俺のヒーローアカデミア?   作:マスカット

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第3話 個性把握テスト!

 第一種目:50メートル走

 

「個性の創意工夫(そういくふう)が大事なのは分かるけど、これはやっぱスピード型の個性が有利だよな」

「それでも、中学の時よりかはいい結果ださないと恥ずかしいよ」

 

 二人一組で次々に記録を図っていく。時短の番は最後の方に位置付けていた。

 他の生徒の姿を見ながら、時短は入念な準備運動をしては、他の生徒の個性の分析を行っていた。

 

(足場を個性で弾力のある硬度で空気を固めて、その上を走る!)

 

 円場硬成(つぶらば こうせい) 中学6:12➡5:33

 

「おし!行けた!」

 

 小大唯(こだい ゆい) 中学7:24➡7:01

 

「ん」

 

 各自、自分の結果を個性と照らし合わせながら、何ができるのかを把握しようと励む。

 段々と順番が回るなか、次の走者に時短の因縁(いんねん)の相手である鉄哲(てつてつ)へと回って来た。鉄哲は時短に一瞥(いちべつ)くれてからスタートラインの前へと移動する。

 時短からすればどんな個性を持っているのか分かる時だ。

 

「見てろよォ!!」

 

 そういって駆け出した鉄哲は個性を発動させた。両手が何やら光沢(こうたく)のあるものに変わり、腕の振る速度が加速する。それに伴い、駆けるスピードもわずかに上昇した。

 鉄哲徹鐵の個性‘スティール’により両腕を鋼鉄化(こうてつか)して、その遠心力により走る速度が速くなったのだ。そんな鉄哲の個性を見て、時短は脅威(きょうい)だと思う前に

 

「カチカチとだだ被りじゃねーかはははは!!」

「なっ!!??」

 

 爆笑していた。

 

 鉄哲徹鐵(てつてつ てつてつ) 中学6:02➡5:21

 

 時短は自分の番が来た時になっても、笑いを(こら)えていた。

 

「カチカチと同じ・・・ッ・・ぶ!・・かはは!」

「お前よぅ!!何が可笑しくて笑ってんだコラ!!?」

 

 意味の分からない時短の笑いに、鉄哲は怒りの矛を向ける。が、時短は深呼吸をしながら必死に笑いを抑えると、薄笑いを向けながら鉄哲に言い放つ。

 

「いや、わりぃわりぃ。だけどこれは俺の勝ちだわ」

「んだとォ??」

 

 時短はスタート地点で走る構えも取らずにただ突っ立て、開始の合図を待つだけ。

 そしてスタートの合図が聞こえた瞬間に、時短は個性を発動させた。

 

―――50mを走り切るまでの一連の流れを‘短縮’―――

 

 時短の個性は実際に走る速度が上昇する訳ではないが、映画をスキップするように、傍からすればそれまでの間が飛ばされている。即ち、時間を計測する競技において、時短の右に出るものはいない。

 

『ピッ・・・0秒38!』

 

 ゴール地点の計測器が表した結果は、クラスメート全員を驚かせるには充分だった。

 

「あいつ一秒切ったぞ!!?すげぇ!!全く見えなかった」

「スピード型の個性でも速すぎだぜ!何なんだあいつ!?」

 

 時短は喝采(かっさい)の中一息つくと、ニタァと不敵な笑みを鉄哲へと向けた。存分に勝ち誇ったと言わしめんばかりの表情を、鉄哲は歯噛みしながら睨みつける。

 

「凄いね君。良かったら僕と友達にならないかい?」

 

 一人の青年がそう言いつつ時短の元へと歩み寄ってきた。時短は右手を差し出す彼を見て、今しがたトップの記録をたたき出した自分に感銘(かんめい)したんだろうと決めつける。人間凄い奴とほどつるみたがるもんだと思案した時短は、特に気にせず彼の手を握り返す。

 

「いいぜ。俺は時短拓未(じたん たくみ)。お前は?」

「僕は物真寧人(ものま ねいと)。よろしく頼むよ」

 

 入学してから初めての友達が出来たと、時短は結構幸先(さいさき)の良い高校生活ではないか、などとまたニタリとほくそ笑む。

 そんな笑顔が、すぐさま崩れ去るとは、時短も他の生徒もこの時は知る由もない。

 

 

 50m走も残りわずか。後一組となったところ、走者は先ほど時短と友達として握手を交わした物真と、席が時短の右隣である拳藤。

 

「お前ら頑張れよ。まぁ俺の記録を抜くのは無理だろうけど」

「一言多いんだよあんた。だからあいつと衝突してんのよ」

 

 時短の掛け声に苦言を(てい)す拳藤。とはいえ、時短が言うことも事実。誰もが時短の記録を抜くことは不可能だと思っていた。―――ただ一人を除いてか。

 

「あんまし人を舐めてると、足元(すく)われるよ」

「ん?」

 

 物真の不意打ちざまの一言に、時短はどういうことかを聞きそびえる。

 が、その言葉の意味はすぐに知ることとなった。

 

「スタート!」

 

 スッ

 

 全員が驚愕(きょうがく)していた。さきほどの時短の結果が出た時か、それ以上に。時短も信じられないものを見たかのように固まった。

 

『ピッ・・・0秒52!』

 

 感情の無い機械音声だけがそれぞれの耳に届いた。その結果をもたらした人物が一つ息を吐くと、それまで静寂(せいじゃく)だった空間に大きな声がこだまする。

 

「うおおおお!!また0秒台が出たぞ!!」

「何なんだこのクラスは!!?」

 

 またしてもクラス全体から称賛(しょうさん)の嵐が吹き荒れた。

 

「ちっ!あいつと似たような個性かよ!」

 

 そう苛立つ鉄哲だったが、いざ時短の方に視線を向けてみると、そこには鬼のような形相(ぎょうそう)で物真を睨みつける姿があった。

 ゾクり。鉄哲は自分に対してとは比較(ひかく)にならない怒気を帯びた時短に、得体の知れない何かを感じた。

 

「へぇ、思ってたより良い個性してるね。これは使えそうだ」

「・・・てめぇ・・!!俺の個性を、使ったな・・・!!」

「!?・・ああ。まぁバカでも気づくよね。僕の個性は‘コピー’。人の個性を一時的に使える力さ」

 

 時短は個性を使用して、一瞬で物真との間合いを詰めると、いきなり胸ぐらを掴んだ。その勢いや今にも殴り掛かりそうなほど壮烈(そうれつ)で、触れれば切れそうなぐらいの威圧感を放つ。

 

「あんたまた突っかかって・・・!止めなってほんと・・・」

「うるせぇ!!次それ使ってみろ!!半殺しじゃ済まねぇからなッ・・・!!」

「何に対してキレてんだよ!とにかくやめろって!」

 

 遅れてゴールした拳藤が、すぐに二人を割って入るものの、時短の怒りは収まらない。何がそんなに許せなかったのか、その理由が分かる前に担任のブラドギンが止めに来る。

 

「二人とも、今すぐ離れろ!!じゃなきゃ減点だからな!・・・時短も、気持ちは分かるが俺は個性をどう使おうが自由だと言ったはずだ。物真のしたことはなにも違反ではない!」

 

 ブラドギンの叱りを受け、渋々(しぶしぶ)と時短は物真を開放する。それでも目だけは物真を捉えたままだ。

 物真は「そういうこと」とブラドギンの後ろ盾もあって、ひらひらと場を後にする。

 

「っ・・・!!分かってねぇんだよ!俺の個性が・・・どれだけ危険か・・・!!」

「えっ・・・?それってどういう」

 

 こと?と拳藤が言い終えるころには、時短は後ろを振り返り立ち去っていく。

 

 

 そんな不穏(ふおん)に満ちた個性把握テストも、まだ始まったばかり。

 

 

 

 

 第二種目:握力

 

「オラぁだっしゃあ!!っしゃあ超えたぞ時短!!」

「ああ、そうだな」

 

 鉄哲徹鐵 中学52kgw➡58kgw

 時短拓未 中学41kgw➡44kgw

 

(なんだいきなり!張り合いなくなって、面白くないじゃねーか!)

 

 時短はさきほどの物真とのことを引きずっているのか、ずっと考え事をしているみたいに活力がなかった。

 とはいえ、個性を使用しても単純なパワー勝負では、体格のいい鉄哲の方に軍配(ぐんぱい)が上がるのは仕方がないことだった。

 

「ふん!」

「おわスゲェ!!女子のくせに200kgw越えだ!!」

「まぁ巨大化したしね」

「怪物女だ!怪力むぼっ!!?」

 

 個性で大記録を出した拳藤に、円場が女子に対しては嬉しくない称賛をしたためか、思いっきり殴られる。

 

 

 第三種目:立ち幅跳び

 

秘儀(ひぎ)!スカイウォーク!!」

「な!?おい先生あれはいいのかよ!明らかにジャンプじゃなくて走ってるけど!?」

 

 円場が空中に足場を作り何度も跳んでいることから、立ち幅跳びという種目から逸脱してないかブラドギンに問いただす。

 

「地に足を着けてないから問題ない!」

「いいのかよ!!」

 

 雄英は既定(きてい)範疇(はんちゅう)には囚われない、自由が校風の学校である。

 

 

 第四種目:反復横跳び

 

 二人一組でペアになって、順番に互いの記録を数える方法で計測する。

 

「63回」

「・・・サンキュー」

 

 泡瀬洋雪(あわせ ようせつ)とペアを組んだ時短は、自分の番を終えて順番をチェンジする。

 未だなお浮かない顔を浮かべる時短は、泡瀬の記録をただボーっと数える作業に徹していた。そんな姿を見ていた鉄哲は、遂に我慢の限界に達した。

 記録を数え終えた時短は、二回目の自分の番へ準備しようとするが、不意に後ろから肩を掴まれる。

 

「いつまでそうしてるつもりやお前・・・!!」

「・・・てつ野郎。勝ちはお前でいいぞ」

「な・んだ・・と・・・!?いい加減にしろよ・・・!!全力を出し切ってない奴に勝っても、何の自慢にもならんわ!!俺はよぅ、本当はお前のこと結構認めてたんやぞ!!0Pの仮想敵(かそうヴィラン)を倒したって聞いて、さっきの50mそう見て、スゲェ奴やって思ってたんだ!!それなのに、今のお前・・・スゲェダサいわ!!」

 

 ズンと重く時短の心にのしかかる。

 そんなことは自分が一番分かっている。鉄哲が言わなくても自分の脆さは知っている。だが、鉄哲が言ったおかげで、時短は今までの自分を振り返るきっかけになった。

 ダサい。それは言えている。今までの自分はなんとダサかったことだろうか。確かに自分の個性を無断で使われた物真に腹を立てたのは仕方ない。それは堪え切れる範疇ではなかった。だからといって、二人の勝負には何の関係もないのだ。鉄哲の気持ちを踏みにじった自分に再度腹を立てる。

 

「離せよ」

 

 やや沈黙のあと、時短は肩に置かれた手をそういって振り払った。

 

「あのまま勝ちを甘んじれば良かったものを、お前もう勝ち目ねぇぞ?」

 

 迷いはもう吹っ切った。大胆不敵(だいたんふてき)に、いつものような眠たげな、されど生気に満ちた目が鉄哲に向けられる。

 

「ッ・・・!その意気や・・!」

 

 鉄哲もまた口角の吊り上がった不敵な笑みをぶつけた。

 

「良かったですわ。お二人が疎遠(そえん)の間柄にならなそうで」

「ま、犬猿の仲には変わりないけどね」  

 

 時短はペアである泡瀬を見ると、次に担任のブラドギンを見た。その様子に他の生徒は首を傾げるが、時短は自信満々にブラドギンへと提案した。

 

「先生、多分俺の記録一人じゃ数えきれないから、三人にしてくれ」

「三人!?つまり一つの線につき一人ってことか!?いくらなんでも舐めてるぜあいつ」

 

 クラスがどよめく。反復横跳びは20秒間。60回を超えれば凄い。70行けば大記録っていうのが普通の体力テストの感覚で、個性を使用したとしても、これまでBクラスででた最高回数が101回。その回数でも一人で計測できたのだ。時短のセリフはそれを大幅に超すということで、レベルが違うとでも言ってるようなものだ。

 

「大きくでたな時短!後で恥じかいても知らんぞ」

「数えきれませんでした、じゃあちゃんとした勝負にならねぇからな。で、どうだ先生?」

「・・・ふむ。いいだろう。誰かあと二人、時短の計測してやれ!」

 

 ブラドギンは時短の提案を了承すると、残りの計測係をクラス全体から促す。

 

「俺やってもいいぜ」

「それなら僕もやります」

 

 そう挙手したのは骨抜柔造(ほねぬき じゅうぞう)庄田二連撃(しょうだ にれんげき)だった。計測係が揃った時短は、反復横跳びの態勢に移る。

 あれだけ時短が噛ましたおかげか、他の生徒も競技を中断して注目しだす。ブラドギンはそれを(とが)めず、時短を面白そうなものでも見るかのように見つめ、タイマーを掲げた。

 

「それじゃ行くぞ」

「ああ。全力で行く」

 

 そしてこの後の20秒間に起こった出来事は、クラス中が時短の実力を認めるには充分なほどの衝撃だった。

 

 

 

「よ、よんひゃく・・さんじゅう、ご?」

 

 庄田が信じられないといった感じで、計測結果を口にした。

 

「あいつマジかよ、残像が残ってたぞ・・・」

「三人いても数えきれなかった。多分あいつの結果はもっといっていたはずだ」

 

 骨抜が更に全員を驚かす発言をするなか、当の本人は膝に手をついて荒い呼吸をあげていた。約450回程度の横っ飛びを行ったおかげで、体力の消耗ぶりが芳しくなかったのだ。

 ほとんどの生徒が、時短をある意味短絡的に褒めるだけだったが、後方から眺めていた物真は違った。

 

(今のは、個性の連続使用の結果かな。彼の個性を使って分かったけど、一纏めで個性を使ったら、傍から見れば彼が一瞬消えて、何故か疲れた彼が現れるって感じになった筈だ。つまり、彼は一回ごとに個性を―――400回以上続けて行ったってことになる)

 

 そう分析していた。そして、例えまた個性で時短の個性をコピーしたとしても、同じような結果にはならないであろうことも物真は悟る。

 

(50m走での彼と僕の記録の差は、スタートの合図から個性を使用するまでの反射力も加味されてるんだろうけど、長年連れ添った個性と付け焼刃の個性では、個性の熟練度(じゅくれんど)が全く違う。単発の難易度が低い使用方なら別として、あれほど刹那的(せつなてき)な個性の使い方はいくらなんでも真似できない)

 

 個性の差ではなく、扱う人間の技術力の違いが浮き彫りになった形だった。物真は自分の個性の一つの欠点を確信する。そしてそれを補うには、自分の自己強化が何より不可欠であると、思慮(しりょ)深い頭脳が導き出した。それを気づかせてくれた時短には心の中でだが、捻くれたなりにもお礼を言う。

 

(これで分かった。僕が今より強くなるには、どんな個性も使いこなして見せる屈強(くっきょう)な体。それとこのテストの前提である個性の創意工夫。人の個性を、その人間よりも理解して柔軟(じゅうなん)な発想力と機転だ)

 

 物真の考えは殆どが真っ当な答えであったが、皮肉にも時短がこの結果をたたき出せたのは、物真が己の課題としてあげている個性の理解度による創意工夫によるものであった。

 時短は反復横跳びを行うに際し、ある秘術を使っていた。それも使うのも数年ぶりの、故に時短も本当の本気であったという証拠にもなる個性の裏ワザ。

 

(‘思考の短縮’!考えるという、無駄な時間を省くことで反射力や判断力を底上げする。ただ、使った後の半端ない頭痛と眠気に襲われるから、できれば使いたくないんだよな・・・)

 

 時短がここまで疲れているのも、激しい運動に加え術後の反動があるからである。

 体力の回復に意識を向ける時短だが、それをほっといてくれない人物が近づいてくる。それでも無下に追い返さない辺り、時短の意識はさっきの一幕で変わったのであろう。

 

「やっぱそうこなくちゃなぁ時短!俺も負けていられねぇ!!」

 

 バシンと背中を叩いてくる鉄哲。時短は今の状況から勘弁願いたかったが、そんなことは鉄哲には知り様がないことだ。せめて弱みを見せないように軽口を返す。

 

「無理だ無理。鉄哲ごときに俺が負けるかよ。諦めろ」

「はいはい喧嘩は後にしな。残りつっかえてんだから次行くよ」

「・・・お前、俺の姉より姉らしいな。俺の姉と代わらない?」

「あんたみたいな問題児弟にはいらないっての。あたしはもっと可愛くて無邪気で、お姉ちゃんの言うことは何でも聞いてくれるような、姉思いの・・・ってなに言わせてんだよ!」

 

 バチン!

 

「理不尽すぎる!!」

 

 拳藤の容赦ない一撃が、疲労と頭痛で反応が鈍った顔にクリーンヒット。度重なった苦痛に思わず意識を手放そうになる時短。

 そんな白熱する個性把握テストも半分を折り返した。

 

 

 

 第五種目:ボール投げ

 

(やっぱ単純なパワー勝負だと俺の個性活かせねぇよな。ここんとこはどうしようもないか)

 

 時短拓未 中学52m➡55m

 

 時短は奥の手による眠気と頭痛から何とか回復してみせた。全快とまでは言えないが、それでも競技に影響が出るほどではなくなった。

 ひとまず一安心の時短だが、無茶な個性の使用で今日だけでどれだけ寿命が縮まったかを考えると、気持ちが落ち込むのは仕方なかった。らしくない、とは思うもののまだ若いから大丈夫と言い聞かせる。ヒーローになったらデメリットを考慮した上でやらなければならない時もくるだろう。せめて大金を稼ぐまでの辛抱だ。

 

「ホーーームラン!!!」

 

 カキーン

 

「なっ!?待て待てそれボール投げじゃねーだろ!!」

「はっ!円の中なら何してもいいってルールだぜ。なーんも間違ったことしてないけど?」

「なるほどそういう個性の使い方もありなのですか」

 

 鉄哲が鋼鉄化した腕を勢いよく振りかぶり、野球の要領でボールをかっ飛ばす。

 時短は思わず突っ込むが、鉄哲は堂々とした素振りで言い返してくる。おまけに人が良さそうな塩崎までもが味方についたことで、ぐぬぬと時短は言葉を飲み込む。

 やはり時短と鉄哲はウマが合わなそうだった。

 

 

 その後の競技も無事に終えた彼らは、ブラドギンによって一つに集まっていた。

 

「うむ。皆己の個性をよく理解していたように感じた。だが、まだまだ伸びしろがあるな。もっと創意工夫をこなせば更に結果を伸ばすことができるだろう。とはいえ、今回のテストはあくまで指標。実際のヒーロー活動は思ったようにことが運ばないのがほとんどだ。事故や災害はどこでいつ起こるか分からない。凶悪な敵は無慈悲(むじひ)かつ無差別に悪を振りまくだろう。それにどう対処するか、その為の自分を推し量るテストだ。長々と喋ったが、ようはヒーローに必要なのは考えることだ。考えて考えて考え抜け。思考を放棄(ほうき)した瞬間に、お前らのヒーローへの道は閉ざされるからな」

 

 そういい終え、テストの順位結果を皆に公表する。順位は全競技の評点を合計した数だ。

 

「なっ!?」

「おし」

 

 テストの結果、時短は二位で鉄哲は四位と勝負は時短の勝利という形に終った。鉄哲は悔しそうに地面に手をつける。

 時短は嬉しそうに満足はするが、鉄哲に対しては意外にも内心敬意を表していた。

 

(50m、反復横跳び、持久走、上体起こし。半分の競技で俺の個性は独壇場だった。このテストじゃ完璧チート能力だったわけだ。鉄哲の個性とは向き不向きの点で勝ってたに過ぎない。もし純粋な対人戦だったら―――)

 

 俺が負けてただろうな。その言葉は心の中でも言えなかった。それを言うには時短のちっちゃなプライドが邪魔をした。

 鉄哲が全身を鋼鉄化した状態で迫ってきたら、時短には切り崩しようがない。鋼鉄化する前に先手必勝の不意打ちによる攻撃以外、ダメージの与えようがないからだ。

 時短も表には出さないが、鉄哲を認めていたのだ。鉄哲の悔しがる様を見て思い切り馬鹿にしていたが。

 

(一位は・・・あいつ、か。各種目ごとに優秀な奴の個性をコピーしてたからな。・・・気に食わねぇ)

 

 物真に対しての憤怒はまだ消えていない。時短の視線に気づいているのかいないのか、物真は涼しげな顔で時短には目もくれなかった。

 

「今日はこれで終わりだ。教室にカリキュラムや手帳なんかの書類が用意されてるから忘れずに。明日からはもっと大変だからな。今日は帰ってゆっくり休め」

 

 全員なにかしらの思いを胸に秘め、入学初日は無事に終了した。

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