粗製リンクスのネタ倉庫   作:粗製リンクス

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なのはstsで書いてみた

 私はあの温もりを生涯忘れる事はないだろう。

 

 里から追い出され、何処へ向かえばいいのか、何をすればいいのか。

 何も分からず、呆然としていた時に差し出されたあの大きな手。

 

 私はあの手に救われたのだから。

 

「キャロ、聞いてるの?」

 

 声を掛けられ、キャロはようやく視線を上げた。

 

「すいません、ティアナさん。なんでしょうか?」

「なのはさん達はオークション会場の方の警備で此処には私達しかいないんだから、

隊列の確認をしましょうって話よ。ちゃんと聞いててよね」

 

 語尾に多少の苛立ちが混じっているのに気づきキャロはまたやってしまったか、と反省

する。どうにもあの時の事に想いを馳せていると周りが見えなくなってしまうのだ。

 

 矯正すべきだとは思っている。

 だが、駄目なのだ。

 

 あの温もりが私を支えてくれたのだから。

 

「キャロ、あんたのもう片方の相棒は何か発見してない?」

 

 ティアナの言葉にキャロは急ぎ、自身の横にいる白竜フリードではなく上空を旋回して

いるもう片方の相棒、黄土色の鱗を持つ竜に思念を送る。

 

『スカイ、そっちに異常はない?』

『異常無し』

 

 簡潔に過ぎる言葉が帰ってくるが、それが彼の性格なのだ。

 寡黙で、他人との関わりを余り持とうとしないスカイは実のところキャロが召喚し、契

約を結んだ竜ではない。

 

 彼はキャロがとある人物から別れの際に譲り受けた竜である。

 その為、当初はキャロもスカイとのコミュニケーションは難儀を極めたが、長い時を共

に過ごす内に彼も少しずつ心を開いてくれ、今では短文ではあるが返事をしてくれるよう

になったのだ。

 

 ちなみに、同僚である他の機動六課の面々は未だに無視されている。

 特に酷いのがフェイトである。

 

 フェイトはキャロを引き取った時に彼女からスカイがどのような経緯でやってきたかを

聞いた際にスカイとも仲良くせねば、と思ったのだが、スカイはそんな彼女に心を開く事

はせずに無視し続け、酷い時には煩わしい小虫を追い払うように尻尾で弾き飛ばす事もあ

るほどである。

 

 そんな様子でいつまでも心を開いてくれないスカイにフェイトはとても悩んでいるのだ

が、今はそれは割愛しよう。

 

 キャロは上空を優雅に飛ぶスカイを見ながら思い出す。

 

 温もりをくれたあの人、センセイの事を。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 強すぎる力を持つがゆえに里から追い出された彼女は途方に暮れていた。

 それも当然の事だった。

 

 如何に強力無比な力を持とうともこの時のキャロは未だ10に満たない幼い少女。

 自分に従ってくれる竜であるフリードは子竜であり、それも完璧に御せる訳でもなく、

生活に関しても里という限定された狭い空間が今までの世界の全てだった彼女にそこから

追い出された場合における生きる術を持っている訳でもないのだから。

 

 里の人間達は彼女を追放する際に多少の金銭と地図は渡してくれたが、それが何になる

というのか。かつてあった温もりは無くなり、里を追い出されたという事実のみが彼女の

心を酷く傷つける。

 

 森をトボトボと歩きながら、キャロは考える。

 

「……こんな事になるのなら」

 

 ――こんな事になるのなら私は力なんていらなかった……。

 

 ただ私は里の皆と笑い合って過ごせればそれだけで良かったのに。

 

 もう帰ってくる事のない母の温もり、二度と触れあう事のない父の背。

 

 そんな事ばかり考え、涙を零しながら下を向き歩いていたからだろう。

 目の前に人がいるのに気づかず、ぶつかってしまたのは。

 

「おっと。すまんな」

「あう。あ、いえこちらこそ、す、すいません」

 

 キャロがぶつかったのは一人の男性だった。

 年の頃は20かそこらだろう。

 

 薄い紫色の髪を短く切りそろえた青年の格好は全身を旅のために使われるローブのよ

うな物を羽織っており、その手にはドラゴンの頭を模した木の杖をもっていた。

 

 その姿は昔に絵本で見た魔法使いのような姿だった。

 

 キャロはつい青年をジロジロと見てしまう。

 そして、先程からフリードがこの青年をいたく警戒しているのに気がついた。

 

「どうしたの、フリード?」

「キューーー」

 

 そう、キャロは下を向いていたので気が付かなかったがフリードは見ていた。

 この青年は何もなかった場所に突如として現れたのだ。

 

 まるで魔法みたいに。

 

 そして何より、青年の周囲から放たれるとても濃い魔の気配。

 キャロは気づいていないが、竜たるフリードにはその気配は濃厚過ぎた。

 

 すると、青年はキャロの肩に乗るフリードに気がついたのか。

 ジッと視線をフリードに向ける。

 

「お嬢ちゃん、そのドラゴンなんだが」

「何ですか?」

「どこで捕まえたんだ?」

「はい?」

 

 青年の質問にキャロは目が点になった。

 この人は何を言っているのだ。

 

「いえ、フリードは……」

「あ、やっぱ言わんでいいや。取り敢えず君はモンスターを持ってる。つまりはそういう

事だろう? 扉の先で他国のモンスターマスターに出会ったのならば俺たちがやることは

唯一つだ。俺はロウジュの国のクオウ。さあ、モンスターバトルだ!」

 

 クオウはそういうと、ローブをバサリと翻す。

 それが合図だったのか、クオウに付き従っていた三体の魔物がその姿を全面に押し出し

てきた。

 

 左に立つのは額に3つ目の瞳を持った鷲頭の悪魔。

 右に立つのは巨大な槌を持った竜の戦士。

 そして、真ん中に堂々たる佇まいでいる黒い肌を持ち、双頭の刃を持つ魔神。

 

「え、え?」

 

 明らかにキャロに対し、臨戦体制を取る三体の魔物にキャロは戸惑うばかりだった。

 

「どうした、そっちのモンスターはソイツだけか?」

「え? モンスターバトル? なんの事ですか?」

「なにいってんだ。お前モンスターマスターだろう?」

「だからMMってなんですか?」

「え」

「え」

 

 

 キャロがモンスターマスターでないという事に気がついたクオウは謝りながらキャロと

共に火を囲っていた。パチパチと火が爆ぜ、適当に周りに刺した魚がいい具合に焼けてお

り、程よく焼けた魚の香ばしい香りにキャロは自身のお腹からクゥと可愛らしい音が鳴っ

た。

 

 赤面するキャロにクオウは笑いながら、魚を差し出す。

 キャロはおずおずとソレを受け取り、齧りつく。

 

――温かい。

 

 ポロポロとキャロの瞳から涙が零れた。

 

「ど、どうしたお嬢ちゃん。あ、熱すぎたか!?」

 

 突然泣きだしたキャロにクオウは慌てだした。

 あたふたとするクオウの様子を見て、彼に付き従っていた魔物達が豪快に笑う。

 

「マスター、慌てすぎだ」

 

 鷲頭の悪魔、ジャミラスが手を叩きながら笑い、

 

「常日頃から思うがマスターはもっと落ち着きを持つべきだな」

 

 武器である戦鎚を地面に置いた竜の戦士、ドラゴンソルジャーが窘め、

 

「馬鹿め」

 

 黒い肌を持った魔神、ダークドレアムが微笑みながら、各々がマスターであるクオウの

慌てている姿を笑った。

 

「お前らなあ、もう少しマスターに対する敬意とか持てよ!」

 

 クオウは自身を笑う仲間達に叫ぶが、仲間達は笑い続け、いつしかクオウも笑い、それ

に釣られるかのように先ほどまで泣いていたキャロもまた、笑っていた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 あれから暫くの間笑い続けていた彼らはキャロから彼女の事情を聞いていた。

 

 キャロの事情を聞き終えたクオウは何も言わずに、ただ彼女の頭を撫でた。

 

 グシャグシャと些か乱暴な撫で方であったためかキャロの髪型は乱れたが、その乱雑さ

にキャロは自身の父を思い出し、またジワリと涙が零れそうになる。

 

「ク、クオウさんはモンスターマスターっていう職業の方なんですよね?」

 

 零れそうになる涙を誤魔化すようにキャロはクオウに質問した。

 

 クオウはそのとおりだ、と頷くとモンスターマスターという存在について詳細に教えて

くれた。

 

 その話を聞いたキャロは心底驚いた。

 

 まさか契約でもなんでもなく只信頼のみで人と魔物が共にいるという関係があるとは夢

にも思わなかったからである。

 

 そこでキャロは思った。

 

(この人に色々と教えてもらえば私のこの力を制御できるかも)

 

 もちろん、クオウに竜召喚の知識などは皆無である。

 しかし、彼は魔物との信頼関係の築き方を知っている。

 

 キャロは藁をもつかむ思いでクオウに頼み込んだ。

 

「お願いします! 私を、私を弟子にしてください!」

 

 いきなり頭を下げたキャロにクオウは戸惑うが、キャロの事情を聞いた今となっては彼

女の頼みを断りづらいのも確かであった。

 

 どうしたものか、と仲間たちを見ると、ジャミラスは受けてやれ、とでも言いたげに頷

き、ドラゴンソルジャーは肩をすくめ、ダークドレアムに至っては興味が無いようで明後

日の方向を向きながら武器の手入れをしていた。

 

「あー、俺には竜召喚? の知識なんてないぞ?」

「はい」

「それでもいいのか?」

「はい!」

 

 ガシガシと頭を掻き、クオウはキャロの頭に手を置くと、

 

「よし、なら今から俺はお前の師匠だ!」

 

 そう言った。

 

 そこからキャロはクオウから魔物の知識や信頼関係の築き方などを教わる事となった。

 

 その日々はキャロにとってかけがえの無い宝物であった。

 しかし、物事には何事も終わりというものがある。

 

「センセイ、今、なんて?」

「そろそろお別れだって言ったんだ」

「そ、そんな……」

 

――捨てられる?

――何かやらかしてしまったのだろうか?

 

「そんな泣きそうな顔をするな。単にお前にもう教える事は無いからそろそろ独り立ちを

しろって事だ」

「それほど大した事も教えてないだろうに」

 

 ダークドレアムが茶々をいれるが、クオウはそれを無視し、キャロの頭を撫でる。

 

「お前はもう大丈夫。それに、誰だっけ? なんか時空管理局の某とかいう人からお誘い

を受けたんだろう?」

 

 そう、いつ目に付いたのかは分からないがキャロは先日、時空管理局という組織につと

めているフェイト・T・ハラオウンという女性から自分の下に来てほしいと誘いを受けて

いた。

 

「でも、センセイがいません……」

「俺はなぁ、ただのモンスターマスターだからなあ。一箇所に縛られ続けるのは勘弁なん

だわ」

 

 一応、キャロに誘いをかけたフェイトは彼女と共に旅し、彼女の保護者代わりであった

クオウにもミッドチルダで暮らさないか、と提案していたのだが、クオウはそれを断って

いた。

 

「私はセンセイと別れたくありません……」

 

 そう言ってクオウのローブの裾を握りしめるキャロ。

 

 クオウはどうしたものか、と考え、何か思いついたのかいつも背負っている荷物袋から

一つの卵を取り出した。

 

「キャロ。これをお前にやろう」

「え?」

 

 クオウから手渡された卵はずっしりと重く、キャロは一瞬よろけるが、すぐに体勢を戻

し、クオウは真っ直ぐ見つめた。

 

「キャロ、俺はモンスターマスターだ。俺の夢は最強のモンスターズを揃える事だ。だか

ら一つの場所にずっといるなんて無理だ。だから俺は行く。だけどこれが今生の別れじゃ

無い。モンスターマスター同士は惹き合うものだからな。だから、この卵から生まれる奴

をちゃんと育てろよ。そしたら、いつかまた会った時に俺のモンスターとバトルしよう」

 

「育てる……。そうしたらまた、会えますか?」

 

「もちろん。約束できるか?」

 

 そういって小指を出してきたクオウにキャロは小指をからませた。

 

「「指きりげんまん嘘ついたら針千本のーます」」

 

 そして、キャロとクオウは別れ、キャロが預かった卵から生まれたのがスカイだった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「キャロ!」

「はいっ、なんですか!?」

「あんた、またボーっとしてたわよ。シャンとしなさい!」

 

 ティアナに再び窘められ、うなだれるキャロ。

 そんな彼女達の下に警報が届けられた。

 

『転移反応が一つ! 現れます!』

 

 突然の転移反応に場の空気がピリピリとしたものに変わる。

 しかし、キャロは別の意味で戸惑っていた。

 

 上空を泳いでいたスカイが嬉しそうに啼いたのだ。

 あの寡黙で無愛想なスカイがこんなにも嬉しそうにするのは初めての事であった。

 

――まさか

 

『現れます!』

 

 転移魔法が無事完了し、一つの人影が現れた。

 

「げほっ。まぁた可笑しな所に飛んだもんだ」

 

――この声!

 

「また失敗か、マスター」

「またとか言うな!」

 

 共にいる魔物達はあの時とは大分違うが、それでもこの声を間違える事はない。

 

「センセイ!!」

「ん? キャロ! キャロじゃないか! ははは、久しぶりだな!」

 

 キャロは溢れる涙をとめる事なく、スカイとフリードに念話を送る。

 そんな彼女を見て、クオウもまた笑いながら手をサッと振り、

 

「ロウジュの国のクオウ」

「アルザスのキャロ」

 

「「いざ、モンスターバトル!!」」




明日モンスターズ2の発売なので書いてみました。
正直言って短いし、全体的にお粗末な出来ですね。
なお、最後のクオウのパーティーはサージタウス。粗製リンクス自身のパーティーです。

明日を楽しみにしつつ。今回はここまで。
それではまた次回。

感想お待ちしてます。
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