粗製リンクスのネタ倉庫   作:粗製リンクス

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ものすごくお久しぶりです。
粗製リンクスです。

ものすごく久しぶりに書いてみました。
なので、書き方を忘れました。

ではどうぞ。


UQホルダーで書いてみた

 

 愛は素晴らしい。

 勇気は美しい。

 

 化物を貫くのは絶大な力ではない。

 愛や勇気こそが化物を貫くのだ。

 

 逆説的に言うのであれば、唯の力で討ち倒される輩は化物ではなく、

 ただの小悪党。

 

 愛を、勇気を、正義を、人の美徳に負けよ。

 力に、魔力に、気に、愛の無い力を打ち砕け。

 

 君が負けるのは愛のみだ。

 

 ――さぁ、ショウタイムだ。目を覚ませ、我が愛子よ。

 

◆◆◆◆

 

 轟々と音を立てながら一気の軍用輸送機が空を飛ぶ。

 輸送機の中には操縦士の他に三人の男の影がある。

 

 一人は目を瞑った壮年の男性、もう一人は右目に眼帯をした黒髪の青年。

 そして、灰色の髪をカクンカクンと揺らしながら居眠りをしている青年の三名。

 

 壮年の男性が居眠りをしている青年に近づき、軽く肩を叩く。

 

「……そろそろ起きたまえ」

 

「んぉ……。なに、もう着いたの南雲のオッサン」

 

 薄っすらと目を開いた灰色髪の青年、名をプロートゥと言う。

 

「ん、そうだよ。先に入っている灰人から連絡があった。不死者を確認、

 だそうだよ。これから合流後、依頼にあったとおり『瓦礫』を撤去しつつ、

 ついでに不死者狩りだ」

 

 ついでを強調しながら南雲が笑う。

 プロートゥもそれにつられて笑う。

 

「なぁに男二人で顔つき合わせて含み笑いしてんの。気持ち悪いなぁ」

 

 それまで傍観していた黒髪の男、超が肩をすくめる。

 

「まあ良いじゃないか。いくつになっても不死者を相手にするのは心が踊る

 というものだ。それに今回、確認された不死者はあの名高い『UQホルダー』。

 私の力がどこまで届くか楽しみでしょうがない」

 

「まあ、なんでも良いけどね。僕は気持ちよく殺しが出来れば」

 

 ニタニタと笑う超を見ながら失笑を零すプロートゥ。

 

「何が可笑しいんだい? プロートゥ」

  

 笑みをなくし、瞳に剣呑な光を宿した超がプロートゥの首筋にナイフを当てる。

 

「やめろ、超」

 

 南雲の制止が入るが、超はナイフをひかない。

 

「止めないでくれるかな。そもそも僕は今回のコイツの参加にまだ得心がいって

 ないんだ。ここ十数年の傭兵記録はあっても特定の組織には入らず、それより

 前の記録は全て真っ白。今回の参加だって依頼主からのネジ込み。これを気に

 するな、という方が無理な話さ」

 

 超の言葉に南雲の閉じられた瞳がピクリと動く。

 南雲自身、今回のプロートゥの参戦には些か疑問を覚えているが、

 

「確かに彼の事は気にかかるが、そんなものはこんな仕事をしていればよくある

 事だ。依頼主がそうしろ、と言ったのならそれで終わりさ」

 

 南雲の言葉に超は舌打ちを一つ打ち、ようやくナイフを下ろす。

 ナイフを当てられていたプロートゥはそれを気にするでもなく、笑う。

 

「南雲のオッサン、あんがと。超の兄さんも済まないねえ。俺も今回はアンタ達に

 協力すれば大きな額がもらえるからね。そのお金があればまた探しものができる」

 

 今回の任務の間だけよろしく頼むわ。

 

 そう言って手を合わすプロートゥに南雲は苦笑いを浮かべ、

 

「一つだけ教えてくれるかい? 君の欲しいものってなにかな。こんな下衆な

 仕事に就いてでも欲しいものって」

 

 南雲の問いプロートゥは先ほどとは違う笑み、嘲笑のようにも自嘲のようにも

 見える笑みを浮かべ、告げた。

 

――……愛と勇気、それを持った主人公《ヒーロー》さ。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 小高い丘の上にプロートゥの姿はあった。

 眼下には目標の不死者に敗れ、簀巻にされた超の姿とボロボロになった狼男の

 灰人、南雲の姿があり、彼らの眼前には先ほどまで彼らと戦っていた不死者の

 他に『UQホルダー』の中でも実力の高いメンバー、数名とその首領格であり、

 巨額の指名手配を受けている雪姫と言われている妙齢の女性の姿があった。

 

「んー。キティ《・・・》が出てくるとは。あれは南雲のオッサンじゃ厳しいな」

 

 さて、どうしたものか。

 思案にくれているプロートゥに通信が入る。

 

「はいはい、こちらプロートゥ」

 

『プロートゥ、何故参戦していない』

 

 通信相手は今回プロートゥを雇った男だった。

 この雇い主は不死者を研究しているとか、なんとか言っていたが、プロートゥには

 どうでも良いことだった。

 

 今回、プロートゥがこの男に雇われているのは前金で大量の額を貰えるからであり、

 後は適当にやるつもりだったのだ。

 

「いやね、俺も最初からいくつもりだったんだけど南雲さん達に断られてねぇ」

 

 いや、初顔は信頼がなくて辛い、と嘯く彼に雇い主は額に青筋を浮かべる。

 

『その南雲達も見たところ満身創痍だ。そろそろ動け』

 

「あいさー。雇い主殿」

 

 雇い主の言葉に従い、よっこらしょと腰をあげたプロートゥの姿は次の瞬間には

 その姿を消していた。

 

『ふん、最初からそう動けばいいんだ。冥獣め』

 

 

◆◆◆◆

 

 

 南雲達を打倒し、歓喜に湧く刀太達、そしてそんな彼らを暖かく見守るUQホルダーの面々。

 最初に気がついたのは誰だったか。

 

 いや、誰も気がついていなかった。

 気付かされたのはUQホルダーから応援に駆けつけた真壁の首がゴトリと地に落ちた時だった。

 

「真壁!?」

 

 血を吹き散らしながら崩れ落ちる真壁の体。

 しかし、体が完全に地に伏す前に真壁の不死者としての能力は発動し、全ては元に戻る。

 

「いやー、コングラッチュレーション! やはり不死者は便利だね」

 

 今、真壁の首を落とした張本人とは思えないプロートゥの言葉に場の空気が固まる。

 

「貴様……」

 

「やぁやぁ南雲のオッサン、ズタボロだね」

 

 射殺さんばかりに自身を睨みつける視線もなんのその。

 プロートゥは平常運転に地に伏した南雲に笑いかける。

 

「随分遅い参戦じゃないか。どこで油を売っていたのか」

 

「いや、ずっと見てたよ。ただね、どうにも俺の探しものらしきものがいるじゃない。

 これは観察しなきゃと思ってね。ねえ、近衛刀太くん?」

 

 グルリと首をまわし、刀太を見るプロートゥ。

 明らかに人間の可動域を超えた首の動きに刀太が一瞬だけビクリと体を震わす。

 

 そんな彼を隠すようにUQホルダーの面々が前に出る。

 

 先頭にたつのは雪姫だった。

 

「あらら、隠されちゃった」

 

「久しいな、冥獣」

「やぁやぁキティ。久しぶり。何百年振りだっけ? ところでその呼び名やめない?

 嫌いなんだよ」

 

 雪姫をキティと呼ぶプロートゥが気になったのか刀太が声をあげる。

 

「お前、雪姫の事を知ってんのか?」

「まぁ旧知の仲だよ。近衛刀太くん」

 

「刀太! 身を隠しておけ! そいつに関わるな!」

 

 声を荒げる雪姫。

 

「ひどいなぁ。俺は単純に彼と話したいだけなのに」

「刀太はお前の求めているものではないぞ。あれは、ただのガキだ」

 

 そう言い捨てる雪姫に対し、

 

「それを判断するのは俺だ。そこをどけ、キティ」

 

 段々と口調が荒くなるプロートゥ。

 

「化けの皮が剥がれ始めてるぞ、冥獣」

 

「俺をその名で呼ぶな、といった筈だ。闇の福音」

 

 メリメリと音を立てながらプロートゥの体が膨らんでいく。

 変化が終わった後に立っていたのは先ほどまでの青年の姿はなく、

 そこには3mを超えた異形が立っていた。

 

 捻くれた二本の大角、顔は竜のような、醜い獣にも見える。

 唯一の名残かのように長く伸びた灰色の髪がかろうじて目の前の異形がプロートゥ

 であった証拠だった。

 

「……久しぶりに見たな、貴様のその姿」

 

「ふん。久しぶりであっても貴様ならば分かっているだろう? 俺とやりあう事の

 無意味さを」

 

 プロートゥの言葉に雪姫は顔を歪ませる。

 

「いつまでも僕らを無視しないでほしいな」

 

 雪姫と共に来ていたUQホルダーが動いた。

 宍戸、真壁、飴屋の三人が各方向から動き、各々がプロートゥの急所を狙う。

 

 そして、それら全てがプロートゥの体に突き刺さる。

 

「なるほど、良い連携、良い攻撃だ。並の連中ならそれこそ不死者であっても

 しばらくは動けないだろう。だが、愛がない」

 

 軽く身を震わすプロートゥ。

 それだけで攻撃を加えた三人は吹き飛んだ。

 

「邪魔しないように封じさせて貰おうか」

 

 自身の髪を数本引き抜き、吹き飛ばした三人に吹きかける。

 プロートゥの髪は巨大な杭なようなものに変化し、三人を地面に縫い付けた。

 

「お前たち! プロートゥ!」

 

 雪姫がプロートゥを睨む。

 しかし、その視線を無視してプロートゥは近衛刀太に近づく。

 

 刀太の近くにいた九郎丸は刀を構えるが、動けずにいた。

 

「動かないのは正解だな。動かなければ何もしないさ。さて、近衛刀太くん」

 

「な、なんだよ」

 

「一つ、問おう」

 

――……君にとって愛とは?

 

 

◆◆◆◆

 

 

 結論から先に言おう。

 プロートゥは去っていった。

 

 地面に縫い付けられていたUQホルダーの面々も開放され、現在彼らはUQホルダーの

 本拠地にて雪姫からプロートゥの説明を受けていた。

 

「プロートゥは古い知己でな。奴も一種の不死者だ」

「しかし、あの姿は? 僕の知るなかであんな姿の生物はいないのですが」

 

 九郎丸の言葉に雪姫はうなずく。

 

「それはそうだろう。奴に種族はない。強いて言うならばプロートゥというただ一人の

 種族だ。無論、それを種族と言っていいかは謎だが、そういった認識で構わない。

 問題なのは、奴が刀太に目を付けたという事だ」

 

 一同の視線が刀太に集まる。

 

「……あのプロートゥとかいう奴はなんで愛がどうとかを聞いてきたんだ?」

「それが奴の欲しいものだからだ。答えから言おう。奴はある不死者が造り上げた

 造物だ。作成者である不死者は既にいないが、奴の根底にはその不死者からの薫陶

 がある。それは、化物は愛と勇気によってのみ打倒されるべきというものだ。

 そして、奴はそのとおりになるためにこれまで活動を続けている」

 

 愛と勇気によって打倒される事を望む。

 まるで絵本に出てくる魔王ではないか。

 

 そんな感想が顔に出ていたのか、雪姫は苦笑する。

 

「あながち間違いではない。奴は魔王のようなもので、自分に終止符を打ってくれる

 存在を、愛と勇気を待っているのだ。そして、不幸な事に刀太、お前はその愛と勇気

 を持つ存在だ、と奴に認識されてしまった」

 

 これから事あるごとに奴はお前に関わってくるだろう。

 

 そう締めくくった雪姫にUQホルダーの面々は渋面を浮かべる。

 

 話は終わりだ、と雪姫は席を立ち、その場は解散となった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 自室で一人でワインを飲みながら雪姫は空を見上げる。

 

「……あいとゆうきの主人公、か。そんなものは存在しないよ、プロートゥ」

 

 

◆◆◆◆

 

 

「あいとゆうきの主人公は必ずいるさ。じゃないと何で俺が造られたのか分からない

 じゃないか。そうあれかし、と造られたこの生に意味はあったと思いたいから」

 

「だから……」

 

――待っているよ、近衛刀太、UQホルダー。あいとゆうきの主人公達。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 これは無視をしても構わない物語。

 本来は関わる必要の無い物語。

 

 それでも、ただそうあれかしと造られた怪物は此処にいて、今もあいとゆうきの主人公を待っている。

 




こんなんで良いのかな。

粗製リンクスはラスボスが主人公という展開が大好きです。
それがヒロインとの愛と勇気で話が終わるという王道展開が大好きです。

なので、今回もそんなお話。
プロートゥの語源は冥界神のプルートー。姿としてはLoVのプルートーがイメージです。

愛と勇気で打倒される事を願う魔王系主人公。
そんな傍迷惑な存在に目を付けられたUQホルダーの若い面々の明日はどっちだ、
てきな作品でした。

クォリティひっく。

こんなんですが、またネタを思いついたら書いていきたいと思います。

ではまた次回。

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