やはり比企谷八幡は捻くれている。続   作:秋乃樹涼悟

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どうしよう、オリキャラを出すタイミングが今回はなかったです。
まあ読者の皆さんは別にオリキャラとかどうでもいいしとか思っているかもしれませんがw


女子はどうしてか恋話が好きである。

日が暮れる手前で一色は帰り、その後はお客がぽつぽつ来ただけでこの日の純喫茶クレマの営業は終了した。

 

まさか一色にまた会うことになるとは思っていなかった。

久しぶりに会ってしまい一瞬キョドッていた俺に対し、一色はあまり変わっていなかった。

どこか吹っ切れているようなそんな感じで、奉仕部にいた頃のようだった。

告白のことは無かったことに、という訳でもなく、むしろそれをネタのようにしていた。

しかもさらっと今でも好きですけどとか言われたし。

 

「比企谷なにニヤニヤしてるの?顔がウケるんだけど」

「別にニヤニヤしてなんかないですけど…」

 

…にやけてしまっていた。

 

「つーか、そっちの掃除は終わったのか?折本」

 

戻ったことに嬉しく思うと同時に、どこか申し訳ない気持ちになる。

というかそもそも、俺が一色のようなあざと可愛い後輩に告白して玉砕することはあれど、告白されることは無いのだ。普通は。

もしも告白されて振りました、という話を材木座にでもしたらどうなるだろうか。

「リア充爆発しろ!」とリア充になってないのに言われるのか。

それとも、「八幡!恋愛シュミレーションゲームと3次元の区別もわからなくなってしまったのか⁉︎」と俺が妄言でも言っていると思われるのか。

それを材木座に言われたらなんかむかつくな…

 

「ねぇ比企谷、バイト終わったら駅前のファミレス行かない?私お腹空いてさー」

「いや、別に俺じゃなくてもいいだろ、それ。栗原バリスタと行けよ、女同士だし」

 

時間とは凄いもので、逃げていても現状維持しても時間が解決してくれることもあるのだ。

俺と一色だってそうだし、目の前にいる折本とだってそうだ。

 

「栗原バリスタ今忙しいんだって、仕込み中だし」

「お前友達多いだろ、近くにいる誰か探して行けばいいだろ。大学にまだ残ってる奴とかいるかもだし」

 

少なくともここで一緒に働き始めた頃はどちらも晩ご飯に誘ったりしていなかった。

 

「だって今から誘っても遅くなるし、比企谷なら暇そうだし」

 

どうしてか折本まで俺の扱いがちょっとひどい。由比ヶ浜や雪ノ下ほどではないのだが。

 

「俺を暇人と前提して誘うのやめてもらっていいですかね?」

「いいじゃん。…それにさ、聞きたいこともあるし」

 

持っていたほうきは胸の前で止まり、上目遣いで俺を見る折本。

一色ほどではないが、少しだけあざとさを感じた。

いや、実際には一色のせいでそう言った仕草をあざといと感じてしまうようになったのかもしれない。

 

中学のときの俺が今ここにいたらきっとまた勘違いをして再び告白して振られているだろう。

 

「…ご飯食べたらすぐ帰るからな」

 

ただの気まぐれで今日は付き合ってやることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷〜、一色ちゃんとはどうなの?やっぱりふたり付き合ってたとか⁉︎ほらだってクリスマスの合同イベントで最初に連れてきたの比企谷だけだったじゃん?バレンタインのイベントのときも比企谷たちも参加してたし、やっぱりなにかあるんじゃないの〜?」

「…なあ折本、聞きたかったことって主にそれか?」

 

出された料理にろくに手もつけず俺と一色について質問攻めをする折本。

外はもうとっくに日が暮れて、午後9時を回っていて暗いのに対して折本の目はキラキラと輝いてる。

そう言えば由比ヶ浜も戸部の依頼のときにこんな顔とか目とかしてた気がする。

 

「むしろそれしかないよねー」

「…別になんでもねーよ。ただの先輩後輩だ」

 

折本に恋愛だとかそういう話をするとろくな事がない。大学にどう広まるかと思うと絶対言いたくない。

 

「じゃあ比企谷はさ、どう思ってるの?一色ちゃんのこと」

 

さっきの恋話に喰らいつく女子とは違い、落ち着いたその声と表情で、そして俺の目を見てそんな事を聞いてきたのだ。

それもただの恋話とかそういうもののはずなのに、なにか裏を感じるというか、要するに俺の悪い癖。

こいつはなにをみようとしているのか、ふと会話をしているなかで思う。

いや、俺がそう考えてしまうのは眼を見てしまったからか。

 

「…まあそれに答えるとするならあれだな、あざとい高校の時の後輩、だな」

 

答えるのがなんとなく気まずくて、すっと窓の外に目を移す。

駅前というのもあって、午後9時になっていてもまだ人は歩いてる。サラリーマンもとい社畜、OLに家族連れ、カップルにぼっちの女子中学生。ん?

 

「へーそうなんだ」

「ああ…」

 

どこかで見た黒髪ロング、別にそれ自体は普通なのだが見覚えのある後ろ姿。

一瞬雪ノ下を思わせるような落ち着いた雰囲気で、でも雪ノ下のように冷たくはないけれどどこか冷めている。

 

「そっかぁ、じゃあ後で一色ちゃんからも聞いとこうっと」

「…ああ。って、なんで一色の連絡先知ってるんだよ…」

「お店で話してたときにちょっとね〜」

 

片手でスマホをいじりながら料理を食べる折本。いつの間に連絡先交換をしたのだろうか。

もう折本のコミュニケーション能力に関心すらしてしまうレベル。

まあもともと顔見知りだったということもあるとは思うが。

 

ふと先ほどの女子中学生のことを思い出してもう一度外を見たが、その子はもういなかった。

 

「ねぇ比企谷…」

「今度はなんだ?」

「比企谷はさ、私のどこが好きだったの?」

 

使っていたスマホの画面を落とし、テーブルに置いた。ちょくちょく振動して、それがテーブルを伝って俺の紅茶も波打っていた。

うるさい奴を無視するように窓の外を頬杖を付きながら眺めている。

 

「…なんかさ、私の事を好きだって言ってくれているひとがいてさ、でもね、どうして?って聞いたらさ、テキトーに横文字とか並べて誤魔化すの…」

 

いつもサバサバしている折本の、そういうしんみりとしているというか、なにかに対し悩んでいるところを初めて見た気がする。

 

「それは俺に恋愛相談をしているのか?」

 

正直俺に恋愛相談をされても困る。仲を悪くさせることを教えることは出来るかもしれないが、やはりそういうのは俺に向いていない。というかそもそも恋愛経験などないのだ。

 

「まあ比企谷にそんなこと聞いてもって感じだよねー」

 

ウケる、と言いながら冷めきった紅茶を飲む折本。

再び震える折本のスマホ。

 

人の自分に対する好意に、好きという気持ちに、どう返したらいいのか、俺はわからない。というか俺の場合、面と向かってはっきりと好意を伝えてくれたのは一色だった。キスまでされて、これは勘違いだと考える間すらなかった。

 

「私さ、たぶん断るための理由を探してるんだよ。その人のこと別に嫌いじゃないけど、別に好きでもない。私自身に好きなひとがいる訳ではないから、それで断るのは嫌だし…」

「折本はあれだな、結構まじめというか、ちゃんとしているというか」

「私は普通にまじめだしー」

 

確かにまじめではあるのだろうが、やはりサバサバしているという印象がどうしても強く、悪く言えばチャラついているように見える。

折本はもっと恋愛に対して軽い感じなのだと思っていた。

 

「でもさー私、比企谷のこと気にはなってるんだよねー。だってさ、比企谷ちょーウケるし」

「いや、別に俺はウケることは特にしてないから…」

「いやちょー面白いし」

 

俺を見ながらクスクスと笑う折本。こういうところは中学のときから変わっていないと思う。まあそれほど仲が良かった訳ではないけれど。

 

「じゃあそろそろ帰ろっか。ありがとね、付き合ってもらって」

 

会計を済ませて外に出て、さっきの女子中学生がいないかと見てみたがやはりいなかった。まあ見かけてから時間が経っているためいるはずもない。

そもそも見間違いの可能性もある。ただの気のせいだ。

 

「比企谷ー」

「なんだ?」

「一色ちゃんと進展あったら教えてね。ちょー面白そーだし」

 

面白い話を期待されても困る。

 

「折本」

「なにー?」

 

歩き出していた折本を最後呼び止めた。振り返る折本のふわふわとした髪が揺れる。

 

「俺に恋愛の話を期待するのは間違ってるぞー」

「それあるー!」

 

クスっと笑ってそう言われた。

 

 

 




折本のキャラソン聞いた時笑っちゃいました。
めちゃくちゃ折本って感じがしました。

感想・評価などお待ちしています。
でわでわ。

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