分に被害や敵意が向かない限り何もしない。

自分には何も関係ないのだから――だが、

 

「友達は選べよ!ウイッ……え?」

 

 ダンッと大きな音を立て笑っていた生徒達の前に大きな剣、槍、斧と言った様々な刃物が飛び出す。それは生徒達の顔ギリギリを通っており、あと数サント近ければ顔が斬られていただろう。

何の気配も感じさせず行なわれた現象に全員が訳が判らず混乱しうろたえた。

少しも魔法の気配がなかったのだ。

 

恐怖し泣き出す者、誰がやったと怒りに燃える者、動揺しうろたえる者と様々だ。

そんな中で1人の少女が悠然と立ち上がり片手を腰に当て立ち上がる。

もう片手には輝く本があり、風も吹いてないのにパラパラとページが捲れる。

 

「おいっ!お前……」

 

少女の異様さに気付き声を荒げ罵倒しようとすると、少女の手が高々に上がりパチンっと指を鳴らした。

その瞬間、少年の前に新たな剣が突き抜けてくる。

 

「あ、あぁ……」

 

腰が抜け、椅子から転げ落ちるように地面に倒れた。

それを少女――カリオストロはそんな生徒を冷めた目で見て直ぐに興味をなくし外す。

 

(別にオレ様に関係ねーし。好きにやってろ。だが――)

 

ルイズが賢い奴だと知っている。

 

サイトは馬鹿だが、好い馬鹿だ。

 

ウイルは自分の――

 

「おいおいおい、オレ様のご主人様(パートナー)を罵倒しといて―――」

 

残念ながら今此処に居るのは偽りとは言え、恋に燃え、愛情に燃え、怒りに燃えた天才錬金術士だ。

 

ただで済むと思うなよ?(ウロボロス、食事の時間だよ☆)

 

手で髪の毛をかき上げニヤリと笑った。




ルーンの効果は意外に強い模様。
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