「いたたた……」
「げほげほ」
「おい、『錬金』のウイルが平民を呼んだぞ!」
「平民……なのか?」
「にしては可愛いよな。マントもしてるし」
眩いほどの光の後の爆発、召喚を行なった本人並び周りを囲んでいた人達も混乱に陥る。
数秒とも数十秒とも思われた現象は、すぐに何事もなかったかのように消え去った。
現象が無くなり訳が分からず呆然とする者、暴れだした使い魔を大人しくさせようと躍起になる者。
それぞれが多様に動く中、召喚を行なったウイルはかすかに腹部に感じる痛みと重みに目を白黒とさせる。先ほどの光のせいで上手く目が開かない。
それでもなんとか状況を確認しようと自分に乗っかっている物を触り確かめた。
「ひ、人……か?」
「こんな美少女捕まえておいて、その反応はないだろ」
手が触れた感触を頼りに確認していくと人だと判る。
それでも確信が持てないので声に出し聞いてみれば反応が返ってきた。
その声にやはり人かと思い、変な所を触らないように慎重に相手の肩と思われる場所を掴み押す。
「あ~っ、悪い、目やられたのか」
「暫くすれば……大丈夫だと思う」
見えないので分からないがどうやら上手く相手を引き離せたらしい。
目が慣れるまで座り込んだ状況で相手と会話を試みる。
未だに見えないが、声から察するに若い女性のようだ。
(参ったな。盛大にフラグを回収しやがった)
「まだ開けれねーのか」
苦笑しつつそんな事を思う。
ルイズと知り合い、何かしら起こるであろうと思っていたが、まさか人を召喚するとは思いもしなかった。開けれない目を開けようとしていると冷たい手が瞼に触れる。
未だに目が見えない自分を心配してくれているのだろう。
冷たい感触と撫でるかのような動きに癒されつつも目を開けた。
目を開けて最初に見えたのは、金色だ。
強い光を浴びたせいで普段より明るい世界に現れた少女。
暫しの間、呆け見惚れるのはしょうがないことであった。
「指何本に見える」
「……1本」
「うっし、見えてるな。……交換する手間が省けたぜ」
ぼーとしていると指を突き出され聞かれる。
素直に立っている指の本数を答えると相手はニカっと笑い、何か物騒な事を呟いた。
取り合えず、聞かなかったことにしようと思った。
「ほら、手」
「あぁ……ありがとう」
「おう」
これからどうしようかと頭の中でぼーと考えていると少女は立ち上がり手を差し伸べてくる。
それをきょとんと見てから理解し手を取って起き上がった。
爆発の影響か少女を受け止めたせいか、立ち上がると体のあちこちが痛む。
痛む体を少しばかり眉を潜め問題ないか確認する。
特に酷い怪我もなく、改めて少女へと視線を向けると少女は落ちていた自分の髪飾りを頭に乗せていた。
「ふぅ……ようやく話せるな」
「だな。まずは自己紹介から……トリステイン魔法学院に通っているウイル・ツチールだ」
しっかりと相手に礼を持ってお辞儀する。相手に合わせたせいか少々話し方がフランクになってしまったが。ゆっくりと頭を下げ上げれば、少女は「トリステイン?」と呟き表情を曇らせていた。何か嫌な事があったのだろうか、それとも知らないのかと疑問に思う。
マントを付けているのでハルケギニアの貴族かとも思ったが、今の反応を見るにサイトと同じく異世界から呼ばれた可能性も出てきた。
出来れば直ぐに確かめたい所だが、相手の自己紹介がまだだった為、静かに待つ。
「オレ様の……あー……私は、天才美少女錬金術師のカリオストロちゃん☆よろしくね!」
「………」
いきなり豹変したかのような変わり様に声が出ない。
少女―カリオストロは片足を後ろに上げ、両手を口にもっていき拳を作りウインクをして自己紹介をした。最初の一発目がこれなら素直に可愛いと言えるのだが、残念ながら先ほどの地のような姿を見ているだけに言葉にならなかった。何故彼女がいきなりこんな事をし出したのだろうか、唖然としながら考えていると後ろから声が聞こえる。
「大丈夫かい。ウイル君」
「えぇ、大丈夫です。コルベール先生」
声に振り向けば、コルベールが立っており心配そうに此方を見つめている。
少しばかり寄って来るのが遅いのではとも思ったが、眩しそうに目を細めるコルベールを見て改める。先ほどの光を直接浴びたのだ、自分同様やられていたのだろう。
「………」
(あぁ……なるほど)
そして理解もした。カリオストロが急に急変した理由が……。
コルベールはウイルに、にっこりと笑いかけるが、カリオストロに向ける目は笑っていなかった。
「初めまして、ジャン・コルベールと申します。二つ名は『炎蛇』。トリステイン魔法学院で教鞭を取っています」
「初めまして~、さっきも紹介したけどカ・リ・オ・ス・ト・ロって言います。二つ名は『開闢の錬金術師』だよ☆」
なんだろうか。この居づらい空間は二人はお互いに向き合いニコニコと笑っているが空気が重い。
カリオストロもコルベールを警戒しているのだろう。先ほどとは違い猫かぶり様子を伺っている。
「マントに……二つ名。ミス・カリオストロはメイジと言うことよろしいでしょうか?」
「う~ん……ちょっと判らないかな」
「判らないとは?」
「カリオストロの知っているメイジとそっちが言っているメイジが同じか判らないから……」
カリオストロの言葉にコルベールが眉を潜めた。
そんなコルベールを横にウイルはカリオストロをじっと見つめる。
別に見惚れたとかそういう理由でなく、何処と無く懐かしい感じがするのだ。何処かで見たような気が……。
「カリオストロはトリステイン魔法学院なんて聞いたことも見たこともないの」
「聞いたことが無い?」
「うん!世界地図とか見た事あるけど……トリステインなんて国、書かれてなかった」
「………」
「なのでカリオストロは異国の地から『召喚』されたと思うの。だから常識と定義がそちらと一緒かなんて判らないよねー☆」
「………」
カリオストロの言葉にコルベールが動揺した。
無理もない、ハルケギニアに居てトリステインを知らないと言う事は、ありえないのだ。
つまりカリオストロは遠い異国の地の人間となる。異国となれば常識も定義も習慣も違うのだ。
「そ・れ・と☆カリオストロって被害者だよね?」
「え?」
カリオストロの追撃するかのような鋭い言葉がコルベールを襲う。
これには動揺していたコルベールも反応できず口を挟めなかった。
「まずは、何故私がここに居るかだけど……召喚事故だよね?」
「っ!!」
怯んだコルベールを見てカリオストロが深い笑みを浮かべる。
「それとなーく周りを観察してたけどぉ――これ使い魔召喚の儀式だろ」
「………」
カリオストロの笑みが悪い物へと変わり口調も先ほどの様なドスの聞いた声に変わる。
「あんたは、トリステイン魔法学院の教師と名乗った。『魔法学院の教師』だ。つまりは周りの奴等は魔法使い……メイジで生徒になる」
「………」
カリオストロの独白が続く。
「生徒と教師が揃ってこんな広場に集まる。考えられる中で当てはめれば……授業もしくは試験だな」
当たってるだろと自信満々に言い切る。
その推測は的を射ているのでウイルは素直に頷き何も言うことができない。
「更には周りの奴等の連れている様々な生物。しかもアレだけの数や種類が居て全員が大人しく従っている。ただ手なずけてるだけじゃ、ああは、ならねー」
「………」
「大人しくなるよう、または命令が効く様に処置が施されていると考えるのが妥当だ。だから『メイジらしく』使い魔召喚の儀式」
「………」
「ついでに言えば、人を召喚するのも初めてか珍しいだろう? 最初召喚された時に周りの奴等が『平民を召喚したぞ!』って驚いてたしな」
「………」
「なぁ、異国の地の『人間』を『貴族様』が事故とは言え召喚しちまうのは……国際問題じゃねーか?コ・ル・ベー・ル・先生☆」
「………」
そこまで言い切るとカリオストロは、キャハ☆っと笑い見せ付けるかのようにマントをたなびかせる。それを見てウイルは隣のコルベールから哀愁が漂ってるのを感じた。
「なぁ、送り返せねーのか?」
ふとカリオストロは思いついたかのように此方に聞いて来る。残念ながらコルベールは話せる状態じゃないのでウイルが答える。
それに対してウイルはどうしようかと考える。過去に返した例はないのだが、『未来』になら返した例があるのだ。
伝えようにも場所が場所の上にこれから先、自分の知っている未来と異なる可能性もあり、結局は言わないことにした。
「過去の例を紐解いても、返した……という例はありませんね」
「……呼び出すだけ……か」
此方が加害者なのでウイルは先ほどと違い口調を直し丁寧に話しかける。
カリオストロの拗ねるような呆れたような声に何も言えない。
ウイル自身、原作を読んだ時は酷い魔法だと思ったりもしたからだ。
「ならオレ様じゃなくて代わりのは?」
「それも無理ですね。使い魔召喚の儀式は神聖な儀式で基本1度っきりです」
「……ちっ。基本って言うのは?」
「使い魔が死んだ時、もしくはメイジが死んだ時、契約が途切れます。途切れた後にもう一度召喚する事が出来るので」
「代わりは無理か」
「残念ながら」
そこまで話し終えるとカリオストロは腕を組み考え始める。
頭の中で今の会話を纏めているのだろう。
ウイルはそんなカリオストロをただただ黙って見守る。こちらから出来ることは無い。
カリオストロに情報を与えた上で彼女に決めてもらうしかないのだ。
「契約内容は?」
暫くするとカリオストロは顔を上げ真面目な視線を問いかけてた。
「契約すると使い魔の体のどこかに『ルーン文字』が刻まれ、さまざまな恩恵を与えます」
「さまざま?」
「言葉を喋れるようになったり、体を強化したり、頭が良くなったりなど……」
「なるほどな」
「次に契約期間ですが、一生となります」
「さっき言った死亡した時を除けば……か」
「そうなりますね」
そこまで話すとまたもや考え始める。
流石に一生となれば考えるほうも色々あるのだろう。
「補償については?」
「取り合えず、人権、衣食住、望む物を出来る限り用意します。帰りたいと言うなら方法も見つけます」
「まぁ……当たり前だな」
「ですね」
腰に手をあて偉そうにするカリオストロに苦笑する。
偉ぶっている姿は様になり大変可愛らしい。
「使い魔にならないと都合悪かったりするのか?」
「俺が学院を退学となります」
「試験か……何と言うか運が無かったな」
「えぇ……でもこんなにも可愛らしい人に会えたから運は良いほうかも知れません」
「当然だな。オレ様が世界で一番カワイイに決まってんだから」
どうせ最後かもしれないのだ、と素直に言ってみればカリオストロは当たり前だとばかりに胸を張る。
この少女は一体どれだけの自信家なのだろうか、何処となくルイズを思い出し笑いそうになる。
「あぁ、それと使い魔になってやってもいいぞ」
「………本当に?」
「条件があるがな」
「あー………」
断られるだろうと思っていた矢先に言われカリオストロの言葉に変な声が漏れる。
だが、一喜一憂もした。当たり前と言えば、当たり前なのだが、条件付と言われると嫌な思い出しかない。
「ウイル……お前は今日からオレ様の助手な。勿論さっきの補償つきで」
「…………はい?」
「だから、助手だ」
カリオストロの言葉を聞き返し、間違いでない事を知る。
助手……助手……と頭の中で考える。これまた嫌な条件を突きつけてくるものだと思い顔が渋る。
助手と言えば聞こえは良いが、言ってしまえば使いパシリ、奴隷、言うことを聞く人間。
カリオストロの言う助手はそう言った意味のほうであろう。
だが、それでも飲むしかない。此方は頼む方なのだ。
「判りました……それで構いません」
「うっし、なら契約だ。どうすればいい?」
「うっ」
渋々と答えるとカリオストロは機嫌よくそう聞いて来た。
それに対してウイルは契約方法を思い出し言葉に詰まる。
「呪文を唱えて……キスをすれば……」
「…………」
「…………」
方法を伝えると沈黙が降りた。
カリオストロは正気かと言うような目で此方を見ている。
「なぁ……この魔法を考えた奴は……むぐっ」
「しーっ」
そんな視線に耐えているとカリオストロが口を開きだした。
何となく言おうとした事を察してウイルはすぐさま近寄り口を塞ぐ。
口を塞いださいに何をするんだとばかりにギロンと睨まれるも構っている暇はない。
すぐさま口をカリオストロの耳元に持ってくると手早く内容を伝える。
「この国では魔法は神聖な物で大事にされています。魔法やメイジを馬鹿にしないようお願いします」
「………」
真剣な声でささやくように言うとカリオストロは睨むのを止めて大人しく頷いた。
それを見て手を離すとカリオストロと目が合った。
耳元に口を近づけていたので距離が物凄く近い。
「このまま契約しちまうぞ」
「っ……はい、あとルーンを刻まれる際に苦痛が訪れるので注意を……」
「もうちょい早く言いやがれ」
言い忘れていた事を言うと足を踏まれる。
痛みが足に走るがこれから目の前の少女に起こる苦痛を考えれば安いものであった。
つんと唇を盛り上げ此方に差し出してくるカリオストロに喉がごくりとなる。
キスは初めてで、体が震えた。更には絶世の美少女であることが輪にかけた。
「それと……その気色悪い口調やめろ。最初に会った時と同じでいい」
「あ、あぁ……分かり、わ、分かった」
「くっくっく、どんだけ緊張してんだよ」
「……しょうがないだろう。慣れてないんだ」
「まぁ、これだけの美少女だ。緊張するなと言うだけ無駄だな。ほれ、早くしろ」
「我が名は『ウイル・ツチール』。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……むぐっ!?」
「んっ」
呪文を言った瞬間、ネクタイを引っ張られ口を塞がれる。
驚き目を見開くと綺麗に輝く目と合う。その目は楽しげに揺れ好奇心と何処か期待に満ちた目であった。
急いで書いたから無理な話の作りになってないだろうか。
誤字などがあれば報告お願いします。