Fallout:SAR   作:ふくふくろう

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姫街道にて

 

 

 

 涙目で俺を睨みつけ、このままだとアニメに出てくる美少女のようにポカポカと俺を殴りそうなくーちゃんを放置し、エイリーンにフォールアウト4産のタバコの箱を渡す。

 礼を言ってから戻されたタバコを俺も咥えて火を点けると、エイリーンが紫煙を吐きながら浜松城へ砲撃しない理由を話してくれた。

 

「なるほどっす。あの浜松城は新しい浜松の象徴、そしてそこを統治する組織は過去やこれまでの歴史を蔑ろにしないっていう意思表示っすか」

「まあわからんでもねえ理由だがよ。そんなんを気にしてこっちの被害が増えるようなら大反対だ」

「だからそうならないための作戦会議がしたくってね。イスとテーブルでも運ばせようか、錬金術師殿?」

「いらんいらん。必要なら俺が出すしな」

「そうか。戦前のピップボーイは見慣れているが、あたしの親友のそれとはだいぶ違うらしい錬金術師殿のピップボーイの性能が見られるのはありがたい」

「なるほどね。じゃあイスとテーブル、それと部隊の連中に配る飲み物と菓子でも出そうか」

「お姉さんはハーブティーがいいわ」

「うるせえ。アバズレは濾過前の水でも飲んでろ」

 

 アイリーンに吐き捨て、話し合いのための席をセッティングして飲料食糧医薬品をいつものように買い物かごへと入れてゆく。

 

 話し合いをするにしても開戦直前という事もあり長引かせるつもりはないし、こうまで武装の充実した練度の高い戦闘部隊ならば元から糧食も医薬品もそれなりに持たされているだろう。

 どちらも準備はすぐに終わった。

 

「ふむ。重さはそれほどでもなさそうだが、これだけの数のイスとそれで囲むほどの大きなテーブルがポンと出てくるとは。やはり錬金術師殿のピップボーイは特別製のようだな」

「まあ3仕様のピップボーイが個人用の背嚢だとしたら、俺のは倉庫みたいなもんですんで。それより錬金術師殿は勘弁してください、アキラで結構なんで」

「了解した。ではアキラ殿、戦車で天守閣への砲撃はなしで浜松城を攻めるとしたなら作戦は?」

「その前にちょっといいかしら、ボーイ」

「ああ」

 

 どこかの廃墟で手に入れたパイプ椅子に腰を落ち着けアイリーンが微笑みながら言う。

 その表情は笑みを浮かべてはいるが、視線にはこれ以上ないほど剣呑な色があった。

 

「どうやらまだ隠し球がありそうだけれど、ここでそれを披露するつもりはないのかしら?」

「…………ねえな」

「そう。それならそれでいいわ。続けてちょうだい」

 

 テーブルを囲むイスに腰掛けているのは6人。

 

 新制帝国軍の佐官であり率いる部隊ごと軍を裏切ったエイリーン。

 

 その部隊とは別に大昔から四ツ池という集落で戦車と装甲車を稼働可能な状態で維持してきた部隊の指揮官ジュリ姐さん。

 

 そのどちらとも近く、おそらくではあるがその2つの部隊の連携を強固にするために動いていると思われるベルチバードのパイロット、アイリーン。

 

 そして俺とその友人であるタイチとくーちゃん。

 

「このメンツだから言うが、隠し球ってのがない事もねえ。だがどこでどうやっても試すに試せなくってよ。それに、ソイツでできるのは浜松城を街ごと瓦礫の山に変えてやるような攻撃だ。とてもじゃねえがこの戦いじゃ使えねえよ」

「こちらの思惑とも合致しないわね。ならいいわ。本題に入りなさい、ボーイ」

「そりゃあいいが、なんで隠し球なんてのがあると思ったんだよ?」

「ジュリの勘、ね」

「ただの勘かよ」

「バカにしたものじゃないわよ。実際に隠し球はあったし、お姉さん達は今まで何度もその勘に助けられてきたもの」

「第六感なんてPEAKでもありそうな話だな」

「あり得るわね」

「まあいいさ。それより作戦だがよ」

 

 敵の攻撃で怖いのは、まず第一に俺のパワーアーマーを破壊したほどの狙撃。

 そして初手は対空に使っては来たが地上に向けても撃ち込めるであろうロケットランチャーかミサイルランチャー。

 

 俺のそんな言葉に全員が頷く。

 

「ええ。そうなるわね」

「狙撃はおそらく天守閣からしか来ねえが、ミサイルはそうじゃねえ。だから俺達はそれをぶち込まれる覚悟と準備をして敵陣に攻め込むしかねえ訳だ」

「そうなるな。戦車ならミサイルの1発程度で破壊されはしないが、装甲車はそうもいかないぞ」

「だからまずはそのミサイルの攻撃を、その射線を限定させてえ」

「ふむ。可能ならもちろん賛成だが、どうやってそれを?」

「俺のピップボーイにゃその辺の物置小屋ほどでけえコンクリートの塊がアホほど入ってる。それでこの国道に遮蔽物を作って、それに隠れながら戦車の砲撃でまずは城下への突入口を。できるか?」

「もちろん可能だ」

「ならこのノートにどういう遮蔽が欲しいか書いてくれ。すぐに作って見せる」

「了解だ」

 

 テーブルの上にノートとペンを置き、それをエイリーンに向けて押す。

 見慣れたそれよりも白いその手は迷う様子もなく動き続け、やがて俺の前に返ってきた。

 

「3分くれ。すぐに終わらせる」

「頼んだ、アキラ殿」

 

 エイリーンが書いた遮蔽物は、本当にこれでいいのかと訊ねたくなるほどに簡素な配置だった。

 浜松城下へと続くバリケードを眺められる位置、姫街道の片側をたった2つのコンクリートで塞ぐだけ。

 おかげですぐに作業が終わる。

 

「終わったよ。ほんとにあんなんでいいのか?」

「ああ。砲弾を弾きやすい角度で戦車を少しだけあの遮蔽物から出しての砲撃だ。あれで充分」

「そんなんも持ってやがんのか連中」

「知る限りではない。だが備えておくに越した事はないさ」

「大賛成だ。すぐにやるのか?」

「日の出までに突入口は作っておきたい」

「了解。なら俺は反対っ側のビルのどれかに上がって狙撃でもするか」

 

 砲弾は角度によっては戦車の装甲で弾けるらしいがミサイルだとそうはいかないんだろう。

 1発くらいなら耐えられるともエイリーンは言っていたが、向こうの持っているミサイルの数なんてわかるはずもない。

 ならばどうにかしてミサイルを撃たれる数を減らさなければ。

 

「アキラ殿の腕は信用してるが危険すぎないか?」

「狙撃は戦車の砲撃が始まってからするし、1射したらビルを変える。もちろん、天守閣からの射線は切ってな」

「なるほど。ならお願いしようか」

「任された。じゃあ俺はポジション探しがあるからもう動くぞ。連絡はこのタイチが無線でしてくれっから、なんかあれば教えてくれ」

「了解。くれぐれもムチャだけはしてくれるなよ?」

「こっちのセリフさ。じゃあこっちは頼んだぞ、タイチ」

「へいへい。でもこんな状況でフュージョンコアをケチるようなら怒るっすよ」

「そんなんしねえって。もちろん4仕様のパワーアーマーを着て動く。それに、ポジションを変える時はジェットパックも使うさ」

「アキラっち。そのパワーアーマーくーちゃんにも貸して」

「もちろんいいが俺と一緒に動くのはムリだぞ」

「なんでさ?」

「パワーアーマーそのものはそうでもねえが、ジェットパックでビルからビルへ移動すんのなんかにゃ慣れが必要だ。初めて使うくーちゃんじゃ追従すらできやしねえよ」

「むう」

「そうむくれんな。これが終わったらパワーアーマー訓練をしてやっから。くーちゃんはAGI型だろうから、ジェットパックに慣れちまえば誰よりも使いこなせるはずだ」

「……くっそ。もっと早く教わっておけばヘリの時だって」

 

 心の底から絞り出したような声で、歯軋りまでしながらくーちゃんが言うので黙ってその頭を撫でておく。

 たしかに俺達はミスをした。

 だがどちらも生きてはいるのだし、そのおかげで次からはもっと慎重になれる。

 

 

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