現在は夜の22時、昼間はサーヴァントを探すことが不可能なサーヴァントであるバーサーカーの時間だ。
彼は今、この街にある大きなビル街のビルの一つにいる。
「さて、それじゃあ行きますか!」
彼は、昼間はバイトの所為でサーヴァントを探す事は叶わない。なので、人気も少なくなってきて動きやすくなったこの時間が活動に適していると言えるだろう。
「まずはどこに行くかね?強そうなのが見つかると良いんだがな」
故に、この夜というのは彼の時間なのだ。
「(ねぇ、バーサーカー)」
「ん?なんだよ)」
「(今日の夕飯の味付け少し濃かったよ。明日はもうちょっと薄めにして)」
「文句つけるくらいなら自分で作れよ…てかそんな事の為に念話して来たのかよ!」
自らの工房に籠っているマスターからの返答は無い。ガン無視だ。
「はあ、ったくよぉ。疲れるったらありゃしねぇ」
そう呟きながら彼は街の音や雰囲気に集中する。
「北には…いなさそうだな。南…も無いな。東は…お?こりゃ馬の足音か?よし、東だな」
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「そろそろだな…よし!到着っと!」
彼は馬の足音の方へ向く。そこには馬に乗った一人の騎士が居た。
「む、貴方は!アイルランドの光の御子!クー・フーリン!」
「なに?俺を知っているだと?
てめえ…………一体なにもんだ?俺はてめえみてぇな奴は知らねえぞ…………?」
「なんですって?私がわからないのですか?」
「あん?その声…どっかで聞いたな…
って、てめえはあの坊主のセイバーか!随分と変わったな!それともそっちがてめえの最後の姿か?」
「ええ、セイバーの時とは変わったかもしれません」
「まあ、なんでもいいわ!それより、サッサと始めようぜ!本気の殺し合いをよ!」
「ええ、良いでしょう。全力を以ってして向かって来るがいい………!」
「ああ、行くぜ。気をつけろよ?一瞬でミンチにならないようになぁ!」
バーサーカーは、それだけ言い残すと驚くべき変貌を遂げた。
筋肉ははち切れんばかりに膨張し、
青い髪は獣の様に逆立ち、
口内にみえる歯は野獣の牙の様に伸びた。
「ッ!?この変貌ぶり、一体なにが!?」
「■■■■■■■■■■■■■!!」
「まさか!貴方はバーサーカーで召喚されているのか!?」
「■■■■!!」
条件狂化。彼のスキルの中の一つで、もっとも癖の強いスキル。
彼の場合、発動条件は戦闘が始まったと彼が認識した時点で、その狂化が発動するスキルだ。
狂化されたバーサーカーは「クランの猛犬」の名に相応しい姿に変わる。
「くッ!」
「■■■■■■■!」
ガキンガキンと槍同士かぶつかる音が夜の街中に響く。
表裏を繋ぎ止める聖槍と
因果逆転の呪いの魔槍。
最強クラスの槍同士が共通の目的の為に振るわれる。
ランサーのクラスを以ってして現界する者は大抵の場合は宝具頼み、又は己の技術に頼るなど偏った召喚の仕方をされる者が多い。
現に、第四次聖杯戦争のランサーは技術は所属する騎士団の中でもトップクラスだったが、その宝具の火力は圧倒的に他のサーヴァントに劣っていた。
逆に、今回の聖杯戦争でキャスターとして参加しているサーヴァント、カルナは槍の技術は高いが、それでもその消費魔力の量から制限を掛けざるを得なかった。
第五次聖杯戦争のランサーだったクー・フーリンは例外だったが、
今回の聖杯戦争のランサーである彼女もその例外の内の一人で、相当な技術と他を圧倒する宝具がある。
「はあ!!」
「■■■!」
槍を細かく突き出す。およそ、30ほどだろうか?
ランサーの持つ槍は大型だ。それをこれほどまでに細かく扱える者はなかなかいないだろう。
しかし、バーサーカーはそれを朱槍を使い全てを捌き切ってしまう。
「なんという反応の速さ…!どんな攻撃をしても防がれてしまう!」
「■■■■■■■!!」
その程度か?どんどん来やがれと言わんばかりの挑発的な叫び声を上げる。
「ふっ!せい!」
いくら突いても受け流されてしまう。その反応速度はまさに野獣だ。
そして、それに付け加えてあまりにも槍の技術の差があり過ぎる。幾ら高い技術があっても、経験の差は物を言う。
元々剣の英雄だったアーサー王では、槍使いとして最高クラスの知名度を誇るクー・フーリンには敵わない。
「■■■■!」
「くッ!このままでは埒があかない!ここは一気に畳み掛ける!」
消耗し切り、攻め込まれる事を恐れたランサーの聖槍に魔力が蓄積されて行く。凄まじい量の魔力が。
「光の御子よ!受けるがいい!!」
魔力が一気に放出される。そしてその魔力は、敵を貫き抉る魔力の槍と化し、バーサーカーを襲う。……筈だった。
「ッ!!■■■■■■■ッ!!」
獣の直感と言っても良いだろう。理性を棄てると言う事は、その身を獣とする事だ。それ故に働いた直感が告げるーーーーー、
ーーーー殺される、と。
その殺気に気づいたバーサーカーは回避行動では無く、迎撃する事を選んだ。槍はそのリーチの分、他の武器より守る事を得意とする。
そして、相手が何者であろうとその絶対的なリーチと、獣になろうとも損なわれない圧倒的な技術があるからだ。
「ふんっ!」
その予感は的中した。次の瞬間、バーサーカーが突き出した槍が何も無いところで、弾かれたのだ。
「■■■■■■■■!!」
「ほう、儂の攻撃を予知したのか?面白い。やはり戦いとはこうあるべきだ!」
槍が弾かれた原因は、中華服を着た武人だった。
「■■■■■!」
「フン!」
バーサーカーが襲いかかるがそれを簡単にいなして見せる。
「おぬしの槍もなかなかなものよ。叶わぬ願いだとは思うがお互いランサーの姿で手合わせ願いたいものよな!」
「そんな!?彼の槍をああも簡単に!?」
「次はこちらから行くぞ?」
「く!先に仕掛けてしまえば!」
再度、ランサーの槍が魔力に包まれる。
「ほほう、この魔力量。流石にこの威力をまともに受けたら無事では済まなさそうだな。では、こう行くかの」
男はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
次の瞬間、スッと男の姿が消えた。
「消えた!?気配すら消すこの隠密性…奴はアサシンか!」
すると、バーサーカーが投擲の構えをとった。
しんとした静寂が当たりを包み込む。その中でもっとも最初に動いたのは、バーサーカーだった。
「■■■■■■!!」
ビュン!
と、バーサーカーはランサーに向けて槍を投げる。
「くっ!」
避けられて止まる方法を失った槍は、ランサーの裏の壁に激突…しなかった。
槍はガキン!という音を発し、別の方向に飛ばされた。そして、空中で軌道を変えバーサーカーの手中に収まった。
「そこか!はあ!」
「チッ!分が悪いか!」
そう吐き捨てるようにして、アサシンはまた消えて去っていった。
「アサシンはなんとか撃退出来ましたが、魔力を随分と使ってしまった…ここは私も一旦引くのが良いですね」
「■■■■■■■■!」
「すみません。貴方の相手はまた次の機会にさせていただきます。」
「■■■■■■■■!」
「はあ!|風王鉄槌≪ストライク・エア≫!!」
強烈な突風がバーサーカーの体を包む。これは恐らく、彼でなければ吹き飛ばされてしまう事だろう。
「■■■■!!」
バーサーカーが怯んだ隙に、ランサーは馬を走らせて去っていった。
バーサーカー陣営
「ふう、終わったか。それにしてもあいつがまた出てきてんのか。それに途中で割り込んできた奴、あれでアサシンだと?冗談じゃねえ。ありゃマジモンでヤバイやつだぜ」
「(ふーん。でもなんか楽しそうだよね、あんた)」
やっと口を出し始めた自らのマスターにその顔に浮かべた笑みを指摘される。
「そりゃそうだ。なんたって俺の望みは強者と戦う事だけだからな」
戦闘の後には狂化が解け、理性を取り戻したバーサーカーだけが残されていた。
んん?今回は字数が多いぞ?
という訳で、今回はfateを代表する名シーン「問おう、貴方が私のマスターか?」が生まれたあの夜の続きです。
いや、あの日以外にも戦ったっけ?もしかしたら忘れてるだけかも………