――神さまとかいるんならマジで出てこい。全力で殴ってやるから。
『とある少年の心からの叫び』から抜粋。
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どうも、初めまして。僕の名前は張任と言います。
そう、あの三国志で有名な張任です。
まあ、こんな言い方をしていればお察しいただけるかと思いますが、実は僕転生したみ
たいなんですわ。いや、別段トラックが云々とか神様のミスとかいう面白展開ではなく、
気がついたら張任だった。という、よく分からない状況に陥っている元普通の男子高校生
です。
もうね、最初は何が何だかわかりませんでしたよ。
だって、張任だよ?
みんな、張任って知ってる?
僕は三国志がそれなりに好きだから少しは知ってたけど、主要人物くらいしか知らない
人だと、『張任、誰それ?』ってなると思うんだ。
そんな、あなた方の為にかるーく僕、張任について説明しよう!
張任、字は不明。文武に優れた名将とされていて劉備が来る前の蜀、まあ益州だね。
その益州の牧である劉璋配下の武将だよ。
ちなみに益州が劉備のものとなる際に劉備に降るを良しとせず、首を刎ねられる事にな
る忠義の人。
さて、そんな張任になってしまった僕だが、まず言わせてほしい。
まじ、フザケンナ。
なんていうかこう、赤ちゃんスタートとかなら未来改変とかで生き残る道を模索出来た
りするんだろうけど、なんで劉備が益州を攻めてきて、?城を護ろうとしている所からの
スタートなの?
馬鹿なの? 馬鹿なんでしょ?
今までの張任さんがどんな人間だったか知らないけど、中身がいきなり変わった事ぐら
い直ぐにバレるよ。バレたら『張任様がご乱心めされた』なんて言われて更迭されるのが
目に見えてるじゃん!
まあ、幸いというか張任になった時に今までの張任としての記憶がこう映画を見るよう
に浮かんできたので、今はそんな記憶の中の張任さんを頑張って演じております。
さて、そんな僕ですが今何をしているかと言いますと……絶賛伏兵しています。
そう、伏兵です。
なんでも配下の兵士1が言うにはそろそろここ、落鳳坡を劉備が通るらしいのでそれを
狙い撃ちましょう、との事だ。
また報告によると劉備は白い馬に乗っているらしくそれを目印にするとの事。
だけど、僕は知っている。
ここ落鳳坡において白馬に乗っているのは劉備ではなく、鳳統であるということを。
僕の記憶が正しければここで伏兵をして、鳳統を射抜くのは張任配下の将であったと思
うのだが、まあ某無双のゲームでも伏兵として隠れていたのは張任だったから問題は多分
無いのだろう。
「将軍、もう間もなく劉備軍がここを通ります」
斥候に出ていた兵士の報告に緊張から汗が一筋流れる。
周りにいた兵士にもっと姿勢を低くするように指示を出し、鳳統がここに来るのをジッ
と息を潜めて待つ。
そして、遂に劉備軍の先頭が見え、白馬の姿を確認したのだが。
「……………………は?」
思わず、そう漏らしてしまった。
だが、仕方がないと思う。
だって、白馬にまたがっていたのは僕が想像していたような鳳統ではなく、魔女っ子の
コスプレをしたようにしか見えない少女だったのだから。
まさか、アレが鳳統だとでも言うのか。
嘘だと言ってよ、と縋るような目で隣にいる副官を見るが副官はそんな僕の視線に何を
勘違いしたのか頬を染めやがった。
ちなみに副官は男(マッチョ)です。
そして、当然僕も男(ショタ)です。
ゾワリと背筋が凍った。
コレ以上はマズい。
そう直感した。
僕は副官の視線から逃れるように兵士に指示を出す。
「いまだ、放てええ!!」
見た目幼女だろうと、あれは鳳統、そして僕は張任!
ならば行くしかなかろうて!
決して副官の視線から逃げたわけではない!
大量の弓矢が鳳統に殺到し、弓矢が鳳統に刺さろうとした時だった。
突如として僕の視界が真っ白になり、全てが消えた。
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気がつけば、また僕は落鳳坡にいた。
あれ、鳳統は?
伏兵の結果は?
そんな事を考えていると僕はあることに気がついた。
そう、僕は何か紙切れをその手に握っていた。
恐る恐る紙切れを広げると、そこには
『幼女を射殺すなんてとんでもない』
と書かれていた。
え、なにこれ。
どういうこと?
いや、でも此処は落鳳坡で、僕は張任なんだからそうするしかないじゃん。
悶々と考えているうちにあの時と同じ兵士がかけて来た。
「将軍、もう間もなく劉備軍がここを通ります」
取り敢えず考えるのは後だ。
さあ、鳳統よ来い!
再び鳳統(仮)がここを通ろうとした時、弓を射かけた。
そして、僕の視界も再び真っ白になった。
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またまた此処は落鳳坡。
そしてまたまた僕は伏兵中。
そして手には紙切れ。
『ここは落鳳坡。つまり鳳凰が落ちる場所。後は分かるな?』
今度はそう書いてあった。
ああ、わかってるよ。
だから鳳凰――鳳統――を射落としてるんじゃないか!
それの何が駄目だって言うのだろうか。
「将軍、もう間もなく劉備軍がここを通ります」
弓が駄目だっていうのなら、槍を投げてやる。
僕は配下の兵に指示を出し、鳳統が通った瞬間に一斉に槍を投げつけた。
そして、槍が鳳統の体を刺し貫いた時、またまた視界は真っ白に。
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もうね、どうしろと。
段々とイライラしてきたが、とりあえずは手に持った紙切れを広げる。
『落鳳坡は鳳凰が落ちる場所。つまり鳳凰をオトせということ』
そう書いてあった。
そして僕はある一つの恐ろしい仮定を思い浮かべてしまった。
此処は落鳳坡。
僕は張任、ちなみに何故か見た目は少年。
これから此処を通るのは鳳統。見た目は何故か美少女。
紙切れには鳳凰をオトせと書いてあった。
落とせでも、堕とせでもなくオトせ。
「まさか……、まさか……。男として女の鳳統をオトせという事なのか?」
いや、まさか、そんな。
だが、この無限ループから抜け出す為にありとあらゆる事をやってみなければ。
僕は試しに兵士に動かない様に指示を出し一人鳳統が通るであろう道に仁王立ちする。
見えた。鳳統だ。
鳳統は一人で仁王立ちをしている僕を見て訝しんだ顔をしているが、僕はやることをや
るだけなのだ。
「鳳統殿! 好きだあああああああああ!」
そして、視界は真っ白に。
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もう、どうしろと?
紙切れを見てみる。
「心が籠もってない10点」
ふざけんなああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
俺はあんな美少女鳳統のことなんか一ミリも知らんのにどう心の籠もった告白をしろと
言うんだ。心の籠もった告白が見たいなら鳳統の幼馴染とかにしろよ!
そうでなくともせめて同じ所属だろう!? こちとら張任よ!? 劉備に降るを良しと
せずに散った将なんだよ!?
どうしろってんだよ!
だが、方向性はあっているらしい。
なんとかして鳳統と好き合う関係にならなければ僕は永遠に落鳳坡から解放されないの
だろう。ならば、やるべきことは一つ。
まずは鳳統という少女を好きになろう。
なので今回は弓も槍も告白もせずにただ影から鳳統を見続ける事にした。
ふむふむ。魔女っ子スタイルは正直どうかと思うが、顔はやはり可愛いな。
外見しかわからないが、こうやって研究を重ねていくしかあるまい。
そうして鳳統をじっくり見ている間に鳳統が落鳳坡を超えてしまった為、視界は真っ白
になった。
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色白の肌に豊かな髪。
そして小動物っぽいな。
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どうやら口癖は「あわわ」らしい
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結構恥ずかしがり屋なのではないだろうか……。
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ホウトー。
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ほうとう。
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ほーとー。
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かゆ、うま……。
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あれから何度繰り返しただろうか。
何度告白しても無駄無駄無駄無駄無駄。
視界は真っ白になり、リスタートを繰り返す。
だが、これで精神が摩耗するという事はなく、ただただ僕は叫び続けるのだ。
「鳳統殿! お付き合い願いまーす!」
本文にもあるように落鳳坡は鳳凰が落ちる場所。そんな感じで思いついたネタです。
……ごめんなさい。もうしませんから。
張任くんがどうしたらこのループを抜け出せるか、良い告白法を思いついた方は感想まで!
それではまた次回。