粗製リンクスのネタ倉庫   作:粗製リンクス

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ハイスクールD×Dで書いてみた

「オノレェ! よくも我が手勢を! 我が組織ヲォォォォ!」

 

 怨嗟の声が木霊する。

 声の主はボロ布のようなローブで体を覆い、フードからは爛々と輝く瞳が覗いていた。

 

 そこは元は古びた洋館だった。

 洋館の調度品で壊れていない物は無く、いずれもが粉々か消し炭となっていた。

 

 地の底から響くような声の先には一人の男が佇んでいた。

 男は真っ赤な全身鎧に捻くれた山羊の角が付いた獅子の面を付け、炎を背負い、声と対

峙しているようだった。

 

「オノレ、ベリアルマスク!」

 

 ベリアルマスクと呼ばれた鎧の男はその言葉に答える事はせずに拳を構えた。

 

「ぶっ飛べ!!」

 

 ベリアルマスクの拳が叫ぶ男の頬に突き刺さる。

 殴られた男は壁まで吹き飛ばされ、背中を強かに打ち付けた。

 

 その衝撃でローブが取れ、その全体が明らかになる。

 そこには身体は無く、ただ宙に浮く頭蓋骨があるだけだった。

 

「それがお前の正体か。犯罪組織『アルマゲドン』ボス、アンチ・クロス!!」

 

「グッ、ゴホッ。流石はベリアルマスク。ベリアルの名を冠するだけはあるという事か。

だが、私は一人では逝きはせんぞぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 アンチ・クロスの頭蓋骨には既に罅がはいっており、言葉を発する度にその罅が広がっ

ている事から既に限界を迎えている事が伺えた。

 

 しかし、アンチ・クロスはそんな事はどうでも良いと思っていた。

 

 ただ、今は目の前のベリアルマスクを倒す。

 それだけだった。

 

「これでトドメだ!」

 

 ベリアルマスクがアンチ・クロスにトドメを刺す為に飛びかかる。

 

「それを待っていたァァァァァァァ!!」

 

 飛びかかるベリアルマスクに反応するようにアンチ・クロスの目の前に魔法陣が出現し

たのだ。

 

「なんだと!?」

 

 ベリアルマスクは魔法陣に気づき、急ぎ炎を使って緊急回避をしようとするが、

 

「カカカ! 遅いワァ! 世界を超える転移魔法陣で何処とも知れぬ世界で朽ちよ! 我

はそれを死者の国で呵呵と笑いながら見させてもらうわ!!」

 

 アンチ・クロスはそう笑いながら言い、崩れ去った。

 

「アンチ・クロスゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 その日、一つの犯罪組織と一人のヒーローが姿を消した。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 誰にだって馴染みの店というものが存在する。

 

 それは兵藤一誠という男子学生にとっても例外ではなかった。

 兵藤一誠はぶっちゃけしまうと人間ではない。

 そう、彼は悪魔である。

 

 まあ、悪魔と言っても厳密に言えば転生悪魔と言い、元は人間だった者が死に瀕した時

に「悪魔の駒」と呼ばれる代物によって転生し、生まれるのが転生悪魔である。

 

 もちろん、悪魔に転生したからと言って何か兵藤一誠という人物の何かが変わる訳では

ない。ただ、寿命や身体能力などが大きく変化したりするといったぐらいである。

 

 さて、そんな兵藤一誠の馴染みの店だが、実は二つある。

 一つは彼の生き甲斐であると言っても過言ではないエログッズをいつも買う店。

 まあ、男子なのだからそれぐらいは普通かもしれないが、兵藤一誠は並のエロ男児では

なく、超エロ男児なのだが、それは今は関係ない。

 

 今回、焦点を当てるのはもうひとつの馴染みの店『飯処 漢』である。

 

 カランカランと扉に取り付けられたベルを鳴らしながら一誠はいつもの様に店の中に入

っていく。

 

 そこは定食屋だった。

 店の中には適当に並べられたテーブルとカウンター席が5つ程設置されており、それ以

外には注文を待つ間の暇つぶし用か、店主の趣味かは分からないが一昔前の少年漫画が所

狭しと入れられた本棚がある。

 

 一誠は慣れた様子でカウンター席に向かい、

 

「ユメさん、今日の日替わりは?」

 

 カウンターの奥にいる女性に声をかける。

 

「あら、一誠ちゃん。久しぶりねえ。今日の日替わりは生姜焼き定食よ」

 

 一誠にユメと呼ばれた女性はぱっと見の外見は20代前半と言った様子だが、この店に

10年以上通い続けている常連によれば彼女の外見はここ10年まったく変わっていない

との事であり、実際の年齢は不詳な人物であった。

 

 しかし、一誠やここの常連の男連中にとってそんな事はどうでも良かった。

 ユメという女性はボンッキュッボンという言葉はこの女性の為にあるのではないか、と

思ってしまう程に整った魅惑のボディの持ち主なのである。

 

 一誠の主である駒王学園オカルト研究部部長であるリアス・グレモリーや同研究部の女

性達も皆美人であり、整ったプロポーションの持ち主ではあるのだが、ユメには彼女らに

は無い大人の色香といったものがあるため、リアス達とはまた違った魅力を放っているの

である。

 

 これほどの美人であるならば男達が放っておく筈もないのだが、ユメに言い募る男は皆

無と言ってもいい。

 

 これはユメがどうとかではなく単純に彼女は既に人妻であるというだけである。

 そして、この魅惑の女性の心を射止めた幸せものこそがこの店の店主であった。

 

 ユメが既婚者である、という事実に何人かは血の涙を流す事態も発生しており、店主に

呪いの言葉を吐こうとする者もいたが、それが実行される事はなかった。

 

 その理由は伴侶たる店主にあった。

 

「おう、イッセー!! 久しぶりじゃねえか!!」

 

 ユメの立つカウンターの奥、調理場から獣の咆哮の様に馬鹿でかい声が響いてきた。

 声の主はドスドスという音を立てながら、カウンターに出てきた。

 それは巌のような男であった。

 まるで巨岩を荒く削ったかの様に盛り上がった筋肉が着ている服を弾き飛ばさんばかり

に盛り上げており、顔もまた獅子か猛虎を彷彿とさせるような厳しい面構えに金髪を調理

の邪魔にならないように短く刈り上げていた。

 

 まさに動く筋肉の塊といっても過言では無いこの男こそ『飯処 漢』の店主、ドウサン

と言った。この威圧感がそのまま形をとったようなドウサンに面と向かって呪詛を吐こう

とする猛者は流石におらず、結果今のような状態に落ち着いていた。

 

 ちなみに余談ではあるが一誠とその友人であるとある二名も呪詛を吐こうとした者達で

あった。

 

「あ、店長ちわーす」

 

 普段の一誠ならばビビってしまいそうなものだが、彼もこの店の常連となってから数年

が経過している為に軽く挨拶をする事ができた。

 

「おう。イッセー、暫く見ない間に随分と見違えたじゃねえか。なんか男の格が上がった

、そんな感じだな。それと店長じゃねえ、おやっさんと呼びな」

 

 ドウサンはガシガシと乱暴に一誠の頭をなでつける。

 力強すぎるその撫で方に軽く痛みを覚えながらも一誠は笑う。

 

「いてて。すんません、おやっさん。いやあ、おやっさんに男の格が上がったって言われ

ると何だか自信が着いちゃいますよ」

 

 ドウサンもまたそんな一誠の言葉に笑顔を深くする。

 

「そういった言い方が出来るのが男が上がったって言うんだよ。これはあれか? お前に

もようやく春が来たのか? エログッズとかの寂しい春じゃなくて本物の女がよ」

「……かもしれないっす。いや、まだ片想いなんですけどね?」

「あら一誠ちゃん、本当に春が来たのねえ。お姉さん寂しいわ。これでも一誠ちゃんの事

可愛いなあって思ってたのに」

 

 会話に混じってきたユメの言葉に一誠はガバッと顔を上げ、先ほどまでの真面目な顔と

は打って変わってだらしない顔になり、

 

「えぇっ、じゃ、じゃあユメさんとの壮大な恋もあったってことっすか!?」

 

 ユメに、更に詳しく言うならばその雄大な山脈に、イヤラシイ視線を向けるが、

 

「おう、一誠。ユメに手を出したらどうなるか分かってるよな?」

「や、ヤダナー。僕がユメさんにそんな視線を送る訳ナイジャナイデスカー」

 

 ドウサンの言葉に冷や汗を流しながらユメの胸から目を逸らすのだった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「さて、一誠。今日の注文はどうする? さっきユメに日替わり聞いてたからそれでいく

か? 今日は良い豚がはいったから旨ぇぞぉ」

 

 席に案内された一誠はドウサンの言葉に喉をごくりと鳴らすが、この店に来た目的を思

い出すと首を振る。

 

「……おやっさん。注文いいですか?」

「おう。今日はどうする?」

 

 一誠は顔を引き締め、真っ直ぐにドウサンを見詰め、静かに注文を告げた。

 

「チャレンジャーお願いします」

 

 チャレンジャー。その単語が一誠の口から出た瞬間に店から一切の喧騒が消え、店内全

ての視線が一誠に向く。

 

「……チャレンジャーでいいんだな?」

 

 ドウサンの確認に一誠はコクリと頷く。

 

「うす。お願いします」

「確かに男は上がったようだが、まさかチャレンジャーとはな。一誠、勇気と無謀は違う

ぜ? 最終確認だ、チャレンジャーでいいんだな?」

 

 再度の確認に一誠は自身の背に冷たい汗が流れ、心臓は鼓動を速くする。

 そして、

 

「うす。チャレンジャーお願いします」

 

 その言葉を口にした。

 

「チャレンジャーいっちょう!!」

 

 ドウサンが店内に響き渡るように大声で注文を叫ぶと、店内に動きがあった。

 それまで談笑していた会社員達も定食を食べていた男子学生達も皆、席を立ち、店の中

央に空きスペースを造る。空いたスペースにユメが一つの小さなテーブルを置く。

 

「一誠、財布は大丈夫だろうな?」

「問題ないですよ。勝ちますから」

 

 ドウサンの言葉に一誠は自分を奮い立たせる意味も持たせ、勝ち気な言葉を口にした。

 

「良い度胸だ。位置につきな」

 

 ドウサンは腕を捲り、その丸太のような腕をテーブルに置く。

 対する一誠も同じように学生服を脱ぎ、シャツの腕を捲り、悪魔としての修行で逞しく

なった腕を置く。

 

 それは所謂腕相撲の格好であった。

 

 審判役を務めるユメが両者の拳を合わせ、ルールの確認を行う。

 

「勝負は腕相撲一本勝負。一誠ちゃんが勝ったらスペシャル漢丼を無料提供。この人が勝

ったら当然スペシャル漢丼の代金、2500円を払ってもらう。両者、いいわね?」

 

「はい!」

「いつでもいいぜぇ」

 

 両者が頷くのを確認したユメはテーブルから離れ、息を吸い、

 

「ファイッ!」

 

 ゴングを鳴らした。

 

 ここで一誠が注文したチャレンジャーについて説明しておこう。

 一誠が注文したチャレンジャーとは『飯処 漢』の名物であり、また漢試しの一つとし

て常連たちの間では有名なものである。

 

 店主であるドウサンとの腕相撲に勝利した場合はこの店の最高の値段を誇る丼ものであ

るスペシャル漢丼が無料となるという他の店における大食いチャレンジと同じであるのだ

が、違うのは戦うべきは大皿に載った料理ではなく店主ドウサンであるという点である。

 

 今までにもチャレンジャーに挑戦する者は数多くいたが、そのいずれもがドウサンに勝

つ事は出来ずに敗北してきた。

 

 それ故に周りの常連たちは一誠が挑戦することにいい意気込みだと思いはするが、勝て

るとは微塵も思っていなかった。

 何故なら、今の一誠よりも遥かに筋量があるであろう男達が敗れ去ってきたのだから。

 

 しかし、それは一誠が人間であればの話である。

 今の一誠は悪魔に転生しており、その身体能力は人のそれを遥かに超えている。

 

 勝たせてもらう、一誠はそう考えていた。

 

『悪魔の力の悪用というか、なんというか。相棒情けないぞ』

 

 彼の神器『赤龍帝の籠手』に宿るドラゴン、ドライグはそんな一誠に苦言を呈するが、

 

(うっせー。人間の力じゃおやっさんに敵う訳ねえだろ!)

 

 そんな情けない返事が帰ってくるだけだった。

 

 一誠は悪魔の身体能力を使ってでもドウサンに勝ちたかった。

 それはスペシャル漢丼が無料になるだけではない。もうひとつの理由があった。

 いや、むしろもう一つの方こそが目的だったりする。

 

 それは、チャレンジャーに挑戦し、勝った者には勝者の褒美としてユメからキスがある

というものだった。

 

(悪魔の力でもなんでも良い。俺は勝ってユメさんにキスしてもらうんだ!!)

『うぅ、下心しかない相棒だ』

 

 

◆◆◆◆

 

 

 ユメの合図と共に両者はその腕に渾身の力を込める。

 ギシギシッと机が悲鳴を上げる。

 

「ほう、一誠。どんな鍛え方をしやがった。その細腕からは考えられねえ程の力じゃねえ

か」  

「へへへ、驚くのはまだ早いっすよ。うぉぉぉおおおおおおお!!」

 

 ドウサンの賞賛の言葉に一誠は笑みを深くしながら更に力を込める。

 

「ぬぅ!」

 

 悪魔の身体能力をフルに使い、一誠はドウサンの腕を机に着けようとする。

 

 ぐぐぐ、とドウサンの腕が傾く。

 その光景に常連たちは皆、驚嘆の表情を浮かべていた。

 

「おいおい、あいつあんな細腕だってのに大将を押してんぞ」

「こりゃもしかするともしかするか……?」

 

 周りのささやき声に笑みを深くする一誠。

 

「へへ、どうっすかおやっさん。降参してもいいんですよ?」

 

 軽い挑発を交えた言葉にドウサンもまた笑みを深くする。

 

「イッセー、確かに力を付けたな。だが、これしきの力で俺を超えられるなんて甘っちょ

ろい考えは捨てた方がいいぞ?」

 

 ドウサンの言葉に一誠は怪訝な表情を浮かべる。

 

「イッセー、いつからこれが俺の全力だと思っていた?」

「……なん……だと……」

 

 ドウサンはフゥゥゥと大きく息を吐き、そして、

 

「フンッ!!」

 

 一誠に押されかけていた腕に力を入れた。

 それと同時にパンプアップされた筋肉によりはじけ飛ぶドウサンの衣服。

 

 急激に増したドウサンのパワーに一誠の腕が軋みをあげた。

 

「ぐげっ!」

 

 両者の腕が載ったテーブルがミシミシと音を立てる。

 一誠の有利に傾いていたはずの勝負は一瞬にしてドウサンの有利となる。

 

「ぐぎぎっぎぎ」

 

 歯を食いしばり、耐えようとするが、それも長くは保たなかった。

 

 パタリ、と力を失った一誠の腕がテーブルについてしまった。

 

「それまで! 勝者、ドウサン!!」

 

 ユメの言葉に店内全てが沸き立つ。

 勝者となったドウサンはバッと拳を突き出し、勝者の名乗りを上げるのだった。

 

「イッセー、本当に強くなりやがって。一体どんな特訓をしてきたんだ?」

 

 疲労から地面に伏している一誠にドウサンが声をかける。

 ここで悪魔になったからです、と言えるはずのない一誠は軽く引きつった笑みを浮かべ

自身の中に前からあった疑問をドウサンに投げかける事で誤魔化した。

 

「前から思ってたんですけどおやっさんってこの店始める前って何をやってたんですか?

こんなに筋骨隆々な料理屋ってのも無いと思うんですけど」

 

 一誠の疑問にドウサンとユメは顔を見合わせ、ドウサンが頷くと、ユメが口を開いた。

 

「一誠ちゃん、この人の昔の職業はね」

 

 ……ヒーローよ。そう言ってユメは笑った。

 

 その答えに一誠は何と言っていいのか分からなかった為笑うしかなかった。

 

 ちなみにこの後、一誠は敗北のスペシャル漢丼をお金を払って食べる事となり、その財

布は薄くなったとだけ言っておこう。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 一誠の財布が薄くなってから幾日かが経ったある日、一誠の通う駒王学園はある種の緊

迫感に包まれていた。

 それは、駒王学園に天使、堕天使、悪魔という三大陣営のトップ達が一堂に会している

ためであった。

 

 何故、三陣営のトップが一同に会しているのか? それは端的に述べるのであれば和平

を結ぶ為の会談であった。

 

 何故、会談がこの駒王学園で行われているのか。

 それはこの会談が開かれる前より、この地にて起きている数々の事件が関係していた。

 

 一つ一つの事件に三陣営の全てが関係しているか、と問われればそれは違うのだが、全

ての事件を見れば、必ず何処かの陣営が関係していた。

 

 また、それらの事件の解決には悪魔陣営のトップである魔王の一人であるサーゼクス・

ルシファーの妹であるリアス・グレモリーが関係していた事から事情の説明も兼ねて、今

回の会談は駒王学園で開かれる事となったのである。

 

 そして現在、一誠は会談が開かれるまで少しだけ時間があったので何をするでもなく廊

下をぶらぶらと歩いていた。

 

 すると、廊下で一人佇み、手元にある一枚の写真を見ているサーゼクスを見つけた。

 サーゼクスは一誠が近づいてきたのを感じ、写真を胸元に仕舞い、彼に向けて微笑を浮

かべ、手招きをした。

 

「やあ、一誠くん。調子はどうかな?」

「ぼちぼちって所です。サーゼクス様は何を見てたんですか?」

 

 一誠の問いにサーゼクスは少々気恥ずかしそうにしながらも先ほど仕舞った写真を取り

出した。写真は随分と古い物なのか色褪せていたが、何が写っているのかは分かった。

 

 写真には美少年と言っても過言ではない紅髪の少年がゴテゴテとした真っ赤な全身鎧に

顔には捻くれた山羊の角が着いたこれもまた真っ赤な獅子の面をつけた人物、あえて言う

ならば一昔まえの特撮ヒーローに抱えられ満面の笑顔を浮かべていた。

 

「これは?」

「一誠くんは知らないかもしれないけど冥界には娯楽がとても少ないんだ。今でこそ、色

々なものが流れてきて少しはマシになってきたけど私が子供の頃は娯楽と言えば本とか、

そういった物しかなかったんだ」

 

 でもね、と一旦言葉を切ったサーゼクスは思い出すかの様に視線を宙にやった。

 

「この写真に写っているのはね、そんな娯楽の少なかった冥界に新しい風を運んでくれた

ヒーローと恥ずかしながらそんなヒーローの大ファンだった私なんだよ」

 

 その話を聞いた一誠はなるほど、と思った。

 確かにこの写真に写っている美少年は目の前のサーゼクスをそのまま幼くしたようにも

見える。しかし、それよりも気になるのはこのヒーローであった。

 

「このヒーロー、どんな作品だったんですか?」

「ヒーローの名前は魔炎英雄ベリアルマスク。全身を真っ赤に染めた炎のヒーローでね。

こっちの特撮みたいに勧善懲悪という訳じゃなくて自分が気に入らない奴を持ち前の怪力

と炎で打ち倒していくって内容なんだ」

「ず、ずいぶん特徴的な特撮っすね」

「ああ、そうだね。ちなみに登場時のセリフは『天駆け、地駆け、人助け! 子供の声が

俺を呼ぶ! 魔炎英雄ベリアルマスク推参!』だよ」

 

 サーゼクスはベリアルマスクのポーズを取り、笑いながら言葉を続けた。

 

「一誠くん、実はこのヒーロー作り物じゃないって言ったらどうする?」

「へ? どういう事ですか?」

「ベリアルマスクはね。私が子供の頃のヒーローなんだ。私が子供の頃の冥界にそんな特

撮を撮る技術なんて無いからね。このベリアルマスクは実際に冥界で活動をしていた実在

のヒーローなんだよ」

 

 サーゼクスの言葉に一誠は引きつった笑みを浮かべる。

 

「いやあ、すごかったなあ。西に気に食わない悪魔がいれば殴り飛ばし、東で子供を泣か

す悪魔がいれば燃やし尽くす。まあ、毎回毎回暴れる度に冥界の建物が何棟か全壊してい

たけどそれでもあの姿は私の目にはヒーローとして焼きついたよ」

 

 ちなみに、私世代の悪魔は皆ベリアルマスクのファンだよ、というサーゼクスの言葉に

一誠の表情からは今度こそ笑みが消えた。

 

「悪魔って寿命滅茶苦茶長いじゃないですか。てことはそのベリアルマスクさんもまだ活

動しているんですか?」

「いや。残念ながらベリアルマスクは私が魔王に就任する前にいなくなってしまったんだ

よ。噂によればとあるSSS級の指名手配悪魔がボスをしていた犯罪組織と激闘を繰り広げ、

その後の消息は不明なんだ。まあ、あれほどの力を持っているヒーローだったからね、ま

だ生きているとは思うんだけど」

 

 また会いたいなぁ、と呟くサーゼクスの姿は悪魔のトップである魔王ではなく、一人の

ヒーローに憧れる少年の様に見えた。

 

「サーゼクス様。会談が始まります」

 

 そこまで話していると、一誠の歩いてきた方向とは逆からサーゼクスの『女王』である

グレイフィアがやってきてそう声をかけた。

 

「分かった。行こうか」

 

 グレイフィアに答えた時にはサーゼクスの顔は魔王としてのそれに戻っていた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 三陣営による会談は概ね問題なく進んでいた。

 しかし、それも今の瞬間までだった。

 

 突如としてそれは起きた。

 周囲の時間が止まったのだった。

 

 流石に三陣営のトップ達はその時間停止の影響を受けてはいなかったがその顔は厳しく

眉間に皺がよっていた。

 

「来たぞ」

 

 堕天使のトップであるアザゼルの言葉が皮切りになったのか、駒王学園の校庭に多くの

転移魔法陣が現れ、そこから黒ローブの集団といういかにもアレな団体が現れ、会談を行

っている部屋に向かって魔法を矢の如く放ってきたのである。

 

「ちっ、めんどくせえな」

 

 アザゼルはポリポリと頭をかきながら時間停止から開放され始めた一誠達に現状の説明

をした。この時間停止の原因はリアス・グレモリーの眷属である『僧侶』ギャスパーの神

器の暴走であり、暴走の原因は今襲いかかってきている集団、『禍の団』によるものであ

ると。

 

 一誠がアザゼルの説明を受け、ギャスパーの救出に向かおうとした時だった。

 

『待てぃ!!』

 

 駒王学園全体に大声が響き渡る。

 

 その場にいる全員が声の出処を探す。

 一誠はその声に聞き覚えがあった気がした。

 

「あ、あそこだ!!」

 

 その言葉は誰が発したものかは分からない。

 だが、その方向に視線を向けると、彼はいた。

 

 真っ赤な全身鎧に捻くれた山羊の角を付けた同じく真っ赤な獅子の面。

 

 その姿を確認した魔王であるサーゼクスやレヴィアタンはまさか、と思いながらもその

姿を見て、涙まで浮かべていた。

 

「き、貴様、何者だ!」

 

 黒ローブの集団から声があがる。

 

『知らぬというならば答えてやろう。聞けぃ悪人ども!』

 

『天駆け、地駆け、人助け! 子供の声が俺を呼ぶ! 魔炎英雄ベリアルマスク推参!』

 

 それは古きヒーローの再臨だった。




ものすごく久々の更新です。
無性に書きたくなったので投稿しました。

大分テンションにまかせて書いているので大分酷い。

年内にもう一本かけたら良いなあと思いつつ、ここらで失礼します。
それではまた次回。
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