頭が性感帯のショタがオラリオで撫でくりまわされるのは間違いだろうか 作:キャラメリゼ
静寂に包まれる二人の空間、聞こえるのは荒れた息と規則的な吐息。
ばちっばちっと己をぶつけ合う音、交差する目線、玉の様な汗を額に輝かせ飛び散らせる。
完全にエルフが攻め、小さな少年も負けるものかと体を動かすがエルフの動きには付いていけなようだ、リューがラストスパートを掛けるように体の動きを速くすると、チロルはもうリューのなすがまま玩具みたく遊ばれる。
「う、うぁッ……り、リューさん……くッ……!」
「……はぁッ」
「んんっ……そんなっはげし……」
「っ……この程度でへばっているようでは、まだまだ狼にはっ……なれませんッ」
「ぼ、ぼくもうッ……あぁっ……んン」
場所は市壁、時は夜明け、顔を覗かせる太陽が眩しく二人を照らす。
何をしているんだ。と聞かれるまでも無く見れば分かる…………稽古だ。
キンッと気持ちの良い鉄の音を響かせながら空を舞うナイフ、弾かれ高速で回転して跳ね上がったナイフ特有の音を鳴らしながら、地面を二度跳ね動きを止めた。
そしてお決まりの一言を、頬を染めながらリューが呟いた
「落としましたね?」
「えっ今僕頑張りましたよ!?」
「敗者は口を噤むのが美徳です」
「いやだって最後手加減無しだったしっ!……やぁッ待って、まっひゃぁッ……んぁ……ッ~~~!!」
朝露が葉から滴る朝、昨晩の雨を感じさせないまだ少し暗い晴天の空に、ひんやりとした石畳に組み敷かれ覆い被さり頭を撫でるエルフ。
寝静まったオラリオの町並みに朝を知らせる様に、少年のソプラノトーンの喘ぎ声が響いた。
◆
「ヘスティア。仕事の邪魔をしないからって、そこで虫みたく丸まってられると気が散るんだけど……」
「…………」
「…………はぁ」
昨晩の事、【神の宴】で珍しく神友を見つけたと思えば、自前のタッパーに食材を詰め込むなどと言う相変わらずなヘスティアに同じ様なため息を付いた様な気がする。
珍しいメンツとの挨拶も程々にヘスティアに言われた一言「ボクの子に武器を作ってくれ!」流石に胸から溢れる怒気を隠そうとは思わなかったが、あのぐーたら駄目神とは見違えるように何度も必死に頭を下げる神友に怒りは段々と困惑へと変わった。
「さっきからそれは何をしているのよ」
「大福のマネ」
(やっぱり蹴り出そうかしら)
「じょ冗談、土下座……タケから聞いた。これをすればどんな願いも聞き入れられ、どんな悪事も許して貰えるって」
「また余計なことを……」
タケとはおそらく、ヘスティアと神交が深いタケミカヅチの事だろう、思いを胸にとどめず思わず口に出してしまったが気にしない、引きつる口元に目頭を押さえる。
こうなったらこの大福餅はてこでも動かないつもりだ。そんなことはこの下界に下りる前からの付き合いのヘファイストスには分かったことだ。
「聞かせてちょうだい。あのあんたがどうしてそこまでするのか」
「…………あの子の、チロル君の力になりたいんだ」
頭を地面に付けたまま喋りだす、神が神に願い求める儀式、本音を吐露しそれが己が動くほどの理由があるかを見極めるためのもの。
「ボクはチロル君に養われてばかりなんだっ……あんな小さな子を危険に晒して守ってあげる事も出来やしないッ、それが……それがたまらなく悔しいんだ!」
コップを引っくり返して最後の一滴まで残さないように搾り出す、ぐっと体を強張らせ漏らした。
『……何もしてやれないのは、嫌なんだよ……』
弱々しく呟かれた言葉は、彼女を動かした
「……わかった。作ってあげるわ……私が頷かなきゃあんた梃子でも動かないでしょ」
「う、うんありがとうっヘファイストス!」
少し甘すぎなのだろうか、しかしあの頃のヘスティアを思い出すと、今はくすりと笑みがこぼれるほど微笑ましい。切っても切れない腐れ縁に形ばかりのため息を吐きながら考える
(駆け出しの冒険者に持たせる一級品、強すぎても弱すぎても武器に振るわれてしまう……さて、どうしたものか)
「あんたも手伝いなさいよ」
「やった!ヘファイストスが打ってくれるんだっ、何でも言ってくれよ」
――あと、大福のマネ止めた方がいいわ面白くないから――
――ほえっあれ渾身のギャグだったのにっ――
――あんたねぇ……!――
結局仲睦まじく弾む会話に時を忘れながら、二人の神は工房に消えていった。
◆
夕方の稽古も、無事にぼろぼろにヤられ疲労困憊の体を引きずりながら歩く夕焼け道、沢山の果物や野菜を抱えリューと並んで歩くとまるで姉妹の様な微笑ましさがある……姉妹はおかしいでしょ
「足、治ったようですね」
「うん、おかげさまでもう完治だと思います」
「…………そう、ですね」
「…………?」
そこからは、あまり喋らなくなってしまったリューさんを不思議に思うが、胸に抱える林檎の甘い蜜の香りにじゅるりと意識が飛んでいく。
長い買出しを終え、店に着くとミアさんが出迎えてくれた。
「ただいま戻りました」
「おかえり、おつかれさん……ん?どうしだんだいリュー」
間が空き、ああと納得するミアさん
「チロル、足の調子はどうだい」
「はい!良くなりましたっ」
「そうかい……うん、じゃああんたはここで良いよ、冒険の邪魔はしたくないからねぇ」
少し遅れて、リューさんがなんで落ち込んでいるのか理解した。これは自惚れかもしれないが、僕も理解してから寂しさが心に広がっているから多分勘違いじゃない。
「ちょっとまってな」と言い店の奥に引っ込むミアさんを横目にリューさんを見ると無表情で分かりにくいが落ち込んでいる様な気がする
「リューさん、その色々ありがとうございました」
「い、いえ私は別に何も」
「ふふっかわいい…………ちょ、うそっ冗談です!ひゃあっ……やんぁ……んあぁぁぁ」
稽古の仕返しに言った一言に、カァァと顔を真っ赤にしたリューさんに腹いせとばかりに頭をがしがしと掻かれ、逃げていかれてしまった。
「あの堅物を赤面させるなんて、お前もなかなかやるじゃないか……ほら、二日分の給料だよ」
逃げていった方向を物珍しそうに眺めながらミアさんが差し出す麻袋、見るからにずっしりと重そうだ。
「えッでも」
「なんべんも言わせんじゃないよ素直に受け取りな」
そう言われるともう貰うしかない、でもまああんな姿にさせられたと考えればこのくらいの施しはあってもいいかも……うん、そういう事にしよう。
やはり見た目どおり重たい麻袋を受け取りながら、お礼を言う
「あの本当にありがとうございました!」
「また行き詰ったら働きにきな……お前なら歓迎してやるよ」
「ミア、お母さんっ!また来ます!」
この間のようにがしがしと頭をたたかれ、んっんっと声が出る、この撫でられ方は案外好きな事に最近気づいた。
なんだか凄く温かな気持ちが溢れてきて満面の笑みを浮べながら出口を目指すとシルさんが小走りで近寄って来る。
「チロルちゃん、これっ皆から」
差し出されたのは透明な袋に一杯に入ったクッキー
「やった……じゃっ」
「うん、またお越しくださいー」
思わぬクッキーにニヤつく頬を止められない、ブンブンと手を一杯に振り【豊穣の女主人】を後にした。
帰り道に我慢できずにクッキーの入った袋を覗くと、二三個、炭、じゃなくてチョコレート色の物がある、おそらくこれは…………うん、無粋なことを考えるのはよそう。
チロルのリューへのやさしさが10上がった
やっぱりリューさんって可愛いわ……かわいい。
ただいまアルフガルドを復活させているので、ペースがまちまちになるかもです。