俺のヒーローアカデミア?   作:マスカット

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戦闘描写ムズイよー泣
物語を書く才能が欲しいもんです


第5話 暴風域

 無造作に積み上げられた瓦礫(がれき)の山で、ボロボロと風化したコンクリートが時折崩れていく。部屋全体を覆い尽くすその中から、風間は降りかかった床の残骸(ざんがい)を吹き飛ばして這い上がる。咄嗟(とっさ)に風で生み出した即席のバリアのおかげで目立った外傷はないにせよ、目の前の勝利に逃げられたことに、口角が自然と吊り上がった。

 自分の想像を超えてきた敵が不愉快で堪らなかった。体に傷を負いながらも、無遠慮(ぶえんりょ)に睨む双眸(そうぼう)が腹立たしかった。

 

「ただ速いだけだと思ってたが、やるじゃねーかネボケ野郎・・・!」

「猫かぶりかよ口悪いな。外見を馬鹿にするのは差別だぞ、そよ風くん」

 

 足にコンクリートがへばり付いてたおかげで、頭からの落下は(まぬが)れた時短だが、頭上からの落石を防ぐ手段がなかったために左腕を負傷していた。

 何とか抗った時短だが、状況が危機的なのは変わらない。テープは今の落下で瓦礫に埋もれてどこだか分からず、傷を負ったものとそうでないものとの差。個性も風間の方が戦闘向きで、終了時間まで粘れる自信はなかった。

 

「ふざけてるね、危うく死ぬとこだよ。ただ、今ので拘束が解けたのは不幸中の幸いだ」

 

 遅れて這い上がった物真は、身を隠すように(うずくま)る。

 

(勝機があるとすれば、僕があいつ(風間)の能力をコピーすること。その為には、背後から気づかれずに近づくんだ。そのまま気を引いててくれよ怒りんぼさん)

 

 忍び足で移動を開始する物真。

 核のハリボテは埋もれてしまっていて、掘り起こすのには時間がないと判断した風間は、勝利パターンを変更する。敵側を捉えるということに。

 時短は一歩後ずさった。小さく舌打ちをして、目の前の人物の実力を改めた。これは気を抜ける相手ではないと。

 

「おいおい。敵の数と弾の数が全くあってないぞ」

「当然だろ。避けられたら困るからな。それに、この弾はお前が用意したもんだ。きっちり返してやるよ」

 

 ふわりと空中に漂う、拳ほどの大きさから頭部ほどの大きさぐらいまであるコンクリートの飛礫(つぶて)を見て、時短は唖然とする。風間が身の回りに浮かべたその数は、ざっと二十は上回っていた。

 

「実弾よりも相当でかいが、的が速いんだからしょうがないよな?」

「バリバリどSかよ。こっちはお前のお仲間さんのせいで未だに足枷がついたままだっての」

 

 右足についた重りは、落下の衝撃で砕けていたので移動ができないわけではないが、体感で十キロほどは未だに残ったままだった。強敵を前にまさかのハンデ戦である。

 風間がほくそ笑む。来る!そう判断した時短は、咄嗟に個性を使って飛びのいた。

 嵐の如き瓦礫の散弾が、時短の居た場所へと炸裂(さくれつ)する。土砂崩れのような全てを飲み込むような勢いで、ぶつかりあった瓦礫同士が細かく砕け散る。後ろの壁をも容易く粉砕する威力に、間一髪回避した時短は青ざめた。

 

 殺す気か!!

 

 躊躇いどころか、同情のかけらもない容赦ない攻撃に、思わず内心で時短は突っ込む。

 

「まだまだ行くぞ!」

「くそったれ・・・!」

 

 風間は再度瓦礫の弾を補給する。

 重りのせいで体力の消耗が激しい時短に対し、風間の攻撃は瓦礫がある限り尽きることはない。このまま続ければ決着はすぐにでも訪れるのは明らかだった。

 風速とは秒速表示である。風間が出せる最大風速40mとは時速でいうと144Kmにも及ぶ。一般的に風速25mで危険域と言われている。そこまでいくと立っていられないほどの力で、35mとなると地に足がつかなくなる。つまり、人の重量では飛んでしまうのだ。

 台風人間。風間を(てい)するにあたって、実に的を射た言葉だった。台風の災害を任意に引き起こせる規格外の化物。圧倒的な力の個性が時短を襲う。

 

(大げさに避けても体力を失うだけだ!)

 

 時短は体に当たる軌道だけを見極め、それを限定的に回避する。上体を逸らし、時には拳で跳ね除け、致命傷だけを避けていく。避けきれないと判断したものは、多少無理をして、個性を使って場所を移動する。

 

(これをかわせばストックが尽きる。その隙にピックを足にでも突き刺してやる)

 

 頭部にめがけて大きな奴が一つ。胴体の横を通り過ぎる様な弾道で、拳程度のものが一つ。横を通り過ぎるのは無視して、目の前に迫るものだけ意識を傾けた。

 首を折り曲げて避ける。ビュンと空を切り裂くような音が耳を掠めた時、時短は苦悶(くもん)の顔を晒した。

 

「がはっ!な、曲がりやがった・・・!!!?」

 

 横を通り過ぎるはずの瓦礫が、左のわき腹に突き刺さっていた。時短は油断したと悔やむ。時短の動きを見て、風間は咄嗟に風で軌道を逸らしたのだ。

 速度はエネルギー。小さな隕石でも大きなクレーターができるように、高速で飛来した瓦礫は時短の腹を抉った。

 苦痛にゆがむ時短は、風間を大層睨む。が、風間の後ろの影を見て思わず息を飲んだ。物真が満を持して風間の背後から飛び出したからだ。これで物真が風間の個性を手にすれば戦況はひっくり返る。完璧な不意を付く奇襲に、物真も時短も成功すると思っていた。

 

「少し勘違いしてるなお前ら。俺は風を操るだけじゃなく、風を感じるのも長けている。背後から近づいてくるのは最初から気づいていたさ」

「くそ、反則だろそんなの!」

 

 つむじ風というには荒々しく、小規模の竜巻のような旋風(せんぷう)が、もう少しで手が届きそうだった物真を追い返す。

 時短は歯噛みした。この状況では、どうやっても風間には勝てないと理解してしまった。奇襲も効かず、真向(まっこう)からでは相手にすらならない。

 

(一人ならな・・・)

 

 風間に勝つには、どうしてももう一人の手助けが必要なことに時短は顔を(しか)める。

 時短は二回のチャレンジで、テープを巻き付けるには至らないものの、触れることならば可能だと気づいていた。物真が時短の個性を使って風間に近づけばあるいは。そんな予想が脳裏をよぎる。

 だが、時短自身がそれを拒んでいる。自分の個性を、自分以外に使うことは。

 

「やはり実戦経験のない一学生なんてこんなもんか。さぁ残り時間も少ないし終わらせるぞ」

 

 風間の無慈悲な宣告。

 物真は括目(かつもく)する。風の衣を(まと)う風神と化した風間の、禍々(まがまが)しくも神々(こうごう)しいその姿に。

 風間を中心に風が収束し出した。吸い込まれそうなほどの吸引力で、一気に空間が圧縮される。

 高気圧から低気圧へと流れる空気が「風」の主因だ。気圧の不均一が大きいほど、風は強くなる。風間は自分の個性で無理やり超高気圧を作りだした。普通ならば分散してしまう空気を、塊として限界まで閉じ込めることで、それは放たれたとき驚異のエネルギーを生み出す。

 

 風の爆弾(ボムウィンド)!!

 

 内から外へ。(たけ)る暴風は全てをなぎ払い、時短は崩れた壁の外へと投げ飛ばされた。あまりの勢いに受け身すらままならず、全身を強打する。

 風間が操れる最大風速は40mだが、今の攻撃は最大瞬間風速70mを優に超えていた。それは生み出された暴風を(じか)に操った訳ではなく、暴風を生み出すために風を操ったからである。

 

「どれだけ速かろうがどんな個性もマネできようが、俺の相手じゃない!誰が相手だろうとねじ伏せる。それが()()()()()()!!」

 

 勝ち誇る様に高笑う風間の声に、朦朧(もうろう)とした意識のなか時短は反応する。

 かつて自身も思い込んでいた自信。それが砕け散ったあの日が無意識的に甦る。

 

(ヒーローになる理由・・・。そんなもん(つぐな)いしかねーだろ)

 

 

 

 

 

 

「風間強すぎ!てかやりすぎ!」

「これは止めるべきだ。じゃないと大惨事になりかねん」

 

 モニタールームではあまりの惨状に中断の声が上がっていた。建物の一フロアが丸々崩れ、敵側が一方的にやられている状況は、授業というには逸脱している。

 

「いや続行だ」

 

 だが、相澤は間髪入れずに続行を決断する。

 

(風間・・・あの情報は間違いなさそうだ。たく、雄英も厄介なもん持ち込んで非合理的過ぎる)

 

 相澤の冷徹(れいてつ)な一言に、鉄哲は思わず反論した。

 

「何でだ先生!時短のやつなんか怪我してボロボロだぞ!」

「ヒーローが敵に待てと言われたら待つのか?ヒーローはいつだって命がけの職業。誰かが助けてくれるなんて思わないことだ」

「そ、それはそうですけど・・・!」

 

 相澤が言うことは正論だ。ただ、それが正解だと鉄哲は思えなかった。

 

「たとえ時短が立ち上がってもなぁ。風間の能力隙とか全然なさそうだし勝ち目薄いよな。物真は個性全く使ってないし・・・」

「いや、使えないんだ。多分物真の個性は人の個性を一時的に使える個性。体力測定の時、何種類もの個性を使ってたの見ただろ?ただその為には相手に触れることが条件の筈だ」

 

 円場の呟きに拳藤が答える。

 拳藤の推測は正しく当たっていた。物真の個性‘コピー’は、触れた相手の個性を五分間だけ使用できる。それに気づいたのも、体力測定でわざわざ時短に握手を求めていたのを間近で見ていたためだった。そして、そのことは当然時短は気づいているだろうことも。

 

「・・・まぁ残り時間もあと三分弱。それにあいつらも諦めてなさそうなんで、このまま続ける。本当に危険そうならすぐにでも止めるさ」

 

 モニターに映る影を見ながら相澤はそう括り終えた。

 ふらふらになりながらも立ち上がる時短を見ながら、相澤は微かに聞こえてきた小型無線からの声に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 先ほどの爆風により、部屋の瓦礫は軒並み吹き飛ばされ、核がズタズタになりながらも顔を出していた。それに風間が触れれば勝利なのだが、風間はそれをすることはなく、目の前に立つ傷だらけの時短を凝視していた。

 左腕の出血を抑え、肩で荒い呼吸を立てる満身創痍(まんしんそうい)の時短。ちょっとした風圧で倒れそうなほどボロボロなのに、何が彼を駆り立てるのか。

 ゾク。風間はまだ死んでない時短の眼に、俄然有利である状況でありながら悪寒が走った。―――気持ち悪い。そんな内心を隠すように、余裕気に声をかける。

 

「へぇ。まだ起き上がってくる気力があるのか。今にも眠りそうな顔してんのに。分かんないのか?実力の差がありすぎるんだよ」

「苛つくぜ・・・。その自惚(うぬぼれ)れ加減、昔の自分を見てるみたいでよ」

「はぁ?」

 

 美羽が今朝話していた内容の答え。本当は随分と前から、いや最初から時短の中にはあった。

 償い。そして約束。

 

⦅ピース見て見て!おれ個性使えるようになったんだよ!⦆

 

 それは幼少時代の記憶。時短が一番笑顔だった頃の儚い日常。

 

 

 

 

 

 

 

「ほらこっちだぞピース!」

「わん!!」

 

 時短は自分の親友に向かって、最近発現した個性を披露(ひろう)する。瞬間移動のようにあちこち移動した鬼ごっこ、個性を使用したボール遊び。子供ながらに自宅の庭で無邪気にじゃれ合う。

 

「ピースは私とおままごとするんだからどいて!」

「止めろよみう!ピースはおれの親友だぞ!」

「うるさい!」

「いたい!うあーんママーみうが殴ったー!」

 

 洗濯物を畳んでいたところにすがりついた時短を、よしよしと微笑みながら慰める母親。

 仕事柄遊ぶ時間が少ない自分たちの変わりにと、知り合いから引き取った柴犬のピースを見つめて、正解だったと母親は微笑む。おかげで家庭は前よりも明るく、笑顔が絶えなくなった。

 時短に至っては、お風呂も寝る時もずっと一緒に行動するほど仲が良くなった。母親からすれば、それが寂しくもあるが、感謝するには充分だ。

 

「あっかんべー」

「タクミのくせに生意気!もう夜一緒にトイレ行ってあげない」

「いいもーん。おれにはピースがいるし!」

 

 ピースに抱き着く時短を引っぺがすように引っ張る美羽。そんな風景が時短家の日常だった。

 

 

 

 

 そんなある日。時短が小学生三年生の時だった。ピースはぐったりと倒れ込み、いつもは時短の呼びかけに反応するはずが、うんともすんとも言わない。

 すぐに母親とともにピ-スを病院へと連れていく。時短は必死にピースを励まし、背中をさすってやった。

 

老衰(ろうすい)ですね。体力の衰えが原因で倒れたのでしょう」

 

 医者の言葉に時短は聞き返す、いつになったら治るのか。子供ながらにピースの現状を受け入れられなかった時短は、すがるように医者へと懇願(こんがん)する。

 

「おれ何でもするから!好き嫌いもしないし我儘(わがまま)も言わない!だからピースを助けてよ!」

「ぼく、ピースはもうおじいちゃんなんだ。前のようには遊べなくなっちゃったんだよ」

「嘘だ!!だって昨日も一緒に散歩したし、ボールだってちゃんと取りに行ってた!!嘘つき!!こいつ嘘つきだ!!おれからピースを取り上げようとしてんだ!!」

 

 母親が抱き着いても、時短は嘘だと声を張り上げた。本当はピースがもう動けないのも理解していた。それでも時短は泣きながら現実を拒否していた。

 それから三日三晩時短はピースの傍から片時も離れなかった。

 

「ピース、ヒーローって知ってる?」

「・・・」

「どんな時でも困った人を助けちゃうんだぜ。カッコいいよな」

「・・・・・・」

「だから、ピースのことも、きっとヒーローがうぐ、助けてくれズズ、るから!」

 

 病院から帰ってきた日から、ピースはまともに食事をしていない。みるみるやせ細る姿が痛々しかった。今ではほとんど呼びかけにすら答えないピースを、時短は懸命に撫でる。

 ペロリと指を舐め返すピースだが、その力は余りにも弱弱しい

 次の日、ピースは一日中寝たきりになった。犬小屋の中には、固形物がないおう吐物が所々に見つかった。ついに限界がきたと、皆が悟る。

 その日は珍しく雪が降る極寒日だった。犬小屋には寒くないようにと毛布が敷き詰められていたが、それでは可哀想だと部屋の中で看病することに決まった。最早意識もないピースを見つめながら、時短は決心する。

 

「おれがピースのヒーローになるよ」

 

 待っていてもヒーローは来ない。ならば自分がヒーローになると時短は考えた。

 時短の個性‘短縮’は、意識がある相手には効果がない。ならば、意識がないときにはどうなのか。時短はピースの頬を撫でながら、楽しかった毎日を思い出していた。

 できるできるできる、()()()()()()。頭の中で反すうしながら、時短は意を決した。ピースの体調が治るまでの時間を短縮することを。

 

「絶対助けるから!」

 

 時短は個性を使用した。そして

 

「ギャフ・・・!!」

 

 ピースはうめき声とともに胃の中のものを吐き出し―――死んだ。

 

「・・・え?」

 

 徐々に固まるピースの冷え切った体に触れた時、時短は頭が真っ白になった。

 ‘短縮’とは物事のプロセスを飛び越え、すぐに結果を出せる個性。結果を伴わない使用法は、時に違う結果を示しだす。治るという結果が無かったピースは、死という別の結果を辿った。

 

 

 

 

 

 

 物真が時短の個性を使った時の激昂(げきこう)は、自らの個性で親友の命を奪ったトラウマによるものだった。

 もう誰も自分の個性に巻き込みたくない。だけどそれでいいのだろうか。確かにこんなものはただの授業。自分が危ない目にあってまで続けるほどの理由なんて少ない。だが、それでも、時短は思う。

 

 

  そうやってまた逃げるのか?

 

 

 入試の時、本当は受かりたいなんて思っていなかったんじゃないのか。試験の裏を見破ろうなんて、そんな綱渡りのような希望が薄い方に賭ける意味があったのか。

 美羽の問いにだって、物真のことだって、他人を助けたい?傷つけたくない?違うだろ。自分を守りたいだけ。自己満足で塗り固め、未練から目を背け、テリトリーへの侵入を拒絶する。そんな自分が時短は許せなかった。だからこそ、変わるのだ。

 

「お前だけには負けられねぇ。お前(過去の自分)を乗り超えなきゃ、俺は・・・前に進めない!!」

「何一人で熱くなってるんだ?そのなりで気持ち悪い。もう死ねよ」

「知ってるか?向かい風(お前)が強風なほど()はさ、高く飛べるもんなんだ」

「はぁ?・・・まぁいい。これ以上傷ついても責任は取れないぞ」

 

 満身創痍の身だが、時短の足枷は強風により外れていた。

 時短は構えた。構えとはいっても、武術の心得などない時短に大層な構えなど使える訳がないので、ごく普通の誰でもできる簡単なもの。

 クラウチングスタート。後先はもう考えない。全速力で駆け抜けることだけに集中する。

 そんな姿を見ながら風間は飽き飽きとしていた。消えた瞬間に乱気流を作り出す。ただそれだけだと。

 

「行くぞ・・・!!」

 

 ℒDRIVE(エルドライブ)!!

 

 風間は突然目の前に現れた時短を、特に驚くことも無く螺旋(らせん)を描く風の渦によって吹き飛ばした―――はずが、蜃気楼(しんきろう)のように淡く消えていく。

 

「「「悪いな。それ残像」」」

(ちッ、影分身かよ・・・!十、はいるな)

 

 突如複数の方向から、声が聞こえてきたと思えば、風間を囲うように数十人に増えた時短が消えては現れてを繰り返していた。

 移動の短縮縦横無尽バージョン。反復横跳びの時と同じく、残像すら残る超超高速移動。実体があるのは一つだけ。しかも、瞬間的にその実体も飛び交っているので、見てからの判断じゃまず間に合わない。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

 風間は虱潰(しらみつぶ)しに攻撃しても意味がないと判断すると、広範囲の暴風でまとめて(ほふる)る。

 

「ま、全部外れだけどな」

「舐めやがって・・・!!」

 

 風を喰らった時短は全て残像で、本物の時短は遠く離れた場所に避難していた。

 おちょくる様な時短の行動に、風間は怒りを顕わにする。だが、時短はちっちっちと指を振ると、言葉を紡ぐ。

 

「これはチーム戦だぜ。伏兵を考えなくちゃな」

「君も相当性格悪い奴だね」

「いつのまに・・・!!」

 

 時短が風間の特大攻撃を喰らって吹き飛ばされた後のこと。

 

『物真。・・・ッ—――一回だけだ。一回だけ俺の個性を使わせてやる』

 

 事前に渡されていた小型無線。コンビと通話できるそれで、時短は物真に語り掛けていた。

 目を見張る風間に向けて、物真は右手を全力で振りかぶる。背後からの右ストレート。顔面に迫りくる一撃を、風間は個性では間に合わないと、反射神経だけで避ける。

 

(意表をついても交わされるのか・・・!!)

「惜しいが、まだ少し俺には届かなかったな」

 

 そこで強烈な旋風。一度距離さえできてしまえば、遠距離攻撃の手段がない二人にはどうしようもない。だからこそ、風間は物真を吹き飛ばすことだけにとどめて個性を使った。

 それが間違いだと気づくのは、ビチャっという液状めいた音が足元から聞こえた時だった。

 

「悪いね。僕の個性は、一度に二つの個性を使うことはできないけど、スットクしとくのは可能なんだ。君に飛ばされた時、気を失った凡戸を見つけたんで、コピーしておいて正解だった」

 

 多分最初の落下で既に気絶してたんだろうね。そう補足して、物真は自身の足を地面に接着してその場に踏ん張る。あらかじめ、物真は移動する前に右足にボンドを塗っておいた。時短の個性は短縮。速度を加速する個性でない為、片足での移動でも即座に移動できる。

 時短の一見無茶苦茶な高速移動も、物真に個性を渡すための目くらまし。

 

(怒ったり、頼ってきたり、よくわからない奴だよ)

『テメェの力を借せ!』

「まぁこれも勝つためだ!その個性、使わせて貰う!」

 

 個性の応用力。物真は他人の個性を上手く利用し、風間に一撃を見舞った。

 

「ナメ・・・んじゃねぇ!!」

 

 初めて攻撃を受けた風間は、先ほどまでの沈着(ちんちゃく)な装いを脱ぎ捨てたように激昂する。

 物真に対し、反応すら許さない連続的な爆風を浴びせる。その勢いはボンドの接着力すらも上回る。

 

「それはお前だろ!」

 

 叫ぶ時短は風間へと飛びかかる。

 時短は風間の個性の隙を、正面からの戦闘で見抜いていた。瓦礫を弾丸のように打ち出していた時、どうして間を置かず打ち続けなかったのか。

 個性は身体能力。筋肉を酷使すれば筋繊維がちぎれるように、個性にも限度があるはず。

 

「使いすぎるとインターバルが必要なんだろ!?目安でだいたい30秒ってとこか!」

 

 振り下ろす右腕を、風間は左腕を盾に受け止める。個性ではなく体での防御は時短の仮説を裏付けるには充分だった。

 

「まだまだ!」

「ぐっ・・・!!」

 

 ちぢれた左腕で、空いている懐に五発。殴るという動作を短縮したおかげでの連続攻撃。流石に傷ついた腕で殴ってくるのは想像していなかったのか、風間はモロにそれを喰らった。

 左腕の激痛に耐えながら、時短は物真の傍へと飛びのく。

 

「そんでもって、最大限の力を発揮できんの、範囲制限があんだろ。思えば可笑しな点ばかりだよな。物真が背後から近づいてくるの分かってたんなら、すぐに飛ばせばいいものを、ギリギリまで肉薄するの待ってたよな」

 

 風間が二人に向かって風を放つが、物真が同じ風で相殺(そうさい)する。

 時短が瓦礫を喰らった時、疑問に思うことがある。風で軌道を曲げたのが何故威力の劣る小サイズの方だったのか。それに弾道的に大きい方がよりダメージの大きい頭部付近だったのにも関わらず。そこで考えた。あれはあえて、ではなくそうするしかできなかったからだ。大きい瓦礫を動かすほどの風を作り出せる距離ではなかった。時短は己の個性が複雑故に、風間の個性に対し柔軟な思考性をを示しだした。

 

「つまり同じ個性ならば、攻撃よりも守備の方が勝る」

「ついでに言うなら、僕が個性をコピーできる時間は五分。残り時間はだいたい一分あるかないか。よくあるパターンだよねこれ。敵が油断したところにヒーローが倒すやつ」

「こ、この・・・何も知らねぇガキが・・・!俺に勝つ・・・?ふざけるな!!」

 

 猛烈な風と風とのぶつかり合い。空間が張り裂ける様な衝撃音がこだまする。だが、力は拮抗し、そこからは膠着状態が続いた。

 

「気を引き締めろよ。分かってると思うがインターバルがあるんだ。そこを突かれんな」

「それはあっちも同じ事だろ?このまま時間まで粘らせてもらう」

 

 着々と過ぎる時間。風間は攻め手にあぐね、時短と物真はそれに対抗する。

 

「俺は、あいつらに勝つためにここに来たんだ・・・!テメェらみたいな平和ボケしたガキに負けてるわけにはいかねぇんだよ・・・!!」

 

 風間が小さく呻くが、風の騒音で時短たちの耳には届かない。

 終了までの時間が十秒を切る。状況は変わらず風をぶつけ合う。最早時短たちが勝つのは目に見えていた。焦る風間だが、何もできずに時間は来る。

 観戦していた相澤が、終了の合図。無線で勝敗の結果を響かせる。そう

 

『ヒーローチームWIN』

 

 という結果を。

 

「「「は?」」」

 

 三人の声が重なった。 




なぜなぜなぜ???
どうしてヒーローチームが勝ったんだぁ!!??
まぁ次話に分かることですけどねぇ←すでに気づいてる可能性すら・・・
感想とかどしどし送って下さい!こ、心の準備はできておる・・・!
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