息抜き短編小説集   作:コクマルガラス

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原作10巻ラストから続くIFストーリー的な何か

尚、千冬に対する評価は最悪の模様


決別の旅(IS×コズミックブレイクシリーズ)
全ては答えの為に


「はぁ……」

 

ゴロンとIS学園の寮に備え付けられたベットに横になる一夏。

一夏の脳裏にはショッピングセンターで遭遇した亡国機業エージェント『スコール・ミューゼル』の言葉が木霊していた。

 

『織斑千冬には気をつけなさい。それと、倉持技研の動きにも』

 

「どういう事なんだ……」

 

ドラマ等でよくある仲間割れを誘う一言。

それは、対象となるモノに疑惑があればあるほど効果的。

悲しいかな、一夏には千冬に対してある種の疑惑のようなモノが渦巻いていた。

 

小学校一年以前の記憶が無い一夏。

過去を調べようにも、過去を知る人や過去の写真等が見つからなければわかる筈もない。

 

それだけではない。

一夏に与えられた専用機『白式』はかつて千冬が使っていたIS『暮桜』の発展機。

しかし、今の一夏にはこの機体を満足に扱える自信がなかった。

一言でいえば、ピーキー過ぎるのだ。

武装は刀一本、後にクローとプラズマキャノンが追加されたが、バランスの悪さは現在確認されているISの中でもトップという有様。

挙句の果てに防御の要ともいうべきシールドエネルギーを消費して相手のシールドバリアを無力化する特殊兵装『零落白夜』が機体の拡張領域を食い潰しているせいで予備の兵装を搭載できないという始末。

千冬は『お前ならば使いこなせる』と言ったが、この機体を使っての戦闘における勝率はお世辞にも高くない。

負けた回数よりも勝った回数を数えた方が早い位だ。

一応勝たなければならない戦いには勝ってはいるが……。

 

そして……

 

「M……織斑マドカ……アイツは一体何者だ」

 

キャノンボール・ファスト、修学旅行と襲撃を仕掛けてきた千冬似の少女。

一夏には心当たりがなかった。

 

何故恨まれるのか、殺意を向けられるのか、一夏には理解できなかった。

そして、千冬はあの少女の事を知っている。

一夏にはそう感じられた。

 

他にも色々あるが、少なくとも今の一夏には姉である千冬を無条件に信じる事はできない。

今までが、異常だったのだ。

一夏は、無条件に千冬を信じ過ぎていた。

 

ISの知識の習得を禁じられた時も、『決闘』の時も、修学旅行の時も……

 

だが、今は彼女を信じるしかなかった。

たった一人の身内である、姉を。

 

パラリ……

 

紙のようなモノが落ちる音に気付き、一夏が起き上がる。

音の発生源はテーブルの上に置かれた一枚のチラシだった。

だが……

 

「何でこんな所に?」

 

一夏にはそのチラシについて心当たりが無かった。

几帳面で、綺麗好き……というか下手な女性よりも家庭的且つ家事万能なこの男がチラシ一枚を片付け忘れることがまずありえないし、一夏自身、こんな所にチラシを置いた記憶が無い。

『どっかから飛んできたのか』と思いながらチラシを手に取り、そして驚愕した。

 

「これは……」

 

チラシに書いてあることは荒唐無稽と言わんばかりの物ばかり。

イタズラやドッキリの可能性の方が高い位に。

だが……

 

「これは……もしかしたら……」

 

一夏には書かれている事がホンモノであるように感じられた。

意を決してチラシに書かれている電話番号に電話を掛ける一夏。

 

数分後、電話を終えた一夏の表情は確信に満ちたモノになっていた。

 

 

 

『最近嫁こと一夏の様子がおかしい』

 

そう思うのはドイツの代表候補生『ラウラ・ボーデヴィッヒ』だ。

常日頃から一夏を嫁にすると公言する彼女だが、当の一夏からは娘のような存在にしか思われていなかったりするのだが……。

そんなラウラが一夏の異変に気付いたのは単純明快。

 

常日頃から技術の無駄遣いと言わんばかりにISのハイパーセンサーを使い一夏を観察していたのだ。

 

バレれば担任である千冬から岩斬両斬波を叩きこまれるというのに無茶をする子である。

が、しかし今回はこれが功を奏した。

 

(あれは浮かれているのだろう……が、何に浮かれているんだ?)

 

一夏の左手が開いたり閉じたりを繰り返している、それも毎日。

これは、一夏が浮かれている時の癖みたいなもので、千冬は勿論の事、今ではクラスメイト達も知る事実。

知らぬは本人のみといった所だ。

しかしだ、ラウラには一夏が浮かれている理由がわからない。

だから……

 

(少し、調べてみる必要があるな……)

 

 

 

「………………」

「………………」

 

一夏の周辺を調べるようになってから数日、ラウラは同じく一夏の周りを調べている者と出くわした。

 

「貴女も一夏の事を調べてるの」

「当然だ、嫁の事を調べて何が悪い」

 

キッパリと断言するラウラ。

そんなラウラを『更識簪』はジト目で見つめていた。

 

「お前が調べているという事は、他の皆も調べているのか」

「いや、気付いてすらいない。あれだけわかりやすい異変、なんで気付かないんだろう」

 

ため息を吐く簪。

そんな簪にラウラが問う。

 

「何故教えないんだ?」

「教えたら、多分一夏に気付かれるよ。私達が探りを入れてるって事を」

「確かにそうだな……」

 

暗部の家の生まれらしい答えに同意するラウラ。

ラウラ自身、言わなかったのはただ単にシャルを初めとしたライバルに差を付けようとしただけだったので、簪の回答には少しだけ驚いていたのだが。

 

「で、どうする」

「何が?」

「私の見立てでは、一夏は何かをしようとしている」

「うん、それは私にもわかる」

 

ラウラの言葉に同意する簪。

 

「でも、一夏が何をしようとしているのかがわからない」

「そうだね」

「だったら……」

「うん……」

 

ガシリと握手を交わす二人。

この日、一つの同盟が結成された。

 

そして、『運命の日』は唐突にやってきた……

 

 

 

「行こうか、シャイニィ」

「ニャッ!」

 

殆どの生徒たちが寝ている真夜中に、電気の消えた廊下に出た一夏。

大きなリュックサックを背負い、正面玄関ではなく、非常口から寮の外へと出ていく。

下見は済ませた。

どう動き、どの道を通ればいいのか、既に頭の中に入っている。

向かった先は、ISの整備室。

そこには練習機だけではなく、専用機の予備パーツや換装パーツが保管されている。

一夏のお目当ては、とある機体のパーツだった。

 

「コールド・ブラッドとヘル・ハウンド……事前に封印が解けてよかった」

 

修学旅行の下見を隠れ蓑にしたとある作戦の際、学園を裏切った二人の機体のパーツ。

その後、二人の機体のパーツは厳重に封印されて保管されていたのだ。

それを一夏は解いた。

織斑千冬の名を使って。

 

「千冬姉の事を信頼してるからって、ザル過ぎるだろ、オイ……」

 

簡単な事だった。

施設を管理していた教師に「織斑先生からの極秘命令だ」と告げて、二機のパーツの封印を解いてもらった、ただそれだけ。

一夏が『千冬の弟』というのもあるし、彼女が有事の際の陣頭指揮を取る立場であったのあるし、何よりも教員たちの間で千冬を神格化している節があったからこそ出来た事。

それに伴い、千冬からの指示だと偽って施設からの人払いも済ませてある。

 

この事がバレれば一夏の評判は落ちるだろうし、最悪犯罪者として扱われるだろう。

だが、一夏には関係なかった。

 

これから『消える』のだから、他者の評価を気にする必要はない。

そういう事なのだ。

 

二機のパーツが納められたコンテナを運搬用台車に乗せる一夏。

 

「欲を言えば他の機体パーツも持っていければいいんだがな……流石に無理か」

「持って行っていいぞ、私達も手伝おう」

「そうか、じゃあ手伝ってえええええっ!?」

 

驚いた、マジで驚いた。

何せ一夏の後ろには本来いる筈のない人物達がいたのだから。

 

「何故ラウラと簪がここにいるんだ!?」

「一夏の動きが怪しかったから尾行してた」

「同感」

 

一夏の疑問にあっさり答える二人。

よく見ると二人も一夏と同じように大きなリュックサックを背負っていた。

二人の問いと装備に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる一夏。

 

「……何時から気付いてた」

「「割と前から」」

「マジか……」

 

項垂れる一夏。

そりゃそうだ、気付かれないと思ってたから。

 

「急いでるのだろう、早く積み込むぞ」

 

ラウラと簪がISを展開、他の専用機のパーツが納められたコンテナを持ってきた運搬用台車に載せていく。

 

「お前ら、バレたらどうなるのかわかってるのか!?」

「大丈夫、私達も一緒についていくから。だから荷造りしてたんでしょ」

部隊(黒ウサギ隊)(ドイツ)には報告して許可を貰ってるから問題ない」

「そうか、一緒に行くの……ハイ?」

 

二人の問いに唖然とする一夏。

 

「マテ、今何と?」

「「一緒に行くと言った」」

「……何故知ってる、というか正気か?」

「何をいまさら」

「置いていくと言ったら」

「人を呼ぶ」

「…………ぐっ」

 

本気なのだろう、二人の眼には決意が宿っていた。

説得は無理と早々に諦めた一夏。

 

「言っとくが、どうなっても知らんぞ」

「構わんさ、何せ一夏は私の嫁なのだから」

「私は何があっても一夏についていくよ。後ラウラ、いい加減日本語覚えよう」

「簪、ラウラに言っても無駄だ」

 

一夏の微妙に疲れたような声が整備室に木霊した。

 

 

 

最終的にIS学園に存在する専用機の予備パーツ・換装パーツ、ついでに幾つかの武器をごっそり持っていく事になった。

一夏の意図を知ったラウラが全ての機体パーツを持っていく事を提案したのだ。

 

『この際色々と試してみるのも面白いだろう。私も色々と試してみたくなったから』

 

結果として『ヘル・ハウンド』『コールド・ブラッド』だけではなく『ブルー・ティアーズ』『神龍』『ラファール・リヴァイヴ・カスタムII』『シュヴァルツィア・レーゲン』『打鉄弐式』『ミステリアス・レイディ』『ラファール・リヴァイヴ・スペシャル』のパーツまで持っていくという凄まじい事になったが……。

尚、『紅椿』のパーツは無い。

何故か整備室になかったのだ。

 

これは一夏も『紅椿』の持ち主である篠ノ之箒も知らない事だが、『紅椿』のパーツは機体の重要性等からIS学園の機密区画に保管されているからである。

 

「合計12個のコンテナか……コレ、持っていけるの」

「あぁ、『電話』で大型コンテナ20個はイケるって言ってたから」

「一体なにで迎えにくるの?明らかに大型輸送機じゃないと無理だよね」

「俺も知らないんだ。ただ『じゃあ学園のグラウンドで待っててください』と言われただけでなにで来るかは聞かされてないんだ」

 

夜のグラウンドにコンテナ12個と共に待つ三人。

季節が季節なので結構寒い。

 

「2時半……もうすぐ時間だな」

 

2時40分出発と聞かされていた一夏。

予定まで後10分である。

その時である。

 

プシュプシュ……

カタンカタン……

 

「この音……」

「SL……だよな……」

「おい、あれを見ろ!」

 

一夏がある一点を指さす。

そこには、光を灯しながら近づくSLがあった。

 

「馬鹿な……SLが飛ぶなんて……」

「オイオイ……銀河鉄道かよ……」

 

汽車が飛んでくるという異常な光景に混乱するラウラと昔読んだ童話のタイトルに例える一夏。

その間にも汽車は近づき、遂に客室にあたる部分が一夏達の前に停車。

客室から一人の男性が下りてきた。

 

「織斑一夏様と猫のシャイニィですね」

「は、はい、そうですが……」

「ニャッ」

「で、そちらの方々は……」

「「連れだ(です)」」

 

車長と思われる男性の問いに答える三人+一匹。

 

「すみません、色々とあって増えてしまって……」

 

頭を下げる一夏。

元々一人+一匹だけの予定であり、ラウラと簪が来る予定はなかったのだ。

しかし……

 

「構いませんよ、こうなる事は予想済です」

「えっ、予想済って一体……」

「企業秘密です。で、そちらが荷物ですね、貨物室にお運びいたしますので皆様はどうぞこちらへ」

 

男性の後をついていく三人。

ふと、一夏が背後を振り向くと、いつの間にかコンテナは無くなっていた。

 

(SLを飛ばすんだ、あれだけの荷物を一瞬で運ぶのは朝飯前という訳か……)

 

あっさり納得する一夏。

順応性高過ぎである。

 

「中、広いんだな」

「圧縮空間技術により、見た目以上に広いのですよ、銀河鉄道は」

「マジで銀河鉄道なのかよ……」

 

ラウラの問いに答える男性。

そして苦笑いの一夏。

男性の言う通り、SL……銀河鉄道の中はとても広く、ホテルのワンフロアと言われれば納得してしまいそうな作りになっていた。

 

「皆様のお部屋はこちらになります」

「男女一緒……いや、仕方ないか……」

 

案内された部屋はテーブルを挟む形で二段ベッドが設置された部屋だった。

 

「何かありましたらテーブル備え付けのボタンを押してください。それでは、良い旅を」

 

律儀にお辞儀をして去っていく男性。

残された一夏達は……

 

「とりあえず、部屋入るか」

「あぁ……」

「うん……」

 

 

2時40分、出発の時刻となった。

 

「出発する……」

 

ガタンガタンという音と共に動き出す銀河鉄道。

徐々に高度を上げ始め、もう成層圏。

 

「本当に空を飛んでいるんだ……」

「あぁ……」

「もう学園が……日本が小さく……」

 

ISで空を飛んでいる時とはまた違った趣が銀河鉄道にはあった。

 

「一夏、私達の向かう先は……」

「あぁ、終着点は………………………、俺の存在意義を、真実を教えてくれるモノがある場所だ」

「そして、強くなれるという訳か」

 

既に銀河鉄道は大気圏を抜け、今は地球の周りを回っている状態だ。

 

「これは『決別の旅』、真実を、意味を知る為の旅だ」

「ついていくよ、一夏」

「嫁を助けるのは当然の事だからな」

「にゃ~ん」

 

『これより最終乗車地・地球を離れ、終着・………………………へと向かいます。皆様、良い旅をお楽しみください』

 

アナウンスと共に一夏達を乗せた銀河鉄道が地球を離れていく。

今まで誰かの敷いたレールを走っていた一夏が、初めて自分の意志で道を決め進む事を決めた日。

道連れは二人と一匹。

 

彼等の『旅』の結末は、誰も知らない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し、未来の話をしよう。

 

「一夏さんとラウラさん、簪さんはどこへ消えたのでしょうか」

「こんなことあり得ない。まるで神隠しじゃないの」

 

行方不明になった一夏、ラウラ、簪。

同時に消えたISの部品。

誘拐されたのか、それとも脱走したのか。

何せ情報が残ってないのだから。

 

ただ、一つだけわかる事がある。

それは、彼等三人が地球上に存在しないという事だけである。

何せ、篠ノ之束ですら見つけられないのだから。

 

「何故、私達を置いていったんだ、一夏。何故、あの二人なんだ……」

 

一夏達が三人が行方不明になってから程なく織斑千冬は学園を退職。

入れ替わるようにしてアリーシャ・ジョセスターフが千冬の後任に就いた。

実は彼女、千冬と戦いたいが為だけに亡国機業に所属したのだが、何故か抜けてIS学園の教職に収まったのだ。

その事実を割とあっさり本人が暴露し、結果IS学園は混乱の坩堝に叩き落とされたが。

本人曰く『所属する必要がなくなったから』との事らしい。

同時に『千冬とは交戦していない』とも言った。

一体何があったのか、その答えはある事件を機に明らかになるのだが、今はまだ知る由もなかった……。




原作の時点で千冬って結構疑わしいんですよね

尚、一夏達の向かった先は秘密(作中にちょっとだけヒント入れてます)
もう一つのヒント→ケルト語で「白い」「青白い」「明るい」


書いた理由
久々に銀河鉄道の夜とドラえもん のび太と銀河超特急を見たから
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