凡才錬金術師と天才錬金術師   作:はごろもんフース

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少しどうしようかと悩んでました。


九話:それぞれの戦い

「なぁ……」

「何だ?」

 

 宙に浮かぶ船の上から、街を見下ろす。

見下ろした街は、音こそ聞こえないが人々が逃げ惑う光景が見え胸を締め付ける。

それでも自分の起した行動は正しいと信じ進むしかなかった。

 

王宮に向かったギーシュ達の事、操られているであろうルイズの事、そしてこれから戦場へと赴く自分達の事。

様々な事を考えていれば、隣で座り込んでいた才人が声を掛けてくる。

残念ながら才人は船の床を見ており、表情は見えない。

しかし、声色からだいぶ参ってるのがよく分かった。

 

「……ギーシュ達は」

「安全……とは言えないな。敵が竜を持って来ていたら追いつかれる」

「ルイズは?」

「気付いてたのか?」

 

 才人の言葉に少し驚き、目を見開いた。

まさかルイズの事で勘付いてるとは思っても見なかった。

 

「……昨日の夜からさ。胸がざわめくんだ」

「……」

「デルフの話では使い魔の契約のお蔭で主人に危険が迫ってることを伝えてるって」

 

 その言葉に黙って目を瞑った。

その際に思い浮かんだのは、ルイズの笑顔だ。

暗闇の中でのルイズは何時ものように可愛らしく穏やかに笑っている。

 

「……っ!」

 

 目をゆっくりと開き、手に力を込める。

このままにしておけば確実に見れなくなる笑顔だ。

そのことを考えれば、怒りが湧き上がり胸をさっきより締め付けられた。

苦しい程に鼓動が鳴り、操ってる相手に初めての感情を抱いた。

今まで抱いたことのない感情だが、その感情をなんと言うか理解は出来ている。

 

「ウイル?」

「はぁ……確かに今ルイズは操られている」

「……そうか。原因は?」

「分からない……分からないんだ」

 

 才人の言葉に我に返り、答える。

素直にそういえば、才人の声もなくなり、風の音だけが辺りを支配した。

怒りを胸の内に収め、冷静になるように何度も呼吸を意図的に繰り返す。

 

「……カリオストロは大丈夫かな?」

「そっちは問題ないな」

「呆気なく答えるな」

「ははは」

 

 暫く黙っていれば、才人がポツリと呟く。

その言葉には軽く答えられた。

才人はカリオストロの強さを見ていないし、教えていない。

ただ俺より強いと伝えているだけである。

だから、よく分かってないのだろう。

カリオストロの実力を……。

 

「カリオストロは問題ないさ」

「本当にか?」

「あぁ……」

 

 才人の言葉にしっかりと頷き、目を瞑る。

これからが本番だ、今の内に休んでおくべきかも知れない。

そう思い、目を開けると才人を引き連れて用意された部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 ルイズが操られてる事もあり、才人と交互に眠りに就き襲撃に対して警戒をする。

最初に才人に寝かせて、ぼーとしていれば扉が開く。

それに対して構えるも入って来たのはルイズであった。

 

「寝ちゃったの?」

「あぁ……だいぶ堪えたらしい」

 

 ベッドに眠る才人を見てルイズがわざとらしく首を傾げる。

それを静かに見守り続けた。

 

「……子爵は?」

「馬車馬の如く魔法を使わせられてる」

「そうか」

「そうよ」

 

 短く言葉を切って息を付く。

そうしていれば、ルイズは黙り込みベッドに座るとあぐらをかいた。

そんなルイズに眉を潜める。

 

「お前……」

「はっはっは、初めましてだ」

 

 目の前でルイズが笑う。

笑うが、それは先ほど思い出したルイズの笑顔と異なる物。

そのことで強く強く再認識させられた。

 

「おまえっ!!」

「名前は『地下水』、暗殺者をしてる……よろしく頼むぜ。旦那」

 

 下品にニヤニヤと笑い、此方を挑発する地下水と名乗るルイズ。

それに対して怒りで叫ぶもすぐに目を細め静かに見据えた。

これはある意味でチャンスだと、相手を探るべく口火を切る。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 ウイルと地下水が顔を合わせている頃、ラ・ロシェールの戦いは佳境を迎えていた。

その少女は屍の山を前に少女は不敵に笑い、自らが作り出した椅子に座り込む。

 

「はぁ……終わりかよ。つまんねー」

「っ……なに、これっ!」

 

 それは叫びだ。

心の叫び、フードの女性は地面に倒れ伏せ信じられないと呟く。

それでも今現在の状況が現実である。

百体近く居たリビングデットの群れは、一瞬にして崩壊した。

 

 胸を吹き飛ばれようが、腕を無くそうが痛みも感じない恐ろしい存在だ。

その存在が、少女が指を鳴らすだけで地面から現れた武器に当たり、空高く舞う。

そして地面に叩き付けられ、()()()()()()()()

頭を吹き飛ばされるか、燃やされないと動き続ける存在がだ。

 

「くっ……なんで動かない!」

「なんだ……分かってなかったのか」

「分かってない?」

 

 足を組むと手を頬に当て面倒臭そうに少女はフードの女性を見つめる。

 

「オレ様に掛かれば人の体も錬金出来るのさ」

「人を……錬金?」

 

 フードの女性は、人体を錬金出来る存在が居た事に驚き、その脅威に身を振るわせた。

ハルケギニアの錬金では人を練成する事が出来ない。

むしろそんな恐ろしい発想をする人も少ない。

何回も人体を錬金しようとしても何故か出来ないのだ。

だからこそ、諦められ、そういった魔法なのだと認識が広まった。

しかし……だ。

それを可能とする存在が目の前に居る。

 

「そうさ……どうやらお前等はやり方を知らないようだけどよ」

「出来るというの……人を?」

「その証拠に…ほれ」

 

 もう一度見せ付けるかのように少女が指を鳴らす。

そうすれば傍にあった、リビングデットの山が塵となり、風に乗り消えていく。

それを見てフードの女性は、目を見開く。

呆気ない……あまりにも人が呆気なく消えていった。

 

「上に吹き飛ばした際に()()()()()()()()()()にした。中身が無ければ動けないだろ?」

「……悪魔?」

「悪魔とは失礼な……どっから、どう見ても! かわいい~……美少女でしょ?」

 

 両腕を口もとに持っていき、甘ったるい声で少女が言う。

日常で見れば彼女の容姿も相まって惚れ惚れとするだろう。

しかし、今この場に置いてはそれが不気味さを産み、フードの女性からは魔王のように見えた。

 

「ひぃ……」

「ちっ……おいおい、なんだその怯えた面は……最初の余裕のある勢いはどうしたよ?」

 

 椅子から降りると少女は気だるげにフードの女性へと足を進める。

一歩一歩余裕を持ち歩く少女の姿は不気味でしょうがない。

 

「くっ!」

「ほらほら……どうした」

 

 そんな余裕ある態度に対して、フードの女性は地面を這いずるように逃げる。

それを少女は薄く笑い追い詰める。

 

「ふふふ……掛かったわね」

「あんっ?」

 

 とある一軒家の壁際まで這いずり壁を背にすると女性が振り向く。

フードの隙間から見える口元が恐怖でなく、嬉しそうに歪む。

それを少女は怪訝そうに見つめ……。

 

「クリエイトゴーレム!!」

「……」

 

 少女が声に反応し振り向けば、大きな三十メイルほどのゴーレムが拳を振り上げ少女に打ち込まれた。

打ち込んだ際に辺りの民家を巻き込み盛大に砂煙を上げる。

 

「げほげほっ……どれだけ強くてもこれなら……」

「これで……私は……」

 

 目の前にある大きなゴーレムの拳を見つめ、フードの女性が笑う。

先ほどまで追い詰められていた強敵を引っ掛ける事に成功したのだ。

それが嬉しくて堪らないのだろう。

 

「はっ! 折角引っかかってやったのにお粗末だな!」

「はえ?」

 

 しかし、その優越もその声が聴こえるまでだ。

目の前の砂煙が晴れれば、そこに居た。

 

「な、なんで……」

「どうせお前等の事だ……今までのオレ様の攻撃を見て重量のある攻撃なら押せると……倒せると思ったんだろ」

 

 少女は、先ほどと同様フードの女性を見つめている姿勢を保っていた。

腕を組み、何一つ変わらぬ姿で三十メイルもの巨体のゴーレムの拳を防いでいる。

 

「これは……ゴーレム?」

「正解だ。いいだろ……美しいだろ? 前に読んだ書物に書かれていた奴だ……名前は――『砂神グラフォス』」

 

 ゴーレムの手を止めていたのは一体のゴーレムだ。

綺麗な砂色をしていて見方によっては上品な金色に見える。

大きさは三メイルほどではあるが、片手で三十メイルのゴーレムの手を止めている。

 

「フーケェェェ!! 殴れ!」

「っ!! やれっ!!」

「いやはや、一目見て気に言ってな。こいつを擬似的に作り出せないかと研究してたんだ」

 

 フードの女性の言葉にフーケがゴーレムを動かし、何度も拳を打ち込む。

 

「無駄無駄……無理だっての。まぁ、丁度いいし起動テストさせてもらうか」

「くっ!」

 

 何度も打ち込まれる拳に合わせ、砂神グラフォスも拳を合わせる。

フーケのゴーレムが形振り構わず打ち込むのに対して、少女のゴーレムは的確に適切に捌いていく。

その時点でどちらが上なのかは決していた。

 

「拳ってのはなぁ……!」

「ひぃ!」

 

 暫くそれを続けていればフーケのゴーレムが耐えられなくなり、手から崩壊を始める。

指が落ち、土へと変わり辺りを隠す。

そんな光景を見て少女が、腰に手を持っていきトドメとばかりに腰の入った一撃を空へと撃つ。

 

「こうすんだよっ!!」

「な゛!」

 

 抉りこまれるような一撃を少女に合わせ、グラフォスも繰り出す。

グラフォスの拳が崩壊しかかっているフーケのゴーレムの拳へと当たると、全てが吹き飛ぶように崩壊しゴーレムが崩れ落ちる。

 

「はっはっは、格が違うんだよ! 格がよっ!」

 

 全てが土へと変わり、それを見て少女は高らかに笑う。

暫くの間笑うも、すぐに顔を顰め後ろを振り向く。

 

「……忘れてた」

 

 そう呟く少女の先には、誰も居なくなっていた。

どうやらゴーレムを操るのに夢中になり逃げられたようだ。

 

「……」

 

 それを見て少女――カリオストロは、気まずそうに頭を掻き、己の主人になんと言おうかと頭を悩ませた。




《だいぶ参ってるのがよく分かった》
目の前で人が死んでいるのある。
日本人の才人には厳しい現実で精神的にまいっていた。

《その感情をなんと言うか理解は出来ている》
死亡フラグ……もちろん相手のだ。

《名前は『地下水』、暗殺者をしてる……よろしく頼むぜ。旦那》
堂々と姿を晒す相手。
別に何も考えていないわけではない。
しっかりと考えての行動だ。

《カリオストロは問題ないさ》
魔王とかしてました。
ラ・ロシェールの人々も助けてもらいながら遠巻きに怯えていたとか……。
やりすぎである。

《人の体も錬金出来るのさ》
チートの中のチート。
こんなんどうやって防げばいいんだよ……。
目が合ったら死亡確定である。

《げほげほっ……どれだけ強くてもこれなら……》
フラグである。

《砂神グラフォス》
輝く銀砂が舞う砂漠の町、ブリエデゼルにある城で育てられた少女を見守っている。
今回登場したのは、それをカリオストロが見て作った疑似品である。
砂粒ほどのゴーレムを何千、何万と集めて作られた存在。
強度もカリオストロの意思で変えられるため、非常に厄介。

《拳ってのはなぁ……! こうすんだよっ!!》
オリジナル設定でカリオストロの肉体は完璧な物と仕上がっている。
反射神経から筋力まで全てが最高峰である。
故に肉弾戦も戦える設定にしてあります。
更には肉体が損傷しても錬金術で治せる為、100%以上もだせたり……
チートである。……何回目だろ、この説明。

《気まずそうに頭を掻き、己の主人になんと言おうかと頭を悩ませた》
魔王なカリオストロでも頭を悩ます人物。


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