もんむす・くえすと!・イクサ   作:ヴァンス

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早めに書けてよかったー!ということで第四話です、今回からあらすじと次回予告は書きません、ネタバレ防止のため(笑)


第四夜 決死の脱出

ルカ視点

 

オーディン

「禍を引きおこすもの(ベルヴェルク)!!!」

 

オーディンの振りかざした蒼穹の前にはルカ達の渾身の力すら通用しなかった

 

天軍の剣、明けの明星、九重の羅刹

 

そのことごとくがオーディンの一撃に打ち消されてしまう

 

ルカ

「うわあぁぁぁ!!!!」

 

ルシフィナ・ミカエラ

「キャアァァァ!!!」

 

オーディンの蒼穹を受け、ルカ達はまるで木の葉のように吹き飛ばされる

 

しかし今の一撃はオーディン自身がこの世界ごと潰してしまわないよう加減し、尚且つこの世界がオーディンの創り出したルールで守られていたからこそこの被害で済んだ

 

そう、彼はその気になれば星や銀河はおろか宇宙そのものを消し去る程の力を持っている

 

オーディン

「………………」

 

大きく崩壊した大地をオーディンはじっと見つめている

 

オーディン

(魔力の増幅を感じない、少し加減し過ぎたか)

 

どうやら3人の魔力はまだ健在のようだ

 

ルカ

「くっ…うぅ…!」

 

ミカエラ

「ぐっ…!」

 

ルシフィナ

「あっ…うぅ…」

 

オーディン

「あれを受けてまだ息があるか、存外にしぶといものだな」

 

ルカ

「な、何て化け物なんだ…!」

 

いや、化け物という言葉すら可愛らしい

 

今までルカが見てきたどんな一撃も児戯に等しかった

 

グランベリアの放った炎の乱撃よりも

 

たまもの膨大な土の力よりも

 

アルマエルマの速力と体術よりも

 

エルベティエの憎しみに任せた猛撃よりも

 

今のオーディンの一撃は何よりも強大だった

 

オーディン

「できればお前を手にかけたくはなかったのだがな…」

 

オーディンは一瞬だけ表情を変える

 

しかしそれに反応する余裕は今の僕にはなかった

 

イリアス視点

 

イリアス

「プロメスティン、これは一体どういうことですか?」

 

イリアス

「ルカの持つ精霊の力の封印も、現魔王の六祖大縛呪も全て失敗するとは」

 

天界の中心でイリアスはプロメスティンの失態を咎める

 

プロメスティンは本来ルカとアリスの力を封じて弱化させるつもりだったのだ

 

プロメスティン

「申し訳ありません、オーディンが六祖大縛呪から脱出して魔王城に現れたもので」

 

イリアス

「なっ!!?オーディンが!?」

 

その言葉にイリアスの顔色が一気に変わる

 

もしそれが本当なら何千年もかけてようやく実現に至ったこの計画が全て台無しにされてしまう

 

イリアス

「六祖大縛呪を破ったというのは間違いないのですね?」

 

プロメスティン

「はい、奴自身が言っていました」

 

プロメスティン

「『六祖大縛呪を破るために使った私の魔力、返してもらうぞ』とね」

 

?????

「あらあら、世にも恐ろしい最高神が存在したものですね」

 

?????

「私の聞いた最高神のお話は、最後にその神は神狼に討たれるというものでしたよ?」

 

突如ドレス姿の少女らしき人物が話に割り込んでくる

 

見た目に似合わずその威圧感は凄まじい

 

プロメスティン

「黒のアリス、お前が思うほどあの男の存在は軽いものではないぞ?」

 

黒のアリスと呼ばれたその少女はフッと微笑むと余裕の口ぶりになる

 

黒のアリス

「いくら最高神と言えど過去の神」

 

黒のアリス

「イリアス様はおろか私にも敵いませんわ」

 

プロメスティン

「………………」

 

プロメスティンはその言葉に返す言葉か見つからなかった

 

そう、この少女はオーディンの伝承は聞いていたものの実際に会ったことはないのだ

 

オーディンが永遠を宿していることを知っているなら、封印から逃れた、という事実だけで絶望の底に叩き落されるだろう

 

イリアス

「そこまで余裕口を叩くならやってみなさい黒のアリス、あの男を殺すのです」

 

黒のアリス

「御意………」

 

一礼して黒のアリスはその場から消える

 

プロメスティン

「よかったのですか?あの者を向かわせて」

 

イリアス

「構いません、今のオーディンの魔力を無駄に消費させるくらいはできるでしょう」

 

イリアス

「蓄積した魔力を使い果たした時、また六祖大縛呪で封じればいいのですから」

 

イリアスはその顔に不敵な笑みを浮かべる

 

イリアス

(待っていなさいオーディン、あなたのその半無限の魔力、全て私が貰い受けます)

 

いくらか修正を余儀なくされたがイリアスの計画に変更はない

 

最凶の女神にはある秘策が残っていた…

 

ルカ視点

 

ルカ

(ダメだ…体が思うように動かない…!)

 

先の一撃で左足を砕かれ、感覚では骨も何本か折れているようだった

 

ノーム

「………………!」

 

自らの土の力も無効化され、寡黙なノームも驚きを隠せない

 

シルフ

「ルカ、大丈夫?」

 

ルカ

「大丈夫とは…言えないね、実は立ってるだけでも精一杯なんだよ…」

 

痛みを堪えて立ち上がったはいいが、これほど絶望的な力の差を前にどうすればいいのか

 

ルシフィナ

「ルカ、無理をしないで…」

 

ルカ

「母さん…」

 

母さんもかなり酷い怪我をしている

 

ミカエラ

「あなただけは命に代えても守りぬきます…!」

 

ミカエラからも闘志は消えていなかった

 

オーディン

「安心しろ、3人まとめて撃ち抜いてやる」

 

再びオーディンが天地創造の神槍(グングニル)の構えになる

 

ミカエラ

「いけない!今あれを受けたら…」

 

ウンディーネ

「早く避けなさい、ルカ!」

 

ルカ

「くっ!」

 

しかし意思とは関係なく体は軋んで全く動かない

 

オーディン

「天地創造の(グン)…」

 

放たれる死の一撃

 

ルカ

「ここまで…か…!」

 

???

「そこまでだ!!」

 

???

「オメガブレイズ!!!」

 

目の前に写ったのはオーディンの一撃ではなく巨大な炎

 

それは魔王城での戦闘で見たアリスの炎だった

 

オーディン

「な…に!?」

 

完全に不意を突かれたオーディンはその一撃に反応できない!

 

アリス

「どうしたんだルカ?何故あの男とこんな場所で戦っている?」

 

ルカ

「アリス?それにアルマエルマとエルベティエまで…!」

 

アルマエルマ

「助けに来たわよ、ルカちゃん」

 

エルベティエ

「今傷を治すわ」

 

エルベティエのスライムが傷口に張り付き、みるみる内に傷を塞ぎ、破壊された体構造を修復する

 

ミカエラ

「助かりました」

 

ルシフィナ

「まさか現魔王まで仲間にしてしまうとは、すごい才能を持ったものですね、ルカは」

 

ルカ

「それより、早くここを脱出した方がよさそうだよ」

 

アリス

「何故だ?あいつならさっき…」

 

オーディン

「序夜『Das Rheingold』(ラインの黄金)」

 

アルマエルマ

「嘘…!あいつ魔王様の炎で蒸発したはずじゃ…」

 

オーディン

「現魔王、やはり立ちはだかるか…」

 

アリス

「貴様、どうやらイリアス以上の化け物のようだな…」

 

ルカ

「悪いけど、今の僕にもあいつに勝てる方法は思いつかないよ…ただでさえ絶望的な力の差があるっていうのに、渾身の一撃を浴びせてもああやって復活してしまうんだ、ここは一度引いた方が賢明だと思う」

 

アリス

「フッ、貴様にしては珍しく現実味を帯びた発想だな、だが余も同じ考えだ」

 

アリス

「アルマエルマ!この空間から脱出するぞ!時間を稼いでくれ!」

 

アルマエルマ

「はーい、相手が同じ武闘派で良かったわ」

 

ミカエラ

「なるべく急いでください、早くしないと彼にルールを創造されてこの空間からの脱出が不可能になってしまいます」

 

アリス

「言われなくても急ぐ、現世にいても大地を揺らす一撃だったからな」

 

そしてアリスは空間にヒビを入れ始める

 

本来オーディンが創造したこの空間は破ることは敵わない

 

しかしアリスは驚異的な魔力でその摂理を捻じ曲げる!

 

アルマエルマ視点

 

オーディン

「それを私が黙って見ているとでも思うのか?」

 

オーディンはアリス達に狙いを定める

 

アルマエルマ

「それをさせないために私がいるの、言っとくけど今日の私は暴力的だから、死んでも恨まないでね」

 

オーディン

「サキュバスの女王か」

 

オーディン

「面白い、私の究極複合武術(アルティメットアーツ)を前にお前がどう戦うのか見せてもらおうか」

 

アルマエルマ

「上等よ、私のサキュバスアーツでそれを超えてやるわ!」

 

アルマエルマは静かに腰を落とし徒手空拳の構えになる

 

アルマエルマ

「ハアァァァ!!!」

 

アルマエルマが先手必勝の拳を無防備なオーディンに打ち込む

 

オーディン

「フンッ!!」

 

それをオーディンは魔力を乗せた拳で打ち返す

 

アルマエルマ

「まだまだ!!」

 

無論そんな策もない拳が通用するなんて思っていない

 

アルマエルマ

「そこよ!」

 

回し蹴り、ジャブ、正拳突き、ストレート

 

考え得るありとあらゆる武闘術をオーディンに向けて叩き込む!

 

オーディン

「そんな浅知恵で私に拳を当てることはできんぞ」

 

しかしオーディンも究極複合武術(アルティメットアーツ)の使い手

 

体に染み付いたありとあらゆる武闘術が全ての攻撃を反射的に打ち返す

 

アルマエルマ

「龍撃…」

 

オーディン

「遅い!」

 

ドスッ!

 

アルマエルマ

「ガハッ!」

 

膝蹴りを繰り出そうとしたアルマエルマの腹部にオーディンの拳が命中する

 

アルマエルマ

「くっ!」

 

腹部に当たったはずだが何本か骨をやられてしまった

 

まだ腹部に当たったから致命傷は免れたものの、今のが頭に当たっていたら確実に死んでいた

 

アルマエルマ

「痛いじゃない…」

 

オーディン

「基本的な格闘能力は高いが、相手の動きを読むことに慣れていない」

 

オーディン

「その上、感情に任せて振るった拳など格上の相手には届かない」

 

そう

 

今のアルマエルマとオーディンでは力の差は歴然

 

アルマエルマの魔力程度ではオーディンを地につけること敵わない

 

アリス

「もう少しだアルマエルマ!堪えてくれ!」

 

魔王様の声が私に届く

 

それは私にさらなる闘志を燃やさせる

 

オーディン

「諦めろ、お前と私では最早戦いにすらならんのだ」

 

アルマエルマ

「確かに、ルカちゃんが諦め気味になるのも分かるわ」

 

アルマエルマ

「けど、私はルカちゃんと違って諦めが悪いのよね」

 

オーディン

「なるほどな」

 

オーディン

「では、お前ごと後ろにいる現魔王もこの拳で撃ち抜いてやろう」

 

オーディンはアルマエルマに向けて天地創造の神槍(グングニル)の構えを取る

 

アルマエルマ

「エルベティエちゃん!守りは任せたわよ!」

 

エルベティエ

「任せて、あんな拳なんて通さないわ!」

 

オーディン

「邪魔をするなスライムの女王、お前程度では私の拳は防げんぞ!」

 

エルベティエ

「ルカは、未来への希望はこんなところで失わせないわ!」

 

エルベティエはアルマエルマの横に立ち、絶対の防御壁を貼る魔力を蓄積する

 

オーディン

「第三夜『Goetterdaemmerung』(神々の黄昏)」

 

オーディン

「私の一撃、止められるものなら止めてみせろ!」

 

オーディン

「天地創造の神槍(グングニル)!!!」

 

二人の女王に向けて放たれる最高神の一撃

 

エルベティエ

「絶海の障壁(アクアペンタゴン)!!!」

 

エルベティエとアルマエルマの前に魔法陣が描かれ、絶対の防御壁を生み出す

 

それはいかなる攻撃も受け付けない最大の盾

 

例え神の鉄槌であろうともこの防御壁の前では意味をなさない

 

そしてオーディンの真紅の拳はその防御壁に直撃する!

 

エルベティエ

「くっ!何て魔力!」

 

アルマエルマ

「行くわよ…」

 

アルマエルマはオーディンと似たような独特の構えになると拳に魔力を乗せる

 

アルマエルマ

(確か四属性の力全てを乗せるのよね…)

 

右手のみに意識を集中し、四つの属性を全て拳に乗せる

 

アルマエルマ

「これでも受けてみなさい!オーディン!!」

 

アルマエルマ

「精霊を束ねし女王の拳(カドラプル・ヴォルフ)!!!」

 

それはアルマエルマがルカとグランベリアの戦いを見て編み出した独自の一撃

 

四精霊の力を剣ではなく拳に乗せ、同じように相手に叩きつける

 

その拳は風の速さ、土の剛力、水の鋭さ、火の猛撃を纏い最高神に牙を剥く!

 

オーディン

「なに!?」

 

オーディンの放った天地創造の神槍(グングニル)と精霊を束ねし女王の拳(カドラプル・ヴォルフ)が衝突する

 

絶海の障壁(アクアペンタゴン)を砕こうとした最高神の一撃は徐々に女王の拳に押されていく!

 

アルマエルマ

「ハアァァァァァァ!!!」

 

そしてアルマエルマの全魔力を込めた渾身の一撃はオーディンの拳を超える!

 

アルマエルマは賭けに勝ったのだ

 

オーディンの一撃が絶海の障壁(アクアペンタゴン)に衝突し、威力を失う一瞬に賭け、カウンターで放つ一撃

 

それは無慈悲に、そして確実にオーディンの存在を塵一つ残さず消滅させる!

 

アルマエルマ

「ハァッ…ハァッ…」

 

ほとんどの魔力を使い果たし、肩で息をする

 

エルベティエ

「消し去った…のね」

 

エルベティエも限界なのか防御壁を解除する

 

爆炎が止み、視界が開ける

 

バンッ!

 

オーディン

「………」

 

しかしそれでもオーディンは何事もなかったかのように復活し、アルマエルマ達の前に現れる

 

アルマエルマ

「これでもダメなんて、一体どうすればこいつを倒せるのよ…」

 

オーディン

「フッ…先刻の一撃、そう悪くはなかった」

 

オーディン

「まさか現世にも私を消滅させられる者がいたとは、驚きを隠せぬぞ」

 

エルベティエ

「なら、スライムの大津波に飲まれなさい!」

 

エルベティエは、自身が得意としているスライムの大津波を巻き起こそうとする

 

オーディン

「いいだろう、ならばそのスライムごと全てを打ち砕いてみせよう」

 

オーディン

「我が蒼穹の一撃でな!!」

 

何とオーディンは一瞬で先ほどルカ達に放った魔力球を完成させ、放つ体制に入っていた

 

アルマエルマ

「なっ!?」

 

オーディン

「お前と最初に肉弾戦で戦っていたのはこのためだ、それとも、私がただ無策でいるとでも思っていたのか?」

 

そう

 

オーディンが最初にアルマエルマと格闘戦をしていたのはこの一撃でアリスやルカ達もろとも撃ち抜くため

 

ルシフィナ

「あれは…!!」

 

ルカ

「まずい…あれを撃たれたら…!!」

 

ミカエラ

「まだ開かないんですか!?」

 

アリス

「もう少しだ!間に合ってくれ!」

 

アリスは空間にかなりの亀裂を入れたが果たして間に合うかどうか

 

エルベティエ

「くっ!メルト…」

 

エルベティエもスライムの大津波を放とうとする

 

オーディン

「遅い!終わりだ!!」

 

オーディン

「禍を引きおこすもの(ベルヴェルク)!!!」

 

エルベティエが放つより一瞬早くオーディンの渾身の一撃が天から放たれる

 

それは先程のルカ達に放ったのを上回る無限の死を内包した一撃

 

エルベティエ

「絶海の障壁(アクアペンタゴン)!!!」

 

反射的にエルベティエは攻撃を中断し、防御壁を貼る

 

オーディン

「無駄だ!消えろ!!」

 

しかしどれほど障壁を厚くしようと、まるで紙を引き裂くように絶対の防御壁は蒼穹の前に霧散していく

 

その時だった

 

アリス

「開いたぞ!皆飛び込め!!」

 

アルマエルマ

「待ってたわ!魔王様!!」

 

アリスが開けた空間の亀裂に全員飛び込み、現世へと逃れる

 

オーディン

「逃がすか!」

 

エルベティエ

「不本意だけど、私も逃げさせてもらうわ」

 

最後にエルベティエが飛び込み、一瞬遅れてオーディンの蒼穹が大地を穿つ

 

オーディン

「逃げられたか…」

 

抉りとられた大地に佇みながらオーディンはただ塞がっていく亀裂を見つめていた

 

続く




アルマエルマとオーディンの戦闘が長めになりました、精霊を束ねし女王の拳(カドラプル・ヴォルフ)のところめっちゃ悩みました、カドラプル・ヴォルフという名前は最初から考えていましたが漢字部分に時間を取られましたね(汗)フォルテシモ風に表現するのは大変です…
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